山寺後藤美術館コレクション展 バルビゾンへの道
2013/11/13(Wed)
10月19日の記事で概要を紹介した「山寺後藤美術館コレクション展 バルビゾンへの道」を11月2日(金)に見に行って来ました。
「山寺後藤美術館から出展された約70作品で、バロック期から19世紀後半におよぶ神話画、宗教画、肖像画、静物画、そして近代へと向かう絵画の新たな可能性の扉を開いたバルビゾン派の風景画に至るヨーロッパ絵画の変遷を紹介する」というこの美術展、平日の午後でありながら、そこそこの来館者(閑散というわけではなく人混みという言葉を全く浮かべる事のない適度な密度の空間でした♪)でとても心落ち着くひと時を過ごせました。
その後に見に行ったターナー展の116点という出展の数にいささか疲れた事もあり(会場、暗すぎ!!!)、70点くらいの作品をゆっくりと、また気に入った作品は何度もじっくりと見ることができるのはなんて贅沢な事なのかしらなどと思ったりもしています。


展示は以下の4つのカテゴリーに分かれています。

神話・聖書・文学
美しさと威厳
風景と日々の営み
静物―見つめる


神話や聖書、史実を題材とした絵画が至高とされ王家や教会に飾られた時代から、裕福な貴族や商人が個人の肖像画を描かせるようになって絵画がより身近なものとなり、ルネサンスの頃に物語絵の背景だった風景が独立した風景画というジャンルに発展し、絵空事や神話ではなく現実社会そのものという意味の写実主義として田園風景や人々の生活を描くバルビゾン派へ繋がったという流れで見せています。
作品は本当に粒ぞろいで一つ一つの絵を見るのがすごく楽しかったのですが、自分の気に入った作品を少しばかり並べると・・・。

<神話・聖書・文学>
「エジプトからの帰還途中の休息」 ジュゼッペ・バルトロメオ・キアーリ
ヘロデ王が死に逃避先からエジプトへ戻る途中に休息をとる聖家族。 安らいだ表情で優しげにイエスをみつめるマリアさまの表情が秀逸です。 イエスの無邪気な微笑みも可愛らしい。 周りの天使たちの顔もみなおだやかでほんわりとした温かさが伝わってくる絵です。

「エジプトへの逃避」 ヴィットリオ・アメデオ・チニャローリ 
イエスの命を守るための逃避行の始まりなのですが、イエスを抱くマリアさまやヨセフからはそれほど緊迫感が感じられず、がんとして動こうとしないロバを天使がなんとか歩かせようとするなど、とてもユーモラスで微笑ましい空気に包まれています。

「リア王とコーデリア」 エドワード・マシュー・ウォード
静かに絶望と悲しみをたたえた二人の目の表情がとても印象的。

「パオロとフランチェスカ」 アレクサンドル・カバネル
頭の中ではチャイコフスキーのフランチェスカ・ダ・リミニの旋律が流れつつも、ジョヴァンニに殺されベッドに横たわるフランチェスカと彼女の側に崩れ落ちている姿にロミオとジュリエットを思い浮かべ・・・。


<美しさと威厳>
「ミルマン夫人の肖像」 エドワード・ジョン・ポインター
ミルマン夫人の憂いを帯びた美しい表情、綺麗に編まれた髪、ドレスの質感とレースなどの装飾の細かい描写が素晴らしい。

「栗色の髪の少女」 ジャン=ジャック・エンネル
わずかに定まらないような視点でじっと一点を見つめている少女。 毛先がぼやかされている長い髪の栗色と黒味のある青色のセーターが少女の何か思いつめたような表情をより強調している。

「婦人の肖像」 ギョーム・ヴォワリオ 
袖口のレースの描写が実に繊細で、思わず手を伸ばしてその感触を確かめたくなるほどにリアル。


<風景と日々の営み>
「庭にて」 ジャン=フランソワ・ミレー
唯一のミレー作品は水彩・パステル・クレヨン画でした。 こちらに背中を向けている小さな女の子の姿が今の日本のアニメでよく目にするような絵でもあるのだけれど、つくづく可愛らしい。 幼子への愛情たっぷりな目線というのは古今東西変らないものなんですねぇ。 

