シュツットガルト・バレエ団「白鳥の湖」 6月5日の感想
2012/06/14(Thu)
東京文化会館 : 1階23列15番

<第1幕>
のどかな雰囲気漂う村人たちの憩いの場に人々が続々と集まってくる。
王子登場の音楽で上手奥から若い男性ダンサーたちが次々に現れるのにまず面食らう。 ベンノと従者たちのようですが王子はいつ出てくるの?  ベンノのウィリアム・ムーア(プリンシパルなのに、なぜかプログラムに紹介がない)はハンサムという事で期待していたのに(笑)、付け揉み上げと髭のせいで素顔があまり分からず残念。 で、白鳥の湖ではみかけないちょっと老年のおばちゃんに?と思ったのですが、この人が家政婦なんですね? 家庭教師と二人、良い味を出していました。 こういう年代の人が入るだけで群衆シーンに落ち着きと深みが出るような気がします。 そこに全身をマントで隠した妖しい手相見が現れて、てきとーな占いで皆をからかったと思えば、マントを脱ぎ捨てて”ジャーン、僕はここだよぉ”、と屈託の無い笑顔でフォーゲル王子の登場。 サラサラ金髪をなびかせ爽やかな笑顔で道化の音楽に乗って弾むように踊るキラキラ王子様は、まぁ、なんつーか、まんまフォーゲルだよ・・・(笑)。 身体のコンディションも良さそうな感じ。 でも、祭典会員席なのにこの日は23列目で、フォーゲルが遠いよぉぉぉ(泣)
ベンノと従者の踊りはこの前だったか後だったか? お決まりのようなザンレール合戦もあり、皆けっこう踊れていましたが、やはり真ん中のムーアが良かったです。 

王子と娘たちのパ・ド・シス。 美しく上品なレースの衣装のせいか、町娘というよりは王子が連れてきた貴族の娘たちに見える。 ここまでも音楽はよくあるバージョンとは違う使い方をしていましたが、セルゲイエフ版では使われないパ・ド・シスを使ったここが、特定の曲に特定の振付のイメージが強かったりするせいか一番違和感が強かったかな? 王子が気の合った仲間たちと楽しく過ごすというシチュエーションとしては暗いし、不吉なメロディーだし・・。 王子を待つ悲劇の暗示なのかもしれませんが、ダンサーたちはにこやかな笑顔で踊っているのでやはりちぐはぐ感が否めず。 女の子だけのデュオやソロや、踊りが満載で楽しいというより、旋律から受けるイメージに合っていないと感じた振付の踊りは長くて退屈だった。 それでもソロを踊った子は上手いなぁと思ったら、プリンシパルのヒョ=ジュン・カンなんですね。
フォーゲルとPDDを踊ったカーチャ・ヴォンシュも手堅い踊り。 フォーゲルの踊りは最初からとても安定していて良かったけれど、コーダでの高い跳躍開脚の速さと柔らかさと美しさには思わず息をのむ。 回転も悪くはなかったけれど、ともかくフォーゲルは跳躍系の脚がとても美しい。 

王妃の登場。 浮かれ騒いでいる王子に小言を並べる王妃。 ゴブレットを後ろ手に隠し、軽く首を振りながら後ずさりし、さり気なくお付きの者に渡し、「ほら、何も持っていませんよ」と両手のひらを見せる王子。 後ずさりしていくフォーゲルの表情が大きな犬に睨まれた子犬のようで・・・、この何気ないシーンがなぜだかすごく目に焼きついています。
こんな所までわざわざ小姓たちに候補の姫たちの肖像画を持ってこさせ 明日の舞踏会でこの中から花嫁を選べというのも・・・。 王妃としては今日は城でゆっくりお見合い写真を見せながら明日の心得でも説きたかったところなのでしょうね。 そんなわけだから去り際、王妃は王子に手を取らせるけれど口付けはさせないで思い切り払いのけちゃうのよね。 このような場所にいる者の口付けなど受けませんよって事なんですかね? かなりご機嫌悪いようですね。(ただ、翌日のマッキーには口付けさせてから払いのけていた・笑)。

