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新国立劇場バレエ「ジゼル」 6月24日マチネ(米沢&井澤)
2017/06/29(Thu)
唯ちゃんのジゼルは村娘らしい素朴さと純真さのある心持ち控えめなジゼル。 踊りは柔らかく丁寧で、もちろんとても上手い! アルベルトに向ける眼差しと仕草には初恋の喜びのような初々しさも感じられてとても可愛かったです。 狂乱のシーンは恋人を失った悲しみと絶望ですでに心が壊れて正気を失ってしまった静かな狂気でした。 
ウィリとなった2幕前半では、虚ろな表情でアルベルトの前に現れては消えていく姿に、肉体から離れあちらに行ききれないジゼルの心が俯瞰しながら感情を失ったジゼルを動かしているような感じを受けました。 PDD以降は魂と肉体が一体化しアルベルトへの想いを胸にひたすら彼を守ろうとしている健気でピュアなウィリ。  テクニック的には本当に磐石で、ミルタの前でのアチチュード回転は綺麗なポーズのまま軸が全くずれずスピードもあり流石の身体コントロール。 スーブルソーもふわっと軽くて見事でした。

対する井澤さんのアルベルト。 彼は身長も高く爽やかな雰囲気で見栄えのするダンサーなのですが、真摯に演じてはいるのだけれど表現が弱いというか、まだ彼の中でアルベルト像がきちんとできていなかったのかな? なんとなくいつも周りに流されているように見えるアルベルト。 自分のしている事がわかっていない無自覚なアルベルトというのもちょっと違うような。 狂乱のシーンの後、死んでしまったジゼルに取りすがろうとしてベルタにひどく突き飛ばされどうしたらよいか分からずうろたえる様子が井澤さん自身の戸惑いのようにも見えたりして・・・。 ただ2幕は悪くなかったと思います。 表現はやはりソフトでしたがアルベルトの深い後悔や悲しみ、失ったジゼルへの愛情もきちんと感じられましたしね。
踊りは主役をこなすのに不足ない出来ではあると思いますが、もっと役に入り込んでの踊りならばさらに冴えて見えるような気がします。 それでも大柄なラインは目を惹きますし、2幕の見せ場のアントルシャは力みもなくジャンプも高く良かったです。 
アルベルトは初役との事なので、2度目の舞台となる土曜日の最終公演ではきっともっと良い舞台になるのではないかと思います。 

それにしてもアルベルトを突き飛ばした丸尾さん@ベルタの勢いは凄かった。 愛する娘を失った悲しみ怒り憎しみそのままの強さでした。

精悍で強気なハンスの中家さんはブーツ姿がさまになる下半身のラインが綺麗なダンサーですね。  ジゼルの心をなんとか自分に向けさせようと、アルベルトの小屋から持ち出してきた剣を見せてこいつは貴族なんだ、お前は騙されているんだよとアルベルトの正体をばらした時の憎悪丸出しの姿はすごい迫力でした。  優しい心の持ち主かどうかはわかりませんが(笑)ハンスでいいじゃん!な魅力的なハンスでもありましたね。  2幕の踊りや演技も良かったし、12月に予定されているシンデレラで王子が見たくなったのですが、日程が無理だなぁぁぁ。  

ウィルフリードの清水さん、マントを翻一番最初に一人で舞台に登場してくるので、この日は主役と勘違いされた方がいて会場からちらほら拍手が沸き起こりましたがなかなか素敵なダンサーですね。 この版のウィルフリードはニ幕でジゼルの墓を訪れるアルベルトを追ってはくるものの、アルベルトに先に帰るようにと言われると、わりと素直に立ち去ってしまう。 後ろを振り向くなり、躊躇するなり、もう少しご主人様を思う心が欲しかった(笑)  もう、言ってもしょうがないほど昔の話だけれど、マールイのマラさんやペトゥホフのウィルフリードが懐かしいわ!

一幕では柴山さんと奥村君のパ・ド・ドゥも良かったです。 奥村君の端正で軽やかな踊りは期待した通りの素晴らしさなのだけれど、柴山さんの踊りにも感じ入ったというか・・・。 彼女はやや地味な感じがして損をしているような気がするのだけれど、楷書的なきっちりぴったりしっかりな踊りのラインが常に実に気持ち良く、音も綺麗に捉えていて上手いなと。 スタイルも良くてペザントの衣装もとても良く似合っていましたし。 ただ、もう少し2人に親密さがあれば尚良かったとは思います。