一番楽しみにしていたジャン=バティスト・カミーユ・コローは3作品
「サン=ロー近くの丘と牧場」 1835-40年頃
「水車小屋のある水辺」 1855-65年頃 
「サン=ニコラ=レ=ザラスの川辺」 1872年

若い頃の作品の「サン=ロー近くの丘と牧場」は他の2点とは違って色もあでやかにくっきりと描かれています。 空間の広がりも上手く言えませんが他の2点とはなんとなく違うような感じ。 
よくコローは銀灰色を帯びた色調が特徴的な靄の画家と言われますが、この展示会に出展された「サン=ニコラ=レ=ザラスの川辺」と「水車小屋のある水辺」は優しさと深みのある緑がとっても印象的でした。 森や木々を描いた他の絵同様に独特の遠近をつけながら丁寧に描きこまれた木々の葉の描写が素晴らしく、ちょっとひんやりとした湖畔の空気が感じられるよう。

「月明かりの湖」 アンリ=ジョゼフ・アルピニー
遠くで優しい光を放つ満月と水面に長く長く反射された月の光りが静かな湖畔に生命力を与えているような幻想的な絵で不思議な癒しを感じさせる。

「月夜の羊飼い(帰路)」 シャルル=エミール・ジャック 
こちらの月はダークトーンで描かれた羊飼いと羊の群れとは対照的に目もくらむような明るさを放っている。 月以外の光は全くない暗い帰路を急ぐ羊飼いの不安な気持ちを煽るような不気味な光り。

「フォンテーヌブローの森の小径」 ナルシス・ヴィルジル・ディアズ・ド・ラ・ペーニャ  
小径を囲む大きな木々の陰影とその道を抜けた先の陽だまりとの明暗のコントラストが見事で、木々の葉も丁寧に描かれていて美しい。


という感じですが(最後までおつきあいいただいた方、ありがとうございました)、18日(月)の最終日が迫って来ていますので、興味のある方はどうぞ見逃さないようお出かけになって下さい。

会場で買ったグッズはコロー「水車小屋のある水辺」の縦5センチのマグネット。
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バルビゾンへの道
2013/10/19(Sat)
渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで山寺 後藤美術館コレクション展「バルビゾンへの道」が開催されます。
期間は10月20日(日)から11月18日(月)で会期中無休との事。 開館時間は10時~19時ですが、金曜日と土曜日は21時まで延長だそうなので、会社帰りにもゆっくり見られそうですね。
出展元の山形市にある山寺 後藤美術館には、16世紀のバロック期から19世紀後半のバルビゾン派まで多様なヨーロッパ絵画が収蔵されていてその中から約70点が出品され、16世紀から19世紀に至るヨーロッパ絵画の様式の変遷を辿りながら古代の神話や聖書、文学作品などに基づく主題を展観することができるとの事です。
コローやミレーの絵がまた見られるのはとても嬉しい。
さらに展示会場内ではミュージアムの収蔵品コーナーを拡張して「バンクス花譜集」からオーストラリアの植物を描いた作品を約20点展示するとの事で、どんな花の図譜なのかこちらも楽しみです。
山寺 後藤美術館も貴重な収蔵品を持つ素晴らしい美術館(ガラス工芸アールヌーボーの世界も見たい!)のようで、新緑の頃に観光がてら行ってみたいです。
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ピーターラビット in GINZA 絵手紙120周年
2013/09/17(Tue)
東京・銀座のソニービルで10月1日(火)~14日(月・祝)まで「ピーターラビット in GINZA 絵手紙120周年」というイベントが開催されます。
絵手紙やヴィンテージの復刻品などピーターにまつわる展示やソニービルとの様々なコラボ企画を予定との事ですが、まだ詳細が明らかになっていません。 
ピーター誕生のきっかけとなった絵手紙は是非見てみたいですが、どんな趣向の展示会になるのやら・・・。
現在期間中に行われるピーターラビットについてのトリビアを紹介する3つのトークショーの観覧者を募集中との事です。 こちら
その日はコンサートがあって行けないけれどビアトリクス・ポター研究の日本における第1人者という河野さんの話は聞いてみたかったなぁ。

