12月29日 キエフ・バレエ「ジゼル」
2013/01/06(Sun)
<第1幕>
一幕は、なんというか、いろいろ突っ込みどころの多かった舞台でした。
最初に登場するアルベルトの従者。 アルベルトの御付になってまだ日が浅いのか、ご主人への思いが薄いです。 ついでに演技も淡白・・・。 「婚約者がおありになるのだから・・・」とジゼルとの逢瀬を止めようとしたのを聞き入れてもらえず、もう何が起きても知りませんからとへそを曲げちゃったんですかねぇ?(笑) 
狂乱の場でもほとんどアルベルトを気遣う素振りがなかったので、とりあえずこの場を離れようとアルベルトを促したものの、動こうとしないアルベルトを置いて上手に退いた時は、本当に主人を置き去りにしていなくなってしまったのかと思いました。 アルベルトのマントを手に戻って来てくれてよかった(笑)。  こんな余計な事を思わせられた従者も初めてでしたが、従者の存在の大切さや一つの役をきっちりイメージして演じる事の大切さ改めて意識したというか・・・。  

デニスのアルベルトはかなり軽くて、ジゼルの事は息抜きのお遊びというか、身分の違う村娘と接する事がもの珍しくてジゼルの純真さに新鮮な魅力を感じているように見えました。 
貴族であることがばれてジゼルに問い詰められた時には、困ったというよりやっかいだなというように嫌そうな顔をするし、死んでしまったジゼルに取りすがる様子も、ただ驚いているだけでとりかえしのつかない事をしてしまったという罪悪感はあまり見えなかったです。
一幕ではただ単に若い頃のように飛ばさなくなったというのではなく、彼にしては踊りに冴えがなかったような? ベンチに座るジゼルに話しかけている時にすでに大汗で息が荒かったので少し心配になりました。

フィリピエワのジゼルは野に咲く花のように可憐で慎ましやかで清らかな娘。 アルベルトを目の前に恥じらう姿にはあどけなさすらあってとても可愛らしい。 アルベルトへのまっすぐな思いを込めた軽やかで弾むような踊りも素晴らしかったです。 
狂乱の場は・・・、バチルダの手をとり口づけをするアルベルトを見た瞬間からすでに心は壊れてしまっていたように見えましたが、激しく錯乱するわけではなく静かだけれど完全に気がふれてしまったジゼルでした。 パッと開かれた大きな目が、楽しかった時を思い出そうとすればするほどうつろになり、そのまま事切れてしまいそうなほど。 そして居場所を失くしたように走り回っていたジゼルが母親と目があった瞬間に見せた、帰る場所を見つけたような安堵の表情はあまりに痛ましかった。

ハンスのヤン・ヴァーニャ、わかっていても大っきいです・・・。 「カルメン」のツニガやロットバルトがちょい悪入っていてメチャクチャかっこ良かったヴァーニャがくるみ割りの王子も踊るようになって、ハンスはどんな路線でくるのかと思いましたが、前者の系統。 ちょっと勝手にロマンチストな粗野で血の気の多い青年で、ティボルトやったらバッチリだろうなと思わせるようなハンスでしたねぇ。
これではジゼルにいくら想いを寄せても報われる事はないだろうなぁ。 迫る姿が怖すぎるよ・・・。
(ヴァーニャは3月のチャリティ・バレエで田北さんとジゼルとアルベルトのPDDを踊るんですねぇ)

ペザントの二人。 チェプラソワは上げた足の止め方というか向き?に少し癖があるように感じましたが、踊りはさらっと上手かったです。 ですが、パートナーのピサレフが、なんというか常に120%で踊ってますって感じの張り切りぶりというかいっぱいいっぱいぶりで見ていて疲れてしまったし、二人のバランスがあまり良くなかったです。
コール・ドは女性の背の高いダンサーたちは華やかで美しかったのですが、背の低いダンサーに発育のよろしすぎるダンサーが散見され、キエフっぽくないなぁと・・・。 