いきなり現実を突きつけられて憂鬱な王子。 踊りの輪から一人離れて木陰に佇む王子を残し人々は家路につく。 王子は暮れ行く空に見つけた白鳥の群れを追って湖へ。
姿が見えなくなった王子を心配して、ベンノと従者たち、家政婦や村娘が戻ってくる。 それぞれが手に持っているランプの暖色系の淡い光が綺麗でとても美しい情景でした。


<第2幕>
ロットバルトは西洋兜に長いマント。 どちらかといえば、2幕が見知らぬ騎士で3幕が邪悪な魔術師な雰囲気。
アマトリアンのオデット。 白塗りに目元が黒い化粧が生気のない生霊のようで、王子が一目で恋に落ちるほど神秘的でも魅力的でもないんだけどな。
ロットバルトに一旦二人が引き離されたあと、白鳥たちが出てくる。 暗い照明の下、湖をバックに水辺に生い茂る草陰から出てくるように見えてなかなか良かった。
その群れの中に王子を追いかけてきたベンノが飛び込んでしまい白鳥たちに囲まれる。 驚きうろたえるベンノはウィリたちに囲まれるヒラリオンのようで、このクランコ版白鳥では時折ジゼルの舞台がよぎります。
ベンノに弓で狙われた白鳥たちが身を寄せ合うようにして恐がっていると、2羽の白鳥が群れを庇いその前に立ちはだかる。 それでも弓を構え続けるベンノと従者たちの前にオデットが姿を現し、まさにベンノが弓を射ようとしたその瞬間、慌てて駆けよった王子がベンノを止める。  
このシーンが2幕では一番印象に残っているなぁ。 フォーゲルの走りこんで来る速さとタイミングとそこまでの緊張感がやけにドラマティックだった。 
グランアダージョは音楽が非常にゆっくり。 今まで見たどのグランアダージョよりも遅い。 遅いを通り越して間延びしている感じ。 アマトリアンははとても背中の柔らかいダンサーで、上体をゆっくり倒したりする動きはとても綺麗なのだけれど、足や指先の動きにそれほど繊細さがなかったので、このゆっくりとした音楽で見るのはやや苦しく感じられた部分もあった。 フォーゲルは自分の踊りの好調さに加え、サポートも安定していたと思います。
王子は純粋な気持ちを真っすぐにオデットに向けるけれど、オデットの心は固く閉ざされているようで、思いはなかなか通い合わない。 抱き寄せていたオデットが彼の腕からすり抜けるたびに、オデットの腕や指先に最後まで愛しそうに優しく触れていたのがとても印象的。
コール・ドは最初のうちはばたついて見え、幻想の世界という趣はなかったけれど、オデットと王子の踊りを邪魔するような煩さもなかったし、フォーメーションは綺麗だったと思います。 
2羽の白鳥の一人の森田さんは長身でスタイルもよく、踊りがたおやかでした。 4羽は個々の間隔がところどころ乱れたような記憶がありますが、ここだけはどのバージョンも変更なしですね♪


<第3幕>
王座の間の舞台美術、衣装は素晴らしく立派で美しい。 シュツットガルトバレエ団の美術って回廊&階段仕様が多いですね。 先日のじゃじゃ馬もそうだったけど、狭いステージを限りなく有効に使おうとすると平面だけではなく上下という仕切りやそれを繋ぐものによって空間にスペースを作り出すしかないですものね。 バレエ団の劇場のステージスペースが東京文化会館と比べてどの程度のものなのかは知りませんが、それにしても踊れるスペースが少し狭いと感じました。 長身のフォーゲルやマッキーだとセーブが必要?

