11月15日マリインスキー「バヤデルカ」ロパートキナ&コルスンツェフ
2012/11/22(Thu)
バヤデルカ(マリインスキーはラ・バヤデールを使っているのですけど、今回はこれで通します)は最も好きなバレエ作品のうちの一つ。 そしてそのバヤデルカで、私にとっての最高のペアという主演キャスト二組のうちの一組の舞台、ずっとずっとずっと待ち焦がれた念願の舞台でした。

<第1幕1場>
マグダヴェアのグレゴリー・ポポフの美しい筋肉と高く滞空時間の長い軽やかな跳躍に目を見張る。 いかにもこういう筋肉系のダンサーのバネの効いた跳躍というのは数多く見ているけれど、ポポフの跳躍は柔らかくて美しい。 マグダヴェアにしては身長もあるので抑制がきいている踊りながら迫力もありました。
演技もしっかりしていて、特に大僧正に言い寄られるニキヤを心配そうに振り返りながらチラチラ見ていたのが印象深い。

ダニーラ@ソロルの登場。 や、もう、この瞬間から緩んでいく自分の顔筋をどうしたら良いのかわからず・・・。 マグダヴェアを呼ぶために手を打つ姿も勇猛果敢な戦士というよりは、やはりひたすら優しく温厚な・・・という感じですが、夜の逢瀬を待ちきれないという顔で神殿を見つめ、投げキスをするダニーラに眩暈がしそうで・・・。 

すでにニキヤへの思いで高揚しているような大僧正に呼ばれたニキヤが姿を現す。 大僧正がヴェールを外すタイミングがいつものあの旋律よりも早かったのがなんとなく悔やまれるのですが、形容しがたいほどに崇高で美しいロパートキナ。 二の腕のあまりの細さが気になりましたが、聖なる火の前での踊りの腕の表情の豊かさと美しさはため息もの。 大僧正を毅然と拒む表情はまるで女神が憤慨しているほどの神々しさで恐くもありましたが、マグダヴェアからソロルの伝言を伝えられた時に見せた少し恥じらい気味に輝いた表情は一人の幸せな女性の顔そのもの。

ソロルを待つニキヤの踊りでの少し切な気な表情から一転、ソロルとのPDDでは、しっとりと匂やかな微笑みを見せながら幸せをかみしめて大人の深い愛を歌い上げている感じでしたねぇ。 この二人だからどうしてもそう見えちゃうんですよね。 ニキヤぞっこんのソロルはもの凄いオーバーアクションで永遠の愛を誓ってましたしね。 踊りでは珍しくちょっと上手くいかなかったリフトがありましたが、ダニーラが力技で押し切りました。


<第1幕2場>
ゴージャスな美貌のコンダウーロワのガムザッティは気位が高く気の強そうな姫。 ドゥグマンタからこの男がお前の婚約者とソロルの肖像画を見せられ、まんざらではないようなリアクション。 ドゥグマンタがもう少し威厳のある風貌だったら完璧な父娘だったんだけどな。 マラさんのドゥグマンタが恋しい。

ソロル登場。
自分の座席の位置具合でガムザッティの事をそなたの婚約者だとラジャから告げられた時のソロルの表情が見えなかったのが残念。 背中は微妙にのけ反っていましたが、ダニーラ、どんな顔をしていたんだろう? 少しはガムザッティの美しさに心揺れたのかしら? マリインカ版では二人は幼い頃からの許婚の間柄なんですね。 

大好きなジャンペの踊り。 やはりこの踊りは難しいのだろうと見るたびに思うのですが、6人のコール・ドの踊りにばらつきがあったけれどクラスノクツカヤとニキーチナは良く踊ってました。
クラスノクツカヤがコール・ドの子のヴェールにひっかかりそうになって一瞬ヒヤッとしましたが、何事もなくて良かった。 やはり舞台が狭いよなぁ。

