2月22日 新国立劇場「ジゼル」 クリメントヴァ/ムンタギロフ
2013/02/28(Thu)
クリメントヴァって比較的小柄なダンサーだったのですね。 160センチくらい? 昨年2月のコジョカルガラではそのオーソドックスで素晴らしい踊りで舞台上で大きく見えましたが(自分の感想をチェックしたら長身のクリメントヴァなんて書いてある・・・唖然)、ムンタギロフとの身長さがこれほどあったとは・・・。 
ちなみに昨年12月にENBのシニア・プリンシパル(最高位)に昇進したムンタギロフは1990年生まれの22歳で身長は186センチだそうです。

<1幕>
クリメントヴァのジゼルは内気で控えめだけれど品のある可愛らしい少女で、常にアルベルトを視界のどこかで追っているような姿もいじらしい。 踊りは軽やかで折り目正しいというかとてもきちんとしていて安定している。
狂乱のシーンは、アルベルトとの幸せな時間の記憶をたどりながら、そのアルベルトの愛が偽りのものだったという悲しみに少しずつ少しずつ壊れていくような静かな狂乱でした。 事切れる前にあちらの世界からのお誘いも見えていないようで、自分ひとりの苦しみの中で果ててしまうというように見えたのが一層不憫に感じられました。
ムンタギロフは貴公子然としていて立ち振る舞いがおっとり優雅で明らかに村人たちとは身分が違うのが分かります。 純粋な心の持ち主でジゼルの事も遊びなどではなく心から愛おしく思っている様子。 
長い腕の動きや足先の動きが綺麗でした。
バチルドに姿を認められると顔を曇らせ、この場をどうやり過ごせばよいのかわからずに困惑している感じだったのが印象的。 狂乱のシーンではジゼルの様子に驚きながらも彼女に近寄りなんとかしようとし、踊りだそうとしたジゼルにはそっと寄り添い腕を貸そうとするアルベルト。 こんなアルベルトは初めて見たので、心優しいムンタギロフ@アルベルトの解釈なのかと思ったのですが、24日に見た菅野さんも同じだったので、決められた演技なのですね。 
ジゼルが息を引き取った後、お前のせいだとハンスを責める姿も力なく、ベルタに突き飛ばされながらもジゼルにすがり付いていたアルベルトは心入り乱れたままウィルフリードにせかされその場を立ち去っていく。

ハンスが見られなくて残念と思っていた輪島さんのウィルフリードは主人を思う気持ちは良く伝わってきたのですが、ちょっと軽そうなところもあったので、もう少し貴族側の人物としての落ち着きと気品が欲しかったです。 
この日の舞台でけっこう心に残ったのがハンスの古川さん。 口ひげを蓄えた姿にむさくて無粋路線かと思いきや、摘んだ花をジゼルの家の戸口に飾るような心優しく一途にジゼルを愛するハンスでした。 ジゼルの死に身を震わせて悲しみ嘆く様には深い絶望と後悔が感じ取れました。
ぺザントの江本さん、4人の・・・というシーンなどではお馴染みのダンサーですが、PDDのヴァリを見たのは初めてのような気がします。 そつのないしっかりした踊りです。 一方の寺田さんは、何だろう?不安定なわけではないのに情緒のない踊りというのか?、なんとなく物語から浮いた存在に見えました。
楠元さんは身分の違いをさり気なく漂わせてはいたけれど、わりと庶民的な鷹揚さが感じられるバチルド。 そしてクールランド公爵のマイレンはもっと威厳たっぷりどっしりな感じで来るのかと思ったら意外に普通で若々しく。

<2幕>
こちらのミルタはヴェールを被ってご登場。 堀口さんの滑るような細かいパ・ド・ブレは見事でした。 ただ、その後に腕を交互に前に出しながらアラベスク?でポーズをとって進んでいく時の腕の動かし方があまりに直線的で何かを打ち落とさんばかりだったのと、精霊たちを呼び出す時にニキヤばりの炎を煽るような勢いだったのは好みではなかったです。 演技的には無表情のこっわ~いミルタでウィリの女王らしい貫禄もあり良かったと。 コール・ドもよく揃っていて良かったですが、交差でアラベスクのポーズを作る際の腕の動きがミルタほどではありませんが他の劇場よりもシャープだったのがやはり気になりました。 

ジゼルのお墓にやってきたアルベルトはジゼルを失った悲しみに打ちひしがれている。
クリメントヴァとムンタギロフのパートナーシップが遺憾なく発揮されたのは2幕だったのかなと思います。 ウィリとなったジゼルとその気配だけを感じているアルベルトが次第にお互いの思いを強く感じて一体となっていく様がとても自然でした。 クリメントヴァが華奢で小柄なのでリフトなどは比較的楽なのだろうとは思いますが、クリメントヴァの浮遊感を際立たせるムンタギロフのサポートは万全。 特にジゼルがアルベルトに腰を支えられて片足で横に素早く移動していくシーンは地面すれすれをすうっと滑って流れて行くようで見事でした。 
ムンタギロフはアントルシャやグランジュテの跳躍が高く、回転も軸がしっかりしていて全くぶれずに音楽をしっかりと使い切ってきれいに止まっていました。 回転といえば、ヴァリエーションもブリゼやアントルシャではなく珍しいザンレールでした。 菅野さんはブリゼだったのでここはダンサーの自由なのですね。 
夜明けの別れのシーン、ジゼルは倒れているアルベルトを抱き起こし、愛おしそうに頬ずりをする。 アルベルトを守り抜いた安堵の笑みを浮かべていたジゼルが、アルベルトを残しお墓に消えていく時には永遠の別れの悲しさにひたすら耐えているようだったのが切なかったです。  

