マラーホフの贈り物 ファイナル! Bプロ 5月25日
2013/06/02(Sun)
「シンデレラ」
振付:ウラジーミル・マラーホフ 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ

初日よりも二人の間に穏やかな幸福感が増しているように感じました。 マラーホフのサポートも初日より安定していたし、サレンコの丁寧な足先の動きが美しくてとても印象に残っています。


「椿姫」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー

「椿姫」を全幕で見た事があるのは新国立劇場の牧版のみで、ノイマイヤー版はガラで3幕の黒のPDDしか見たことがなく(でもバレエフェスで見ていたりするだろうか? 記憶はないけど)、初めて見た紫のPDDでしたが、アイシュバルトの細やかな感情表現が素晴らしかったです。 情熱をまっすぐにぐいぐいと、それでいて彼女にすがるような瞳で愛を告白するアルマン。 最初はアルマンの熱い想いを軽くあしらい弄ぶそぶりもみせていたのに、次第に彼に惹かれ始める気持ちに気づき、その気持ちを否定しながらも抗いきれずアルマンに心を許して恋に落ちてしまう一人の誇り高き女性を見事に演じていたと思います。 この二人なのでリフトも万全で、マルグリットの心情が伝わってくるアイシュバルトのポーズも綺麗でした。 
マラインは決まりきらないピルエットが続いたのがちょっと惜しかったように思いますが、マルグリットの足元に倒れこんだりするときの驚くほど早い体の動きとラインの美しさには感心しきり。 マルグリットの愛を得て天にも昇る心地の少年顔も可愛いですねぇ。


「ジュエルズ」より"ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン

白鳥よりもロパートキナとダニーラの舞台が恋しくなってしまうダイヤモンドは本音を言えばあまり見たくない作品ですが・・・。
スミルノワはクールビューテイーに女王然といった雰囲気を醸し出しながら踊り、安定したサポートのチュージンとのパートナーリングもスムースで初日に見た黒鳥PDDよりは二人で踊りなれている作品だと思いました。 ただ、やはりこの“ダイヤモンド”には自然に備わっている風格と気品が必要なので若いダンサーには難しいですよね。 それでもスミルノワの場合(まだ、21歳くらいですよね? ロシアNOWというサイトで24歳とあるのだけれど??)、若いのに妙に老成した雰囲気があるのでそこそこな感じはするのですが、脚捌きや腕の雑さなど踊りにはまだまだ注文が多いなと。 新星の彼女に対する期待感というのはセミオノワのデビューの時と似ているかな? これからどんなダンサーになっていくのか楽しみです。  


「レ・ブルジョワ」
振付:ヴェン・ファン・コーウェンベルク 音楽:ジャック・ブレル
ディヌ・タマズラカル

シャンソンとタマズラカルの醸し出す黄昏感がすごくマッチしていて初日同様、とても良かったです。 


「ライト・レイン」
振付:ジェラルド・アルピノ 音楽:ダグ・アダムズ
ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ

ラカッラの雄弁な体の動きが素晴らしい。 特にあの脚!! そしてワンステップ、腕の一振りもそこには音楽がきちっとあり、こちらに訴えてくるものがある。 そして官能的。 一方ディノにはそれがなく、作品を伝えようとする力の違いを感じる。 ラカッラと同じレベルにまで上がるのは容易な事ではないでしょうが、少しずつそれが縮まればもっと作品自体が輝くと思うので、頑張っていただきたいものです。
それにしても中国雑技団並みのラカッラの柔軟性というのは凄いですね・・・。


【 休 憩 】


「バレエ・インペリアル」
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ
東京バレエ団


当初の予定だった水香ちゃんが怪我からの復帰が間に合わず急遽サレンコが代役を務める事になったのだけれど、マラーホフには体力的に負担の少ないサレンコで結果的には良かったのかなと。
3曲あるチャイコフスキーのピアノ協奏曲でも2番は普段ほとんど聞かないので、2番=バレエ・インペリアルになってしまっているのだけれど、正直この演目の40分は長いなと思ってしまいます。 というか、1楽章ね。
マラーホフは白の上下で、こういうノーブルな衣装の方が自分としてはそれほど体型は気にならないどころか、少し太くはなったものの、彼の脚は相変わらず嫉ましいほどに長く美しいとつくづく思いました。 ただ、踊りの方は、サポート中心だった作品では気づかずにすんだ重さを目の当たりにしてしまったというか、ジャンプはかなりきつそうでした。 それでも、作品に格調高さを添え、別格の存在感を放ちながら舞台を牽引していたと思います。
サレンコは始めのうちは硬さが感じられ、動きに伸びやかさが足りなかったのですが、徐々に体も気持ちもほぐれたようで、3楽章は生き生きと彼女らしいきっちりした踊りでした。
東京バレエ団ではトロワの芯の奈良さんが華のある爽快な踊りで良かったです。 あ、バレエ団のこの衣装はゴージャスだけど品があってとてもいいですね。


