マールイ「ジゼル」 1月15日の感想
2011/02/18(Fri)
2年ぶりのマールイのジゼル。 前回2009年に光藍社さんから出ていた「演出としては新版・ドルグーシン版だけれども舞台美術衣装は旧版のまま」というお知らせが今回はなかったので、舞台セットも新版で見られるのかなと思っていました。 ところが年末の会場で今回も旧版だったのでちょっと肩透かしだったのですが、よくよく考えてみれば、ペテルブルグで1月22日に「ジゼル」が予定されているのだから輸送に船を使っている以上無理なんですよね・・・。 
新しい物を作れば前の装置や衣装は始末してしまうのだろうと勝手に思っていたのだけど、白鳥もそうですが、ちゃんと丸々一式保管してあるのですねぇぇ。 ペレンの衣装が新版なのは、旧版のジゼルの衣装を一組しか残してないからなのか、本人の意思なのかどっちなんだろう??  肩や胸板がしっかりしている彼女には前の衣装の方が可憐に見えるような気がするが・・・(笑)。   

さて、兵庫のジゼルはペレンのジゼルにコリパエフのアルベルトでどういう「ジゼル」になるのだろうと、おっかなびっくりで臨んだ舞台でした。

<第1幕>
コリパエフのアルベルトは・・・・、雰囲気や身のこなし一つとっても貴族には見えないし、かといって純朴そうな青年かといえばそうでもなく、ん~~~、いいとこのボンボンという感じですかねぇ。 従者のオマールとの並びも主従というよりは幼馴染の乳兄弟みたい??  オマールは普通にちゃんとした従者だったんですけどね。

ペレンのジゼルは相変わらず華やかで暗い影皆無だけれど、伸び伸びと自然体なのがいい。 コリパエフ相手にどーすんだと不安だらけでしたが、かえって気負いがなくていいのかな? ただ、ペレンがジゼルになろうとすればするほどコリパエフのアルベルトとずれていくというか、どんどん一人芝居になっていくというか・・・。 役を生きるというレベルに至っていないコリパエフのアルベルトからは伝わってくるものが少なかったなぁ。 もちろん若い彼にそれを期待するのはまだ早いので、彼にどうこういう気はないけれど、来日メンバーにはアルベルト役を得意とし日本でも実績のあるシヴァコフやロンドンでも踊っているプハチョフという、ダンサーとして充実の期にある両プリンシパルもいるのだから、年に一度のバレエ団の公演を楽しみにしている日本の観客に対してそういう配慮が欲しかったと思います。 東京公演だってゲストに持っていかれちゃったんだしさ! そーです、恨み節!!
ま、そんなわけで、1幕は二人のドラマとしては全く惹かれるものがありませんでしたが、ペレンの踊りは良かったです。 少々元気が良すぎるかもしれませんが、何よりも踊る事が大好きというジゼルの気持ちそのままの晴れやかな踊りは、大輪の花と咲き誇る今の彼女ならではのものだったと思います。
コリパエフも踊りは下手なわけじゃないんだけど、姿勢が悪いのと肩から腕のラインに神経が行き届いていないのが気になります。

ペトゥホフのハンスは無骨路線のいわゆる情の移らない正統派。 マールイのハンスの中で一番好きなのはツァルですが、この舞台で2年前のような恋する純情ハンスだったら、もっと話がおかしくなっちゃっただろうな(笑)。  

