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グラン・トリノ
2009/05/30(Sat)
「グラン・トリノ」
原題: GRAN TORINO (2008年 米・豪 117分)
監督: クリント・イーストウッド
出演: クリント・イーストウッド、ビー・バン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー
鑑賞日: 5月16日 (立川シネマ2)

グラントリノ2

朝鮮戦争の帰還兵ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)はフォード社を退職し、妻も亡くなりマンネリ化した生活を送っている。彼の妻はウォルトに懺悔することを望んでいたが、頑固な彼は牧師の勧めも断る。そんな時、近所のアジア系移民のギャングがウォルトの隣に住むおとなしい少年タオ(ビー・バン)にウォルトの所有する1972年製グラン・トリノを盗ませようとする。タオに銃を向けるウォルトだが、この出会いがこの二人のこれからの人生を変えていく…。( goo映画より)

グラントリノ


イーストウッドはこの映画を最後に俳優稼業からは引退するというような事を言っていたようです。 イーストウッド本人が自分の映画にそんなセンチメンタルな小細工をするとは思わないけれど、こちらが半分覚悟を決めて見ているせいか、集大成ともとれるほど過去の様々なヒーロー役が浮かんで来てしまった作品でした。

冒頭、妻の葬儀で牧師の話を聞きながら、息子たちのひそひそ話や孫たちの行儀悪さ、服装のだらしなさ、果てには牧師の話にまで眉をひそめ、嫌悪感を顕わにし、死者を悼んでウォルト家の会食に集まった人々には「ハムを食べにきただけだ」と切って捨てるウォルト。 偏屈爺にしろ、こんなに分かりやすい性格の主人公をイーストウッドが演じるのも珍しいと思う。

グラントリノ1


ウォルトのもう一つの憤懣の種はフォードの街として栄えた誇り高い街が、アメリカ自動車産業の弱体化によって姿を変えていき、近隣の住民がかつての同僚たちからアジア系移民に取って代わられている事だった。 ついでに言えば、自分の息子がトヨタの車に乗っているのも気に入らない。 良き時代のアメリカを知り、気高いアメリカ人という意識を常に持つウォルトは、ごく当たり前のように有色人種に対する偏見を持っている。

そんなウォルトが、いざこざを起こしているアジア系不良グループが自分の家の芝生に立ち入った事に腹を立て、彼らを追い払うために銃を向けた事が、彼らから嫌がらせを受けていた隣家の少年タオを救う事になり、モン族であるタオ少年の一家とのかかわりが始まる。 寡黙なタオとは対照的に話好きで明るくウィットに富んだ姉のスーに、ウォルトは自分でも不思議なほど自然に心を開いていくのだった。
モン族の人たちと打ち解けていくウォルトには、愛犬のみに向けられて、牧師や息子には決して見せなかった優しい眼差しがあり、目をかけるようになったタオを見守る表情からは慈愛のようなものすら感じられた。  
また、スーとタオに素晴らしい女性と結婚できた自分は幸せだとまで語るウォルトにも彼の別な一面を見ることができる。
それでも、「どうにもならない身内より、ここの連中の方が身近に思える」と呟いたウォルトが見いだした彼らとの平穏な日常も長くは続かなかった。 心静かに暮らすモン族の人たちやタオとスーの家族を守るために、ウォルトが不良グループを徹底的に痛めつけた報復としてスーが暴行される。 その事を知ったウォルトの怒りと悲しみと罪悪感。 この出来事がウォルトの人生をある地点に向けて急速に動かしていく。

どう決着をつけるのだろうと思っていた。 馴染みの理髪店に寄ったところまでは何か別の・・・と、希望をつないでいたけれど、彼がジャケットを直しに行ったところで、それがいつ着るためのジャケットなのかというのが暗示され、その後は見るのが少し辛かった。 