ニキヤが祝福の踊りのためにドゥグマンタの宮殿にやってくる。 拝みたくなるほどに厳かで神々しいロパートキナ。 ロパートキナ相手に緊張しているのが伝わってくるサポートの奴隷役のアンドレイ・エルマコフは長身ハンサムな、今売り出し中の若手とか。
ニキヤの祝福の踊りの間、目が離せなかったのはダニーラ@ソロル。 ニキヤに自分の姿を認められまいと必死になって彼女の死角へ死角へと場所を移動しなわがら身を隠し・・・それでも気がつくとニキヤに視線が止まってしまっている、舞台下手袖に消えて行くのだけは必死でこらえているようなそんなソロルでした。 とてもドゥグマンタに言い渡された事について考えている余裕などないような。

大僧正がドゥグマンタにニキヤとソロルは恋仲だと告げているのを聞いてしまったガムザッティがニキヤを呼び出す。
(その前に、同じくその話を聞いてしまったと思われるソロルが慌てて宮殿から飛び出して行く様が描かれるのですよね。 これにはちょっとびっくりしましたが、まさかダニーラバージョンじゃないだろうな?)
ソロルをめぐる女二人の互いの美と権力と愛の対決はすさまじい。
権力と身分を盾にどんどん高飛車になっていくガムザッティに対し、ソロルと誓い合った愛の強さを盾に奮い立つニキヤも一歩も譲らず、激しい感情に揺さぶられるまま思わずつかんだ短剣でガムザッティを刺そうとしてしまう。 愛を勝ち取っている女性としての自信に満ち溢れたロパートキナの凛とした表情。 吸い込まれそうな感覚を覚えるほどの瞳の強さ。 恋した相手が藩主の娘の許婚であると知って怯むどころか自分に剣をふりかざしたニキヤにプライドを傷つけられたガムザッティは激昂し、ニキヤを殺すと心に決める。コンダウーロワのメラメラとする怒りの炎が見えそうな迫力でした。


<第2幕>
ここはマールイやマカロワ版のような婚約式ではなく、ソロルとガムザッティの結婚式になるのですね。
ドゥグマンタとガムザッティはそれぞれ輿に乗って登場。 ドゥグマンタの輿が重そうだ・・・。 大きな象に乗って現れたソロルは、仕留めたトラをガムザッティに贈る。 思いっきりトラを踏みつけ、どうだ!といわんばかりのソロルですが、自棄になっているように見えなくもなく・・・。

扇を持った女の子たちもおうむの踊りの女の子たちも可憐でスタイルの良い子が揃っていて眼福。 座席がかなり前の方で舞台に近かったのでコール・ドの踊りは動きが少し雑なように見えてしまいましたが、少し遠ければそれほど気にならない程度だったのかな? 
壷の踊りのバトーエワ、オケの不調にもめげず愛らしく。
金の仏像のティモフェーエフも安定した踊り。
力強くエネルギッシュな太鼓の踊りとインドの踊り。  全身にブラウンメイクを施したワイルドなイオアンニシアンの踊りがかっこいい。 ソロ3人はハードな踊りを見事に踊り、レヴェランスも余裕の表情だったけれど、コール・ドの男の子たちはずいぶん息があがっていたなぁ。
パ・ダクシヨンの大・小4人ずつの女の子たちの踊りは、ポーズなどは綺麗だけれど腕や足の動きが些か乱暴な気も。 ただ、音楽がわりと早めだったので仕方がないのかもしれません。 ソロルが再び登場してからは全く見ていないのでその後はわからず。

ソロルとガムザッティの踊り。 ちょっと息が合わなかったところもありましたが、パートナーシップはまずまず。 コンダウーロワの踊りはイタリアンフェッテなどダイナミックで華やかでしたが、勢いにまかせているような感じも。 でもこれもまた音楽のテンポのせいかもしれません。   
端正だけれどダイナミックなダニーラのヴァリ。 ジャンプは余裕を持って飛び、アントルラッセの綺麗な後ろ足、伸びやかなマネージュでの美しい爪先も健在。 ファンの欲目であるかもしれないけれど、衰えは感じられずとても嬉しかった・・・というか幸せ♪
淡々とした表情にニキヤへの愛は封印したのかと思っていたソロルですが、不意に舞姫のポーズをとり、ニキヤへの思いを顕にする。 それを険しい顔で見咎めるガムザッティ。 最初から二人の間には結婚式らしい晴れやかな幸福感はなかったけれど早々に危うい雰囲気・・・。 

