新国立劇場 ビントレーのペンギン・カフェ 11月2日の感想
2010/11/07(Sun)
<火の鳥>
振付: ミハイル・フォーキン 音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
火の鳥: 川村真樹
イワン王子: 福岡雄大
王女ツァレヴナ: 湯川麻美子
魔王カスチェイ: 古川和則


「火の鳥」はキーロフのDVD(ヴィシニョーワ主演)を見た事があるだけですが、舞台装置のテイストが違うだけでなく、一夜の出来事的にステージが暗かったキーロフとは違い、新国立の舞台は明るいです。 衣装やセットの美しさが引き立ちますが、闇に覆われた世界での神秘性やおどろおどろしさみたいなものはあまりなかったですね。

タイトルロールの川村さん、持ち前のたおやかさとエレガンスは若干抑え目に、鳥独特な動きを意識した?シャープな動きを強調していたような。 ラインは美しいし、不調という感じは受けなかったけれど、特に際立つものがなかったかな。 ボリショイ&マリインスキーの余韻のせいかもしれませんが・・・。 
福岡さんは初見。 衣装と帽子(キーロフの衣装とはずい分違う)のせいか、庶民的王子というか、普通の好奇心旺盛な若者に見える。 火の鳥を捕まえてからの二人のPDDは悪くはなかったけれど、川村さんの身長には福岡さんはちょっと低くてバランスが良くない感じ。 囚われの火の鳥の表情が嫌そうにも辛そうにも見えて、ここはもうちょっと芯が強そうで全然怯んでいないのが好みだな・・・って今度はヴィシの刷り込みか? 

湯川さんが王女(女王ならすんなり納得なんだけど)というのは、ちょっと意外な気がしたのだけれど、他の王女たち(プログラムの解説を読む前まで、12人の侍女たちだと思ってました・・・)とは違う存在という感じはよく出ていて、純心可憐な役作りもけっこう自然に見えましたが、今度は福岡さんがやたら子供っぽく見えちゃうんだよな。

夜明けが近づき城に戻らなければならない王女から城に入ってきては駄目と警告されたのにも関わらず、城門を開け王女を追う決心をした王子(というより、いけない!と言われた事をしてみたい!!という顔にも見えました・笑)。 門を開けたとたんに下手から発せられた強烈な白い照明の光が凄かったです。 まさに開けてはいけないものを開けてしまった感じ。 
魔王カスチェイは古川さん。 すんごいメイクに付け鼻なので識別不可ですが、マイムがきちんと音楽と合っていたし(キーロフのカスチェイは出だしの手の動きが音楽とずれてしまっていて間が抜けた感じなんです)、嫌~な感じも出せていてなかなかの好演だったと思います。 
カスチェイの魔法で石に変えられそうになった王子が取り出した羽根の合図で再び姿を現した火の鳥。 魔物たちを疲れ果てるまで踊らせるのだけれど、火の鳥が彼らを操っているという魔力があまり感じられなく舞台を仕切るインパクトが弱かった。
踊りに興じるカスチェイの手下の魔物たちは、衣装がターキッシュだったり、コサックだったり、妖怪っぽかったりとヴァラエティーに富んでましたね。 メインだったようなコサックの踊りでは吉本さんや八幡さんのキレのある踊りが良かった。 

魔物たちが寝てしまった隙に王子が見つけ出したカスチェイの卵(でか過ぎ!)を割り、カスチェイは死に、魔法がとけて囚われの者は元の人間の姿に戻り、王子と王女はめでたく結婚式をあげ、The End.

フィナーレの盛り上がりがイマイチ欠ける作品だし、火の鳥と王子にもクラシックバレエ的な見せ場がさほどないので、もう一度見たいかと言われればそうでもないのですが、どんな作品でもきちんとしたパフォーマンスに仕上げてくる新国立劇場のダンサーたちにはいつもながら感心しました。



<シンフォニー・イン・C>
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ジョルジュ・ビゼー
第1楽章 長田佳世 福岡雄大
       西山裕子、大和雅美、福田圭吾、小柴富久修
第2楽章 小野絢子 冨川祐樹
       細田千晶、川口藍、澤田展生、田中俊太郎
第3楽章 酒井はな 芳賀 望
     寺島まゆみ、寺田亜沙子、グリゴリー・バリノフ、野崎哲也
第4楽章 本島美和 マイレン・トレウバエフ
       さいとう美帆、高橋有里、アンダーシュ・ハンマル、原健太

シンフォニー・イン・Cは初めてなので、Ballet.co Gallerriesで見た2009年のマリインカのロンドン公演の写真がどのように展開されるのか、わくわくしながら幕が上がるのを待ちました。 マリインスキーは男性ソリストもコリフェも白いタイツで楽章によって衣装の色が違うのに、新国立の男性は全員が上下黒、女性は白のチュチュで予想とは違いましたが、シンプルで清清しい美しさ。 