<第2幕>
ミルタのカテリーナ・カザチェンコは常に無表情で、氷のような冷たさも恐さもあまりなかったけれど、男たちの命乞いを淡々と拒絶する姿が人の持つ恨みではなくミルタの魂の仕業というような感じがして良かったです。
この日は、ミルタの持っている榊(にしては、葉ではなく丸いつぼみのような物がいくつも付いていましたが)がトラブル続きで気の毒でした。 初めにウィリたちを呼び出した時にそのつぼみのようなものが一つ落ちてしまい、その後ずっとステージの真ん中に転がっていたものだからダンサーが踏んで足を痛めないかと気になってしまい、若干集中できなかった場面も。 お墓の前でアルベルトを守るジゼルに向けた時には折れるだけでなく、折れた部分が本体から外れてまた落下してしまったし・・・(10日のジゼルでも同じだったとの事で、これはアクシデントではなく、こういう仕様らしいです)。
モンナとズルマはどちらがどちらなのかわかりませんが、プログラムから推測するに多分ユリア・モスカレンコが(眠りを見て、モスカレンコではなくアンスタシヤ・シェフチェンコと判明)スーパーモデルのように長身で手足が長く(マールイのマトヴェーエワみたい)、風が吹けば飛んでしまいそうな儚さでした。 

ジゼルの墓を訪れるアルベルト。 従者はアルベルトを連れて早く森から抜け出ようとしていましたが、アルベルトにはっきり拒まれると一目散に去って行ったなぁ。 もちょっと愛を!
自分の犯した罪を悔い、今はひたすらジゼルに謝りたい、それしか自分に出来る事はないというような悲痛な面持ちのアルベルト。 そんな悲痛な思いがジゼルの気配を感じて一緒に踊りだしてからは熱い思いに変り、踊りも熱を帯びてきたように感じました。  回転やブリゼなども体が自然に動いているような感じで一幕での心配は杞憂でした。
ウィリとなったジゼル。 フィリピエワは体力的に無理をしないように若干セーブしているようにも見えましたが、復活の回転やスーブルソーは見事で、体重を感じさせない浮遊感と滑るような足の運びも素晴らしかったです。 アルベルトを守る姿には生前のような熱い想いではなく、身分の違う叶わぬ恋だったとすでに納得した境地での優しく穏やかな愛情を感じました。


一幕始まるなり、今日の管楽器はパワー不足・・・などと思っていたらキエフ管ではなかったのですね。 ただそれ以上に気になったのはこの劇場が使っているジゼルのスコア。 今までに聞いたことのないほど軽め&明るめにアレンジされていました。 特に主旋律を奏でる弦パートでのそれは1幕の狂乱のシーンや2幕では違和感が大きくて。 ここにハープは要らないなぁというところもあったなぁ。
明るめといえば、2幕の照明も少し明るかったですね。 自分の目には楽だけど、もう少し落としてくれたほうが好みではありました。
ついでに、他に気になったのが客席から見える指揮者の飛び出し具合。 胸より上が見えたような?  ひょっとしてオケピットの指揮台がわりと高めなのかな。  あれでは前方のど真ん中あたりの席だと指揮者の姿でかなり舞台の視界が悪くなりそうです。


とまぁ、そんなこんなの2012年鑑賞納めの舞台でしたが、日本初上演となるキエフの「ジゼル」を心に染み入るような慎ましやかで慈愛に満ちたフィリピエワのジゼルで見られて良かったです。




ジゼル: エレーナ・フィリピエワ
アルベルト: デニス・マトヴィエンコ
森番ハンス: ヤン・ヴァーニャ
アルベルトの従者: ロマン・ザヴゴロドニー
バチルド(アルベルトの婚約者): オレシア・ヴォロトニュク
ベルタ(ジゼルの母): リュドミーラ・メーリニク
ペザント・パ・ド・ドゥ: エリザヴェータ・チェプラソワ,アンドレイ・ピサレフ
ミルタ: カテリーナ・カザチェンコ
モンナ: ユリヤ・モスカレンコ
ズルマ: アナスタシヤ・シェフチェンコ

