エスプリ~ローラン・プティの世界~ 4月24日の感想
2009/04/28(Tue)
<第1部>
アルルの女  「アルルの女」より  音楽: ジョルジュ・ビゼー 
草刈民代、マッシモ・ムッル

ムッルのフレデリは、表情に翳りのある成熟した物静かな男性で壊れそうな繊細さとストイックさを感じさせる。 草刈さんのヴィヴェットはいじらしさも感じられたし、思いに答えてくれない夫に驚き混乱し悲しむ様子を表情やちょっとした仕草ではよく表していたと思うけれど、踊りを通して身体が語っていなかったのが残念。
フレデリの最後のファランドールのソロは、理性と内なる感情の交錯に耐え切れなくなった痛々しさが感じられるのだけれど、フレデリを捕らえて放さないものの存在というのは分かりにくい。


ヴァントゥイユの小楽説 「プルースト 失われた時を求めて」より 音楽:セザール・フランク
タマラ・ロホ、イーゴリ・コルプ

ロホとコルプという組合わせを見られるのも日本でこういう企画があればこそですね。 小柄で手足が長いわけでもなく幼さを感じさせるロホは好みのタイプのダンサーではないのだけれど、草刈さんの後に見たせいか?手足が伸びやかによく動くなぁという印象。  コルプはしなやかな身体の動きがいつものコルプ! ロホに向ける優しげな笑顔がツボ!


コッペリウスと人形  「コッペリア」より  音楽:レオ・ドリーブ
ルイジ・ボニーノ

ボニーノ的には観客の反応がイマイチと思ったのではないのかな?と思うくらい周囲は静かだった(笑) 以前、新国の全幕で見た時もそうだったけれど、相変わらず愛しの人形をぶんぶん振り回すんですねー。 

      
タイス パ・ド・ドゥ 「マ・パヴロヴァ」より 音楽:ジュール・マスネ
タマラ・ロホ、リエンツ・チャン

リエンツ・チャンは初見。 ダンサーとは思えない肩まわりの筋肉の付き方はまるで体操選手のよう。 絶対に吊り輪の十字懸垂ができそう!! この演目ではジャンプが重く見えてしまいましたが、最後ロホを片手で頭上にリフトしたまま全く危なげなく回転していたのはお見事。 リフトされているロホもかなりリスキーなポーズなのだけれど、チャンを信じきっている平然とした表情。 ただ、1演目おいただけでロホを見たせいか、振り付けにすでに既視感を覚える。


「オットー・ディックス」より ~切り裂きジャック~  音楽:アルバン・ベルク  ルル組曲より
草刈民代  イーゴリ・コルプ

この公演で一番楽しみにしていた作品。 というのも「切り裂きジャック」はいろいろな映画で猟奇殺人犯の代名詞のように頻繁に出てくるから・・・。 19世紀末にロンドンで起きた事件の犯人は捕まっていないので、切り裂きジャックなる人物がどのような人間なのかはわかっていないのだけれど、娼婦を極端に嫌う医師というのが有力説。 
この公演のプログラムを買っていないのでプティ版がどういう設定なのかはわからず。 さらにオットー・ディックスとは?と思い調べてみると、ドイツ人の新即物主義画家との事で、彼の作品が見られるこんなページもあった。
コートに帽子姿で上手袖から勢いよく回転を繰り返しながら飛び出してきたコルプは「はまり過ぎ・・・」というほどの風貌ですでに奇才ワールドに没入中。 赤毛のボブカットに紫色?のコート姿の草刈さんは擦れた娼婦というより、趣味は悪いけれどそこそこ品のあるマダムという感じ。 その2人がお互いの肉体を貪り合うと・・・。 この辺から自分の想像していた、娼婦への憎しみや殺人の快楽に浸るジャックをじっくり描いていくというドラマとはいささか違う展開になってしまった。 もっとドス暗い不気味な快楽殺人犯の狂気のようなものを期待してたんだけど・・・。  
最後、女が刺される時、キャーという悲鳴が入るのには興醒め・・・。 それでも女を殺し放心したようなジャックが身なりを整える事で正気に戻り、ニッとした笑いを見せたあと何事もなかったように消えていく姿は普通の顔をした殺人鬼が人々の日常に潜り込むという恐さを想像させて秀逸。


