新国立劇場「ドン・キホーテ」 10月17日の感想
2009/10/25(Sun)
吉本さんのサンチョにも驚いたけれど、市川さんのドン・キホーテも驚きでした。 2年前の公演ではエスパーダ(文句つけまくりましたが)を踊っていたダンサーですからね・・・。 一生懸命老人を演じようとしているのは痛いほど伝わってきましたが、ちょっとした動きに老人らしからぬ俊敏さが出てしまうところもあり、大変だよなぁ・・・と。 

<1幕>
おっとり姫系キャラの川村さんのキトリは想像がつかなかったし初役だし、実のところ大丈夫なんだろうかと思っていた。 ところが存在感たっぷりに登場した川村さんは初役という事を全く感じさせないくらい生き生きと堂々としている。 メイクもちょっときつめにしているのか、涼しげではあるのだけれど明るく華のあるキトリで、くるくると変わる豊かな表情はちょっと強気でおきゃんな雰囲気も醸し出していた。 ちょっとした仕草にも勢いとノリがあったので、彼女なりにキトリとしての表現をよく考えているのだという事がよくわかったし、それを自然にこなしてしまう事で主役を重ねてきた彼女がプリマとして今充実した時期にいるという事が感じられる。 踊りも腕や足の動きをシャープにして今までの役との違いが感じられたし、アレグロになっても雑な感じはなく、常に指先まで神経が行き届いていて綺麗でした。 ただ終盤のフェアテにはもう少しキレとスピードが欲しかった。
バジル役の芳賀さん。 マイレンの後で見劣りするのではないかと心配していたのだけれど、まったく問題ありませんでした。 踊りは軽快だし、ちょっとオレ様入ったやんちゃなバジルで表情も良く出ていたし演技も上手かったです。 彼はサポートもとても安定していて上手いのですね。 片手リフトも万全で、リフトされた川村さんがかなり長いことタンバリンをしっかり鳴らしていたのが強く印象に残っています。
 
西山さんと遠藤さんは仲の良い友達を演じているというのではなく、にっこり微笑んで目を合わせればそれでもう何もする事はないというくらいに息がぴったり。 二人の踊りと演技の揃いっぷりが見ていて本当に気持ちが良かったです。
マイレンのエスパーダ、2日前のバジルで抑え目だったフェロモンをさいしょっから惜しみなく放出。 若干本来の切れがなかったかもしれないけれど、エスパーダはこうじゃなくちゃというけれんに溢れた情熱的な踊りにいきなり痺れます。 踊り子に送られる視線の熱いこと! 彼はムレタの使い方がとても上手かったのでムレタを翻しまくるマールイエスパーダの振付だったらさぞ素晴らしかろうと思うと、新国立のこの振付がとっても残念。
踊り子の西川さんは適役とは思わないけれどベテランらしい上手さがありました。 残念だったのは2度とも倒れたナイフかなぁ? 同一犯の方は次回はちゃんと練習してきてね。

<2幕>
居酒屋シーンはドラマが二つもあってと~っても楽しかったです。
キトリとバジルが対角線に離れているところ、芳賀さんのピルエットがとても美しかった。 軸はまっすぐで8回転くらいしてたのかな? 回転を綺麗に停止させていくのがまた素晴らしかったです。 川村さんはもう少し弾けてダイブももっと飛んでくれるとさらに盛り上がったとは思いますが、バジルが狂言自殺をした後の演技がとても良かったので、キホーテに説得されロレンツォが結婚を許すまでの流れに観客を引き込む力がありました。 15日はこの辺がちょっと弱かったんだよな。
そうそう、居酒屋の客で一人あちこち歩き回る飲んだくれの客がいたのですが、あれは古川さんだったのかな? 
で、マイレンエスパーダ、もの凄い気合でここの主役はエスパーダか??と思わせたほど。 彼はどんなに踊りにアクセントが強くても常に音と一体になっている素晴らしい音楽性の持ち主だと思うのだけれど、強烈なインパクトがあったここのフィニッシュは本当に素晴らしかったです。 指揮者のバクランさんと一心同体という感じでマイレンの爛々と輝く目がその満足感を表していたようにも思えました。 ギターの踊りの楠本さんの愁いのある踊り、湯川さんの情熱的なメルセデスはともに見ごたえたっぷりで、その二人にキラー視線を投げかけているマイレンとの鳥肌が立つような緊迫感がたまりませんでした。 ここにこんなドラマを感じたのは初めてでした。