第1楽章の福岡さん、イワン王子より全然いい(踊りじゃなくて、雰囲気ね)。 すっきりと伸びた上半身が美しく、踊りのラインもとても綺麗でしなやか。 伸びやかな跳躍で開いた足もとっても綺麗だし、イワン王子でなんだぁ・・・と思ってしまいましたが、いやー、とっても良いダンサーですねー。  川村さん相手だと身長が足りないけれど、長田さんとならバランス的にも合ってるし、今度は踊るノーブルプリンスで見たいです! 長田さんも、長い手で描く軌跡が綺麗でニュアンスのつけ方が上手く、ほとんど会場に足を運ばないKバレエから新国に移籍してくれて良かったなと。 西山さんと大和さんも手堅くきっちり見せてくれて、とっても充実のパートでした。 

第2楽章の小野さんは音楽性に優れていますね。 アダージョのゆったりしたリズムながらポーズからポーズへの切り替えが小気味好く、見ていて気持ち良い。 ここのコール・ドはかなり長身のバレリーナを集めているので、小野さんが多分一番小さいのではないかと思うけれど、堂々としていて大きく見えるし最後には風格のようなものまで感じさせてくれました。  富川さんはサポートは良かったけれど、自分の踊りに関しては少し余裕がなかったかも。

第3楽章のはなさん、最後に見たのが何時だったか思い出せないほど久しぶりだったのだけれど、最近のバレリーナたちを見慣れてしまうと、踊り、スタイルともにやはり一昔前の・・・という感じに思えてしまう。 吸引力はあると思うし時々ハッとするような瞬間もあるのだけれど、圧倒的なオーラはなかったなぁ。 どうしても自分の目は、ご贔屓のまゆみさんのキレのある溌剌とした踊りに奪われがちだったのだけれど、この楽章、まゆみさんがプリンシパルの日があっても良かったのに。 芳賀さんも良く踊っていたと思うけれど、腕や足がいまひとつ伸びきらず、あまりクラシックのポーズが綺麗でないと言うか・・・。 第3楽章って1,2と比べると短めですね。

第4楽章でようやくマイレン登場。 いつもと変わらぬ美しいラインだけれど、見せ場が少なくて物足りない! 本島さん、なんだろうな? 両脇のさいとうさんと高橋さんの方が踊りにメリハリがあって上手く見えてしまいます。 

4楽章もグループでの踊りは短めで、いったん袖に下がり(だったと思います)、1楽章からユニット単位で再び現れて、最後は全員での大団円に。 4ユニットのプリンシパル、コリフェカップルにコール・ドが勢ぞろいするとなかなか壮観な眺めです。 最前列でプリンシパルカップルが横並びになっての踊りでは小野さんの旋律に乗った踊りが見事でした。 フィナーレで4組がもっと綺麗に揃っていればもっと見応えがあったように思いますが、本島さんがかなり遅れていたのがやや残念です。 それでも、この作品、新国立劇場には合った作品だと思うので、もっと頻繁に上演して欲しいと思います。 できれば寺島ひろみさんにも踊ってもらって。 オール・バランシン・プログラムを組むのもいいかもしれないし、シーズン始めではなく、コール・ドがさらに揃うようになる(期待してます)シーズン半ば以降がいいですね! 



<ペンギン・カフェ>
振付:デヴィッド・ビントレー 音楽:サイモン・ジェフス
ペンギン: さいとう美帆
ユタのオオツノヒツジ: 湯川麻美子、マイレン・トレウバエフ
テキサスのカンガルーネズミ: 八幡顕光
豚鼻スカンクにつくのみ: 高橋有里
ケープヤマシマウマ: 芳賀望
ブラジルのウーリーモンキー: 福岡雄大
熱帯雨林の家族: 本島美和、貝川鐵夫、田中雛羽


幕が上がるとさいとう美帆さんのウェイターペンギンが。 すぐに西山ペンギンと大和ペンギンも加わり、軽妙なペンギンダンス! 足を細かくパタパタと動かしたり、180度近くに開いて軽く飛んで動く様子が本当にペンギンのあの愛らしい仕草そっくりでと~~っても可愛い。 
カフェにイヴニングドレスとタキシード姿のカップルが続々と入ってくるのですが、男性ダンサーのタキシード姿でのダンスが洗練された感じでとてもさまになっているのにちょっとびっくり。  こうもりの時はお世辞にも似合うとは言えない感じだったのですよね。 特に輪島さんが色気があって表情豊かでとても良かった。 