HPでも紹介されている10月始まりのB6サイズの手帳。 先日文房具店をふらふらしている時に目に入って思わず買ってしまいました。 メモ書き用のページもけっこう多くてピーターのイラストもふんだんにあり、ピーターファンには持っているだけでhappyな気分になる可愛い手帳です♪
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プーシキン美術館展(2)
2013/08/16(Fri)
さてさて、美術展の顔二つも良かったですが、それ以上に気になったり気にいったのは別の作品たちで・・・。

「民衆を導く自由の女神」が有名なロマン主義のウジェーヌ・ドラクロワは、歴史的な事件や物語を題材としてとりあげる事が多かった画家ですが、「難破して」はバイロンの長編詩「ドン・ジュアンの難破」から着想を得たそうです。 バイロンの長編詩といえば、バレエ「海賊」にも繋がり、足をとめてじっくり見てしまいました。 避難用の小船の上で二人の乗組員が水夫の死体を海に投げ捨てようとする様子が描かれていますが、生き残った人たちの運命を握る波立つ暗い海が不気味です。

同じくロマン主義のジャック=フランソワ・スウェバックの「旅回りの一座」というタイトル通り、旅の一座が道行く様子を描いた32x39の比較的小さな絵。 馬や人、遠くの木々の様子がとても細かく丁寧に描かれています。 特にほぼ中央に描かれた馬の頭に付けられた飾りが綺麗で質感も感じられるほどリアルでした。 一座のアイドル的な馬なのかしら?

「青の時代」から「バラ色の時代」への移行期である1905年頃に描かれたというパブロ・ピカソの「マジョルカ島の女」は微妙に焦点が定まらないような視線と意思を持って閉じられているような唇の表情が印象的。 それぞれに濃淡のある明るいブルーと茶のコントラストも美しくとても魅力的な作品でした。 女性の装いがイスラム風だということでマジョルカの人なのだろうと見なされているそうです。 

ポール・セザンヌの「パイプをくわえた男」。 物憂げな表情でテーブルに頬杖をつく男性自身にも目は留まったのだけれど、こちらも青と茶の色使いの美しさに惹かれる。 青と茶って自分ではあまり組み合わせないけど、意外に上品な感じがでるものなのだなぁと思ったりして・・・。 
キュービズムの誕生を予感させるものと言われているようですが、なるほど背景や洋服の色の区切りがそんな感じに見えなくもなく。

自然主義、バルビゾン派を代表するジャン=フランソワ・ミレーの「薪を集める女たち」。 ミレーの風景画と農民の暮らしを描いた作品は本当に大好きで、どんな絵も独特な色彩感が素晴らしく、自然や農民への尊敬の念が感じられる崇高な雰囲気が漂っているように思います。 こちらの作品は山中から大きな薪を運ぶ二人の女性にスポットライトが当てられていますが、手前の女性の背中ののけぞり具合からその薪の重さと労働の過酷さが伝わってきます。 
バルビゾン派とはフランスのフォンテーヌブローの森に隣接しているバルビゾン村やその周辺に居を構え、風景画や農民画を写実的に描いた一派です。

その隣に飾られていたのが同じくバルビゾン派のジャン=バティスト・カミーユ・コローの「突風」。 天気の急変を告げるような突風に2本の大木の枝葉がしなり、道を急ぐ一人の女性の姿が画面全体に緊張感を与えているように感じました。 暗い深緑と黒とグレーの色使いがなんとも言えない不思議な力を持っていて、しばし見入ってしまいました。
コロー展、5年前にあったのですよね・・・。 また近いうちにというのは無理ですかねぇぇぇ。

オリエンタリスムの画家と言われるウジェーヌ・フロマンタンの「ナイルの渡し舟を待ちながら」。 全体のトーンがライトブラウンにグレイッシュブルーで落ち着いた雰囲気。 遠くに見える地平線に沈んでいく太陽が描かれていて、らくだに乗った主人と二人の召使のいる川のほとりは広い原野の中なのだとわかります。 その空間の広がりにそこはかとない寂寥感が漂うようで・・・。 いったいこの人たちは舟が来るのを待ちながらどのくらいここにこうしているのだろう? 