まず、二階から式典長、各国の花嫁従者と降りてきたところで王妃が下手から登場。 この時に誰かが王妃のドレスのすそを踏んだらしく王妃がのけぞるハプニング。 でもドレスなのかマントなのかトレインの長さが半端じゃない。 王妃が玉座に腰掛けた後、侍女が手繰り寄せながらたたんでました。
小走りに王子が登場し仰々しい雰囲気に嫌気が刺したような表情で王妃の隣に座る。 
続いて花嫁候補であるスペイン、ポーランド、ロシア、ナポリの姫君たちが階段を降りて登場し王妃と王子にご挨拶。 騎士に扮したロットバルトが現れ、ざわめく周囲をさらに驚かせるように自分のマントの中からオディールを出現させる。 下手奥の王妃の玉座の脇に女官が三人くらい立っていて彼女たちの後ろの壁にオディールの出入りできる扉がしつらえてあり、ロットバルトがその前に立ちマントを大きく広げるので、まるでマジックのように忽然とオディールが現れるのがとてもいい。 
アマトリアンはさすがにここでは白塗りではないけれど、今度は青のシャドーが凄すぎてなんだかもったいないなぁぁ。 王子はすでにかなり舞い上がっているけれど、恐いママ王妃の手前、そのままオディールを追いかけていくわけにも行かず、花嫁候補たちの踊りにお付き合い。

姫+4人のお付きによるスペインは、あの音楽でこういう振付もできるんだなという唖然とした踊りでしたが、やたら靴のつま先で音を立てるスペイン貴族騎士風男性4人のモーションがコミカルでもありただただヌルクもあり・・・。
ポーランドは可もなく不可もなく普通。
姫+そのままマトリョーシカになれそうなロングドレスのお付きの女性6人?のロシアはすごかったですね。 お遊戯チックなフォーメーションと動き、姫はハンカチをかわいらしく振りながら走りまわる・・・。 これじゃ、王子ならずとも王妃だってno thank youだよなぁ。 ロシアの姫君って、本国の公演でもプリンシパルに踊らせるんでしょうか?? とりあえず、美人だったら誰でもいいじゃん!!
ナポリはヒョ=ジュン・カンの歯切れの良いリズミカルなダンスがとても良かったのですが、グラン・ピルエットのザジアンの方が結局目立ってしまって、お姫様の方が引き立て役みたいな感じになっているのがなんだかね・・。
グリゴローヴィチのこの場面がそれぞれの踊りで姫君の魅力をしっかりアピールしているのに対して、クランコ版は振付も仰天物だけれど、肝心の姫たちが全然魅力的に見えず、これもロットバルトの差し金かと疑いたくなってしまいます・・・。

まったく上の空って感じでその場にいるだけだった王子(いや、ほんと、何を考えているのかは読み取れないフォーゲル君の表情でした・笑)が戻ってきたオディールに駆け寄りGPDDへ。
アマトリアンはオデットよりはオディールの方が良かったと思います。 あまりにも人の良い純真な王子だから、不用意を恐れる事もなく、王子を騙し手玉に取る事をひたすら楽しんでいるだけ。 踊りも伸び伸びと身体能力の高さが伺えるような身のこなし。 ヴァリの音楽は通常王子のヴァリで使う曲。 ここまで来たら、まぁ、もう何でもいーよなのですが、クランコがこの曲を割り当てた理由くらいは聞きたい気がする。
フォーゲルのヴァリはチャイパド。 去年の夏のキラキラハッピーオーラ全開のチャイパドが蘇ります♪ 彼は本当にジャンプをした時の脚が綺麗。 うっとりですねぇぇ。 ただ、フォーゲルにはスペースが狭そうでマネージュなどは抑え気味に見えたのが残念でした。
そういえば、クランコ版にはグラン・パの途中、オデットの幻影は出てこないのですね。  4幕にはオデットの帰還の音楽があったような気がするけれど、自信はない。
王子は渋い顔の王妃にオディールを后に迎えると告げ、オディールに愛を誓ってしまう。 すると王子を軽く嘲りながらあっさり姿を消してしまうオディール。 登場のシーンのまき戻しのようにロットバルトのマントに包まれるなり消えてしまいました。

最初は何が起こったのかわからなく動揺していた王子は事の次第に気づくと・・・・。 自分の軽率さを深く悔やみ悲痛な面持ちでオデットを追う・・・というのがごく普通のジークフリートなのだけれど、何を思ったかフォーゲルは、希望を見出したような微笑を浮かべて湖に向かっていったんだよなぁ。  「消えちゃったのは間違って愛を誓っちゃったオディールなんだから、僕が本当に愛しているオデットはまだ湖に居る! だから大丈夫!! 許しを請えば大丈夫!!」 まさかね???
ポリーナと踊った東バの3幕最後では微笑んだりしていなかったのですけどね。