ジプシーの野営地。 この日は眠くならずに楽しめました。 二人のジプシーが誰だったのか分からないのだけれど、二人とも挑みかかるような踊りが良かったです。

夢の場。 川村さんのドルシネアは清楚な気品と温かさがあって立ち姿も非常に美しい。 長い手足を生かした伸びやかな踊りのラインは眼福。 グラン・ジュテの連続もふわっと軽くて高さもありました。 森の女王の厚木さんもスタイルが良くて、川村さんと二人並ぶとため息ものです。 厚木さんの雰囲気は以前よりも柔らかさが出てきて良かったのですが、あまりコンディションは良くなかったのかな? なんとなく踊りが緩めな感じがしました。 キューピッドの高橋さんはキュートというより凛とした感じで踊りは手堅くて上手いです。

<3幕>
湯川さんとマイレンのボレロは結婚式のオープニングに相応しい華やかさ。 ただここのどぎつい紫基調の衣装だけは好きじゃない。 と、文句をいいながらもマイレンを堪能させていただいたキャスティングに心から感謝です(笑)。
GPDDへと続く曲が流れバレリーナたちが次々と入場してくるシーン、おぉっと思う跳躍に目が吸い込まれるとまゆみさんでした。 
GPDD。 落ち着いて堂々とした二人のアダージョはとても素晴らしかった。 片手リフトもフィッシュダイブもばっちり決まっていましたが、芳賀さんのサポートの上手さにここでもまた感心。 キトリが脚を水平にしたまま回転して(ピルエット・アン・ドゥダンっていうんですか?)パンシェする際、すっとキトリの背後にまわるタイミングが見事でした。 ここは流石のマイレンもぎこちなかったのですよ。
川村さんはヴァリが素晴らしかった。 寺田さん同様扇なしだったのだけれど、扇がない事が何か物足りないなどと感じさせることのない見事な踊り。 彼女の持っている技術と表現力で十分魅了してくれました。 扇なしのグランフェッテは後半に少しスピードが落ちてやや乱れたのが惜しかったですが、前半は腰に手をあてたダブルをはさみ綺麗に回っていました。
芳賀さんは全く軸がぶれる事のない綺麗なピルエットを最後まで見せてくれて、フィニッシュのグラン・ピルエットはスピードもあって素晴らしかったです。 彼はジャンプも高いのですが、若干雑な面も見られるのでもう少し気を配ってポーズが美しくなるといいですね。
ヴァリエーション。 今までさいとう美帆さんに特別目を留めたことはなかったのですが、先日のキューピッドもこの日のヴァリエーションも柔らかい身のこなしの踊りがとても良かったと思います。 まゆみさんももちろん安定していましたが、疲れがたまっていたのか彼女本来の出来ではないような気もしました。 

という事で、主役二人のバランスが良く、マイレン劇場、他の充実した脇キャストのダンサーたちと、とっても楽しく満足した舞台でした。 川村さん、本当に素敵なバレリーナだと思うので、もっともっといろいろな役で見てみたいです。 来年1月の白鳥の湖にはキャストされていませんが、次に白鳥を上演する時には絶対に彼女をキャストしてもらいたいものです。

 
 
キトリ: 川村真樹
バジル: 芳賀望
ドン・キホーテ: 市川透
サンチョ・パンサ: 吉本泰久
ガマーシュ: 澤田展生
街の踊り子: 西川貴子
エスパーダ: マイレン・トレウバエフ
キトリの友達(ジュアニッタ): 遠藤睦子
キトリの友達(ピッキリア): 西山裕子
メルセデス: 湯川麻美子
ギターの踊り: 楠元郁子
ジプシーの頭目:小口邦明
二人のジプシー: グリゴリー・バリノフ 八幡顕光 古川和則 福田圭吾(交替出演)
森の女王: 厚木三杏
キューピッド: 高橋有里
ボレロ: 湯川麻美子、マイレン・トレウバエフ
第1ヴァリエーション: 寺島まゆみ
第2ヴァリエーション: さいとう美帆
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