その他、マルク・シャガールの「ノクターン」や詩人のアポリネールと恋人のマリー・ローランサンを描いたというアンリ・ルソーの「詩人に霊感を与えるミューズ」、などユニークさが際立つ作品も面白く見ましたが、自分の好みはやはり群集や風景を細かく描写する写実的な絵なんだなと再認識。 
美術館でもらってきたちらしを見ると、秋以降もさまざまな美術展が予定されていて9月にはミケランジェロ展も始まりますが、さしあたりとっても楽しみなのは10月8日から東京都美術館で開催されるターナー展です。 

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プーシキン美術館展(1)
2013/08/13(Tue)
今治タオルにひっかかったせいでプーシキン美術館展に入場したのは2時15分くらいでした。 
平日でも11時から14時くらいがかなり混んでいるという話でしたが、チケット売り場にもまだ50人くらいの行列が。 会場はというと、こういう美術展にありがちな入り口とメインの展示スペースは詰まっているという具合でしたが、気に入った絵を見に戻ることも問題なかったので覚悟していたほど混んでなかったです。 GW中にいったミュシャ展の方がやはり凄かった・・・。 ま、といっても混雑の感じ方は人それぞれですけどね。

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展示は以下の4つの時代に分かれています。

第1章 17~18世紀 古典主義、ロココ
第2章 19世紀前半  新古典主義、ロマン主義、自然主義
第3章 19世紀後半  印象主義、ポスト印象主義
第4章 20世紀    フォーヴィスム、キュビスム、エコール・ド・パリ


モスクワにあるプーシキン美術館は、モスクワ大学教授イワン・ツヴェターエフが「大衆の啓蒙のため、古典芸術の美術館を」と設立寄付を呼びかけ1912年にモスクワ大学付属アレクサンドル3世美術館として開館したことに始まる美術館だそうです。 1917年にロシア革命が起こり、新政府は芸術は人民のものとしてアレクサンドル3世美術館を国有化、国立モスクワ美術館と改名。 1937年にプーシキンの没後100年を記念して「プーシキン美術館」と改称されたとの事です。 
今回の美術展のテーマでもあるフランス絵画、プーシキン美術館に収められているフランス絵画の収集家については、美術館展公式サイトに詳しく説明されています。

ポスターやチケットにも使われているこの美術展の顔であるルノワールの「ジャンヌ・サマリーの肖像」の前はやはり一番人が多かったです。 わりと大きめなキャンバスを想像していたら56x47と思っていたより小さい絵でした。 夢見るように少しとろんとした眼差しが背景のピンク色の柔らかさと調和が取れていて幸福でまったりした時間が流れているような絵でした。

もう一つの顔である新古典主義の代表的な画家ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルの「聖杯の前の聖母」は堂々たる?116x84。 画面中央の聖母マリアだけが光に照らしだされたような背後との明暗の差が印象的ですが、少しあでやかすぎるマリア様でした。
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ベラルーシの子供たちから届いた絵
2013/03/04(Mon)
1986年に旧ソヴィエト連邦のウクライナ共和国にあったチェルノブイリ原子力発電所で大規模な事故があった5年後の1991年に、日本ユネスコ連盟協会は、被害を受けたベラルーシ共和国にある3つの芸術学校の10代の生徒たちが描いた絵を日本国内で巡回展示して募金を集め、それぞれの学校に寄付金として贈ったそうです。 
チェルノブイリの事故から25年後の2011年に起きた福島の原発事故。 そのニュースを聞いたベラルーシの芸術学校の生徒たちが、今度は自分たちが福島の子供たちを元気づける番だとたくさんの絵を描いて送ってくれたそうです。 こちら
現在日本ユネスコ連盟協会がその絵をパネルにして巡回展示しているのですが、2月25日から3月7日までの日程で吉祥寺のアトレ吉祥寺地下一階のゆらぎの広場(チケットポート前)に展示されています。

