東京バレエ団「ラ・バヤデール」 4月17日の感想
2011/05/04(Wed)
今更ながらゼレと小出ちゃんのバヤデールの感想です。 ちまちま書いてたら逆になかなか纏まりがつかなくなっちゃったのでした。 とりあえず、ゼレの舞台なので無理やり纏めました(苦笑)


この日のチケットはもともと小出ちゃんのニキヤデビューを見逃してはなるものかと取ったチケットでしたが、ソロルがゼレンスキーに変更になるという願ってもみなかった贈り物つきの公演となりました。

その小出ちゃんのニキヤ、私には全幕を通して強くて大人びた女性に見えました。 可憐で儚く感じられる場面もあったけれど、自分を抑制する事のできる、落ち着いた少しばかり幸薄いニキヤと映りました。 ヴェールを被って登場し、大僧正へと進めていく一歩一歩に強さを感じたなぁ。 個人的に大好きな聖なる火の前の踊り、意思の強そうな表情とダイナミックな腕の動かし方になんとなくDVDで見たアルティナイを思い浮かべてしまいました。 大僧正を拒む時の顔の険しさは、最高位の神職にあるまじき・・・というような嫌悪に見えた。 
1幕のPDD。 身長差のありすぎるゼレンスキーとの視覚的な違和感と、出だしのリフトでなんとなく慎重になっていたような事から、始めのうちは遠慮がちにも見えたけれど、次第に待ちに待った密会の切なくも甘い幸福感が伝わって来た。 ゼレの優しげな表情が良かったわ~~。
婚約式の踊りは、ソロルと結ばれない運命を嘆くような表情だったけれど、憐れとは思われたくないという意地のような強さも感じた。 踊り自体は悪くはないけれど、身体から悲痛な思いがにじみ出てくるというほどではなかったかな。 
影の王国は、わりと温もりというか情を感じさせるニキヤだった。 踊りも安定していて回転系はスピードもあって見事だった。 小出ちゃん、こういうシャープな印象を残す踊りをする人でしたっけ? ヴェールの踊りも含めもう少しソロルとの絆というか神秘性のようなものが感じられたらもっと良かったけれど、それは初役の彼女に欲張りな注文というものですね。 

ゼレンスキーは2006年のマリインカ来日公演以来だったけれど、故障を抱えてあくまでも慎重にといった当時と違い、伸び伸びと軽やかに体を動かしている感じだった。 ふわっと浮いて滞空時間のあるしなやかなジャンプを音楽とぴったり合わせて自在にコントロールしているのが素晴らしい。  影の王国でのトゥール・ド・レン(で良かったんでしたっけ?)を見せてくれたのにはちょっと驚かされたりもしたくらいですが、あわせてジャンプ系の着地音が静かなのも変らぬ身体能力の高さゆえだと思います。 影の王国のラスト、ニキヤを追って舞台を斜めに横切ったジュテもソロルのニキヤへの強い思いが伝わってくる、直線的でキレのあるジュテでした。 
ゼレのソロルはラジャの命によってガムザッティと結婚しなければならなくなっても、ガムザッティに惹かれたわけではなかったように思います。 チェス台を挟んでガムザッティを前にしても、温和な表情を作りながらも視線も言葉も交わさず、心を静めようとしている様はなんとかラジャの命を断るすべはないかと思案しているように見えた。 封建的なしきたりの中でなすすべもなく婚約式を迎えたソロルは運命を受け入れるものの、ニキヤの舞など見ることはできない。 ニキヤを見る事もできないし、ガムザッティの横にいる自分をニキヤに見られたくもないといった様子だった。 
そんなソロルだからニキヤの死に激しく動揺し罪の意識にさいなまれるだけだし、アヘンで朦朧となった意識の中でニキヤへの変らぬ強い想いを呼び戻してしまった以上はガムザッティを受け入れられるわけがない。 ゼレのソロルは分かりやすかったし、優柔不断な男という印象はなかった。

田中さんのガムザッティは初演に続いて2度目ですが、印象的にはほぼ変らず。  技術的な面では足が強いので、イタリアンフェッテやその他の回転系はしっかりしていて安心して見ていられるのだけれど、この日は彼女にしては若干もの足りなかったように思います。 5日間で4回ガムザ連投というのもキツイですよね。 それよりも彼女の場合は、アームスが自分的には好みからは遠く、美しく見えないのが辛いところ。 ゼレのアームスが柔らかくて綺麗なので余計に気になるのかもしれませんが。 さらに、チュチュで晴れやかに踊り、場の主役として舞台を支配するような華やぎに欠けるのはガムザッティ役としては残念でしたが、田中さんは、婚約式よりも3幕の神殿でのソロが圧巻。 結婚の前に相手の心を失ってしまった悲しみと絶望と屈辱に耐えながらラジャの娘として毅然とした姿を見せなければならない苦しさを物静かに叫ぶような悲痛な踊り。 ニキヤの婚約式での踊りと対を成しているような感じですが、体全体からその思いが伝わってきてとても良かったです。