指揮: オレクシィ・バクラン
管弦楽:東京ニューシティ管弦楽団
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12月22日 キエフ・バレエ「くるみ割り人形」
2012/12/25(Tue)
午前中にマールイのネット中継を見たので、マチネくるみ2本立てになってしまいました。 それがキエフのくるみの鑑賞中にいろいろなところで感心させてくれたり邪魔してくれたり・・・(笑)。
キエフにはあまり知っているダンサーがいないので、今回の来日メンバーに前回まで重要な役どころで活躍していたオリガ・キフィヤク、テチアナ・ロゾワ、ユリア・トランダシル、田北さんの名前がないのがちょっと淋しいです。
しかし、いつも思うのですが女性でカテリーナという名前が多いですね~。 ウクライナで一番多いくらいの名前なのでしょうか?
以下、備忘録的なつぶやきです。


<1幕>
フィリピエワのクララは可愛らしく賢くて慎ましげな少女。  彼女は年齢を重ねるにつれ可愛らしさが増すような感じがするのが凄いですね~。 クララを演じていてもその愛らしさは本当に自然でこれっぽっちも違和感がありません。
 
キエフのくるみ割り人形は女の子が演じるのですよね。 で、悪がきボーイズも女の子なので、なんとなく舞台上の空気が優しいというか・・・。 特に午前中にマールイの悪がきたち(マスロボエフがまだ頑張ってました~)を見た後だったから余計にそう感じたのかもしれません。 でもなぁ、ねずみたちとの戦闘の時にちょっと温い感じがしないでもないので、やっぱりくるみ割り人形は男性ダンサーの方がいいかも。

ねずみの王様は見かけはシャグマみたいな頭で長いコートを羽織って偉そうで勇ましいなりなのだけれど、ちょこちょこと歩幅狭く、胸の前で手首を下に向けて折っているのがちゃんとねずみちゃんでなんか可愛くて・・・。 

赤い軍服の上着に白タイツ姿がとても美しいシドルスキーの王子。 スター然としている人ではないけれど、クララがときめきを覚え、夢中になっていく夢の世界の王子様として十分な気品と魅力がありますよね。 フィリピエワとの並びもいいし、ダンスの息もぴったり。 

雪の精たちの衣装はブルーの背景に合わせてか白にブルーの刺繍が施されているチュチュなのだけれど、好みとしては純白のチュチュで幻想的な銀世界というのがいいな。 などと思いながら見ていたキエフの女の子たちは、みな背が高いという記憶があったのですが(記憶違いか?)、今回来日しているコール・ドはそれほど高くないというかほどほどの身長ですね。 白鳥はどんな感じなのかなぁ? 初日のわりには乱れる事無く足音も静かで良かったです。


<2幕>
そのままドンキが踊れそうな衣装のスペイン。 ステパンチェンコが最後に滑ったのか転倒したのが残念でしたが、怪我もなさそうで良かったです。 たまたまでしょうが、秋に新シーズンが始まって以降、けっこうあちこちの舞台で転倒を目撃しているような・・・。
東洋のカザチェンコはお化粧がちょっと・・・でしたが、体のラインのとても綺麗なダンサーで踊りは良かったです。 で、キエフの東洋といえば、前回はヤン・ヴァーニャにやられてしまったわけですが(笑 & なので今回の王子役にはちょっとびっくりです )、この日のセルギイ・クリヴォコンも長身スリムで精悍な顔立ち(そう見えました)で怪しくセクシーでした。 ひょっとしてロットバルトあたりにキャストされていないかとプログラムを確認してみましたが、まだ踊り的にそこまでは役がつかないダンサーなのかな。
中国の寺田さんは手堅く。 
ロシアは女の子のぼわ~~んとしたスカートが可愛い。 マクシム・コフトゥンはジャンプが柔らかく音楽にも綺麗に合わせていてとても良かったと。
フランスはスタイルの良い男女二組のカップルなのですが、これがまた見事に合ってなくて・・・。 ソコロワを除いてプログラムにもソリストとして紹介されているダンサーなのでもうちょっとしっかり美しく見せて欲しかった気もします。

