12月2日 マリインスキー「オールスター・ガラ」
2012/12/08(Sat)
<第1部>
レニングラード・シンフォニー
音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ(交響曲第7番)、振付:イーゴリ・ベリスキー
娘:スヴェトラーナ・イワーノワ
青年:イーゴリ・コールプ
侵略者:ミハイル・ベルディチェフスキー


第1部 穏やかな幸せ
第2部 侵攻
第3部 レクイエム

プログラムの解説によれば、
作品で描かれているのは勝利を収めながらも帰還できなかった人々についての苦渋の物語で、61年の初演時、このテーマは子供の時に戦争(ドイツによるレニングラード包囲戦、41~44年)で家族を亡くしていた多くの若い出演者にとって身近なものだった。 
との事です。

ショスタコーヴィチの曲を使ったプロパガンダ色濃い作品で、振付や舞台美術なども時代を感じさせるものではあるけれど、少し思い気持ちになりながらもただただ舞台に見入ってしまいました。
このツアーお初のコルプ、あまり独自色を出さず、奇をてらう事無く普通に踊っている時が一番いい。 衣装も皆と同じ白いポロシャツ?にタイツだし。 爽快でダイナミックなジャンプ、不屈な精神が見て取れるような表情も良かった。  2部の最後か3部の冒頭で多分コルプのジャンプの前後で上手奥からエネルギッシュな跳躍でダイアゴナルに舞台を横切った男性ダンサー二人も見事でした。
2部、次第に音量が大きくなるスネアドラムを主体としたパーカッションの響きは侵攻軍が迫り来る様をおどろおどろしく表現し、茶色のTシャツ&タイツにデビルを象徴するような黒い兜姿の敵兵たちの踊りにも迫力があり不気味な恐さも感じられた。
そしてロパートキナからマトヴィエンコ、さらに変更となって娘役を演じたイワーノワがとても良かったです。
特に恋人や多くの人が次々に捕らえられ命を奪われていく凄惨な状況に恐れおののき悲しむ様、過酷な戦時下を生き抜いたラスト近くで、女の子たちが静かに多くの死者を悼むなか、失ったものの大きさを嘆き打ち震えながら怒りを顕にする様などがとても印象に残りました。 

すでに第二次世界大戦が終わって70年近く、東西の冷戦が終結して四半世紀近く経っていますが、だからこそ、この演目を上演する事は戦争の記憶を風化させない意味でも大切な事なのかもしれないですね。 ペテルブルグの若いダンサーが踊る事を通じて祖国を守ってくれた人々に思いを馳せ、舞台を見る観客も国を問わずまたそれぞれの戦争への意識を新たにする事ができるのですね。

余談ながら、
合わせて5時間半という、製作1974年のソ連映画「レニングラード攻防戦I」と77年製作「レニングラード攻防戦II」を友人から借りて見たことがあります。 900日近くにわたってドイツ軍に包囲されて兵糧攻めにされ、100万人以上のペテルブルグ市民が犠牲になった凄惨な状況、また母国を守るために戦線で戦う兵士たちの姿ををロシアの視点から描いた大作です。 ショスタコーヴィチの音楽を聴きダンサーの踊りを見ながら映画のシーンが断片的に思い出されました。


<第2部>
「アルレキナーダ」よりパ・ド・ドゥ
音楽:リッカルド・ドリゴ、振付:マリウス・プティパ
ナデジダ・バトーエワ、アレクセイ・ティモフェーエフ

バトーエワがとてもチャーミング。 フェッテで一度落ちてしまったのは惜しかったけれど、そのまま笑顔で最後まで愛らしく楽しげに演じていて良かったです。 ティモフェーエフは跳躍力があり、リズミカルな踊りの中にコミカルな味もうまく出していたと思います。 見ている時はもっとあれこれ思っていたのですけど、さら~~っと忘れてしまってもう思い出せない・・・。


グラン・パ・クラシック
音楽:ダニエル=フランソワ=エスプリ・オーベール、振付:ヴィクトル・グゾフスキー
アナスタシア・ニキーチナ、ティムール・アスケロフ

ニキーチナは白鳥など白いチュチュだと上半身が少しぽっちゃり見えたりもするのですが、足が長く綺麗で美人ダンサーなので、グラン・パの濃いロイヤルブルーのチュチュはすっきりと見えてとても映えます。 マリインスキーのガラでは過去にテリョーシキナの素晴らしいグラン・パを見ているので当然の事ながら満足はしませんが、彼女がまだコリフェという事を考えれば致し方ないのかなと思います。 アラベスクなどの静止のポーズは伸びやかでとても綺麗だし、無理にバランスをとってグラグラする事なく出来る事だけでさらっと纏めたのもかえって好感が持てました。 わりと押し出しの強そうなバレリーナなので、今回のツアーで踊った中では一番彼女に合っていたのではないかと思います。
アスケロフは悪くはなかったですが、腕の動きに神経が行き届いていなく、長い腕だけにもったいないです。 ニキーチナに合わせてもう少しきびきび踊ってもらった方が自分的には好みでした。


チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、振付:ジョージ・バランシン
マリーヤ・シリンキナ、ウラジーミル・シクリャローフ

