ボリショイ・バレエ団「スパルタクス」 2月1日の感想
2012/02/21(Tue)
東京文化会館 : 一階10列21番

隋分経ってしまったし、順番もくるってしまいましたが、とりあえず残しておくために・・・。

ルンキナのフリーギアと超人的に飛びまくるであろうワシーリエフのスパルタクスにも惹かれなかったわけではなかったのだけれど、1度だけしか見られないなら、やはりマーシャを外す事はできないとの理由で選んだこの日。
録画してあったはずのムハメドフ主演のものが見つからず(泣)、結局この日の舞台が初スパルタクスとなってしまいました。 あれがここか・・・くらいの感じで見られたら鑑賞後の記憶ももっと鮮明だったかとは思いますが、最初から最後まで、いろいろなダンサーに圧倒されながらのあっという間の3時間でした。
そして、舞台上のダンサーたちをある時は鼓舞し、ある時は優しく寄り添うような自在なボリショイ管の演奏も素晴らしかったです。 打楽器の爆裂感にはしびれましたねぇぇぇ(笑)。 

ひ弱そうなプロフィール写真に記者会見のほわ~んとした雰囲気の写真の子がスパルタクスって・・・と思っていたドミトリチェンコでしたが、身長もほどほどにあり適度な筋肉もついていて、均整の取れた体のラインがとても綺麗なダンサーでした。 ただ、見た瞬間にニコラス・ケイジ(昔は軟弱、最近は小汚い・・・)が浮かんで離れなくなっちゃって、これには困った(笑)。 
1幕のほんの始めのうちだけ、最初の哀しみのソロあたりは、踊りと気持ちが一緒になっていないような感じがしましたが、奴隷となった事の悲嘆が、奴隷ゆえに剣闘士として闘わされ、それと知らずに仲間を殺させられた事への怒りに変っていくという役どころそのままに、話が進むにつれ、スパルタクスとしての気概のようなものがじわぁ~~っと伝わってきました。 フリーギアへの愛情も激しくはないけれど深く強い想いが感じられて良かったです。 もっと強く人を惹きつけるカリスマ性があった方がいいのかもしれませんが、キャラが傑出していたマーシャのエギナは別格として、クラッスス、フリーギアとはバランスが取れていたので私的にはけっこう好みなアプローチでした。
踊りも最後まで息切れする事なく、高い跳躍と勢いと丁寧さが保たれていて素晴らしかったと思います。 1幕と3幕に上手奥からと下手奥から斜めにジュテを3度ずつ繰り返すという同じ振付があったのですが、すべての跳躍が高くて綺麗に開脚していて強い印象が残っています。 3幕では両手に剣を持っていたっけ?

クラッススのバラーノフの踊りは、ダイナミックさや派手さはあまりなく綺麗に無難にまとめている感じ。 2幕でマーシャと並んでピルエット?やアチチュードジャンプを繰り返すシーンでは、高さや勢いともにマーシャの方が勝っていて、3幕まで持つのかなと若干不安になりましたが、その後は持ち直しておりました。
衣装のせいもあるけれど、バラーノフ演じるクラッススを見ていてふと浮かんだのが、映画「グラディエーター」でホアキン・フェニックスが演じていた17代ローマ皇帝のコモドゥス。 人の上に立つ者として生まれたプライドの高い彼が持っていた屈折した雰囲気と自信のなさから来る神経質な感じがよく似ていた。 そして、その役作りが最初から一環していて、スパルタクスへの復讐心を滾らしていくところなどはとても良かったと思います。

ニクーリナは手足が長く可憐な雰囲気の美人で踊りのラインの綺麗なバレリーナ。 跳躍や体を反らせた時の脚の動きのしなやかさと美しさには惚れ惚れ。  躊躇のない流麗なリフトも見事でした。 GALAで何度となく見てきた3幕のPDDも、そこに行き着くまでの二人を見ていると物悲しさが一層深まりますが、引き裂かれていく夫婦の悲痛な色合いというのはわりと薄かったように思います。 それでもニクーリナはラストシーンが素晴らしかったです。 スパルタクスの亡骸の上に楯を乗せながら、最愛の人だけに向ける慈しみの目、その人を失っていく身を切るような悲しみに耐えている淋しい瞳、最後にフリーギアの芯の強さを見たような気がしました。