クララと王子のPDD. 
フィリピエワの踊りは全くぶれがなく、お手本のように綺麗で一つ一つの動きに気持ちが込められていて丁寧。 他を圧倒する存在感がありながらも王子と交わす微笑みや音楽と戯れるように踊る姿に優しさと温かさを漂わせていて、見ているこちらまで心優しい気持ちになって幸福感で満たされます。 役によって差はあるでしょうけれど、踊りって本当にその人が出るんだなぁとつくづく感じてしまいます。
シドルスキーはリフトを含めたサポートは万全、ジャンプは軽快でマネージュの真っ直ぐ伸びた脚が美しかったです。

夢から覚め、両手で掲げたくるみ割り人形をみつめるフィリピエワの笑顔のなんとも輝かしい事! あ~良かった~、楽しかった~と心から思える素敵な舞台でした。 
そしてキエフの公演はいつもオーケストラがいいですね~。 この日のくるみも情感豊かな演奏が素晴らしく、また舞台上のダンサーとの一体感も感じられてさらにhappyな気分に♪ 






クララ: エレーナ・フィリピエワ
王子:セルギイ・シドルスキー
ドロッセルマイヤー: ロマン・ザヴゴロドニー
フリッツ: マリヤ・ドブリャコワ
ねずみの王様: イーゴリ・ブリチョフ
くるみ割り人形: カテリーナ・カルチェンコ
コロンビーナ: マリーナ・ステパンチェンコ
アルレキン: イーゴリ・コステンコ
サラセン人: アンナ・ボガティル、ミハイロ・ドゥロボト
シュタールバウム: ドミトロ・ルキヤネッツ
シュタールバウム夫人: リュドミーラ・メーリニク
スペイン: マリーナ・ステパンチェンコ、ヘンナージィ・ペトロフスキー
東洋: カテリーナ・カザチェンコ、セルギイ・クリヴォコン
中国: カテリーナ・ディデンコ、寺田 宜弘
ロシア: カテリーナ・タラソワ、マクシム・コフトゥン
フランス: エリザヴェータ・チェプラソワ、テチヤナ・ソコロワ
      アンドレイ・ピサレフ、イワン・ボイコ

指揮:ミコラ・ジャジューラ
管弦楽:ウクライナ国立歌劇場管弦楽団

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12月15日 新国立劇場「シンデレラ」
2012/12/18(Tue)
シンデレラは比較的公演数の多い7公演なので、主役二人以外のキャストが発表されてから観賞日を決める事にしていました。 川村さんが仙女にキャストされればその日にしたかったのですが、残念ながら彼女の出演日はなく、どうしたものかと思った矢先に山本さんが義理の姉たちを踊るというのでその内の初日を見る事としました。

その山本さんは長女の義姉役でしたが、アクションが大きく、後方や上の方の席からでも演技が分かりやすそうで、ご自身も楽しんで義姉になりきって演じているのだろうなと思いました。 もう、出だしからちょっとしたダンスも音楽にぴたりと合わせていちいち上手い。 2幕で舞踏会のゲストたちがいぶかしげに(笑)みつめるなか、一人真ん中でダンスを踊った時の存在感は流石でした。 彼を中心に舞台がびしっとしまった感じがしましたもの。
妹の高橋さんも義姉役は初めてでしょうか? ちょっと頭と気が弱そうな妹を好演していて山本さんとのコンビも踊り・演技ともに良かったです。 
アシュトン版の義姉さんたちは根は優しい人たちなのがいいですよね。 今回、山本さんの義姉は王子に見初められたシンデレラに恭しく頭を下げ、別れのシーンでシンデレラをひしと抱きしめる姿にはジンときてしまいました。 

小野さんは快活で明るく心優しいシンデレラ。 踊りはとても切れがあり、1幕のあの独特な足の動きのソロも軽快でしなるように柔らかい足先の動きが残像もくっきり残るほど。 くるくる変わるお茶目な表情も可愛いらしくとても魅力的でした。 
2幕のソロも伸びやかで軽やかで音楽性豊かで素晴らしいです。 舞台真ん中に立つ王子の周りをピケ(だったかと)で2周するシーン、ピケも綺麗でしたが、王子の周りを回るという振付自体がけっこう印象的です。
一つだけ、むむ・・っと思ったのは、王子の前でガラスの靴を履くシーン。 けっこうあっさりささっと(笑)と穿いていましたが、もう少し恥じらいながら幸せオーラを漂わせて穿いてくれればなおいいかなと。

