マリインスキーバレエ「白鳥の湖」 12月5日ソワレ
2015/12/12(Sat)
ロパートキナの白鳥全幕を見るのはこの日が8回目でした。 初めて見たのが出産&怪我からの復帰が危ぶまれた2003年の公演だったのでそれから12年ですね。 その内ダニーラとのペアで観たのが5回です。 2006年のダニーラ衝撃降板・・・。 ダニーラ絶好調だった2006年の公演でロパートキナとの白鳥を見られなかったのが心の底から悲しく激しくショックだった事は今でもはっきりと覚えています。 立ち直るのに時間がかかったし、代役のイワンチェンコはもちろん、その後のもの凄~く楽しみにしていたゼレとの舞台ですら空しさ漂いまくりでしたから。 あれからも9年。 時が経つのは本当に早いなぁぁぁ。 2009年からはこれが最後かもと思って二人の舞台を見ていながらも、幸いにも次ぎがありましたが、今回は本当に最後なのでしょうね。 淋しいですが、来る時が来たという感じです。 カーテンコールでの二人の表情、ロパートキナは晴れ晴れと充実感に満ちた笑顔、ダニーラもいつもの優しく穏やかな笑顔でした。 

ダニーラの登場は、こんなに大きな拍手で迎えられた事ってあったかな?というくらいの盛大な拍手でちょっとびっくり(笑)。 私のようにひたすらこの瞬間を待っていたダニーラファンに加えて、ようやくマリインカの正統派王子登場!と思ったマリインカファンが多かったのではないでしょうか? 3年前は体のラインに若干貫禄がつきつつありましたが、フェス同様今回はすっきりしてましたね。
一幕一場では穏やかで落ち着いたジークフリートで、立ち姿も歩く姿も人々と会話を交わす際に差し出す腕の動きも美しくエレガント。 そして王妃をエスコートする姿は風格ありすぎ(笑)。 それでも家庭教師と接する姿にはちゃんと敬意と親しみがありましたねー、何度もお酒を取り上げられて悲しそうでしたが。 そういえば一幕一場の王子のソロは、マチネ同様急に音楽の速度が遅くなって少し踊りにくそうでしたが、柔らかで優雅なアームスの動き堪能。 

ロパートキナのオデットは見るたびに少しずつ少しずつ変わっているように思います。 白鳥の女王としての威厳や気高さはあるけれど、以前強く感じた孤高とか容易には心を許さないというような印象は受けませんでした。 王子の出現に驚き躊躇いながらも、静かにゆっくりとごく自然に王子に惹かれていく出会い。 身の上を語り上手に消えていく時に足をとめ、振り返って王子の様子を伺うオデット。 王子に対して凄く素直に感情を見せているオデットでしたね。
二人のグランアダージョ。 優しく情熱的にオデットを見つめる王子の目線と対照的に、心の動揺を表すように宙を彷徨うような視線と心がほどけるように口元が少しだけ開けられたロパートキナが艶かしくも美しかったです。 王子にしなだれかかり首筋や背中で王子の愛と温もりを感じようとしているような姿も切なく官能的。
チャイコフスキーの甘美で美しい旋律を纏ったロパートキナの典雅な舞いに惹きつけられて呼吸すら忘れてしまいそうになりましたが、彼女の表情や何気ない仕草には温かみがあり、また王子に救いと愛を求めているようにも見えた事に少し驚きました。 今までの彼女の1幕のオデットが誰かに何かを求めるような事はなかったような気がして・・・。 アダージョの終わりだったか、王子との別れが迫った頃だったか、わずかな微笑みを浮かべていた姿も印象的でした。