ペザントのミリツェワとプローム。 実は、う~ん、またこのペアか・・・とちょっとテンション下がったのですが、2009年の公演も含めてこの二人的には一番良かったように思います。 ミリツェワはマスロボエフと組んでいた頃と少し踊りが変わったのかなぁ? 歯切れが良いと感じる事もあれば雑にも映る最近の彼女のサポートは簡単ではないと思うのですが、この日はそう破綻もなく良かったと。 2羽の白鳥などは丁寧に踊っていて良かったけれど、勢いよりも美しさと正確さにもう少し気を使ったらいいのになと思う事が多かった今期のミリツェワでした。 
一方のプロームですが、彼はテクニック的にとても自信を高めていて、舞台からも自分のテクニックの高さで観客を喜ばせたいという気持ちが凄く伝わってきます。 本当にびっくりするくらい上手くなりましたよね~~!! カブリオールの高さと脚の角度とか、すべてザンレール2連続だった回転など高度なテクニックのてんこ盛り、今のマールイの中でできるのはプロームだけだろうし彼らしさの表現だと思います。 ただ、それを否定する気はないけれど、ガラやドンキではないので、もう少し抑え目にして伸びやかに優雅な踊りを見せてくれても良かったなとも思いました。
あと、ペザントの踊りを見ているコール・ドですが、2年前は小芝居がやたら多かった気がしたのだけど、年末も含めてあまり気にならなかったのは少し改訂したのか、こちらが慣れたのか・・・。
コール・ドの踊りは、楽しそうに弾けていながらもよく揃っていて収穫に沸く幸せな村人たちって感じで良かったです。 

公爵ご一行では、槍もち隊含めてみんな好き放題でしたが、中でもヴェンシコフが目立ってたかなぁ? この日はラメ被りじゃなくてほっとしましたが、多分、脇の時の俺様的美学ってのがあるんだろうな。 
マラーホフさんの公爵様がまた凛々しくて品があって麗しい。 ジゼルの顔をじっとみつめる表情は落胤説を匂わせるかのように意味深なんだけど、ベルタのノヴォショーロワさんと交わす笑顔は屈託がないしな。 そしてアルベルトを見る目は冷ややかだ。  
アルベルトはハンスに恭しく剣を渡されたあたりから動揺しだし、表情も引きつりつつありましたが、身分がばれてしまった後は血の気が引くような感じでうろたえるばかり・・・。
ジゼルの狂乱。 ペレンの演技はとても良かったです。 思いもしなかった成り行きにショックで心が壊れておかしくなってしまったジゼルに何か見えるんですよね。 それが恐ろしいものにも自分を慰めてくれるものにも見えたりして余計に混乱するような、そんな感じに見えました。 ベルタの姿を認めてすがるような目で走り寄って行った姿がいじらしかった。 そのジゼルの姿だけで十分悲痛であり哀れだったのだけれど、それを見ているアルベルトが従者に抱きついたり、腰が抜けたようにベンチに座り込み顔を背けて嘆いてみたりとあまりに情けなくて、ジゼルが一層不憫に思えました。
そんなもんだからか?ベルタ@ノヴォショーロワさんの悲しみと怒りは物凄かったです。 無念さが年末のジゼルと比べて半端じゃなかった感じ。 ジゼルに近寄ってはまた従者のもとへ逃げてしまうアルベルトになんざ目もくれず、誰一人として娘に指一本触れさせないという憤怒と悲嘆でジゼルを強く抱きしめるベルタの慟哭に胸が詰まりました。   


<第2幕>
ミルタのオーリャが・・・怖すぎ・・・。 アイメイクがすんごいんだもん! 黒い隈取とシャドーに加え、ラメがキラキラと光ってる。 さらに、自分と配下のウィリたちに気合を入れているような「殺す!」のポーズも恐い~~。 どんだけ辛い死に方したんだ? ハンスとアルベルトを踊らせている時の快楽とも取れる不敵な笑みにゾク~~。 ふわっはっはと客席に向ける顔はラストパフォーマンスサービスって事ですかね。 そんな恐ろしいミルタでしたが、足首から下しか動いていないような見事なパ・ド・ブレに空間を大きく使いながらのゆったりと気品ある大きな踊りが絶品でした。
ドゥ・ウィリでしなやかに美しい踊りを見せてくれたエリマコワが微笑をもらしていたのは「こらこら!」でしたが、冷気と霊感を漂わせるようなコール・ドも素晴らしく、久しぶりにあのアラベスクでクロスするところで感動したなぁ。 