オオツノヒツジの湯川さん、被り物は重いだろうし舞台も見づらくて難役なんでしょうね・・・。 タキシード姿の凛々しいマイレンとリズミカルに軽快にステップを刻んでいましたが、足元はけっこう高いヒールだし、本当に大変だ! スポットライトに照らされてのデススパイラル系のフィニッシュも見せますねぇ。
テキサスカンガルーは、足首の動きが印象的でしたが、飛んで回って走って体操して・・・みたいな体力勝負な踊りでした。  
ノミと男性たちのスキップ多用の踊りは、男性が剣や木の棒を持って踊る英国の伝統舞踊モリス・ダンスというのだそうですが、こちらも仮面ライダーチックな衣装の高橋さんのノミがと~っても可愛かったです。
彼ら動物たちの踊りが無邪気であるほど、その生命の営みを軽視した人間の身勝手な浅はかさを強く感じます。
ビントレーのメッセージがダイレクトに伝えられるケープヤマシマウマパート。 体躯の良い芳賀さんが体をくねらせると波打つ黒い縞模様。 ゆったりと前に進み出てくる姿からは力強さと雄雄しさを感じさせる堂々とした迫力のシマウマでした。 そんなシマウマも銃弾の前にはあっけなく倒れてしまう。
続く熱帯雨林の家族。 心を寄せ合い幸せに暮らしている家族にも住みかを追われると言う災難が襲う。 イン・Cでは文句をつけてしまった本島さんですが、ここでは切なさや悲しみがその身体から伝わってきて良かったと思います。 

シマウマ、熱帯雨林の家族と続いた悲しい場面から一転、ウーリーモンキーの軽妙でファンキーなノリノリのダンス。 様々なステップ、回転、ジャンプと、キレのよい動きで舞台狭しと踊りまくる福岡さん。 こういう面もあるんですねー。 いやいや本当にこの先楽しみなダンサーで、バヤデールとアラジンも見に行こうと決意。 サンバのリズムで盛り上がってきたところにここまでのキャラクターがすべて登場。 楽しげな踊りが終わると嵐の気配。 雨の中を逃げ惑う(ここもダンスで表現される)人と動物たちはやがてペンギン・カフェにたどり着きある場所へと消えていく。 ペンギンが寂しく踊る後方の幕が上がり、姿を見せた箱舟に彼らの姿が・・・。 
「間に合わないわけではない。 これからの私たちの取り組み方次第である。」という希望を与えてくれるエンディングだったけれど、この箱舟には乗れず船出を見送っていた絶滅種のペンギンの姿が物悲しさを誘いました。

絶滅危惧種の保護や自然環境問題が声高に叫ばれる今となってはその教訓性やメッセージ性は強いものではないけれど、一つのテーマの表現方法としての面白さは十分感じる事ができるし、ダンス作品としても楽しめました。
この記事のURL | バレエ鑑賞記 2010年 | CM(2) | TB(0) | ▲ top
<<祝! 女子バレーベスト4へ | メイン | ミハイロフスキー劇場 日本ツアー & グランプリ 11月19日~21日>>
コメント
-  -
酒井さんは私も最近は殆どごぶさたなのですが、やはり長く踊り続けていくというのはそれなりに大変なのでしょうね。それからまゆみさんとひろみさんの公式サイトが10月で閉鎖してしまってとてもショックです。

以前熊川哲也さんのインタビューで「キャスティングは最後の最後は自分の直感・わがままの部分もあるから、ダンサーにとってはシビアだと思う」的な発言がありました。
それはごもっともですし、芸監というのは、そういうひらめきのような部分も必要だと思います。残酷極まりないですけれども!!!(こちらとしては、なるべく多くのダンサーに実力に応じて公平に役を振り分けてほしいですよね、特にどこのバレエ団とは申しませんが・笑)
しかし、長田佳世さんを重用しなかったのは、バレエファン的には「もったいないなー、無駄遣いだよなー」と思っておりましたので、この新国への移籍で長田さんの活躍の場が広がったのはとても嬉しいと思います。
(反対に、荒井さんは東バからKに移って大正解だったと思いますが)

さてさていつもお世話になっておりますが、ブログをお引越しいたします。完全引越しや過去記事の移転先はまだ未定ですが、新しいバレエ記事はgooブログのほうでアップしていきますので、リンクのurlのご変更をお願いいたします。
2010/11/09 09:31  | URL | おロシア人 #-[ 編集] ▲ top
-  -
おロシア人さん、こんばんは。

ブログのお引越し、大変ですね・・・。
でも、これまでの記事は大切な宝物ですから、どうぞ無事に移行して下さいまし。
こちらからのリンクはgooブログの方に変更させていただきましたので、これからもよろしくお願いします♪

熊川さんのそのインタビューは私も読みましたが、あの発言にまっさきに浮かんだバレエ団は・・・・(苦笑)。 ただ、正解回答に点数をつけたり、タイムを計ったりするものではない以上、多かれ少なかれそういった面が付いて回るものだというのも分かってはいますが。 
寺島姉妹のサイト、クローズしてしまったのですか? 登録ダンサーになってしまったひろみさんの様子がさらに伝わりにくくなってしまうのも残念ですよね。
2010/11/09 22:31  | URL | M #il9tusdg[ 編集] ▲ top
コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top

トラックバック
トラックバックURL
→http://amlmlmym.blog15.fc2.com/tb.php/2050-b9f0ae28

| メイン |