ロパートキナが踊りやすい距離を取り、丁寧に優しく寄り添う包容力たっぷりなダニーラのサポートもいつもどおりに完璧。  彼自身の動きもやはりエレガントだし、ロパートキナと音楽性も合っているので彼女と二人で作り出すラインの重なりもこの上なく美しく、特にロパートキナのアームスの表情をさらに引き立てているようにも思います。 この日はロパートキナの感情表現がわりとはっきりしていたので、逆に彼はいつもの愛情駄々洩れ状態ではなく大きく包み込む感じでしたかね? 静寂の中で紡がれる二人の世界がともかく美しく崇高で、ずっとずっと見ていたかったです。
夜明けが来て白鳥に戻っていくオデット、別れ際にあれほど王子から目を離さずオデットの辛く悲しい胸の内を訴えるようだったのは初めて見たような気がします。 
 
ロットバルトのズヴェレフは踊りも安定、リフトなども安心して見ていられますが、踊りや演技にもう少し邪気が見えても良かったかなと思います。 メイクは充分すぎるくらい魔物なのにねえ! でも、まぁ、3人のバランスとしてはよく取れていましたよね。 

コール・ドは揃いっぷりという点では新国立などの日本のバレエ団の方がぴたっと揃っていると思いますが、体のラインの綺麗なダンサーばかりが集まった(おや?という人もいましたが)マリインカのコール・ドの醸し出す叙情性や静謐な美しさはやはり特別なものかと。 
小さい白鳥はマチネよりは良かったですが可もなく不可もなく。 大きな4羽も悪くはなかったですが、チェブキナはお化粧のセンスをもちっと磨いて欲しいかなと。

トロワのバトーエワとイワンニコワは二人ともすっきりと綺麗なラインを描いて伸びやかで良かったです。 ロミオで好評を得たスチョーピンは身長がさほどないのが残念だけれど端正な踊りで脚のラインも美しい。 コーダはアントルラッセではなくジャンプし足を2度打ち付けるバージョンでしたが、跳躍に余裕があるので斜めに傾いている空中でのポーズも綺麗でした。 そんな凄業を見せてもさらっと爽やかなスチョーピン、素敵なダンサーです。

道化のポポフ。 気合入りまくりのア・ラ・スゴンドはスピードがもの凄い勢いで加速したため最後少しバランスを失いかけましたが、そこは力技でねじ込んで無事フィニッシュ。 マチネのバイボルディンのような若手も出てきているので、まだまだ自分が第一人者、白鳥の道化という役は分かりきっているというプライドのようなものも感じました。 舞台上での振舞いもちょっと偉そうな感じでしたしね(笑)

ロパートキナの黒鳥はロットバルトとアイコンタクトをとる時だけはうっすらと邪悪さを滲ませていましたが、終始冷ややかにほとんど無表情を装った高貴な黒鳥。 その無表情さゆえに目力に不思議な妖しさがあって、王子はそれに騙されたようにも感じます。 柔らかで消え入るような透明感があったオデットとは対照的にきちっとポーズを決めたラインはとってもシャープ。 32回転はシングルで、少しスピードの落ちた音楽に合わせてゆったりと回っていました。 最後の方はきつそうでしたが、たとえ途中からシェネに切り替えたとしたって、そんな事はどうでもよかったのです。
ダニーラのヴァリは以前と比べればジャンプの高さもマネージュのスピードも落ちましたが、端正なラインは変わらずです。 ダニーラも最後は若干スタミナ切れに見え、先日目の前でシクリャローフの怪我の瞬間を見ているだけに、「飛ばさなくていいからともかく怪我をしないで! ロパートキナを支える人は他にはいないんだから!!」とドキドキしながら見守りました。
冷ややかな薄笑いを顔に浮かべながら王子の愛の誓いを見届け、薔薇の花束を投げつけて去っていったオディール。 掴んだ花を呆然と見つめる王子。 オデットへ捧げたはずの愛が無残にもバラバラになって、今は自分にはそのかけらしか残っていないと思い知らされたように愕然とするこのシーン、かなり好きです。 