ウォルトは自ら教会に出向き、ヤノビッチ神父相手に懺悔をする。 朝鮮戦争に従軍し人の命を奪い、部隊の中で自分一人生き残ってしまった事はウォルトの心の中に暗い影を落とし重くのしかかっていた。 今でこそ帰還兵の精神障害や心痛について社会の理解が進んでいるけれど、ウォルトの世代ではそれを黙って耐えて乗り越えていくしかなかったのだろう。 亡き妻がウォルトに懺悔をさせるように神父に言い残していったのは、自分亡き後、誰にも心の内を明かす事のできない彼が苦しみから解き放たれ、少しでも穏やかな日々を送れるようにと願った妻の深い愛情だったのだと思う。

事の結末は、ただただ悲しい。 こうなる事が分かってはいても、これがウォルトの正義であり贖罪であり愛だと理解できても悲しさだけが残った。

映画の締めくくり方はいかにもイーストウッドらしい。 衝撃的なウォルトの映像からごく自然にもとのトーンに戻っている。 彼の息子家族は相変わらずだけれど、ヘソダシ娘の望みだけは叶わず! 
誇らしげな顔でグラントリノを運転するタオのとなりにはウォルトの愛犬デイジーが。 思わず微笑んでしまうラストシーンだった。

エンディングに流れる「グラン・トリノ」。 息子のカイル・イーストウッドも作曲に参加し最初の数フレーズはクリント本人が歌っています。 渋いかすれ声が、客席のあちこちから聞こえてくる鼻をすする音にかき消されそうだった・・・。

明日、5月31日はクリント・イーストウッドの79歳の誕生日。
役者引退宣言など撤回して、もし彼が心惹かれる役を見つけたらいつでもスクリーンに戻って来て欲しいです。 まだまだまだまだ十分に魅力的だもの!!

この映画の音楽の事も含め、クリントの長男のカイル・イーストウッドが父親の素顔を語ったインタビュー記事がこちら
そしてクリントがロスアンジェルスでスポニチ(なんでスポニチ??)の単独インタビューに応じ、俳優引退宣言とも受け取れる発言をした記事がこちら
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コメント
- こんにちは♪ -
今日がイーストウッドの誕生日なのねぇ。
79歳で主演と監督を兼ねるのはキツイかもしれないけれど、まだまだ彼の姿をスクリーンで見たいですよね。
あの曲はやっぱり最初の数フレーズは彼が歌っているのね。
とっても味があっていい声だと思いましたよ。
2009/05/31 22:58  | URL | ミチ #0eCMEFRs[ 編集] ▲ top
- トラックバックありがとうございます。 -
僕はあのシーンで唄が流れ出して救われた気持になりました。ウォルト老人が、伝えたかった大切なものは、ちゃんとタオに受け継がれたと思って。

クリントはいい脚本さえあれば、スクリーンに戻ってきてくれると思ってます!
2009/06/01 03:03  | URL | b_flat7 #pV44ABmc[ 編集] ▲ top
-  -
ミチさん、

190センチ近い長身のせいもありますが、病に侵されているという設定のためか?
階段の上り下りがけっこう辛そうで、やっぱりキツイのかしら?とちょっとだけ(笑)心配になりました。
イーストウッドは音楽にも造詣が深く、監督業と同じくらいの才能があるかもしれません。
と、クリントを褒め出したら止まりませんが、まだまだ兼業していただきたいです♪
2009/06/02 07:58  | URL | M #il9tusdg[ 編集] ▲ top
-  -
b_flat7さん、

クリント自身が歌うことでそういう意味も持つのですね。
私はただ憎い演出だな・・・と喜んでいただけでした。

タフガイ役じゃなければ(それも淋しいけれど)、まだまだ十分いけますね!
例えば、ミリオンダラーベイビーでヒラリー・スワンク(役名をわすれてしまった)のベッドサイドで彼女を見守っていた時のクリントの表情とか、大好きでした。
2009/06/02 07:59  | URL | M #il9tusdg[ 編集] ▲ top
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