豊かな発想と色彩に溢れた作品の数々。 芸術学校の生徒の作品だけにどの絵も非常に上手いです。 この絵を描くために日本の事を一生懸命調べてくれた子供たちも多いんじゃないのかな? 
そんな事を思いながら絵を見ていたら、すごく元気が出てきました。 そのくらい心のこもった素敵な絵なのでお近くの方は是非絵を見にお出かけ下さい。 撮影不可という注意書きは見当たらなかったので写真を撮りました。 よろしければクリックして大きめな写真でどうぞ。

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遅まきながら国立トレチャコフ美術館所蔵レーピン展
2012/10/05(Fri)
先日、ザ・ミュージアムで開催中の「国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展」を見て来ました。 午後半休を取って平日に行って来たので、会場は比較的空いていてゆっくりと見ることが出来ました。
展示されているのはレーピンの初期から晩年までの様々なジャンルの油彩画と素描80点で、全くの個展というのもそうとう久しぶりでした。 個展だとその人の画風が自分の好みに合わないと辛い事この上なしなのですが、レーピンの作品はすべての絵が気に入ったと言ってもいいほど魅力的で惹き付けられました。 
これほど会場を立ち去りがたかったのも初めてかもしれない。

展示作品は以下のセクションに分かれています。
 I  美術アカデミーと<ヴォルガの船曳>
 II パリ留学:西欧美術との出会い
 III 故郷チェグーエフとモスクワ
 IV 「移動派」の旗手として:サンクト・ペテルブルグ
 V 次世代の導き手として:美術アカデミーのレーピン

ザ・ミュージアムのサイトの紹介に、
「重厚なロシア文学の傑作を読むのに匹敵する感動が得られる、直球型の展覧会」とあるのですが、自分にとってはまさにそれでした。 本当に直球なんですよ。 鋭い観察眼と深い洞察力によって捉えられた題材の持つエネルギーとか感情が真っ直ぐに自分に迫ってくるのですよね。 

レーピンから師匠であり友人のクラムスコイ(一昨年話題を呼んだ「忘れえぬ人」の作者)へ宛てた手紙に「人の顔、心、人生というドラマ、自然の印象、自然の生命と意味、歴史の精神。 これらが私たちの主題であると思います」とあるそうなのですが、この個展に出展されていた作品もみなそのような様々なテーマに迫った作品だったと思います。 どんなジャンルでも素晴らしいのは、レーピンが鋭い感覚を持っているだけでなく、それを率直に表現できる純粋さと心の平静さの持ち主だったからじゃないのかな。
完成作だけでなく習作やスケッチ画も素晴らしく、特にスケッチ画はどれも繊細で美しかったです。 一つの絵を描くのにとても綿密な準備をするのですね。 そしてこのスケッチ画からだけでも、この人が並外れた才能を持った絵描きというのがわかるほどの上手さです。 

一番気に入った絵は「トルコのスルタンに手紙を書くザポロージャのコサック」の習作。ウィキペディアの解説によれば、服従をせまるスルタンに対しコサックたちが嘲弄に満ちた返書をしたためるという伝説的場面が主題で、作品のコンセプトはさまざまな笑顔の見本との事なのだけれど、本当に群集一人一人の表情が実に豊かで生き生きとしています。 参考図版では習作よりもさらに大勢の人が描かれていて雑然とした雰囲気なのですが、酔っ払った男たちの下卑た笑い声やひやかしが聞こえてきそうなほどにリアルな描写でした。 人々の着衣の色彩がロシアのバレエ作品でしばしば見られるような賑やかな色なのも親近感がわきますね(笑)。
額に入れてどこかに飾ろうというわけではないのだけれど、思わず帰りに絵葉書を買ってしまいました・・・。