ウィリになったジゼルの登場。 高く脚が上げられた高速旋回は見事。  年末のシェスタコワもでしたが、今年は二人とも2幕のウィリでは他のウィリたちのような髪飾りはつけてないのですが、些細な事だけれど、私はこれが好きなのです。 その方がより穢れないジゼルの魂だけって気がするし(勝手にですが・・・)、いろいろ準備万端なミルタ軍とも違ってみえる(笑)。

アルベルトがジゼルの墓を訪れる。 1幕の最後では何を思っているのか分からなかったアルベルトですが、ここでのコリパエフは、自分の犯した罪にさいなまれて憔悴しきった表情でした。 従者のオマールは、鬼火に怯えながら去っていく時に、アルベルトを一人残していく事に最後まで躊躇して彼を心配し気遣っている気持ちがよくわかってとても良かったです。 こういうちょっとしたシーンのお芝居もダンサーの気持ちが入っていると凄く後々まで鮮明に記憶に残っているものなんですよね。 物語の大筋として書かれる部分以外にも多くのシーンで登場人物の心情を受け止めつつ一つの舞台を見ているんだなぁと改めて思いました。 ま、マールイは特別中の特別ですけどね。 

ウィリたちに捕まって踊らされるハンス。 息も絶え絶えな踊りはさすが。 いつもハンスは疲れ果てて体がしんどくて意識朦朧で死・・・と思っていましたが、この日はミルタの体から湧き出てくるような言いようのない恐怖(ホラー?)もかなり手伝っていたんだろうなとお気の毒に思いました。

ジゼルとアルベルトのPDD。 
コリパエフの感情的なものはやはり掴みがたかったですが、ペレン相手にロミジュリとくるみで大変そうだったリフトもそつなくこなし、ソロのブリゼは細かくて綺麗でした。 
ペレンは、今までで一番良かったんじゃないかな? あまりにも踊れてしまう輪郭くっきりな美しい舞が、浮遊感とか儚さを遠ざけてしまっているような気はするのだけれど、この日の彼女のジゼルにはそれをあまり気にさせない懸命な思いと慈愛があって、今のペレンのジゼルはこれでいいんじゃないかと思えました。 まぁ、その思いと慈愛の対象が弟(最後にはそう見えちゃいました)ではなく、心から愛した一人の男性であれば何も言う事はなかったんですけどね。
浮遊感に関しては、スカートがシフォンの柔らかな生地だったらもっと自然に出るとも思うので、やっぱりあの生地は痛いよなぁ。 きちんと4回飛んで素晴らしかったスーブルソーも、シフォンだったらもっと余韻があって勢いが消えて見えたような気がします。 跳躍では後ろ向きにアントルシャ・カトル(でいいんですよね?)を繰り返すところも柔らかい足先の動きが凄く綺麗だった。

夜明けの別れ。 ルジの二日間は旧マールイ版のようにアルベルトがジゼルを愛しそうに抱きかかえて歩くシーンがあったのだけど、ドルグーシン版に忠実だったこの日はそのシーンはなく、永遠の別れへのクライマックス感が薄いままジゼルが消えてしまう。 ペレンのジゼルは途中までは切なそうにアルベルトを見つめていたけれど、体の向きを変えてからはただ真っ直ぐ前を見るだけでもう彼岸の人という感じだった(湖畔のオデットがジークフリートと別れていくような)ように記憶してます(ちょっと自信ないけど)。 
なので、ジゼルが消えて行く気配を背中で感じてというところからアルベルトの演技がまた重要になってくるのだけれど、やはりここもちょっと弱かったなぁ。 ラスト、お墓に向かって猛然と突き進むアルベルト。 え、ジュテするの(あれ、嫌い)と思ったらそのままの勢いでお墓にガーンと激突してました。 全く・・・、もう。  
 


正統派ジゼルではありませんでしたが、2幕の二人のPDDあたりからは会場の空気がいい緊張に包まれて舞台に集中しているような感じだったし、ブベルニコフさん率いるオケの演奏もとても良かったし、美しいバレエを堪能できたので自分としては満足です。 そして、いろいろ文句をつけたコリパエフですが、彼でいつも感心なのは、カーテンコールの時にちゃんとパートナーを上手側にも導いて行く事です。 盛り上がっているにも関わらず、中央と下手側だけを繰り返すペアがけっこう多く、上手側の席だともどかしかったりするので(笑)、これって大事だと思うんですよね!
  