辛口です。
客席からの盛大な拍手を思えば、とても良かったパフォーマンスなのでしょうが、あまり感心せず。
チャイパドってもっと爽やかで、二人の踊りが次から次へとよどみなく繰り広げられていくというイメージなのに、シクリャローフのあの気合の入れまくり方はなんだろう。 どうだどうだと言わんばかりの自己満足&陶酔丸出しで、純粋に踊る事を楽しんでいるダンサーの幸福感でこちらの心を満たしてくれるなんて事はこれっぽっちもない(完璧に去年のルグリガラのフォーゲルと比べてますが、個人の感想だしお許しあれ)。 
シリンキナは上手いし安心して見ていられますが、この演目にしては踊りが柔らかすぎるかな? 好みとしてはもう少しメリハリをつけて欲しかった。 
ただ、音楽のテンポももうちょっと速い方がと思ったところもありましたからね・・・。


海賊
音楽:アドルフ・アダン(リッカルド・ドリゴ)、振付:マリウス・プティパ
オクサーナ・スコーリク、アンドレイ・エルマコフ

今回の来日でスコーリクを見るのはこれが初めてですが、キーロフの腕と脚を持つ白鳥向きのバレリーナですね。 もうちょっと気持ちに余裕をもって踊れるといいなぁと思いますが、長身のエルマコフとの並びもとてもいいですねぇ。 メドーラのヴァリをイタリアン・フェッテで見たのは初めてのような気がしますが、これも華があっていいですね。 エルマコフは体躯が好みなので今回の若手メンバーの中では一番のお気に入り。 爽やかな雰囲気に高い跳躍と空中でのキレのある動きはアスリートっぽくて、なんとなくゼレの風(笑)を感じます。 最近はロパートキナと踊る事も多いようですが、この先主役を踊れる男性ダンサーとしてうま~く育つといいなと思います。
そういえば、現時点ではエルマコフと言えばズヴェーレフ(キャラかぶりまくり)なズヴェーレフ、ガラで見られず残念でした。 


ビギニング
音楽:エリック・サティ(グノシエンヌ第1番)、振付:ウラジーミル・ワルナワ
イーゴリ・コールプ

ルネ・マグリットの「人の子」という絵画からインスピレーションを得た作品で今年の6月12日にミハイロフスキー劇場のガラで初演したばかりとの事ですが、コルプの奇才の世界も、さすがにパクリタルの「白鳥」を初めて見た時のような驚きや斬新さもないので、それほど強烈な印象はないです。 サティのこのメロディーはすごくコルプに合っているような気はするんですけどね。 
振付のウラジーミル・ワルナワは、古典からコテンテンポラリー、ジャズに至るまで既成の枠にとらわれない柔軟なスタイルが特徴の1988年生まれの新進気鋭の振付家及びダンサーとの事です。


ディアナとアクテオン
音楽:チェーザレ・プーニ、振付:アグレッピナ・ワガノワ
エレーナ・エフセーエワ、キム・キミン

さぞかしこの演目が合うだろうと思っていたエフセーエワでしたが、もちろん悪くはないけれど彼女にしては思い切りがよくないというか、時々持ち前の切れ味の良さとエレガンスの間でバランスがとれなくて踊りが萎縮しているような気がしなくもなく。 それでもサニーの笑顔を見るとこちらの気持ちも明るくなります。 年齢的にも30歳を前にして、これから彼女がどんな風に変化していくのか楽しみですが、まずは日本バレエ協会公演のオデット&オディールに期待!
キム・キミン(なぜかフルネームになる・・)の高くて滞空時間の長い跳躍に目を見張る。 手足も長く、かなり身体能力の高いダンサーなのだろうけれど、体つきがあまりに華奢なため、アクテオンの衣装やポーズがあまり様にならないのが惜しいと言えば惜しい。 


<第3部>
「パキータ」よりグラン・パ
音楽:ルードヴィヒ・ミンクス、振付:マリウス・プティパ
[ソリスト] ウリヤーナ・ロパートキナ、ダニーラ・コルスンツェフ
[ヴァリエーション] ダリア・ヴァスネツォーワ、マリーヤ・シリンキナ、スヴェトラーナ・イワーノワ、アナスタシア・ニキーチナ

同じくコルスンツェフがパートナー、そして豪華なソリストが揃った2006年のロパートキナ・ガラでこれ以上の上演はあり得ないだろうという素晴らしいパキータを見ているだけに、さほど期待はしていませんでした。
でも、やはり凛とした表情で高雅な佇まいのロパートキナが登場すると一瞬にしてその世界に惹き込まれます。 若い娘パキータの結婚式というよりは、在位xx年の女王の式典という風格です。 パキータの振りでは腕を後ろから前に回すあの独特な振りがとても好きなのですが、その腕の振り、ステップ、決めのポーズのどれを取っても本当に美しい。
リュシアンのコルスンツェフは正直ちょっと踊りが重かったような気がします。 体も3年前よりは肉がついてるし・・・、踊りはバヤデルカの日が一番体が動いていて良かったかな。 でも古典演目でロパートキナの芸術性を損なう事無く、エレガントな身のこなしと自然体の確実なサポートで彼女と同じ世界を作り出せるのはダニーラならではなのですよね。 どんな時でも最高に美しいあの腕。 ファンですから勝手に言わせてもらってます(笑)。 そして時々見つめ合って微笑みをかわす二人のなんと絵になる事!!
マリインカのパキータはマールイのまだ終わりじゃないよ!と違ってあっさりと終わってしまうのがなんとも淋しかったのですが、ツアー最終日のガラのおおとりで、格調高い舞台をみせてもらって幸せでした。

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