福岡さんは彼らしいソフトで端正な踊り。 難しそうなステップとジャンプの組み合わせも着地をすんなり決めて技術的にとっても安定しているように感じます。 自分の目の前に広がる煌びやかな夢のような世界に驚きドキドキしながら心弾ませるシンデレラを優しくエスコートするプリンスぶりも爽やかです。 3幕の最後まで常に視線がシンデレラに向けられていて愛ある優しき王子だったのも好印象。 

強く凛々しい女を演じさせたらピカイチという印象が強い湯川さんですが、すべてを包み込むような温かみをもった仙女も似合いますね。 
仙女に呼び出された四季の精はみな良く踊っていたけれどいつ見ても夏の精の踊りは冗長に感じてしまいます。 一転、秋の精の踊りは非常に動きの激しいアレグロで腕の長い長田さんのラインがきれいでした。 春を踊った早乙女さんはアーティストからの抜擢なのですね。 新国も新しいダンサーの名前をけっこうキャスト表に見かけるようになったなぁ。 
続くコール・ドの星の精たちの踊りも鬼のアシュトンステップで本当に大変そうですが、さすがは新国が誇るコール・ド・バレエ、きれいに揃っていました。 ただ若干初日の硬さのようなものもあったので2日目以降はもっとスムースかと。

八幡さんの道化を見るのは2008年以来の3回目ですが、踊り、演技ともに素晴らしくて、この作品の道化ってこんなに舞台上にいて活躍してたっけ?と思うほど存在感がありました。   高く柔らかい開脚ジャンプ、速くて綺麗なピルエットなど踊りも調子良さそうでした。 義姉たちのドタバタぶりを少し離れたところで眺めながら手に持っている人形とやたらいろいろ突っ込みを入れているのが楽しかったです。 

今日の出演はあるのかな?と思っていたマイレンは王子の4人の友人で2幕と3幕にご出演。 他の3人は誰なのかよくわからないのですが、出だしの4人揃ってのザンレールは皆綺麗に決まっていて気持ちよかったです。 その中でもマイレンの流麗なムーヴメントは一際目を引きますが、誰よりも高く振り上げられた脚もさっと差し出された腕もエレガントで本当に美しいです。 やはりまだまだ真ん中で見たいダンサーだとつくづく思います。 アルブレヒトも見てみたかったなぁ・・・。




シンデレラ:小野絢子
王子:福岡雄大
義理の姉たち:山本隆之 高橋一輝
仙女:湯川麻美子
父親:石井四郎
春の精:五月女 遥
夏の精:西川貴子
秋の精:長田佳世
冬の精:寺田亜沙子
道化:八幡顕光
ナポレオン:吉本泰久
ウェリントン:貝川鐵夫
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12月2日 マリインスキー「オールスター・ガラ」
2012/12/08(Sat)
<第1部>
レニングラード・シンフォニー
音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ(交響曲第7番)、振付:イーゴリ・ベリスキー
娘:スヴェトラーナ・イワーノワ
青年:イーゴリ・コールプ
侵略者:ミハイル・ベルディチェフスキー


第1部 穏やかな幸せ
第2部 侵攻
第3部 レクイエム

プログラムの解説によれば、
作品で描かれているのは勝利を収めながらも帰還できなかった人々についての苦渋の物語で、61年の初演時、このテーマは子供の時に戦争(ドイツによるレニングラード包囲戦、41~44年)で家族を亡くしていた多くの若い出演者にとって身近なものだった。 
との事です。