  

ジゼル: イリーナ・ペレン
アルベルト: ニコライ・コリパエフ
ミルタ :オリガ・ステパノワ
森番ハンス: ロマン・ペトゥホフ
ぺザント・パ・ド・ドゥ: タチアナ・ミリツェワ、アントン・プローム
ベルタ(ジゼルの母): アンナ・ノヴォショーロワ
バチルド(アルベルトの婚約者):オリガ・セミョーノワ
公爵 :アレクセイ・マラーホフ
アルベルトの従者: アレクサンドル・オマール
ドゥ・ウィリ :ダリア・エリマコワ、エカテリーナ・クラシューク
指揮: パーヴェル・ブベルニコフ

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コメント
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どうもです~。

神戸のジゼルが初ペレンちゃんジゼルでしたが、見る前ちょいとコワいもの見たさ的心配もあったのですが、思った以上に感動しました。
前回の松本ドンキとまた真逆の役ですが、白いバレエも悲劇の演技も自然で美しく、またペレンちゃんらしい親しみやすさが出ていて素晴らしかったです。
ここまで泣けたジゼルはマジで神奈川のシヴァ&たみよさん以来だったので、是非シヴァ&ペレンのペアでやってほしいと思いました。
私的最後のマールイ公演でしたので動揺の方が激しく、脇をほとんどチェックできなかったのですが、公爵はよろしかったですか。そーか、良かった。(爆)
マラーホフさん&ノヴォショーロワさんの小芝居は裏ストーリーが見えるくらい細かいので、いろんな解釈を感じてしまいますよね。私もその点に気をつけて見てはいましたが、ベルタとの関係まではわからず。(動揺もあり、珍しく脇じゃなくてペレンちゃんばかり見てしまったので。)
あと、神戸のホールもすてきで気に入りました!来年もあったら行っちゃうわ!(注:キャストによる)
2011/02/20 15:13  | URL | うみーしゃ #-[ 編集] ▲ top
- バレリーナ・コレクション -
ここもいいかも?

http://www.ballerina-collection.com/
2011/02/20 17:24  | URL | 典子 #8wGSO3EE[ 編集] ▲ top
- バレリーナ・コレクション -
ここもいいかも?

http://www.ballerina-collection.com/
2011/02/20 17:25  | URL | 典子 #8wGSO3EE[ 編集] ▲ top
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うみーしゃさん、

コメントありがとうございます~♪

ペレンのジゼル、2年前に初めて見たときは、お化粧が濃かったり役作りに村娘らしい謙虚さが感じられなくて「これはちょっと・・・」と思ったのですが、今はいろいろナチュラルになってとても良くなっていると思います。 
物語としてはジゼルがアルベルトに恋する気持ちにこちらも共感できるような二人であって欲しいので、やはりシヴァ!と思ってしまいます。 それによって2幕から受け取る感動も違いますものね。 ペレン&シヴァに関しては是非是非白鳥でのペアを復活させて欲しいです。 今の二人のグラン・アダージョ、すっごく美しく切ないと思うんですよね。
マラさんにはまだまだ踊る役で活躍して欲しいというのが本音ではありますが、一つ一つの役になりきるマラさんなので、あの公爵様もとっても魅力的!   
おっしゃる通りコベルコホールは本当に見やすくて素敵なホールですよね。 サントリーホールで感じるような特別な時空を味わえます。 新築中のフェスティバルホールのオープンが2013年春の予定なので、次回の来日公演はまだコベルコホールでの上演があるのではないかと思っています。 問題なのはオーチャードですよね~~。 7月から約半年の改装工事が予定されていますが、座席の配置など改良されるんでしょうかねぇ?
2011/02/20 23:16  | URL | M #il9tusdg[ 編集] ▲ top
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典子さん、

サイトのご紹介をありがとうございます。
2011/02/20 23:19  | URL | M #il9tusdg[ 編集] ▲ top
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