ミルタは本島さん。 美和ちゃんのミルタが見たくてこの公演を追加で取ったのですが、冷気漂う夜の森を支配する女王然とした圧倒的な存在感と何者にも心を動かされる事無く容赦ない感じの役作りはさすがです。 上手から登場した時の細かく滑るようなパ・ド・ブレも美しかったし、最近の彼女は何を踊っても演じても円熟の境地なるものを見せてくれますね。 で、ジゼルを呼び出す前だったかな? ウィリが揃って中央で踊っている時(すでに記憶が怪しいけれど、多分ここ)に微笑を見せていたのが意外でした。 何だったのだろう?
ドゥ・ウィリの堀口さんと寺田さんも静寂の中、無となった者の意思を感じさせるような踊りが良かったです。 振付はジュリマの方が好きなのですが、寺田さんの綺麗なムーブメントが振付を一層際立たせていたような気がしました。
コール・ドの踊りも整然としていて、特にアラベスクで交差する見せ場では、あげた足の高さが揃っていてぶれもなく、新国バレエの真骨頂発揮の美しい幽玄の世界を作り出していました。 本当に素晴らしかったです。




ジゼル : 米沢 唯
アルベルト:井澤 駿
ミルタ:本島美和
ハンス : 中家正博
村人のパ・ド・ドゥ:柴山紗帆、奥村康祐
クールランド公爵:貝川鐵夫
バチルド:堀口純
ウィルフリード:清水裕三郎
ベルタ:丸尾孝子
モンナ:堀口純
ジュリマ:寺田亜沙子


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コメント
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M様

 井澤さんは確かプリンシパルに昇格されましたよね。何だかちょっと早すぎるんじゃないかな、と思いましたが、やっぱりそんな感じの舞台でしたか。
 でも、彼のスター性は他の人にはない天性のもの。ロイヤルの平野さんだって、経験を積むことで演技面が抜群に伸びていったので、井澤さんもがんばって欲しいです。

 24日のお昼、私はジゼルはジゼルでも、東京文化会館のKバレエのジゼルを観に行っていました。アルブレヒトは山本雅也さん、ジゼルはKの大御所プリマ、荒井祐子さんでした。

 2013年のローザンヌで3位入賞した山本さんを、熊川さんはすごく褒めていました。山本さんはロイヤルで研修した後、Kに入団。2年ほどはコールドにいました。そしていろいろな舞台を経験させた後、熊川さんは山本さんに役を与えはじめたのです。口先三寸ではなく、本当にきちんと、見込んだ山本さんを育てていたのですね。

 そして山本さんは…。2幕のヴァリエーションはすばらしかったです!…が、役作りが「薄い」というよりは、な~んだか、まだアルブレヒトになりきれていない瞬間がちらほらあったような…。
 でも私は、舞台にあふれていた熊川さんや荒井裕子さんの、人を育てようとする愛情と情熱をひしひしと感じ、盛大な拍手を贈ったのでした。

 がんばれ、雅也! 井澤さんとともに。そして願わくば、井澤さんにも「育てよう」とする愛情がきちんと注がれますように。利用して終わり、になりませんように。それは最近、今度は妙にほめ殺されている感じのする木村優里さんも同じだと思います。若い人は宝。

 新国立のマネージメントが、本当にバレエを愛し、バレエ団を育てようとする、愛情と情熱にあふれたものになりますように。

     MIYU
2017/07/01 00:43  | URL | MIYU #-[ 編集] ▲ top
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MIYUさん、

新国で見ている公演数の割りには井澤さんはあまり見ていなくて主演公演も昨年のバジルだけなのですが、踊りはとても丁寧ですし、仰るようにスター性あるダンサーだと思います。 性質的に表現があっさりしているタイプなのかもしれませんね。 ただプリンシパルともなれば、やはりその作品らしさを出した上でのパフォーマンスを当然求められますし、さらにいろいろな面に磨きをかけていってくれればいいなと思います。

荒井さんの舞台を最後に見たのはいつだっただろうと考えたら、もう何年前なのか分からないほど昔の「海賊」でした。 ギュリナーラは松岡さんだったかな? 今も変らぬ活躍で素晴らしいですね。 
山本さんについては、すみません、全く存じ上げないダンサーなのですが、熊川さんに見出されたのなら将来が期待できるダンサーなのでしょうね。 若いダンサーの成長には周囲の人たちの支えや熱意とともに舞台に出るという事がやはり一番大きいと思うので、与えられたチャンスをしっかりと血肉としていって欲しいです。 

そんな熊川さん率いるKバレエやゆかりさんが芸術監督に就任した東バには及びませんが、新国立バレエマネージメントも少しずつですが、観客の気持ちに応えようとし始めているような気はします。 こちらからの声も出し続けねばと感じているところです。
2017/07/01 12:06  | URL | M #il9tusdg[ 編集] ▲ top
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