小林紀子バレエ・シアター トリプルビル 8月20日の感想
2009/08/25(Tue)
「レ・ランデヴー」
振付:フレデリック・アシュトン
ステイジド・バイ:ジュリー・リンコン
作曲:ダニエル・オーベール
編曲:コンスタント・ランバート
美術:ウィリアム・チャペル

プリンシパルガール 小野絢子
プリンシパルボーイ 中村誠
パ・ド・トロワ 真野琴絵、佐々木淳史、八幡顕光
パ・ド・カトル 難波美保、宮澤芽実、志村美江子、泰伸世、瀬戸桃子より4人
パ・ド・シス 中尾充宏、佐藤禎徳、澤田展生、冨川直樹、土方一生、アンダーシュ・ハンマル

舞台奥に設置された白く高いゲートが開くと白い衣装に身を包んだ男女6組のカップルが次々に登場してくる。
女性は白でスカートの裾にピンクの縁取りが付いたロマンティックチュチュに白のロング手袋着用、そして頭にはピンクのリボン。 男性は白のブラウス&タイツに刺繍か何かのアクセントがあったようなベスト。 場所は公園という設定で、そこに新しく社交界にデビューする7組目のカップル(プリンシパルガール&ボーイ)が華やかに登場し、みなと挨拶を交わす。 一応社交界なので、それぞれのカップルたちが互いをさり気なく意識しあう雰囲気も感じられて良かったです。
小野さんは可愛らしい衣装も良く似合って可憐な感じが引き立つ。 アシュトンらしい独特な振付もさらりと音楽性豊かにこなしてしまう。 中村さんは柔らかな身のこなしが美しく優雅なのだけれど、小野さんとのユニゾンで音に遅れがちだったのが少し残念。 ヴァリエーションは良かった。
パ・ド・トロワの振付もアスリートのアップ(腿上げみたいな)のようなステップがあってやはり一種独特。 3人とも良く踊っていたと思うけれど跳躍などは八幡さんが目を惹く。 
カトルはほどよく纏まっていたと思うけれど、シスの男性はばらつきもチラホラ・・・。 このシスでなんとなくコルプ&船木(スキージャンプ)似の中尾さんが気になり始めた(笑)


「The Invitation」
振付:ケネス・マクミラン
ステイジド・バイ:ジュリー・リンコン
作曲:マティアス・セイバー
美術:ニコラス・ジョージアディス
照明:ジョン・B・リード

少女 島添亮子
少年 後藤和雄
母 大森結城
姉妹 小野絢子、萱嶋みゆき
住み込みの家庭教師 楠元郁子
妻 大和雅美
夫 ロバート・テューズリー
雌鳥 高畑きずな
雄鳥 冨川祐樹、富川直樹、アンダーシュ・ハンマルより2人

幕が開くと、そこには裸体に近い女性と男性の彫像が4体置かれている。 子供たちや先生らしき女性がいるので学校かと思ったが、どうやらある邸宅の中庭らしい。 その後に現れる大人のカップルなどと合わせて、この邸宅の女主人の招待でパーティーに集まってきた客人たちのようだ。 作品のタイトルの「The Invitation」というのがようやくここで理解できた。

子供たちは性に興味を持ち始め、異性を意識し始める年頃のようで、世の常か?親や教師は必要以上に神経質になり、裸体像を白く大きな布で覆ってしまう。 そんな不自然な事をされれば子供たちは余計に興味が沸いてしまうもので、布をめくり挙げる始末。 子供たちの中で互いに淡い恋心をいだいているのが島添さん演じる少女と後藤さん演じる少年。 お互いに相手の自分に対する気持ちを分かりながらもそれを確かめようと唇を重ねようとする様子などは、まだ犬がじゃれているほどのたわいもなさと初々しさがある。

大和さんとテューズリーの中年夫婦。 黒のタキシードに髭を蓄えているテューズリーは絵に描いたような紳士なのだけれど、妻に視線を向ける事も会話する事もなく物憂げにも見える。 そんな夫が少女に目を留める。 夫の中の男が目覚めつつあるような視線が少女に注がれるのに嫉妬を覚える妻。

夫の気持ちを自分に引き寄せようとすればするほど彼に疎まれてしまうのはわかっていながら、不安と自尊心が入り乱れた思いで必死に夫にすがりつこうとする妻と、妻を乱暴に扱う夫のPDDは緊迫感の中に複雑なリフトがたっぷり盛り込まれて見事だった。 テューズリーの磐石のサポートを受けた大和さんの、妻の激しい心情そのままに全身をしならせながら見せた踊りが素晴らしかった。
それでも答えてくれない夫に女として深く傷つき、行き場のない満たされない思いに打ちひしがれている彼女の前に現れた少年。 後藤さんはその女性に驚きながらも、年上の女性の醸し出す退廃的な色香に惑わされる少年を好演。 ここでの妻の行動は悔しまぎれに少年を誘惑したというよりは動物的な欲望とまだ女としての魅力があるという事を確信するための悲しい性のような気がした。

