世界バレエフェスティバルAプロ 8月14日の感想
2012/08/17(Fri)
東京文化会館 : 1階6列9番 


<第1部>


「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
ポリーナ・セミオノワ フリーデマン・フォーゲル

フォーゲルはオネーギンよりこちらの方が断然今の彼のダンサーとしての素晴らしさを発揮できると思います。 恵まれたラインの美しさもたっぷり堪能できるし、彼の開脚跳躍は脚を開く瞬間からして本当に綺麗なんですよねぇ。 また、大柄で筋肉質なポリーナちゃんをリフトするのはけっこう大変だと思うのですが、サポートにも安定感があって破綻なく。 ただ、昨年夏のルグリ公演の踊りの方が美しさとキラキラ度は高かったです。 
ポリーナちゃんは、チャイパドってこんなに動きが止まったかな?と感じた箇所がいくつかありましたが、楽しそうに踊っていて良かったです。 
ん~~、でも男性が自分の前で片手をアン・オーにあげた女性をくるんくるんと優雅に回すところ(なぜかここがとっても好き)が変更されていて悲しかったわ~~。


「パルジファル」  
振付:モーリス・ベジャール/音楽:リヒャルト・ワーグナー
カテリーナ・シャルキナ オスカー・シャコン

2010年のベジャール・バレエ団の「80分間世界一周」を見た時に一番気に入った作品でキャストも同じ。 舞台前方に置かれたライトに照らされ、ダンサーの後ろの白いスクリーンに映し出される彼らのシルエットが巨大になったり小さくなったりしてパ・ド・カトルにも見えるようなのがやはり印象的。 二人の踊りも息が合っていて見応えがありました。


「タイス」(「マ・パヴロワ」より)
振付:ローラン・プティ/音楽:ジュール・マスネ
上野水香 マシュー・ゴールディング

マシューはほとんどサポート要員でもったいないです。
水香ちゃんはポーズそのものは悪くないけれど、音楽のニュアンスを伝え切れていないというか・・・。 彼女にはバナと踊った「クリアチュア」みたいな比較的アップテンポなコンテの方が合っているのでしょうね。


「エフィ」
振付:マルコ・ゲッケ/音楽:ジョニー・キャッシュ
マライン・ラドメーカー

また半裸で背中の筋肉を見せる痙攣系か・・・と思ってしまいましたよ。 「モペイ」はわりと短いし踊りとしてそれほどつまらなくもなく最後の演出が好きだったりするけど、こちらはわざわざクラシックバレエの踊り手が踊らなきゃいけない作品なんだろうか、本当に踊りたいんだろうかと、まだ終わらないのかなぁと退屈しながらひたすら疑問に感じてました。 
口笛は上手かったけどね・・・。


「ライモンダ」
振付:マリウス・プティパ/音楽:アレクサンドル・グラズノフ
タマラ・ロホ スティーヴン・マックレー

出てきた二人の衣装にびっくり。 マックレーは蝶ネクタイに丈の短いタキシードに黒タイツ。 ロホはマックレーの衣装に合わせイヴニングを意識したようにも思えるロイヤルブルーでサテンっぽい生地の少し長めのチュチュ。
演目が「ライモンダ」としか書かれていないのでどのシーンを踊るのかと思っていましたが、バレエフェス用に3幕のライモンダとジャンのハイライトみたいな感じでアレンジしてあり、見せ場たっぷりでした。
ドンキでも二人のユニゾンが揃っていてとても美しかったのですが、音楽性に優れたこの二人、ライモンダでもその素晴らしさを遺憾なく発揮。 
ロホは女王然とした気品を漂わせながら一つ一つのステップが丁寧で、心をこめて踊っているように見えました。 安定感は抜群だし、最後に見せてくれた3回転も入れたフェッテや高速シェネで会場を盛り上げてくれました。
マックレーの踊りは本当にエレガント。 どうだとばかりにテクニックを見せ付けられるようなパでも自然な流れの中でさらっとノーブルにこなしてしまうのがなんとも言えず魅力的に映ります。 マネージュもザンレールも他のパと組み合わされていて難易度がもの凄く高そうなのに涼しい顔して・・・。 ラストのロホとの高速シェネ合戦も素晴らしかった。
バレエフェスという場でのショーマンシップを感じさせながらも、あくまでも格調高く、バレエ芸術の美しさ、素晴らしさを改めて感じさせてくれた二人に心から感謝です。 



<第2部>



「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー

Aプロのクランコ版のセットでは前に降ろしていた階段がこちらでは横に降ろしてあった(笑)。 やっぱりこのパ・ド・ドゥだけを見るならロミオの熱い思いが迸るマクミラン版の方が私は好み。
コジョカルは、恥じらい、喜び、ときめきとロミオに恋した女の子を愛らしく演じていました。 踊りもしなやか。 コボーは踊りは上手いけれど、コンパクトに纏めすぎた気も。 体を伸ばしきってたっぷり見せるランベルセや跳躍などが好きな自分にはちょっと物足りなかったなぁ。 ロミオのそんなぎりぎりのラインがどうしようもなく高揚した想いを伝えていると思うのですよね。
ま、だからといって二人の惹かれあう気持ちが薄いわけではないのだけれど、生まれて初めての真剣な恋、初めて知った喜びに戸惑いながらも舞い上がる初々しい二人というより、落ち着いた幸せなカップルに見えてしまいました・・・。 