大僧正の木村さん、呼びつけたニキヤが階段をおりて歩を止めるまで、自分の30センチくらい先を焦点として固まってしまったような目には、ニキヤへの苦しい思い、あぁもう駄目だ、今日こそ駄目だという思いがぐるぐる渦を巻いている脳裏とバックンバックン音を立てている心臓がしっかり反映されているような・・・。 でいて、ニキヤのヴェールを彼女の温もりを確かめるかのように胸にしまい込む姿はエロ坊主にも見え・・・。 どうも、ドルグーシンさんの大僧正を見てからというもの、このシーンの大僧正の表情から心情を伺うのが楽しくなってしまい・・・(笑)。ソロルを無き者にしようとしてラジャにニキヤとの事を密告したのに、あっさりニキヤを葬ると言われてうろたえ、うな垂れてラジャの屋敷を去る時にソロルの肖像画にがん飛ばす大僧正って初めて見たぞ! 婚約式と3幕はゼレと小出ちゃんから目が離せなかったためにあまり見ることができなかったのが悔やまれますが、どう頑張ったって、バヤデルカで主要人物をすべてきちんと見ることなんてできっこないものなぁ。 前回の後藤大僧正については覚えていないのだけれど、絶命したニキヤにかけより周囲の目などはばかる事もなくうろたえ嘆き悲しむ大僧正ってのも・・・純愛だよね。

ジャンベの踊りは西村さんと乾さん。 始まる前にキャスト表をしっかりチェックしておかなかったので、舞台を見ている時は乾さんとはわからず。 ジャンベの踊りもバヤで大好きなシーンなのだけれど、なぜか今回はコール・ドも含め、あまり際立ったものがなかったような・・・。 

マカロワ版は話の主要人物だけの物語としてさくさく進んでいってしまい、婚約式のディベルティスマンがないので正直物足りない。  パ・ダクシオンは若干メリハリ効きすぎてカウント取ってるような雰囲気もありましたが、小さい子、大きい子チームともに驚くほどそれぞれの4人の踊りが揃っていました。 

影の王国は、やはりあの傾斜の少ない1段だけのスロープが非常に物足りないです。 影たちが彼方から現れるという感じも薄く、幻想的空間の広がりをあまり感じられないような気がしましたが、照明がやや明るかったのも一因かもしれません。 コール・ド・ダンサーの動きそのものはとても揃っていたのですが、流れるような滑らかさというのはあまり感じられなかった気がします。 影のトリオは無難かな? ダンサー次第では、はっとするほど美しいクラシックラインを見せられる踊りのはずですが、それぞれそれほどではなかったと。 

ブロンズ像の宮本さん、初役でしたっけ? 足を滑らせてしまった彼を見ていて、あの腕と指先の偶像ポーズを保ちながら踊るってのは大変なのねと改めて思ったりして。 

ラストシーン、雲の上をヴェールをたなびかせながら進むニキヤ。 幸せそうに微笑みながら振り返った視線の先にはヴェールの片方の端を持つソロルがいる。 初演のバヤデールは、ソロルと彼を取り巻く人たちの絶望の物語と感じたために、ニキヤとソロルがあの世で結ばれるシーンにかなり抵抗があったのだけれど、今回の二人にはこのハッピーエンドが相応しいと感じ、その二人をみつめるこちらの気持ちも穏やかだった。 



ニキヤ:小出領子
ソロル:イーゴリ・ゼレンスキー
ガムザッティ: 田中結子
ハイ・ブラーミン(大僧正): 木村和夫
ラジャ:柄本武尊
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):松下裕次
アヤ(ガムザッティの召使):松浦真理絵
ソロルの友人:森川茉央
ブロンズ像: 宮本祐宜
侍女たちの踊り(ジャンベの踊り):西村真由美、乾友子
パ・ダクシオン:
佐伯知香、森志織、村上美香、河合眞理
高木綾、吉川留衣、矢島まい、川島麻実子
長瀬直義、宮本祐宜
影の王国(ヴァリエーション1):岸本夏未
影の王国(ヴァリエーション2):佐伯知香
影の王国(ヴァリエーション3):乾友子

この記事のURL | バレエ鑑賞記 2011年 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
<<マリインスキー劇場5月4日 「マジックナット」キャスト表 | メイン | マリインスキー劇場5月2日 「バヤデルカ」キャスト表(感想の追記あり) >>
コメント
コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top

トラックバック
トラックバックURL
→http://amlmlmym.blog15.fc2.com/tb.php/2210-11bbe8d1

| メイン |