島添さんの少女からは、少年と向き合っている時は無邪気でまっすぐでおどおどした感も漂うのに、夫の視線に気づいてからは、大人の男性が自分に心惹かれているようなのが嬉しいという気持ちだけの無防備な接近というよりは、少女の持つ健全な色香を通り越した大人の女の艶を持った、何かを期待した挑発というような感じを受けてしまった。 まぁ、それがこのくらいの年の少女たる所以かもしれないし、この辺は非情に微妙なところなので、私にはそう見えてしまっただけなのだけれど。 
レイプシーンは立ったままの夫の後姿と表情は見えない少女の腕と脚の動きですべてが語られている。
テューズリーは夫役としてはどうなのだろう? 根っから暴力的で不埒な男である必要はないにしても、あまりにも紳士然としていて、ギラギラした感じがなく、最後までブレーキがかからないというにはちと説得力に欠けるかも・・・。
ただ、犯された後の少女の放心と恐怖心、正気に返った夫の心からの後悔と懺悔から、起こってしまった事の取り返しのつかない重大さと残酷さは伝わってきた。

崩れ落ち、自責の念にうなだれていた夫は、すべてを見抜いたような妻に抱え起され少女のもとを去って行く。 丸まっていた背中をピンと正し前を向いて歩き出した夫と、変わらぬ笑顔をみせる少年の前から思わず後ずさりしてしまう少女の対比。 客席には、重苦しいというよりこの作品をどう解釈しどう受け止めたらよいのかと困惑ぎみな空気が流れていたような気がする。


「エリート・シンコペーションズ」
振付:ケネス・マクミラン
ステイジド・バイ:ジュリー・リンコン
作曲:スコット・ジョップリン他
衣装:イアン・スパーリング

The Cascade 高畑きずな、萱嶋みゆき、大森結城
Hot-House rag 中尾充宏、中村誠、富川直樹、八幡顕光
Caliope Rag 高畑きずな
The Golden Hours 萱嶋みゆき、中尾充宏
Stop-Time rag 高橋怜子、冨川祐樹、中尾充宏、中村誠、冨川直樹、八幡顕光
The Alaskan rag 大森結城、八幡顕光
Bethena-a Concert Waltz 高橋怜子、冨川祐樹
Friday Night 冨川直樹

シンコペーションのリズムを特徴とするラグタイムの音楽に乗せて繰り広げられる、同じマクミランの作品とは思えないほど明るく楽しい作品。 ステージ手前に弧を描くように並べられた椅子で好き勝手に寛ぎながら、真ん中で踊るダンサーたちと一緒に盛り上がる出演者たち。
ラグタイムというのはクラシック音楽より遅いリズムと思われてつけられた「ragged-time」が略されて「 ragtime」となったものだそうです。
ともかくダンサーの衣装が奇抜で賑やかで・・・。 バンドのメンバーも似たようなガラのシャツでステージ奥に陣取っての演奏で、こちらを見ているのも楽しい。

メインカップルは高橋さんのしなやかな動きと冨川さんのおれ様でしっかりとしたサポートが良かった。

でもなんといっても私的一番はThe Alaskan Rag! 大森さんと八幡さんののみのカップルが可笑しくて可笑しくて。 小さい八幡さんが君と踊る!といって選んだパートナーが椅子から立ち上がると自分よりも大きくて・・・という感じでのダンスは大森さんの大胆な脚や全身の動きに八幡さんが振り回されながらも健気にサポートするというユーモア溢れるダンス。 八幡さんの渾身のリフトも二回くらいあったけど、2人とも大変だろうなぁ・・・。 踊り終わった二人・・・、大森さんの膝の上に八幡さんがちょこんと腰掛けながら仲間のダンスを見ている様子がまたまたほのぼの。

カスケードの3人、踊りは皆良かったけれど、表情や雰囲気はやっぱり萱嶋さんが好きだなぁ! 中尾さんとのPDDも素敵でした。 中尾さんの外野でのコルプちっくな強面芸風の盛り上がりもナイス。
男性たちの踊りはもっと弾けてくれても良かったと思うけれど、こういうダンスはキレとノリが大事だよな。 全体的な印象としても、もっと自分を解放してひたすら音楽と遊んで踊れるようになれば、もっとエネルギッシュで魅力的なパフォーマンスになると思うけれど、ダンサーたちそれぞれが楽しそうで、いつでも全員参加なまとまりのある雰囲気がバレエ団の結束力の強さを見せたような気もする良い舞台でした。

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