「ウィズアウト・ワーズ」
振付:ナチョ・ドゥアト/音楽:フランツ・シューベルト
オレシア・ノヴィコワ レオニード・サラファーノフ

サラファーノフの肢体の動きは柔らかく美しい。 ノヴィコワも丁寧にサラファーノフに合わせていて、後ろからひょこっと顔だけ出すところなどとても愛らしくてほのぼのした感じ。 
本来の8人4組、30分の作品だとどんなかんじなのでしょうね? サラファーノフが出演しているミハイロフスキー劇場のプロモーションビデオで少しだけわかりますが・・・。
http://www.mikhailovsky.ru/en/repertoir/without-words-ballet.html


「椿姫」より第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
アニエス・ルテステュ ステファン・ビュリョン

かなり辛口になっちゃいます。
アニエスはもともと翳りのある美人なのでマルグリットは合うだろうなと思っていたのですが、黒いマントに身を包み立ちすくんでいる彼女は、ちょっと大柄すぎるせいなのか病躯をおしてというようには感じられなかった。 ビュリョンは見た目は美しく繊細そうなアルマンなのだけれど感情の変化が読みとりにくく、アニエスのマルグリットに対峙できていないような。 相手を突き放し、辛い思いに耐え苦しむ毎日を送ってきていても互いを目の前にすれば、体の芯から湧き上がる愛しさを押さえる事ができないという激しい心の揺れがいまいち薄かったなぁ。
それ以上に気になったのは後半のリフト。 二人の動きが重くスピード感に欠けて心の叫びが聞えず物足りなさを感じました。


「ラ・シルフィード」第2幕より
振付:ピエール・ラコット/音楽:ジャン=マドレーヌ・シュナイツホーファー
エフゲーニャ・オブラスツォーワ マチュー・ガニオ

綿菓子のようにスウィートなオブラスツォーワにぴったりのシルフィード。 ふわんとした白のロマンティックチュチュがまた一層愛らしさを引き立てている。 
マチューは隋分久しぶりに見たような気がするけれど、踊りがとても安定してきてさすがのプレゼンス。 赤いタータンチェックのキルトも良くお似合いでした。
第2部最後の演目として、森のセットと東バのコール・ドがついた贅沢な上演だったのですが、めりはりのないまったりしたラコット版というのが惜しかったなあ・・・。
 

 
<第3部>



「マーラー交響曲第5番」より"アダージェット" 
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:グスタフ・マーラー
エレーヌ・ブシェ ティアゴ・ボァディン

一瞬にしてエレーヌ・ブシェの世界に引き込まれたような気がします。 たぶん、自分がアダージェットから感じ取るイメージと彼女の表現や音取りがぴたりと合っていたからだと思うのですが。 ノイマイヤーがこの曲で表現したかった事と曲が持つイメージを完璧に一体化させて彼女の体で語りかけているように感じました。 
Aプロではロングスカートだったから分からなかったけれど、エレーヌ・ブシェは腰高で手足の長い抜群のプロポーションの持ち主なんですね。 きっとクラシック作品を踊っても素晴らしいのだろうなと思わせるムーヴメントの美しさにうっとりでした。
ブシェに目が釘付けだったせいで、ボァディンの印象は薄いのですが、息も合っていて同じ空気を作り出せる人だったと。


「シェエラザード」 
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ
ポリーナ・セミオノワ イーゴリ・ゼレンスキー

アラビアンナイトというよりマイクロネシアンナイトととでもいいたいようなポリーナちゃん、なんて健康的なゾベイダなんだ・・・。 ブラにハーレムパンツで腰をくねらせれば雰囲気はそれなりだけれど、そそられるような妖艶さは感じないんだよね~~。 ま、今踊らなくても、キャリアの終盤に踊ってみてもいいわけですからね、乞う期待!って事で!!
ゾベイダがそんなだから、シャリアール王がハーレムパンツ穿いているのか?というくらい偉そうな(笑)ゼレの金の奴隷も理性を保ったままお仕事してます・・・って感じですかね? 海賊の時よりも体が軽くよく動いているようだし、しっかりした回転も跳躍も綺麗でした♪ ともかく、このフェスでゼレが見られただけでハッピーです。


「アザー・ダンス」
振付:ジェローム・ロビンズ/音楽:フレデリック・ショパン
オーレリ・デュポン ジョシュア・オファルト

20分近かったかなぁ? でも飽きる事はなかったです。
オーレリは高雅な白百合のような美しさ。 小粋でエレガントなダンスも素晴らしかったです。 また時折見せるお茶目な表情も魅力的で、曲の合間にオーレリに何やら言葉をかけられているピアニストの男性は役得だなぁなどと思ってしまいました。
ジョシュアも端正な踊りが美しく、ブーツ姿もよく似合う美脚な彼は王子姿もさぞに様になるだろうなと。