ショスタコーヴィチの曲を使ったプロパガンダ色濃い作品で、振付や舞台美術なども時代を感じさせるものではあるけれど、少し思い気持ちになりながらもただただ舞台に見入ってしまいました。
このツアーお初のコルプ、あまり独自色を出さず、奇をてらう事無く普通に踊っている時が一番いい。 衣装も皆と同じ白いポロシャツ?にタイツだし。 爽快でダイナミックなジャンプ、不屈な精神が見て取れるような表情も良かった。  2部の最後か3部の冒頭で多分コルプのジャンプの前後で上手奥からエネルギッシュな跳躍でダイアゴナルに舞台を横切った男性ダンサー二人も見事でした。
2部、次第に音量が大きくなるスネアドラムを主体としたパーカッションの響きは侵攻軍が迫り来る様をおどろおどろしく表現し、茶色のTシャツ&タイツにデビルを象徴するような黒い兜姿の敵兵たちの踊りにも迫力があり不気味な恐さも感じられた。
そしてロパートキナからマトヴィエンコ、さらに変更となって娘役を演じたイワーノワがとても良かったです。
特に恋人や多くの人が次々に捕らえられ命を奪われていく凄惨な状況に恐れおののき悲しむ様、過酷な戦時下を生き抜いたラスト近くで、女の子たちが静かに多くの死者を悼むなか、失ったものの大きさを嘆き打ち震えながら怒りを顕にする様などがとても印象に残りました。 

すでに第二次世界大戦が終わって70年近く、東西の冷戦が終結して四半世紀近く経っていますが、だからこそ、この演目を上演する事は戦争の記憶を風化させない意味でも大切な事なのかもしれないですね。 ペテルブルグの若いダンサーが踊る事を通じて祖国を守ってくれた人々に思いを馳せ、舞台を見る観客も国を問わずまたそれぞれの戦争への意識を新たにする事ができるのですね。

余談ながら、
合わせて5時間半という、製作1974年のソ連映画「レニングラード攻防戦I」と77年製作「レニングラード攻防戦II」を友人から借りて見たことがあります。 900日近くにわたってドイツ軍に包囲されて兵糧攻めにされ、100万人以上のペテルブルグ市民が犠牲になった凄惨な状況、また母国を守るために戦線で戦う兵士たちの姿ををロシアの視点から描いた大作です。 ショスタコーヴィチの音楽を聴きダンサーの踊りを見ながら映画のシーンが断片的に思い出されました。


<第2部>
「アルレキナーダ」よりパ・ド・ドゥ
音楽:リッカルド・ドリゴ、振付:マリウス・プティパ
ナデジダ・バトーエワ、アレクセイ・ティモフェーエフ

バトーエワがとてもチャーミング。 フェッテで一度落ちてしまったのは惜しかったけれど、そのまま笑顔で最後まで愛らしく楽しげに演じていて良かったです。 ティモフェーエフは跳躍力があり、リズミカルな踊りの中にコミカルな味もうまく出していたと思います。 見ている時はもっとあれこれ思っていたのですけど、さら~~っと忘れてしまってもう思い出せない・・・。


グラン・パ・クラシック
音楽:ダニエル=フランソワ=エスプリ・オーベール、振付:ヴィクトル・グゾフスキー
アナスタシア・ニキーチナ、ティムール・アスケロフ

ニキーチナは白鳥など白いチュチュだと上半身が少しぽっちゃり見えたりもするのですが、足が長く綺麗で美人ダンサーなので、グラン・パの濃いロイヤルブルーのチュチュはすっきりと見えてとても映えます。 マリインスキーのガラでは過去にテリョーシキナの素晴らしいグラン・パを見ているので当然の事ながら満足はしませんが、彼女がまだコリフェという事を考えれば致し方ないのかなと思います。 アラベスクなどの静止のポーズは伸びやかでとても綺麗だし、無理にバランスをとってグラグラする事なく出来る事だけでさらっと纏めたのもかえって好感が持てました。 わりと押し出しの強そうなバレリーナなので、今回のツアーで踊った中では一番彼女に合っていたのではないかと思います。
アスケロフは悪くはなかったですが、腕の動きに神経が行き届いていなく、長い腕だけにもったいないです。 ニキーチナに合わせてもう少しきびきび踊ってもらった方が自分的には好みでした。


チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、振付:ジョージ・バランシン
マリーヤ・シリンキナ、ウラジーミル・シクリャローフ