ドゥグマンタに呼ばれたニキヤが舞姫としての踊りを奉納する。 
この衣装だとその細さが痛々しいくらいなロパートキナ。 思わず立ち上がったソロルと視線を合わせたときの耐え難い辛さに顔がこわばる姿が痛ましい。
絶望感を隠し切れないニキヤの舞をじっと見つめるソロル。 もしドゥグマンタの屋敷で彼と大僧正の会話を聞いてしまったのだったら、この時何を思ってニキヤを見ていたのだろう? いや、やっぱり聞いてはいないよな・・・などと余計な事考えてしまい、ロパートキナの舞をじっくり見ていたいのに、上手のダニーラが気になってニキヤをあまり見られなかった。  
ソロルの脇で高慢な笑顔を見せながら時にドゥグマンタと話し平然とニキヤを見やるガムザッティ。 ソロルの心が自分にあるのかないのかを不安に感じている様子などみじんもなく、彼女自身がソロルを愛しているようにも見えない。 それでもニキヤが近づくと勝ち誇ったようにソロルに手をとらせ口付けさせようとする。 ソロルは運命には逆らえぬという感じでそれに応える。 手をとって口付けするまでにも時間がかかったけど、そのまま顔を上げられず固まってました。 迷いと後悔?? 
花かごを渡され柔らかい笑みを浮かべながら、ソロルへの変わらぬ愛を切々と訴えるように踊るニキヤが蛇にかまれる。 ロパートキナは息を吸い込むような声を漏らしていましたが、それほどまでに役になりきっていたのですね。 あなたが仕組んだのねとニキヤに糾弾されても顔色一つ変える事なく冷たい表情のままのガムザッティ。 怖いです。 ソロルがどう思おうが、たかが舞姫一人が命を落とすくらい別になんでもないというように冷ややかな表情でした。 
大僧正が解毒剤を差し出すも、生気のない目で力なく見るだけで受け取ろうとはしないニキヤ。 振り返ってソロルを見るなりその場に崩れ落ちてしまう。 ソロルと共に生きていけないのであれば生きる意味もないと静かに運命を受け入れ事切れてしまったニキヤ。 たまらず駆け寄りニキヤを抱きしめて嘆くソロル。 

― 幕 ―

ニキヤが蛇にかまれてからの展開がマールイと比べると少し性急な気もしました。 死を目前にしたニキヤとソロルの最後の時間が本当にあっけなかった。


しばらくして幕が上がる。 てっきりマールイ同様、ラストシーンのままソロルがニキヤを抱きしめているのだろうと思ったら、ニキヤ以外が全員揃ってカーテンコール。 もの凄い違和感を覚えたけれど、マリインスキーのバヤデルカは寺院の崩壊がなく、ニキヤとソロル以外の主要キャストの出演は2幕までとなるのでここしかないですね・・・。 そして最後にはニキヤ@ロパートキナも一緒にご挨拶。 う~~~ん、慣れないとなんだか変だ。


<第3幕>
悲痛な表情で部屋に走り込んで来たソロルの嘆きのジュテ。
ニキヤを失った苦しみに耐えられず打ちひしがれるソロルを慰めようとマグダヴェアが水タバコを差し出す。 眠りに落ちるソロルにニキヤの呼ぶ声が聞こえる。 ダニーラがベッドから起き上がり腕を差し伸べる姿は、まるで幽体離脱のようにソロルの魂が肉体から離れてニキヤを求めて彷徨い出したように見えました。

幻影たち。 シビックホールの狭いステージのせいなのか、坂が短く緩やかなのが残念だったけれど、スラッとした美しい32人の影たちが並び立つ様はさすがロシアで本当に美しく幻想的でした。 席がステージに近すぎてコール・ドの踊りが綺麗に見える位置ではないけれど、1,2幕を見て想像していたよりは揃っていて綺麗でした。 もう少し霊的で神秘的な雰囲気もあればなお素晴らしかったような気もしますが、それはロパートキナ一人の存在で十分だったのかもしれません。
影のトリオは、シリンキナもニキーチナもしっかり踊れていたとは思うけれど、まだそれだけかなぁ。 