<第4幕>
クランコ版の白眉というかクランコのドラマティックな世界が一番顕著なのがこの終幕。 
コール・ドのフォーメーションも独特だったけれど、2幕の終盤よりもさらに揃ってきていて綺麗だったし悲しみが溢れていました。
全編通じての共通点でもあるけれど、クランコ版は他の版よりも王子がオデット(オディール)をリフトするシーンが多いですね。 ここでもいきなりオデットを高々とリフトして白鳥たちの後ろを進んでいたような・・・。
再会したオデットと王子を容赦なくいたぶるロットバルト。 倒れこんだオデットと王子を冷淡に見下ろしながら彼らを葬るように黒いマントを二人に被せながら引きずっていったシーンには思わず背筋がゾッと。
立ち上がった王子は倒れているオデットを抱き起こす。 このシーンに使われていた「弦楽のためのエレジー」(おロシア人さんありがとうございます)が、またすっばらしく物悲しく美しい曲で決して結ばれない二人の運命を悲しみ嘆いているような曲です。 振付も曲によく合っていたと思います。 そして別れを促すようにオデットを王子から引き離す白鳥たち(1日目は、別の人に愛を誓ってしまったこの王子ではもう駄目なのだからと二人を引き離したのだと思っていました)。 愛するものを失いたくない一心でオデットを取り戻そうとする王子の前に再びロットバルトが現れ、強引にオデットを連れ去る。
ロットバルトが起こした嵐で湖は荒れ狂い(効果音も凄かったですね・・・)逃げ場を失った王子はやがて波に飲み込まれる。 最後の最後まで、波に打たれながらもオデットを求め続けていた王子が力尽きていく様はあまりにも悲しい。 不幸の影などこれっぽちもない、ひたすら真っすぐ純真なフォーゲル王子だっただけに、余計にその最期が悲痛でした。
なんでこんな悲劇が・・・と思うに、オデットたちが囚われの身となっている湖畔はロットバルトが治める魔界であり、そこに足を踏み入れ、その彼の世界を脅かすかもしれない青年は誰一人として生かしてはおかないという、そんな恐ろしい湖の話なのかな・・・などと。




◆第1幕 王子の城近◆

ジークフリート王子:フリーデマン・フォーゲル
ウォルフガング(家庭教師):オズカン・アイク
家政婦:リュドミラ・ボガート
ベンノ(王子の友人):ウィリアム・ムーア
従者たち:ロマン・ノヴィツキー、ブレント・パロリン、デヴィッド・ムーア、ローランド・ハヴリカ
町娘たち:カーチャ・ヴュンシュ、ラケーレ・ブリアッシ、
       カタジーナ・コジェルスカ、エリサ・バデネス、ヒョ=ジュン・カン
王妃(摂政):メリンダ・ウィザム


◆第2幕 湖畔◆

ロットバルト(邪悪な魔術師):ニコライ・ゴドノフ
オデット(魔法をかけられた王女):アリシア・アマトリアン
二羽の白鳥:森田愛海、ラケーレ・ブリアッシ
小さな白鳥:エリサ・バデネス、カタジーナ・コジェルスカ、
        ジュリー・マルケット、アンジェリーナ・ズッカリーニ

◆第3幕 玉座の間◆

見知らぬ騎士:ニコライ・ゴドノフ
オディール(その娘という姫君):アリシア・アマトリアン
スペインの姫君とそのお付き:
ミリアム・サイモン
ペトロス・テティエリアン、ロマン・ノヴィツキー、
デヴィッド・ムーア、マッテオ・クロッカード=ヴィラ
ポーランドの姫君とそのお付き:オイハネ、ヘレーロ、ローランド・ハヴリカ
ロシアの姫君:エリザベス・メイソン
ナポリの姫君とそのお付き:ヒョ=ジュン・カン、アルマン・ザジアン
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