【 休 憩 】


「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー

この二人のロミジュリは去年の夏のバレエフェスで見たばかりですが、その時は大人びたジュリエットに思えたアイシュバルトが、この日はとても初々しく夢見る少女に見えました。 1幕でマルグリットを見ているせいでしょうかね? 変わらず好きなのはロミオにキスされた唇に手をやりながら破裂しそうな心臓の鼓動と同調するような細かいパ・ド・ブレで後ろに下がっていくシーン。 どうしたらいいのか分からないほどの幸福感が感じられていいですね。
マラインは、まぁ、まんまロミオで演技も上手いけれど、さきほどのアルマンとあまり大差ない? でもジュリエットと気持ちを確かめ合い、永遠に続く幸せを信じて疑う事無く、止まらない高揚感そのままに全速力で舞台から走り去っていったロミオはとても素敵でした。 ただクランコのバルコニーのシーンは、ガラでここだけ見ているといつも男性ダンサーにはマクミラン版を踊ってみせてほしくなっちゃうんだよなぁ。 


「タランテラ」
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク
ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル

サレンコは3演目出演で大忙し。 小柄なダンサーだからラインをゆったり見せてというような演目ではいまひとつ物足りないような気がしてしまいますが、テンポの速い曲に乗って小気味良くキュートに踊るサレンコはとってもチャーミング。 そしてパートナーのタマズラカルがまたいい味を出していて! ノリノリでちょっぴり香具師というか呼び込みの兄ちゃんみたいな雰囲気もありましたが、タンバリンを叩くタイミングが音楽にぴ~~ったり合っていて気持ちがいいったらありゃしない! 掛け合う二人の息もぴったりで本当に楽しい演目でした。 
このガラで自分的に誰よりも好印象を残したのがタマズラカルでした。


「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ、青柳晋(ピアノ)

パリ郊外で最高に幸せな日々を送っているマルグリットとアルマンの白のPDD。 白いドレスに身を包んだラカッラのリズミカルで軽やかなダンスにマルグリットが純粋な愛を営む喜びをかみしめている女性の可愛らしさとイノセントな妖艶さを感じました。 Aプロで黒のPDDを見た時はラカッラのリフトされた時のポーズや動きに違和感を覚えたのですがこちらでは全く。 長身のディノにリフトされて空間を大きく使ったリフトは流麗できっちりと体がコントロールされたていて見事でした。
ディノはしっかりとマルグリットの視線を受け止めていましたが、演技が一本調子というか、ま、幸せそうなので良いのですけどね。
今回、本当に贅沢だと思うのはピアニスト。 この日は青柳さんがこの一演目のために出演してくれるなんて・・・。 


「白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン

二人ともAプロの初日よりは良かったです。 チュージンの印象はほとんど変わりませんが、スミルノワは何も考えていなそうな王子をいたぶり弄ぶ悪女っぷりがすっかり板について、場をしっかりとしきっていました。 相変わらず踊りは雑だと思うけれど、そんなものは今後本人次第で何とでもなるでしょうし、何気に女王様的な素があるようにも感じたので、この先もボリショイの中で逞しく成長していけるだろうな~と。 ボリショイの次の来日が楽しみです。


「ヴォヤージュ」
振付::レナート・ツァネラ 音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
ウラジーミル・マラーホフ

振付家のレナートから「何か困っている事はないか」と聞かれた時に「つねにツアーに出なくてはならないことだ」とマラーホフが答えたことから生まれたというこの作品。 
モーツァルトのこの美しいピアノ協奏曲がこれほど静かに物悲しく聞こえた事はなかったです。 口に指をあて手をふるのは出逢いなのか別れなのか。 舞台上のマラーホフの動き、表情から何とも言いようのない切なさと必死さのようなものが伝わってきて、踊り終えた彼の万感迫るような表情を、涙が出てきてしまいました。
私は特にマラーホフのファンではないし(とっても好きですけどね)、マラーホフの贈り物を見始めたのも2006年からですが、彼の気持ちの温かさと観客とバレエへを大切にする真心に触れる事ができて、毎回毎回ほっこりと幸せな気分で会場を後にする事のできるこのシリーズはとても大好きな公演でした。 今回で終わってしまうのは本当に残念ですが、マラーホフのヴォヤージュはまだ続くのでしょうから、その旅の途中でまた会えるでしょうね。 
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