キエフ・バレエ「白鳥の湖」 11月24日の感想
2007/12/03(Mon)
<1幕1場>
コール・ドの衣装は白とブルーを基調にした爽やかな衣装。 女性は皆可愛らしく、男性は長身&美脚ダンサーばかりで溜息もの。 負けてるぞ! マールイ(笑)
ワレーリー・コフトゥン版には道化は出て来ない。 すぐに踊りはしなかったけれどトロワの登場が早かったです。 トロワの登場ってその前の音楽が終わるとコール・ドの後ろにいつの間にか3人が恭しく控えているっていう版が好きだったりする。
コルプ@ジークフリート王子登場。 気になっていたのは髪型だったんだけど、ふつーでした(笑) ま、客演ですしね。 とても若々しく屈託のない表情の王子だったのにも意表を突かれる。
ここの白鳥は1幕から王子の踊るシーンが多いので、コルプのしなやかでエレガントな踊りをたっぷり堪能できました。 彼の跳躍の高さ、背中の柔らかさ、床に吸い付くような着地はネコ科の動物の動きを思わせる。 瞳も獲物を狙うように妖しく光っているし!

トロワを踊ったセルギイ・シドルスキーは劇場ではほとんどの主役を踊っている長身のダンサー。 上品な動きに余裕があるのでポーズが美しく、着地の足も綺麗に決まっていた。 ただ、少し小さく纏まっていた感じがします。 
女性二人もそれぞれに良かったと思いますが、ブルーの衣装のテチヤナ・ロゾワの音に合った踊りとポール・ド・ブラの美しさ、細く長く真っ直ぐな脚で抜群のプロポーションが印象に残りました。 
トロワの踊りの最後には王子も加わり華やかさが一層増したコーダだったと思います。

祝宴に来ていた人たちが皆去って、一人で椅子にもたれグラスにつがれたお酒を飲み干す王子。 コルプ、妖艶すぎ! 祝宴のさなかでも、ふとメランコリックな表情を浮かべる王子は多いけれど、コルプのジークフリートは一人になるまではそういう心情をほとんど見せていなかったので、臣民の前では明るく立ち振る舞いながらも、彼の背負っているものに対する悩みは深いのだと改めて感じさせられた気がする。

<1幕2場>
ロットバルトのルスラン・ベンツィアノフは比較的小柄なダンサーなので、マールイのマラトを見慣れた目には少々物足りない気もするけれど、バネがあって直線的でシャープな踊りをするダンサーだった。 
ジークフリートの背後に潜み、王子に同じような振りをさせることによって王子すら彼の魔力で翻弄できるのだと匂わしている演出がなかなか良かった。
白鳥の気配にジークフリートは弓をひこうとする・・・。 そういえば、湖に戻ってくる白鳥たちの演出がなかったような・・・? でも、オマルの白鳥よりはない方がいいかも。
フィリピエワ@オデットの登場は、あまり白鳥を意識させないあっさりとしたものだった。 彼女はザハロワのような造形美に溜息をつくようなダンサーではないけれど、丁寧な踊りに情感が込められていた。 出だしは地味で硬い印象があったのだけれど、グラン・アダージョの途中あたりから、心と体の動きが一つになり白鳥の女王らしい気品の中にしっとりとした静かな情熱が感じられた。
コルプのジークフリートの醸し出す色気がフィリピエワのオデットの雰囲気とうまく溶け合っていたと思う。
広いフォーラムAのステージにコール・ドが18人体制と少なかったのは残念だったけれど、足音がほとんどしない見事な18人だった。 ただ、振り付けにやや鬱陶しい面があり、もう少し静かな方がいいと思ったところがあった。
小さな4羽の白鳥は4人の動きが揃っていて見事。 大きな4羽も皆良かったけれど、少々腿のあたりが太目ながらイリーナ・ボリソワの静止したポーズがとても綺麗だった。
夜明けが近づき別れの迫る二人は、切ないながらもしっとりと大人な雰囲気で叙情的。 背中を向け白鳥へと姿を変え、袖へと消えて行くフィリピエワの腕の動きが非常に素晴らしく、細かく動かされた両腕の動きはまるで湖の水面に次から次へとさざなみが立つようだった。

