チェンジリング
2009/08/05(Wed)
「チェンジリング」
原題: CHANGELING  (2008年 米 142分)
監督: クリント・イーストウッド
出演: アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコビッチ、ジェフリー・ドノバン、マイケル・ケリー
鑑賞日: 7月18日 (DVD)

チェンジ

1928年。ロサンゼルスの郊外で息子・ウォルターと幸せな毎日を送る、シングル・マザーのクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)。だがある日突然、家で留守番をしていたウォルターが失踪。誘拐か家出か分からないまま、行方不明の状態が続き、クリスティンは眠れない夜を過ごす。そして5ヶ月後、息子が発見されたとの報せを聞き、クリスティンは念願の再会を果たす。だが、彼女の前に現れたのは、最愛のウォルターではなく、彼によく似た見知らぬ少年だった。(goo映画より)

オープニングクレジットの音楽からもうイーストウッドワールドだと感じる。 この作品では監督だけでなく音楽もクリントが手がけているのだけれど、全篇を通して心にすーっと染み入ってくるような静かでどこかもの悲しいメロディーが印象的だった。
イーストウッドの映画を見終わると、いつも決まったように浮かんでくるフレーズが、「何も足さない、何も引かない」、というもう10年以上も前のサントリーのウィスキー「山崎」のキャッチコピー(笑)。 アンジー演じるクリスティンを中心にさまざまなドラマ、事件が絡み合って展開していったこの作品はまさしくそのアプローチが物を言ったのではないかと思う。

チェンジ1


警察が息子のウォルターだと言って連れてきた少年は全くの別人だといくらクリスティンが主張しても全く聞く耳を持たないジョーンズ警部。 またしてもロス市警の腐敗ぶりと傲慢さを目にすることになるのだけれど、警察のイメージ回復のためにクリスティンを利用したあまりにも理不尽な対応の連続、挙句の果てには精神障害と決め付けて管轄下にあるも同然の精神病棟に隔離してしまうという暴挙には驚きと憤りしか感じないし、これが事実だというのにはぞっとさせられる。

このまま精神病院でズタズタにされるのか、それとも屈服せざるを得ないのかという彼女の窮地を救ったのは、かねてからロス市警の腐敗ぶりを社会問題として取り上げ、新聞で知ったクリスティンの事件にも関心を寄せていたブリーグレブ牧師だった。
これが転機となり、牧師の知り合いの辣腕弁護士が無報酬で彼女の弁護を引き受け、警察を相手にした裁判が始まり、世間の注目を集める。 精神病院での不当な患者の扱いも問題視され、自由を失っていた人たちも解放される。 クリスティンが圧力に屈しない強い気持ちを持てるようになるきっかけを作ったキャロルという女性と無言で見詰め合う2人の再会シーンはいいシーンだったな。

時を同じくして開かれていた裁判はクリスティンが病院に隔離されている間に発覚した凶悪な連続誘拐犯の審議だった。 その事件の被害者に息子のウォルターが含まれている事も明らかになる。 クリスティンの勝利、凶悪殺人犯ゴードンの死刑へと物語りが進んでいく間には、ウォルター同様行方不明になっていた少年が両親の元に戻ってくるという出来事や、その少年からウォルターも一緒に逃げたと聞かされたクリスティンが、ウォルターの消息を求めてゴードンと接触を持つ様子なども描かれ、緊張感が緩む事は全くない。
醜態を晒しまくったロス市警ではあったが、この凶悪事件の全貌を明らかにし、犯人逮捕にまでこぎつけたのはレスターという一人の刑事の熱意とプライドだった。 実話であるだけになんとなく救われたような気もする。 

役者たちの演技もとても素晴らしかった。
良心がこれっぽっちも痛まないのかと言い寄りたくなるようなジョーンズ警部を演じたジェフリー・ドノバン。 人を見下してそうでどことなく冷淡な表情を浮かべるジョーンズを心底憎たらしいと思わせたのだから、彼の演技は抜群だったのでしょうね。
珍しく?全くの善意の人を演じたジョン・マルコビッチが、滲み出てくるような深い愛情と強い信念のようなものを穏やかさの中に隠しながら演じていたのが印象的だった。
アンジーも時には絶望的になりながらも自分を奮い立たせながら、自分の前に立ちはだかるものに対して凛とした姿勢で臨む芯の強い女性を好演。 ただ、この役での彼女の肉感的な唇に真っ赤なルージュというのが好みではなかったせいもあり、個人的には「マイティ・ハート」のアンジーの演技の方が好きだった。 