  
「海賊」
振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ
ナターリヤ・オシポワ イワン・ワシーリエフ

普通のメドーラとアリには見えなかったけれど、彼ららしい圧巻のパフォーマンスでした。 
ワシーリエフのあっけに取られるほど高い跳躍と永遠に回っていられそうな軸ぶれのない綺麗な回転+旺盛なサービス精神にはひたすら感心。 オシポワはチュチュではなくて、膝丈ほどの淡いパープルのスリップドレス。 ちょっとオーレリのドレスと色とデザインがかぶっちゃった感があるけど可愛らしかった。 あれで、顔芸なしで踊ってくれればもっといいんだけど・・・。 ヴァリはポリーナちゃんがガムザッティだったからどうするのかなと思っていたら、意表をついてメドーラの花園のヴァリを持ってきました。 あれだったらチュチュの方がいいかもしれないけどな~。



<第4部>



「ル・パルク」
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ/音楽:ヴォルフガング・A.モーツァルト
ディアナ・ヴィシニョーワ  ウラジーミル・マラーホフ

長い黒髪を降ろして白のロングシャツをスポンと被っただけのヴィシがとても可愛らしく見えてしまった。 もっと本能のままにマラーホフ演じる男に絡んでくるのかと思ったけれど、意外にも官能性が薄い。 マラーホフもヴィシ演じる女に欲望をそそられているようには見えず、二人の関係はエロティシズムの解放というより精神性が高いというか魂の呼応のように見えました。 


「コール・ペルドゥート」  
振付:ナチョ・ドゥアト/音楽:マリア・デル・マール・ボネット
スヴェトラーナ・ザハロワ アンドレイ・メルクーリエフ

中東っぽい音楽に自分の中のテンションが上がる(笑)。 好きなんですよね~、この独特のリズムと裏悲しい音と妙な緊張感が。 
音楽を全身で聞き、何かちょっと憑かれたように切れよくスピーディーに踊るザハロワが素晴らしかったです。 身体表現の美しさはため息もの。 スレンダーな彼女の美しいラインを損ねることのないロングスカートとロングスリーブの衣装も効果的で彼女によく似合っていた。
メルクーリエフはAプロ同様あまり見せ場がないというのがとても残念だったけれど、ザハロワからの絶大な信頼も納得の安定感。
実はこの作品、家に帰ってプログラムを読み返すまでナチョ作品と気づかなかったのですが、ザハロワのおかげかもしれないけれど、これは好きだなと・・・。


「ジュエルズ」より"ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
ウリヤーナ・ロパートキナ マルセロ・ゴメス

ロパートキナのダイヤモンドを見るのは2006年のマリインカのロパートキナガラ以来。 ロパートキナとダニーラが踊ったジュエルズの「ダイヤモンド」はあれ以来、自分にとって特別な演目となり、ロパートキナ以外のダイヤモンドはダイヤモンドではない・・とさえ思うようになってしまいました。
下手奥から姿を現すロパートキナ。 まるで天界から女神が降り立ったような神々しさ。 決して触れてはならない神聖でミステリアスな雰囲気は変らないのだけれど、柔らかなオーラを纏い、パートナーのゴメスに向ける眼差しも温かい。 それにしても何と完璧なフォルムなのだろう。 細く長い手足が描き出す軌跡は繊細で美しさの極み。 ロパートキナ自身があのチャイコフスキーの旋律を生み出しているのではないかと思わせるほどの音楽性。チャイコフスキーの旋律をあれだけ美しく纏える人も他にいないだろうな。


「オネーギン」より第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
マリア・アイシュヴァルト マニュエル・ルグリ

揺さぶられる思いに流されそうになりながらも必死で理性を呼び起こし想いを断ち切るタチアーナと、押さえられなくなった激しい恋心をタチアーナにぶつけ彼女の心を求めようとするオネーギン。 あまりにも切ない二人。
とても素晴らしかったです。 素晴らしかったのですが、わりと短い間にこの二人のオネーギンを見すぎて見慣れてしまったかなぁという思いもあります。 昨年のルグリガラの初回の上演に自分でも驚くほど感動してしまい、それが大きすぎたのか、それ以降はどうしてもそれを超えられないでいる私。


「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
ヤーナ・サレンコ ダニール・シムキン

Aプロではトップバッターを務め、Bプロではトリを飾るフレッシュな二人。 とはいえ、サレンコももうフェスの常連なんですよね。
二人とも派手さはないけれど、手堅い踊りながら要所にスーパーテクニックを織り込んで会場を盛り上げていました。



フィナーレのカーテンコールの後は最終日恒例のてぬぐい投げ。 ダンサーたちも皆楽しそうですねぇ~~。 私はサブセンの6列目だったのですが、残念ながら飛んで来ませんでした。 大半がもう少し前の席までしか届いていませんでしたが(球技に勤しんで来た人なんていないでしょうしねぇ)、肩の強い男性でけっこう飛ばしてたダンサーがいたみたいでした。 誰だろう? 野球が好きなマシューとか?? 
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