東京バレエ団「ラ・バヤデール」 9月26日の感想
2009/09/29(Tue)
なぐりがきですが、感想です。

<1幕>
幕が開く。 ロイヤル版はDVDで見た事があるけれど、今回衣装とセットを借りているミラノスカラ座版は初見。 舞台の上手奥に寺院の入り口となる階段があってほっとした。 マラーホフ版など全く趣の違うセットもあるけど、この階段は絶対必要!(笑)。

大僧正の後藤さん、長身なので衣装負けしていないし、若さが持ちうる色気もあるし、何より美僧だ! ニキヤに対する想いも、僧とはいえ生身であるがゆえの抑えられない感情というのが納得できる。 そんな後藤さんの雰囲気とは反するかもしれないけれど、大僧正登場の音楽にもう少し荘厳な感じが欲しかった気もします。

マグダヴェーヤの高橋さん、けっこう意志のはっきりしたマグダヴェーヤでしたが、跳躍など、踊りは躍動的で良かったです。 苦行僧の中で一人空中のポーズが綺麗に決まっていたダンサーがいたんだけど誰なんだろうな?

ニキヤの美佳さんは清らかな舞姫。 あまりに華奢で透明感漂うその姿は神に仕える神聖さを感じさせるとともに薄幸な運命も感じさせる。 言い寄る大僧正を拒むシーンは、彼女の中にも想い人がいるという現実は微塵もなく、「聖職者でありながら信じがたい・・」というような心情を感じました。

ニキヤとソロルのPDD。 人目を忍んでの束の間の逢瀬に喜びと幸せは隠せないのだけれど、それでもどことなく控えめな感じのするPDDだった。 

2人の姿を見てしまう大僧正。 あれだけ長いことニキヤとソロルを目に焼き付けるように凝視した大僧正は初めて見たような気がします。 嫉妬が渦巻く胸の内が思いっきり表情に出てました。

ラジャの屋敷。
うぅわ!これが例の衣装か・・。 高岸さんだから立派に着こなしていますけど、暑っ苦しそうですね~(笑)。 ガムザッティの田中さん、私には彼女は地味という印象があったのでこのガムザッティ役が合うのか疑問だったのですが、なかなか堂々としていて聡明な感じのガムザッティでした。

ラジャからガムザッティの婿にと告げられたソロル。 木村ソロルはここだけ、ちょっと意外に感じました。 ガムザッティの美しさに心奪われたのは分かるけど(でも、美しさに驚いて思わず数歩後ずさりしてしまうというあまりにも分かりやす過ぎる演技って・・・)、下手で2人でチェスに興じるところはなんだかほんとに楽しそうで(笑)、悪びれなくて。 大僧正の人払いに退出していく時も、ガムザッティをエスコートする仕草がすごく自然でスマートで、案外世渡り上手なソロル??と思ってしまったよ。
先のニキヤとの逢瀬のシーンですら生真面目さから来る陰のようなものがあったのにここだけそれがするっと抜け落ちちゃってるような・・・。
この版ではニキヤが屋敷を訪れラジャ親子を祝福する奴隷とのPDDがないので、ニキヤに愛を誓った現実に再び引き戻され動揺し苦悩するソロルが居ないのよね・・・。 しかもプログラムには「ラジャの期待にも応えたいという願望」ともあります。

ジャンペの踊りの西村さんと乾さん。 乾さんが手堅いクラシックの踊り手だというのはわかっているのだけれど、この踊りは、体の柔軟性を十分に活かし音楽をたっぷり使った西村さんが素晴らしかった。 ただステージが狭くて、コール・ドも交えるとゴチャゴチャして見えたのが残念。

ソロルはニキヤと恋仲だと告げ、ソロルを破滅に追いこもうと画策した挙句、ラジャにニキヤを始末すると言われた大僧正の動揺ぶり・・・。 一番純粋に恋をして、恋のために愚か者になってしまったのは大僧正なのね・・・。

ニキヤとガムザッティの対決。 家柄と身分を誇り、毅然としていたガムザッティは、ソロル様の心は聖なる火の前で愛を誓った私にあると凛とした表情で言い切るニキヤに動揺するものの、ラジャの娘の懇願を受け入れず、身を引こうとしないどころか自分にナイフを向けたニキヤに憎しみを覚え、ニキヤを亡きものにしようと心に決める。 田中さん、表情はさほど変わらないのだけれど、それが逆に怖かったです。 

休憩を挟まず続けてニキヤとソロルの婚約式。
インド&太鼓の踊り、オウムの踊り、壷の踊りは一切なく、いきなりワルツが始まる。 ここは男性二人の方が女性たちより良かったように思います。 