大きな苦しみと悲しみを乗り越えたクリスティンが刑事に別れを告げ、力強く歩き去っていく後姿にほっとするような、どこか切ないような、そんなラストシーンが非常に秀逸。 

チェンジ3


DVDデータに載っていた撮影秘話ですが、撮影を始めたばかりの頃のアンジーは、イーストウッドの1シーン1テイクという早撮りに戸惑ったそうですが、次第にエモーショナルなシーンなどでは何度もやるより一度の方が生の感情が吐き出せるとイーストウッド方式の良さを実感したそうです。 そしてそのイーストウッドは役者が硬くならないように、「アクション!」の代わりに「それでは動いて」という掛け声を使ったのだそうです。
この記事のURL | 映画(た行) | CM(4) | TB(2) | ▲ top
<<マールイ カンヌガラのキャストなど | メイン | 親子で楽しむ夏休みバレエ祭り 8月2日の感想>>
コメント
- こんにちは~♪ -
Mさん、こんにちは♪^^

これ、ストーリーとイーストウッドの演出の見事さが際立ってましたが、それに負けないくらい、Mさんが書いてらっしゃるように役者さんたちも、ほんとに素晴らしかったですよね~。
それぞれの俳優さんについて書いてらっしゃる事、
そうそう、うんうん、と頷きながら読ませていただきました。
マルコヴィッチとイーストウッドの「ザ・シークレット・サービス」のことも、Mさんのコメントで思い出させていただいて、あ~~そうだった~!となんだか嬉しく^^再見したくなりましたわ^^
思い出させてくださって、ありがとうございます!!!^^

マルコヴィッチのあのねち~っとした悪そうなところとか(^_^;)穏やかなしゃべりとか、あの風貌とか、何もかも好きなんですよ~(^^ゞ

>「何も足さない、何も引かない」、というもう10年以上も前のサントリーのウィスキー「山崎」のキャッチコピー(笑)。

ありましたね~!
Mさん、すごい!イーストウッドの映画ってまさしくそんな感じ。言い得て妙です!!!
見てる時は、時にとても辛くなるような内容だったりするんですが、見終わった後はいつまでも心にずーんと残ってるような映画だなぁってつくづく思います。
2009/08/07 09:22  | URL | メル #mQop/nM.[ 編集]
-  -
メルさん、こんばんは☆

イーストウッド大ファンなので、見方が甘いかなーとも思うのですが、絶対見ごたえ十分に決まっているという勝手な思い込みを裏切ることなく、期待をさらに超えて満足をさせてくれるのだから、やはり彼は凄い監督だなと思います。

出演者に関しては感想に書いた以外にも凶悪犯ゴードン役のジェイソン・バトラー・ハーナーやロス市警の中のヒーローとなったレスター刑事役のマイケル・ケリーも上手かったですね。 特にラストシーンのレスター刑事とクリスティンのツーショットは二人して存在感たっぷりでした。

マルコビッチは「ザ・シークレット・サービス」での挑戦的な知能犯役が強烈に印象に残っています。 多分あの映画でしっかりとマルコビッチの事を認識したと思うのですが。 喋り方も穏やかですし、やはり目が物を言うというか、優しく深い眼差しにもなるのでいーひと役も似合うんだなと今回実感しました。
2009/08/07 22:17  | URL | M #il9tusdg[ 編集]
- こんにちは♪ -
なんだか気味の悪い事件を扱っているのに、妙に心に残ってる作品です。
やっぱりイーストウッドだからかしら?
アンジーの唇にあの口紅の色はどうかと思うのだけど、きっと当時の流行色だったんでしょうね。
職場でローラースケート着用っていうのも新鮮でした。

母親目線だと、何年経とうと我が子は絶対に見分けられると思うの。
ジョーンズ警部たちの横暴さにはムカついてたまりませんでしたし、偽者のウォルターにも腹が立ったわ~。
2009/08/09 23:58  | URL | ミチ #0eCMEFRs[ 編集]
-  -
ミチさん、こんばんは。

いつもミチさんには全くタイムリーな作品ではないのに丁寧なコメントをありがとうございます。

>なんだか気味の悪い事件を扱っているのに、妙に心に残ってる作品です。
作品中、腹立たしい事や気味の悪い恐ろしい事件が起こっているのに重苦しい印象がないのは、派手で余計な脚色がないのと、もしかしたらアンジーが言うように1シーン1テイクならではの生の感情のぶつかり合いだからなんでしょうか?

職場でローラースケートというのも実際にやっていた事なんでしょうね。 それだけあちこち行ったり来たりしなくちゃ行けないほど多くのスタッフを抱えたやり手の女性だったんですね。 彼女の事を見守る優しい上司がけっこうお気に入りでした♪

2009/08/10 20:34  | URL | M #il9tusdg[ 編集]
コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top

トラックバック
トラックバックURL
→http://amlmlmym.blog15.fc2.com/tb.php/1586-708cdbf6

「チェンジリング」
ロス市警には怒り心頭!冷静になれなかったです …
2009/08/07 09:11  心の栄養♪映画と英語のジョーク
映画 【チェンジリング】
映画館にて「チェンジリング」 クリント・イーストウッド監督による実話の映画化。 おはなし:1928年、ロスアンゼルス。クリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)は9歳の息子ウォルターと暮らしていた。ある日、彼女は休日を返上して仕事をしてから帰宅する …
2009/08/09 23:54  ミチの雑記帳
| メイン |