ソロルのヴァリ。 出だしのジュテの連続もマネージュも伸びやかで美しく、ジュテが次第に速く高くなるのはニキヤとの再会への心の高まりのように感じました。 白いチュチュのロパートキナはまさに精霊という透明感に溢れている。  長い手足で描くクリアなラインは言いようもなく美しく、上手奥からの跳躍の高い連続ジュテも浮遊感が感じられて見事でした。 
二人の踊りはお互いを想う強い気持ちに引き寄せられた二つの魂の踊りなのですね。 二人の長い腕の優雅な動きが心の会話のようにも見えます。 この二人は音楽性の相性も良くて脚の運びや指先の動きまで同じようにきれいに音楽にシンクロするのですよね。 その眼差しに独特の表情と力を持っているロパートキナがダニーラを見つめ、優しい眼差しで応えるダニーラがそっと影のように寄り添う。 なんと麗しい。  
下手奥に後ろ向きにパ・ド・ブレで消えて行くニキヤをゆっくりと追って行くソロル。 ニキヤの魂に導かれ、この時ソロルも昇天して向こうの世界に渡ってしまったのだろうと感じました。 寺院の崩壊まで描かれるバージョンの方が好きな事には変わりないですが、マリインカバージョンの場合はこういう解釈もできるのだなと。 その後のニキヤが、愛する人がようやく自分のもとへ戻り心安らいでいるような笑みを浮かべていたのも印象的でした。 
ロパートキナはヴェールの踊りでは少しもたついたところもありましたが、その後はもちなおし天上の踊り。 ジュテ・アントルラッセの連続もコーダでの高速のピケピルエットとアテールのアラベスクでの後退も非常に美しかったです。 ダニーラのヴァリも引き続き素晴らしく、コーダでの高さがあり空気を切り裂くようなダイナミックな開脚ジャンプの連続はニキヤへの変わらぬ愛を表す渾身の踊りでした。


マールイのボヤルチコフ版「バヤデルカ」を心から愛する自分にとっては、物語の構成に馴染めなかったり、3幕の完結の仕方に若干物足りなさを感じたりもしたのですが、ロパートキナとコルスンツェフでの舞台は特別な宝物。 二人のバヤデルカを見られて本当に幸せでした。



ニキヤ(寺院の舞姫):ウリヤーナ・ロパートキナ
ドゥグマンタ(藩主):アンドレイ・ヤコヴレフ
ガムザッティ(藩主の娘):エカテリーナ・コンダウーロワ
ソロル(戦士):ダニーラ・コルスンツェフ
大僧正:ウラジーミル・ポノマリョフ
トロラグワ(戦士):イスロム・バイムラードフ
奴隷:アンドレイ・エルマコフ
マグダヴェヤ(托鉢僧):グリゴリー・ポポフ
アイヤ(ガムザッティの召使):エレーナ・バジェーノワ
ジャンペの踊り:ヴィクトリア・クラスノクツカヤ、アナスタシア・ニキーチナ
マヌー(壺の踊り):ナデジダ・バトーエワ
舞姫たち(バヤデルカ):アンナ・ラヴリネンコ、エレーナ・チミリ、
           エレーナ・フィルソーワ、スヴェトラーナ・イワノワ
グラン・パ・クラシック:ヴィクトリア・クラスノクツカヤ、ダリア・ヴァスネツォーワ
             ヴィクトリア・ブリリョーワ、ユリアナ・チェレシケヴィチ
             アンドレイ・エルマコフ、アンドレイ・ソロヴィヨフ
インドの踊り:アナスタシア・ペトゥシコーワ、カレン・イオアンニシアン
太鼓の踊り:オレグ・デムチェンコ
金の仏像:アレクセイ・ティモフェーエフ
精霊たち:マリーヤ・シリンキナ、アナスタシア・ニキーチナ、ダリア・ヴァスネツォーワ
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