スペインは女性はちょろっとしか見ていなかったのですが(あ、他もそうでした)・・・。 男性二人は下手のローマン・ベリャコフの方が動きのラインがすっきりしていて好みでした。 ひょっとして、このダンサーが愛の伝説で気に入った将校の一人だろうか? で、ティボルトを踊った上手のクズミンはやっぱりオーバーアクション気味ですねぇぇ(笑)。 二人とももうちょっとキレが欲しかった気がします。
ロミジュリのベンヴォーリオが好印象だったナポリのネドヴィガは地味といえば地味ですが、目に優しいソフトで端正な踊りをするダンサーですね。
マズルカのチュチュンニックが将校で気に入ったもう一人のダンサーでした。 チュチュンニックはオペラグラスでしっかり見れば違う顔立ちなんですが、客席から普通に見ると、シヴァに似て見えるんです! あごと横を向いたときの上半身がともかくよく似てる!! 背も高くてスタイルもいいしダンスも悪くないので、一日も早くソロの役がつくようなダンサーになって欲しいですねー。 実はマチネの1幕1場は王子にはあまり目が行かずチュチュンニックばかり見てました(笑)。 プーちゃん兄も渋くて素敵。 そして、後から分かった事ですが、一人常に動きが遅くてパリッとしていなかったエフゲニー・ジェリャービンはマールイにちょっと在籍して2012年の公演では西宮でボルチェンコ相手にジークフリートを踊ったデリャビンなんですね! ちょっとがっかりな出来。 

3幕の幕開きは美しいですねぇ。 ちょっぴり客層が違ったマチネではほぉ~~っというため息が辺りから聞こえましたっけ。 
悲しみと失意の表情を浮かべるオデット。 本当に儚げですがそれでも凜としているのがロパートキナらしい。 過ちを詫び許しを請う王子をオデットが許すまでの流れも一途な王子の想いに揺れ動くオデットの感情が痛いほどに伝わってきて心打たれました。 オデットが王子を許し、王子がその喜びをかみしめた瞬間、自分の中でも張り詰めていた緊張感がいっぺんに解けた感じ。 二人の愛の力によってロットバルトを倒し、朝の光の輝きの中、見つめ合い寄り添うオデットと王子の姿は本当に美しく幸せそうでした。  



感慨深く素晴らかった舞台。 幕が降りてしばらくはついに終わってしまったんだなーという淋しさに襲われましたが、何度も何度も笑顔でカーテンコールに答えてくれた二人の姿を見ているうちに、私にとってこれ以上のペアはありえないこの二人の舞台を今まで何度も見られた幸運に感謝したい気持ちになりました。

 



オデット/オディール:ウリヤーナ・ロパートキナ
ジークフリート王子:ダニーラ・コルスンツェフ
王妃 (王子の母) :エカテリーナ・ミハイロフツェーワ
王子の家庭教師:ソスラン・クラエフ
道化:グリゴーリー・ポポフ
悪魔ロットバルト:コンスタンチン・ズヴェレフ
王子の友人たち:エカテリーナ・イワンニコワ
        ナデージダ・バトーエワ
        フィリップ・スチョーピン
小さな白鳥:アナスタシア・アサベン
      オクサーナ・マルチュク
      アレクサンドラ・ランピカ
      スヴェトラーナ・イワノワ
大きな白鳥:ヴィクトリア・ブリリョーワ
      ディアナ・スミルノワ
      エカテリーナ・チェブキナ
      ズラータ・ヤリニチ
2羽の白鳥:クセーニャ・オストレイコーフスカヤ
      ナデージダ・バトーエワ
スペインの踊り:アナスタシア・ペトゥシュコーワ
        マリーヤ・シェヴャコーワ
        アレクセイ・クズミン
        ローマン・ベリャコフ
ナポリの踊り:アンナ・ラヴリネンコ
       アレクセイ・ネドヴィガ
ハンガリーの踊り:オリガ・ベリク
         ボリス・ジュリーロフ
マズルカ:クセーニャ・ドゥブローヴィナ
     エレーナ・アンドローソワ
     ナターリヤ・ドゥゼヴーリスカヤ
     ズラータ・ヤリニチ
     アンドレイ・ソロヴィヨフ
     ドミートリー・プィハチョーフ
     アレクセイ・チュチュンニック
     エフゲニー・ジェリャービン
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コメント
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M様