レーピンの出世作である「ヴォルガの船曳き」は習作や関連作が何点かありましたが、船の曳子たちのまとまりにフォーカスをあてた1870年の作品は習作が展示され、その作品に満足せずに手を加えて1873年に完成させた作品はレプリカが展示されていました。 1873年の絵では年齢や体格の違う曳子一人一人の表情や仕草が丁寧に描かれていて、内に隠している怒りや憤り、あきらめのようなものまでしっかり伝わって来ました。 表情だけでなく前方の男たちの倒した体の角度から曳いている船の重さが想像され、労働の過酷さを物語っています。

それ以外の群集画も本当に秀作ぞろいで、「パリのペール・ラシェーズ墓地内のコミューン犠牲者の壁の前における年忌追悼集会」、参考図版の「クルースク県の十字架行進」」なども、ただただいつまでもその絵を見ていたいという気持ちにさせられました。

絵の前で動けなくなってしまったのが疲れた表情で黙々と歩を進める二人の巡礼者を描いた「巡礼者たち」。 まるで写真かと思うほどリアルに描かれた二人の、何かを押し殺したような表情がたまらなく切ない。 レーピンにはその時の心境どころかその人の来し方までも見えてしまうのかと思わされるほどの表現力に圧倒されます。 また人物の写実性とは対照的に周りの風景はぼんやりと描かれていて、まるで油彩画に二人の巡礼者の写真を貼り付けたようなコントラストも面白い。

「傘をもてあそぶ婦人」はパリの女性の服装に感銘を受けたとの事で繊維がわかるような細かい描写で写真のような美しさ。 参考図版の「クルースク県の十字架行進」も写真のような照りでした。
柔らかな日の光に照らし出される人々が印象的だった参考図版の「新兵の見送り」は143x225という大きなキャンバスに描かれている本物を是非見てみたい。

歴史的なテーマを扱った作品では「皇女ソフィア」と「1581年11月16日のイワン雷帝とその息子イワン」の前でやはり足が止まりました。 特に特大サイズのキャンバスに描かれた「皇女ソフィア」は、激しい怒りを抑えるように両腕を組み、かっと見開いたソフィアの瞳の中に無念さも見えるようで、本当に素晴らしく迫力のある作品。

今にも小難しい話をしゃべりだしそうな「政治評論家イワン・アクサーコフの肖像」やムソルグスキーが亡くなる少し前に描かれた「作曲家モデスト・ムソルグスキーの肖像」、何か思いつめているような「レフ・トルストイの肖像」など多くの肖像画はそれぞれの人物の心理描写が見事です。
どことなく上から目線的な「ワルワーラ・イスクル・フォン・ヒルデンバンド男爵夫人の肖像」は「忘れえぬ人」を思い出しました。 そして妻を描いた「休息-妻ヴェーラ・レーピナの肖像」など、家族を描いた作品は優しい愛に溢れていましたねぇ。

この展示の中で個人的にインパクトが強かったのが「キャベツ」と「手術室の外科医エヴゲーニー・パーヴロフ」。
「キャベツ」は写真というよりは映像の一こまという感じで今にもキャベツの葉が風に吹かれて揺れ出しそうなくらいにリアル。 葉っぱには朝露なのか水滴までついてます。 静物画ももっと展示してくれればよかったのに。 草花を描いた作品があるのかどうかは知りませんが、そういう絵も見てみたかったですね。
「手術室の外科医エヴゲーニー・パーヴロフ」はよくよく見てみると患者の手足を押さえつけている助手が何人もいて手術医者は木槌を振りかざそうとしているという恐い絵です(笑) 手術室内が明るいのがちょっと救いだけど、これが暗かったら野戦病院みたいです。


ザ・ミュージアムでのレーピン展の会期は8日(月・祝)までです。 この連休、お時間のある方は是非是非お出かけ下さい。 
東京のあとは以下の美術館での展示が予定されています。

浜松市美術館 2012年10月16日(火)~12月24日(月・祝)
姫路市立美術館 2013年2月16日(土)~3月30日(土)
神奈川県立近代美術館 葉山 2013年4月6日(土)~5月26日(日)[予定]