エギナのマーシャはもう何といったらいいのか・・・。 まぁ、スパルタクスよりもクラッススよりも誰よりも敵に回したくない人物でしたね。
このキャストだと、マーシャの傑出したスターオーラと存在感のため、物語はエギナを中心に回っているような気もしましたが、他の2日間はどんな感じだったのだろう。 
どんなシーンでマーシャが登場しても、そこだけ特別に光り輝いているというかエネルギーが湧き出ているような感じで、ちょっとした演技でも視線や体が雄弁だったし、踊りはどれも素晴らしかったです。
2幕で爽快にビシッと脚を上げながらグランバットマンで貴族たちを従えて行進してくるエギナは誇り高く、高い志を持った指揮官のようでかっこよかったですねぇ。 もう惚れ惚れです。 3幕の娼婦たちに羊飼いたちを誘惑させるあのエロティックなソロも強烈でしたが、色っぽさの中にも凄みがあるし、なんとなく意味深だった棒を持ったダンスも最後はきりりと、やっぱりマーシャかっこいい!になっちゃうんだな。 
そんなマーシャのエギナのソロで一番印象的だったのは、2幕の途中にあった長いソロ。 クラッススの心を掴むことで、自分の存在を周りに認めさせたいと願う踊りだと思うけれど、前を見つめすごく厳しい顔をしたかと思えば悩ましげでもあり、エギナの心の葛藤、めざすものに突き進んでいこうとする決意のようなものが秘められていたソロだった。 マーシャはこういう微妙な心の内を表現するのが上手いと思います。 

際立った主役陣に負けず劣らず素晴らしかったのがコール・ド・ダンサーたち。 女性はみなスタイルが良くて綺麗で、男性も長身のダンサー&イケメン多しで、いつまで見ていても見飽きない。
1幕のダンスでは、始めのうちはパの多さと素早さやパワフルなダンスに驚き圧倒されていたのだけれど、ふと、そんな動きなのに非常に音楽的というか、音符を可能な限り無駄にしていない振付である事にさらにびっくりさせられた。 可視化というのともまた違うのだけれど、音を常に感じ一体になって纏うというか絡み合うといるというか・・・。 ともかくそんなダンスを最後までたっぷり見せてくれたダンサーたちにはいくら拍手してもしきれない感じでした。 
男性ダンサーでその役柄からも目立っていたのが、3人の羊飼いと4人の羊飼い。 特に4人の方のサラサラ髪のダンサーは非常に気になったのですが、公演中には確定できず、ボリショイのHPで確認してデニス・ロヂキンと判明。 まだコール・ド・ダンサーなんですね。 ロヂキンとどっちがどっちで迷っていたもう一人はラントラートフのようでした。(その後のライモンダと白鳥でもこの二人は大活躍で、た~っぷり鑑賞させていただきました~~♪) 3人の方ではメドヴェージェフの切れ味のある踊りが素晴らしかったですね。


ちょっと時期が悪くて1回だけしか見られなかったのがかなり残念でしたが、今までそれほど深みにははまらずにすんでいたボリショイに一気に引きずり込まれたこの日のスパルタクスでした。 次回の来日は2014年の秋だそうですが、今から楽しみだし、もうちょっと長く居てもらって、「スパルタクス」も是非また持ってきてもらいたいです。





スパルタクス(剣奴、反乱の指導者) : パヴェル・ドミトリチェンコ
クラッスス (ローマ軍の司令官) : ユーリー・バラーノフ
フリーギア(スパルタクスの妻) : アンナ・ニクーリナ
エギナ(娼婦、クラッススの愛人) : マリーヤ・アレクサンドロワ
剣奴: アントン・サーヴィチェフ
道化役者たち: チナーラ・アリザーデ、アンナ・オークネワ、マリーヤ・ヴィノグラードワ、
       マリーヤ・ジャルコワ、ヤニーナ・パリエンコ、アンナ・レベツカヤ、
       バティール・アナドゥルディーエフ、アレクセイ・マトラホフ
       エゴール・シャルコフ、アレクサンドル・プシェニツィン
3人の羊飼いたち: ディミトリ・ザグレービン、デニス・メドヴェージェフ、アレクサンドル・スモリャニノフ
4人の羊飼いたち: アレクサンドル・ヴォドペトフ、エフゲニー・ゴロヴィン、
         ウラディスラフ・ラントラートフ、デニス・ロヂキン
羊飼いの女性たち: スヴェトラーナ・パヴロワ、ダリーヤ・コフロワ、ジュ・ユン・ベ、
         クセーニャ・プチョルキナ、ユリア・ルンキナ
娼婦たち: アンナ・レベツカヤ、アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ、マリーヤ・ジャルコワ、
         アンナ・オークネワ、ユリア・グレベンシコーワ、クリスティーナ・カラショーワ、
         ヤニーナ・パリエンコ

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