 本当に、とうとう終わってしまった…そんな感じでしたね。私も、最後は立ちあがって、いつまでもいつまでも、コルスンツェフに支えられたロパートキナを、「これまで本当にありがとう」と心の中で言いながら、見つめていました。

 私はロパートキナの白鳥を3回見ました。うち、2回はジークフリートがコルスンツェフでしたが、確か、府中で見た時はイワンチェンコだった、と思います。
 もちろん、過去2回も素晴らしいとは思いましたが、今回は見る方の感慨もあってか、一番、情感がこもっていて、感動的なものに思えました。
 年齢的な事もあり、時々、ぐらつくところもあったように思えましたが、そんな時、コルスンツェフは絶妙のサポートでロパートキナを支えてました。何だか、二人の踊りに涙が出そうでしたよ、まだ二幕だったのに…。

 テクニックや体力の衰え。それは全幕を踊るには無理が生じて来ていることを示すのでしょう。
 ただ、私の中には、なぜ自分はたった2、3時間のために2万円以上も出して劇場に行くのか?…という思いがあふれて来ました。

 フェッテの3回転を見に行くわけではありません。そんなの、若い男性にやらせたら、4回転でも5回転でもやってのけるでしょう。美しい容姿も完全なポーズも素晴らしいけれど、それだけだったら、私はきっと劇場には行かないでしょう。

 私はきっと、現実にはあり得ないような魂を揺さぶり動かす美しいものをさがしに劇場へ行っているのだ、と思うのです。舞台が終われば消えてしまう、決して手の届かないはかなく美しい幻…とでも言えばいいのでしょうか。

 私にとって、ロパートキナは特別なバレリーナです。Mさんが詳しく表現してくださってますが、彼女の白鳥の素晴らしさは今までと少しずつ姿を変えながらも少しも減じていません。むしろ表現に磨きがかかっていると思います。

 でも、どんな名手でもいつかは引退の時がやって来る。それは仕方がありませんものね。だから、カーテンコールはいつまでも立ち上がって拍手をしていました。本当に、ロパートキナと、彼女をしっかり支えてくれたコルスンツェフに感謝、ですね。

 これからは二人とも、無理のない範囲で、年齢にあった演目で活躍して欲しいですね。

     MIYU
2015/12/13 02:03  | URL | MIYU #-[ 編集] ▲ top
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015/12/13 10:30  | | #[ 編集] ▲ top
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MIYUさん、

あれから一週間経ってもまだ余韻に浸っていて、2006年収録のDVDまで見てしまいましたが・・・(苦笑)、きっといつまでも忘れられない舞台ですね。
2人の白鳥の集大成のようなものを見せてもらったのだと思いますが、テクニックや体力の衰えをカバーして余りある美しさや踊りのすべてに込められた強い思い、オデットとジークフリートとして交し合う愛を感じる事ができました。
2人ともMIYUさんの仰るとおり、彼らが今踊りたい作品でそれぞれ活躍していって欲しいです。 それでもしまた2人の共演が見られれば本当に幸せなのですが・・・。
ロパートキナが出演するという事で7月のガラの最終日だけチケットを取りました。 最終的な出演者と演目が早く決まってくれるといいですね。 ロパートキナはソロ作品もあるでしょうが、誰と何を踊ってくれるのでしょう?  私はどうしてもダニーラとのダイヤモンドのPDDを見たいのですが、これはもう叶わぬ夢でしょうか?

そうそう、2012年の府中でのロパートキナの白鳥のパートナーはイワンチェンコです。 あの年は出産ラッシュでキャストに変更が出まくったおかげ?で、当初は1度しか踊らない予定だった白鳥を2度踊ってくれる事になったのでしたよね。

2015/12/13 17:45  | URL | M #il9tusdg[ 編集] ▲ top
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鍵コメを下さった方へ、

コメントありがとうございました。
そうですね、本当に同感です。
2015/12/13 17:47  | URL | M #il9tusdg[ 編集] ▲ top
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