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ピーターの切手
2011/09/27(Tue)
今日、郵便局でみかけて、速攻で買ってしまいました~~。 ピーター・ラビットの切手♪

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今年の3月3日に発売になっていたんですね~。 卒業や入学などの春のお祝いシーズンのお便りにと発行されたようです。 私が行った郵便局には50円切手のシートしか売っていませんでしたが、80円切手のシートもあるんですね。 そっちも欲しい! 50円切手はすべてが楕円系ですが(ちょっとわかりにくいですね)、

ピーター1


80円の方は大きさも形も様々。 うん、絶対欲しいぞ!!(笑) この切手、シールになっているので便利ですね。 誰にどの切手で一番にハガキを書こうかな♪

先日、友人からの手紙には可愛いキティちゃんの切手が貼られていて、それを見ただけでなんだかほっこりした気持ちになって彼女に会いたくなってしまいましたが、日本郵便、けっこう様々なジャンルの切手を発行しているんですねぇ。 こちら。 これからもっとウォッチしようかな♪
以前、やはり友人からもらった切手がこれです。
 
アトム

手塚さんの記念切手だったかな。
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エドガー・ドガ展 in 横浜
2010/06/09(Wed)
山手線の駅などにも大きなポスターが貼られていますが、9月18日(土)から12月31日(金)の期間、横浜美術館にてドガ展が開催されます。 
国内でのドガ展は21年ぶりだそうですが、代表作の「エトワール」も初めて日本で公開されるんですねぇ。
オルセー美術館からは45点、総数約120点もの作品が展示されるそうです。
ドガの描いた数々のバレエを題材とした作品を見られるのは今から本当に待ち遠しいのですが、私は今にも誰かが動き出しそうなドガの群像画が好きなので、バレエ以外の作品もどのような作品が展示されるのか、とても楽しみです。
チャコットの全面協力で「エトワール」、「バレエの授業」に描かれているバレリーナのチュチュが製作され、会期中は特別展示されるというのも嬉しいですね。 そしてこの美術展の広報大使は都さんなんですね。
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ちひろ美術館コレクション ミリオンセラーの絵本原画と世界の絵本画家たち
2009/07/11(Sat)
[特別展]ちひろ美術館コレクション ミリオンセラーの絵本原画と世界の絵本画家たちという美術展が本日より損保ジャパン東郷青児美術館で開催されています。 期間は8月30日(日)まで。 毎週月曜を除く(7月20日は開館)10時から18時まで、金曜日は20時までとなっています。
ちひろ美術館コレクションのミリオンセラーの絵本原画と国際アンデルセン賞やブラティスラヴァ世界絵本原画展などの国際的な絵本賞受賞画家を含む約18カ国70名120点の原画が展示されているそうです。
絵本の絵の色彩やデザインって独特のものがあるので大人が見ても楽しめますよね。 子供時代を懐かしく思い出させてくれるような絵もあるし。 子供の頃の自分はかな~~りお転婆で、外で男の子たちと遊びまわってご飯を食べたら疲れきって寝てしまい朝まで起きないタイプ(親は超楽だったらしい)だったので、あまり絵本は読んでいないし描くのも下手だけれど、絵を見るのはとても好きなんです(笑)。 
この美術展は伊勢丹アイカードからのお知らせで知り、100組200名様ご招待!というのに早速応募してみたのですが、こういうの、当たったためしがないんだよな・・・。 ちなみに同じくアイカードの映画「クヌート」鑑賞券50組100名様というのにも応募しました。 葉書だと葉書代がもったいなかったり、いちいち書き込むのがめんどうだったりしてやらないけどウェブは便利ですね~~。 ポチっでOKなんだもん。 だからね、余計に競争率高くて当たらないとは思うのですが・・・。

東京の美術展とほぼ同時期(7月11日(土)~9月23日(火))に安曇野ちひろ美術館で「世界の絵本画家展II」が開催されています。 こちらはちょっと不思議な絵や怖い絵を展示という事でこっちにも興味あるな~~!
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