時にドラマティック、時に慈愛に溢れた音色だった井田勝大さんと東響の演奏も素晴らしかったです。 バレエ公演でこれだけ良い演奏を聞いたのも久しぶりでした。




ジゼル:ダリア・クリメントヴァ
アルベルト:ワディム・ムンタギロフ
ミルタ:堀口 純
ハンス:古川和則
クールランド公爵:マイレン・トレウバエフ
バチルド:楠元郁子
ウィルフリード:輪島拓也
ベルタ:堀岡美香
村人のパ・ド・ドゥ:寺田亜沙子 江本 拓
モンナ:丸尾孝子
ジュリマ:厚木三杏

指揮:井田勝大
管弦楽:東京交響楽団

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コメント
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ボクはねえ、バタバタしてたら一月末の公演のことはすっかり忘れちゃったの。でね、ジゼルは好きじゃないんだよなあと思ったんだけど、土曜日に見に行ったんだよ。
厚地さんのアルベルトは二幕でものすごく後悔してるって感じで、そんなら最初からたぶらかさないでちょうだいって思ったの。そこら辺のバランスって難しいよねえ。だけど、なんだかんだ言って、貴族と平民だから二人が結ばれることは絶対にないって思うんだよね。だからアルベルトにとっては単なるお遊びにすぎなかったっていうことで別にかまわないんだけどさあ。
それでボクは思ったんだけど、もしも雄大くんがアルベルトだったら、こんな若造にたぶらかされて悔しい!って、あっさり沼にボイしちゃう。だけど厚地さんだったらたぶらかされたいなあ。でもってね、一生、とりついてたたってやるの。耳に鉢巻きして、とんではねはね、ぴょこぴょこの刑だもん。
2013/03/01 00:00  | URL | シロジャビ #YvEbeA.k[ 編集]
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厚地さんの日は行かなかったので彼のアルベルトの雰囲気がわかって嬉しいです。
純愛にしろ遊びにしろ、自分の身分がばれると思っていなかったかもしれないし、そうだとしてもジゼルが死んでしまうとは思っていなかったでしょうから、2幕の登場シーンのアルベルトの様子は彼の人柄そのもののような気がします。
耳に鉢巻きして、とんではねはね、ぴょこぴょこの刑って可愛いくて見てみたいけど、シロジャビジゼルは恐いなぁぁ(笑)。 どんなミルタより恐いかも。 雄大アルベルト、今回なくて命拾いだったなぁ。
2013/03/01 23:39  | URL | M #il9tusdg[ 編集]
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だってジゼル的にはシンデレラみたいに玉の輿を狙ったわけじゃないから、身分を隠してたぶらかしたアルベルトは絶対に悪い奴だなんだもん! だけど厚地さんだったらもてあそばれたいなあ。だけどハンスとだったら、幸せな一生を送れたかも知れないのになあって思うの。
あらすじによると、おっかないおばちゃんが持っていたのは玉串じゃなくて、ローズマリーの枝なんだってね。玉串にしか見えなかったよ。
2013/03/02 02:06  | URL | シロジャビ #YvEbeA.k[ 編集]
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ジゼルが心臓が弱くなくてショックを受けても死には至らなかったら、月日が傷を癒して古川さんのような優しいハンスと結婚したら幸せになれたかも。 まぁ、ちょっと違うけどエフィがガーンと結婚したみたいに・・・。
キエフのジゼル、シドルスキーもアルベルトを踊ってくれれば良かったのにね。 シドルスキーベルトにもたぶらかされたいでしょ(笑)
さて、あらすじ読んでなかったのですが、確かにローズマリーって書いてありますね。 あの葉っぱの形は榊っぽかったですが、ミルタが持っているものはローズマリーとしている版は多いみたいです。 ローズマリーは愛や貞節の象徴とされているので・・・というような事をきいた事があります。
2013/03/02 23:02  | URL | M #il9tusdg[ 編集]
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ボクはローズマリーの方が美味しいからかと思った。だけど玉串の方が怖いかな。おっかないおばちゃんが手に持った枝がポキンと折れたくらいでのけぞるのはなんかマヌケだなって思ったけど。雷様がゴロゴロ鳴って、稲妻がぴかって光ったら怖いな。でね、ボクにはわかったの。ジゼルはお墓参りするなら昼間にしなさいってお話なんだよ。
2013/03/05 23:21  | URL | シロジャビ #YvEbeA.k[ 編集]
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ジゼルのアルベルトを思う強い思いに枝が折れちゃうんですよね。 おっかないおばちゃんが怯むシーンはけっこうそれぞれのミルタの性格が出ていて面白いシーンでもあるので、着目ポイントの一つです。 
稲妻じゃないけど、新国の鬼火はけっこう派手でしたね。
>ジゼルはお墓参りするなら昼間にしなさいってお話なんだよ。
ハンスに言ってあげられれば良かったのにね・・・。
2013/03/06 22:33  | URL | M #il9tusdg[ 編集]
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