小林紀子バレエ・シアター「アナスタシア」 8月19日の感想(1)
2012/08/25(Sat)
[芸術監督] 小林紀子
[振付] ケネス・マクミラン
[監修] デボラ・マクミラン
[ステイジド・バイ] ジュリー・リンコン
[音楽] ピョートル・チャイコフスキー/ボフスラフ・マルティヌー
[美術] ボブ・クロウリー
[衣装・装置提供] ロイヤル・オペラハウス


以下、大雑把なあらすじ&思いつくままの感想ですが、簡単なメモは取っていたものの、現在残っている記憶に頼っている部分も多く、順番など違っているかもしれませんがお許しを。


冒頭にニコライ二世一家の記録フィルムが映し出される。 平穏な生活を送っている頃の映像で、まだ少女だったアナスタシアをズームアップしたところで幕が開き、物語が始まる。

<1幕> 皇帝所有の船スタンダルト号上にて

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皇帝、皇后の他に海軍将校や皇后アレキサンドラの友人アンナ・ヴィルボヴァ、ラスプーチンの姿が。
オルガ、タチアナ、マリアの3姉妹、軍服姿の将校3人の踊りに続き、白い帽子を被ったアナスタシアがローラースケートで登場する。 快活な少女アナスタシアの描写にしてもローラースケートとは奇抜(マールイのロミジュリでジュリエットが縄跳びで登場みたいな・・・)と思ったのですが、3幕の冒頭のフィルムでは当時の若い貴族たちが実際にローラースケートを楽しんでいる姿が映し出されました。 

1幕では、アナスタシアの幸せな少女時代という事で、特にドラマティックな展開はありません。 幸福な皇帝一家の心配事は血友病を患っている皇太子アレクセイで、船上の楽しいひと時にあっても常に皆がアレクセイを気遣っている。 ゆえにけっこうインパクトがあったのは、はしゃいで走り回っていた際に転倒して動けなくなったアレクセイをラスプーチンが自身の祈祷能力で治癒させて周囲から注目を浴び皇帝夫妻の信頼を得るシーン。  ラスプーチンの存在を印象付けるためのワンシーンと言ってもいいのかな?

一方ダンスシーンは驚くほど盛りだくさんで、チャイコフスキー交響曲第1番に乗ってアナスタシア、姉妹、将校たち、皇后、皇帝とあらゆる人が踊りまくります。 細かい脚捌きの多いマクミラン特有の振付で、トロワ、カトル、ソロ、デュオと次々とダンスが披露される。 軍服を着た3人の将校(後で中尾さんが加わり4人でも踊る)ではアントニーノ・ステラのゆったりと優雅な身のこなしが目を惹いた。 彼はザハロワが客演したスカラ座の「白鳥の湖」で道化を踊っているのだけれど、その時道化にしてはやけにノーブルだなぁと思った事があったのでした。 奥村さんともう一人の踊りも良かったです。 別の3人の水着姿の将校の踊りなんてのもありました。 半そでと短パンの繋ぎで縞々のむかしむか~しの水着です。 いや、あの人たち、あんな格好で出て来て船の甲板から海に飛び込むだけだったらかわいそうだよな~なんて余計な事を思っていたものだから、踊りがあって良かった良かった(笑)。 ただ、3人の踊り、4人の踊りなど似たようなフォーメーションでの踊りが多く、単調といえば単調。
それでも島添さんはマノン同様、初めての作品とは思えない雄弁な踊りとリフトでの表現の上手さで、マクミランの舞踊言語をしっかり自分のものとしてしまっているのだと思わせます。 
アレキサンドラ役の萱嶋さん(ファンです)はともかく演技の上手いダンサーで、淑女を演じさせたらもう絶品というイメージなのですが、今回も子供たちに細やかな愛情を注ぐ母親を好演。 演技だけでなくソロやアナスタシアとのダンスもしっとりと優雅で魅力的。

人々が思い思いに楽しんでいるところへ、第一次世界大戦勃発の知らせが入り、ニコライ二世は別れを惜しむようにアレキサンドラとダンスを踊り戦地に赴く。 ニコライ二世役の澤田さんは軍服がとてもサマになっていて一貫して温厚な人物という印象。 



<2幕> ペトログラード、1917年3月

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生活に困窮している市民が押し寄せる露店の商品はあっという間になくなってしまう。 亡くなった家族を荷車に乗せて運び、悲しみと怒りを顕わにする人たち。 彼らがその中を覗こうとした高い塀の向こう側、幕が上がるとそこにはアナスタシアの社交界デビューのための舞踏会という煌びやかな別世界が広がる。 
宮殿の舞踏会の広間という事で背景画などもコージャスだけれど、チラシにも使われている斜めに吊られた3つのシャンデリアが一際目を引きます。

貴族たちのダンスに続きアナスタシアと将校(中尾さん)のPDD。 2幕ではチャイコフスキーの交響曲第3番が使われているのですが、3番といえば自分的にはダイヤモンドなので、音符を大雑把に拾ったような振付にかなり違和感を覚えました。  
続いてマチルダ・クシェシンスカヤとパートナー(アントニーノ・ステラ)のPDD。 高橋さんの踊りは技術的にややいっぱいいっぱいだったためか、かつて皇帝に愛されていた女としての尊大さや皇后に対する敵対心などを踊りで表現する余裕がなく、皇帝の隣で不機嫌そうにしているアレキサンドラが逆に不自然に見えてしまった。 
二人の踊りが終わるや真っ先に席を立ったアレキサンドラに続くようにして全員が一旦広間を後にする。

不愉快な事など何もなかったかのように穏やかな表情で再び広間に戻って来た皇帝夫妻にラスプーチンが近づき、3楽章のゆったりと哀調を帯びた調べにのせ、3人が妖しくぎこちない雰囲気で踊る。 クシェシンスカヤが加わりさらに静かな緊張感が増したところへ彼女のパートナーが加わり5人の踊りとなる。 そしてその複雑な男女関係の一部始終を広間の入り口で目の当たりにしてしまうアナスタシア。 ただ、そこまでの人物関係の描写が不十分なので、入り組んだ大人の男女関係もアナスタシアの動揺もマクミランが意図したほどには伝わってこない。 ラスプーチンも皇帝夫妻の信頼をいい事に権勢を振るった怪人物というイメージには遠く、無表情に幾分ミステリアスな雰囲気を漂わせていただけだったのでいま一つこの役の重要性が感じ取れなかった。

再び広間に集まった人々は大団円さながらに晴れやかに踊り出すが(音楽は3番の終楽章が使われる。)、そこへ蜂起した革命軍がなだれ込み容赦なく貴族たちに銃弾を浴びせる。

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