田中さんはテクニックがしっかりしているのですね。 イタリアンフェッテもグラン・フェッテも軸がしっかりしていて綺麗でした。 上体とアームスは好みじゃないのですが(これは彼女に限った事ではなかったので・・・)、踊り全体から幸せを掴みつつある喜びのようなものも感じられて良かったです。
木村ソロルの表情はさすがに晴れやかではなく(ここは難しいところですよね)、踊りもそれほど好調のようではなかったけれど、ジャンプして空中で足を打ちつけるところなどはとても綺麗でした。

ニキヤの登場。
ここからは本当に目が忙しい。 で、絶対何かを見落としちゃうんだよなぁ! ちょっとソロルが見え難い角度だったので、ソロルソロルと思っているうちに大僧正とマグダヴェーヤを見るのを忘れてしまった・・・。 普通ラジャってアイヤに耳打ちする以外は威厳を保って静かに座っていると思うのですが、高岸ラジャはやたら歩き回っていて、しかもなんだか良い人入っちゃってるから、3人の緊迫したドラマの空気が一瞬緩んじゃうんだよな。
花かごの踊りが他の版と大幅に違うのも残念。
マカロワ版は残酷ですね。 毒蛇にかまれたニキヤが事切れる時、かけよったソロルが間に合っても間に合わなくても、ソロルの腕の中で死んでいけてもいけなくても、死ぬ瞬間にソロルの心と視線の中に自分が居るのはせめてもの救いなのかもしれないのに、マカロワ版では、ソロルは振り向きもしないまま、ニキヤの生死などどうでもよいというかのようにガムザッティに寄り添いその場を後にする。
心と体が裂けるほどに苦しい断末魔の瞬間にさらにニキヤに絶望を与える。 このシーン、ぞっとしてしまいました。 (あ、でも蛇がトカゲサイズだったのはちょっと・・・・)

<2幕>
ソロルのテント。 
ソロルのヴァリがあるのですね。 懺悔のヴァリ? 悔恨のヴァリ? 見かねたマグダヴェーヤが少しでもソロルの心を静めようとアヘンを勧める。
背もたれに孔雀の羽が並んだカウチがゴージャス(笑)

影の王国のスロープがわりと低めな位置から出ている1段スロープだったのが少し残念。
コール・ドは24人なんですね。 ロイヤルもそうだし多けりゃいいってものでもないけど、やはりここは32人欲しいです。 すべてのダンサーがスロープを下り終わって6列にそろいアラベスクで終了するまで、グラグラする人もあまりいなく、綺麗に揃っていました。
ヴァリエーションは第2と第3がマリインカやマールイ、ロイヤルとも順序が逆だったのでちょっと驚いた。 3人とも悪くはないですが、それぞれまだ踊りのニュアンスをつかみきれていないようだった。 
ついでに気になったのが紗幕。 通常ヴァリの前に紗幕は上がると思うのですが、ずっと張られたままでした。
美佳さんは、やはりここが一番良かったように思います。 消えてしまいそうな儚さと空気のような軽さがまさに幻影そのもの。 ラインも美しくヴェールの踊りもなんなくこなしていたけれど、終盤少し力つきたかな? ソロルを許しているのか語りかけているのかは分かりませんでした。 一方木村ソロルは、ただひたすらニキヤの魂に寄り添いたい、ニキヤを感じていたいというように見えました。

夢から覚めたソロルに結婚式の準備を促す人々。 一歩一歩にじり寄るようにソロルを追い詰めるガムザッティの姿に、この結婚にソロルの意志など無力なのだと改めて感じさせられた。

<3幕>
結婚式の幕開けの暗いステージにただ一人大きな仏像の下で踊られるこの踊りは婚約式のディベルティスマンの一つとして踊られるのとは全く意味合いが違うのですね。 すでにここは神の意の支配下にあるという暗示を与えているような気がします。 松下さんは出の跳躍も中盤の回転もとても良かったと思うけれど、素顔がなんつーかきょとん顔で可愛いので、もう少し雰囲気に重みがあるとよかったなぁ。

重苦しい空気の中の結婚式。
ソロルは夢からは覚めたもののニキヤの幻影から離れる事ができず、ニキヤを失った絶望の中にいる。 それを感じとってしまったガムザッティのソロは、悲しみと焦りと苛立ちとラジャの娘という気位の高さが入り混じった複雑な心情を表現するとても難しい踊りのように感じたけれど、田中さんの踊りは見事だったと思う。 侍女が恭しく差し出すようにもって来た花籠にガムザッティが慄くところも好きです。 分かりやすいし!(笑)
ソロルがニキヤの魂をはっきりと感じ始めたあたりからの木村さんは、何かが憑依したんじゃないかと思うくらいの体の動きと熱演だったように思います。 ある意味、狂ったみたいだった。 最後に壇上からガムザッティが私を殺したと訴える美佳さんニキヤの血の気のない冷ややかさがまた怖く、主役3人の渾身の演技による素晴らしくドラマティックな終幕だったと思います。