<2幕>
王子と王妃が登場し、舞踏会が始まる。 
前回の記憶がほとんどなかったので花嫁候補がチュチュなのにびっくり。 テチヤナ・ロゾワのチュチュ姿がまた美しい。 ここで初登場のユリヤ・トランダシルはさらにか細く長身のバレリーナ。
王子が誰も選ばず、王妃に叱責されているところへオディールとロットバルト登場。
続くスペインの踊りの上手側の男性。 なんとなくジョシュ・ハートネットに似ているけれど、一幕では髪を後ろで束ねてなかったっけ? 別人?? などと思っている間に終了・・・。
ヴェニスの踊りは男性一人に3,4人(失念)の女性がバック。 菅野さんは跳躍力に加え、回転も得意なようで、最後のグランド・ピルエットではほとんど軸もぶれず見事な回転を見せてくれた。 キエフ版に道化がいたら、まちがいなく踊りそうなダンサー。
舞踏会のシーン、たいていはロットバルトが王妃の横に不敵な笑みを浮かべて座り、会話など交わしているのだけれど、キエフ版は王妃はずっとひとりぽっちで所在無さ気・・・。
パ・ド・シスの中の音楽でロットバルトのソロ。 飛びまくり、回りまくりで、テクニックの見せ場てんこ盛りだったが、気ぜわしい感もあった。 この振りだと長身のダンサーにはきついかも。
オディールと王子のGPDDはとにかく素晴らしかった。 コルプ演じるジークフリートにも全く動じる事無く余裕でしたたかに誘惑するフィリピエワのオディール。 彼女、以前よりも綺麗になったように思いました。 
コルプはここでも伸びやかな踊りがひたすら美しい。
フィリピエワのグラン・フェッテはダブルを織り交ぜながら、高速で軸もぶれずに音楽をかなり残して終わってしまいました。 最後に別の振りを入れるほど余裕のあるグラン・フェッテは初めて見たように思います。
ジークフリートの愛の宣誓を目で促すように見つめるオディール。 王子が高々と誓いの手を上げると、してやったりと高笑いしたあげく、傷ついた王子をさらになぶるような仕草をして去って行くオディール。 凄かったです・・・フィリピエワ・・・。

<3幕>
2羽の白鳥の一人の田北さんの安定した踊りが良かったです。
戻ってくるオデットを迎えるコール・ドたちが手首をヒラヒラさせていたのがやけに印象に残っているが、好みでない。
オデットの後を追い、湖にやって来た王子はオデットをみつけると自分の過ちを詫びる。 オデットは深く傷ついているのだけれど、すでにそこには許しと慈愛があったように思う。 2人の演技の波長も合っていて、お互いを求め合う苦しく一途な気持ちがよく伝わってきた。 
ロットバルトとの戦いで、マリインスキーのように王子がオデットをリフトしたままロットバルトに向かって進むシーンがあるのだけれど、コルプの足腰の強さと盤石なリフトに感心しました。
一度は倒れた王子が起き上がり、持てる力を振り絞ってロットバルトに挑みかかりついに羽をもぎ取り勝利する。 悪魔の支配から解放された事が信じられないというような表情を見せながらも喜びに溢れたオデットが王子にかけよりハッピーエンド。


ゲストのコルプとバレエ団の中で別格の存在であるフィリピエワのコンビネーションがとても良く、脇も実力あるダンサー達で固めた良い舞台でした。
ちょっとした突込みですが、ラストシーン、王子とロットバルトの死闘の最中にオデットが舞台の奥を上手の袖に消えていくのは、オデット逃げる?みたいで、ちょっと?でした(笑)。 その後王子がロットバルトを倒した後に上手手前から出てくるだもの・・・。

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