<第2部>
白鳥の湖 1幕2場より 男性のソロ/パ・ド・ドゥ  音楽:P.I.チャイコフスキー
草刈民代  マッシモ・ムッル

白鳥を男性が踊るこの作品はバイオリンではなくチェロが主旋律を奏で、ハープが寄り添う。 目にも耳にも新鮮。
ムッルの腕の動きがとても雄弁で美しく、冬の寒い朝のオオハクチョウの羽ばたきを連想させる。 草刈さんとのユニゾンもなかなか綺麗に合っていたと思います。 白鳥のムッルが草刈さんの身体に頬擦りするのがちょっとゾクっとくるのだけれど、草刈さんの硬質さがいい感じに中和してくれて、エロティックになりすぎる事もなく美しさが保たれていて好ましかった。


エスメラルダとカジモドのパ・ド・ドゥ 「ノートルダム・ド・パリ」より 音楽:モーリス・ジャール
タマラ・ロホ、リエンツ・チャン

ロホの自然な演技がとてもチャーミングだった。 チャンの逞しすぎる上半身はカジモド役にはうってつけ? この作品もリフトが多用されていたけれど、小柄なロホをいとも簡単に上下左右に運びまくる。 特にラストシーン、両腕を伸ばし体を一文字にしたロホを両手で抱え鐘衝きの撞木のように左右に揺らしていたのは圧巻。 優しげな表情もいいですね! 


ティティナを探して、小さなバレリーナ 「ダンシング・チャップリン」より 音楽:チャーリー・チャップリン
ルイジ・ボニーノ

「ティティナを捜して」は小道具の椅子を自分の身体の一部のように使いこなし、「小さなバレリーナ」では白いチュチュらしきものを首に巻き、両腕にポアントをつけてバレリーナの脚捌きをユーモラスに見せてくれた彼ならではのパフォーマンス。 楽しかったです♪


ジムノペディ  「マ・パヴロヴァ」より  音楽:エリック・サティ
草刈民代、リエンツ・チャン

暗がりでのサティは眠気を誘う・・・。 ここだけ見せられてもという作品に思えましたが、チャンがこの公演のメンバーである事の必然性に改めて納得がいきました。 万全なサポートとバレリーナへの真摯なマナーは誰からも信頼されるだろうなと。

 
モレルとサン=ルー侯爵  パ・ド・ドゥ 「プルースト 失われた時を求めて」より 音楽:ガブリエル・フォーレ
マッシモ・ムッル、イーゴリ・コルプ

ベージュのユニタード姿の2人。 ムッルの方が少しだけ背が高く少しだけ細い。 2人とも腕の動きが柔らかくて美しい。 そしてコルプは背中のしなりも素晴らしく持ち前のしなやかさを存分に発揮。
モレルはもっとどぎつく悪魔的なのかと思ったら(なんとなくね、コルプだから・・・)、静かに少しずつサン=ルーの心に入り込むという感じ。 絡み合う二人の肉体よりも交わされる視線がスリリングでもあった魅力的な作品だった。

   
チーク・トゥ・チーク   音楽:アーヴィング・バーリン
草刈民代  ルイジ・ボニーノ

草刈さんの引退公演最後の演目&フィナーレに繋がる軽妙洒脱な作品。 この粋な作品で、曲が流れた瞬間に顔も体も自然に反応するボニーノと渡り合うってのは並大抵の事ではないでしょう。 表情豊かにとても健闘していたと思いますが、ハイヒールを履いているせいもあるのかな?踊りがややおとなしめなのが残念だった。
他のメンバーも全員が黒の衣装に着替えてフィナーレへ。 それぞれが思い思いにステージ中央のテーブルと椅子を使ってのパフォーマンス。 カーテンコールの後にもう一度同じフィナーレのパフォーマンスが繰り返され、最後に男性4人から一人ずつ草刈さんに花が贈られる。 さすがの草刈さんも感極まって涙されていましたが、そこで号泣・・とならずすぐに晴れやかな笑顔に戻るのが彼女らしい。
東京公演だけ参加したロホも満足そうな笑顔だったし、男性4人は心から草刈さんに敬意を表しているようでした。 
草刈さんも、他のダンサー達も、長いツアー、お疲れ様でした♪
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