終演後、この物語はソロルとソロルを取り巻く人たちの絶望の物語と感じました。 それだけに、ニキヤとソロルの魂があの世で結ばれるラストシーンは要らないなと。
3幕はずっと紗幕越しだったのですが、これは勘弁してほしい。 演出効果は感じないし、オペグラで覗くと網目がはっきり見えるんですよ。


ニキヤ:吉岡美佳
ソロル:木村和夫
ガムザッティ: 田中結子
ハイ・ブラーミン(大僧正): 後藤晴雄
ラジャ:高岸直樹
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):高橋竜太
アヤ(ガムザッティの召使):松浦真理絵
ソロルの友人:柄本弾
ブロンズ像: 松下裕次
侍女たちの踊り(ジャンベの踊り):西村真由美、乾友子
パ・ダクシオン:
佐伯知香、森志織、福田ゆかり、村上美香
吉川留衣、矢島まい、川島麻実子、小川ふみ
平野玲、横内国広
影の王国(ヴァリエーション1):岸本夏未
影の王国(ヴァリエーション2):奈良春夏
影の王国(ヴァリエーション3):乾友子
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コメント
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はじめまして。日本のバレエ団では
東京バレエ団が好きなとりもとと申します。
「ラ・バヤデール」私は2,3日めを見てきました。
ソロルがニキヤの死を後に退場するシーン、
木村さんのは見そびれたのですが、後藤さんは
退場する一瞬前に振り返りかけて、でも
うつむき加減に彼女を見ずに行ってしまいました。
手前の参列者がそんな彼を見つめていたのが印象的です。

三幕の紗幕、邪魔でしたね。私もオペラグラスで
見ていたので気になりました。
もしかして神殿崩壊で落ちてくる岩や稲妻を
映写していたのでしょうか?
2009/09/30 02:37  | URL | とりもと #mGCrWk.A[ 編集]
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とりもとさん、はじめまして。

コメントをありがとうございました。
土、日の公演をご覧になったのですね。 26日の公演で大僧正を好演していた後藤さんが、どんなソロルを演じるのかはとても興味があったのですが、1幕の終わりはそのようでしたか・・・。
まっすぐ前を見ていた木村ソロルと振り返りかけた後藤ソロル、それぞれ心の中ではニキヤにどんな思いを向けていたのでしょうか? 最後の横須賀公演が終わったら、それぞれのニキヤとソロルについてどういうイメージで演じたのかというような事を制作日記で紹介してくれたりすると嬉しいのですけれど・・。
神殿崩壊の様子、ロイヤルのDVDをよ~~くチェックしたら何かわかるでしょうか?(笑)
次の上演の時にはなんとか考えて欲しいですね。
2009/09/30 21:00  | URL | M #il9tusdg[ 編集]
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お返事ありがとうございます。
後藤ソロルはいい意味で甘い雰囲気で
一幕前半はひたむきに恋に夢中にみえました。
国王の命令だからでもあるが主体性は薄かったです。
結婚式でもあからさまに「なぜこのような事に」と
深く後悔してるのがありありと見えるソロルでした。
それがかえって「ひどい人だな」と思えたりして。
心配していたスタミナも最後まで持ちまして(笑)

製作ブログでその辺りはぜひ触れてほしいですね
見そびれたシーンもまた見たいし、紗幕の改善の上
再演を待ちたいと思います。

2009/09/30 23:57  | URL | とりもと #mGCrWk.A[ 編集]
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とりもとさん、

後藤さんは、ガムザッティとの結婚を承諾したものの(断れもしないけれど)、
ニキヤへの想いを隠す事のできないソロルだったのですね。
なんとなく納得です。
彼はよくスタミナが切れちゃう事があるようなので、今回、体力的にもきついソロルを
最後まで無事に踊れて本当に良かったです。
きっと友佳理さんのおかげもあるのでしょうね(笑)

婚約式の踊りが少ないなど多少物足りない部分もあるのですが、
マカロワ版ならではの良さもあると思うし、バヤデルカを好きなバレエファンは多いので、
是非、近いうちに再演して欲しいです。
その時には小出さんのニキヤが見られるでしょうか?
友佳理さんがニキヤなら小出さんがガムザッティというのもいいかもしれません。
けっこう気の強そうな役も似合いますよね!
2009/10/01 21:53  | URL | M #il9tusdg[ 編集]
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