辛口です。
客席からの盛大な拍手を思えば、とても良かったパフォーマンスなのでしょうが、あまり感心せず。
チャイパドってもっと爽やかで、二人の踊りが次から次へとよどみなく繰り広げられていくというイメージなのに、シクリャローフのあの気合の入れまくり方はなんだろう。 どうだどうだと言わんばかりの自己満足&陶酔丸出しで、純粋に踊る事を楽しんでいるダンサーの幸福感でこちらの心を満たしてくれるなんて事はこれっぽっちもない(完璧に去年のルグリガラのフォーゲルと比べてますが、個人の感想だしお許しあれ)。 
シリンキナは上手いし安心して見ていられますが、この演目にしては踊りが柔らかすぎるかな? 好みとしてはもう少しメリハリをつけて欲しかった。 
ただ、音楽のテンポももうちょっと速い方がと思ったところもありましたからね・・・。


海賊
音楽:アドルフ・アダン(リッカルド・ドリゴ)、振付:マリウス・プティパ
オクサーナ・スコーリク、アンドレイ・エルマコフ

今回の来日でスコーリクを見るのはこれが初めてですが、キーロフの腕と脚を持つ白鳥向きのバレリーナですね。 もうちょっと気持ちに余裕をもって踊れるといいなぁと思いますが、長身のエルマコフとの並びもとてもいいですねぇ。 メドーラのヴァリをイタリアン・フェッテで見たのは初めてのような気がしますが、これも華があっていいですね。 エルマコフは体躯が好みなので今回の若手メンバーの中では一番のお気に入り。 爽やかな雰囲気に高い跳躍と空中でのキレのある動きはアスリートっぽくて、なんとなくゼレの風(笑)を感じます。 最近はロパートキナと踊る事も多いようですが、この先主役を踊れる男性ダンサーとしてうま~く育つといいなと思います。
そういえば、現時点ではエルマコフと言えばズヴェーレフ(キャラかぶりまくり)なズヴェーレフ、ガラで見られず残念でした。 


ビギニング
音楽:エリック・サティ(グノシエンヌ第1番)、振付:ウラジーミル・ワルナワ
イーゴリ・コールプ

ルネ・マグリットの「人の子」という絵画からインスピレーションを得た作品で今年の6月12日にミハイロフスキー劇場のガラで初演したばかりとの事ですが、コルプの奇才の世界も、さすがにパクリタルの「白鳥」を初めて見た時のような驚きや斬新さもないので、それほど強烈な印象はないです。 サティのこのメロディーはすごくコルプに合っているような気はするんですけどね。 
振付のウラジーミル・ワルナワは、古典からコテンテンポラリー、ジャズに至るまで既成の枠にとらわれない柔軟なスタイルが特徴の1988年生まれの新進気鋭の振付家及びダンサーとの事です。


ディアナとアクテオン
音楽:チェーザレ・プーニ、振付:アグレッピナ・ワガノワ
エレーナ・エフセーエワ、キム・キミン

さぞかしこの演目が合うだろうと思っていたエフセーエワでしたが、もちろん悪くはないけれど彼女にしては思い切りがよくないというか、時々持ち前の切れ味の良さとエレガンスの間でバランスがとれなくて踊りが萎縮しているような気がしなくもなく。 それでもサニーの笑顔を見るとこちらの気持ちも明るくなります。 年齢的にも30歳を前にして、これから彼女がどんな風に変化していくのか楽しみですが、まずは日本バレエ協会公演のオデット&オディールに期待!
キム・キミン(なぜかフルネームになる・・)の高くて滞空時間の長い跳躍に目を見張る。 手足も長く、かなり身体能力の高いダンサーなのだろうけれど、体つきがあまりに華奢なため、アクテオンの衣装やポーズがあまり様にならないのが惜しいと言えば惜しい。 


<第3部>
「パキータ」よりグラン・パ
音楽:ルードヴィヒ・ミンクス、振付:マリウス・プティパ
[ソリスト] ウリヤーナ・ロパートキナ、ダニーラ・コルスンツェフ
[ヴァリエーション] ダリア・ヴァスネツォーワ、マリーヤ・シリンキナ、スヴェトラーナ・イワーノワ、アナスタシア・ニキーチナ

同じくコルスンツェフがパートナー、そして豪華なソリストが揃った2006年のロパートキナ・ガラでこれ以上の上演はあり得ないだろうという素晴らしいパキータを見ているだけに、さほど期待はしていませんでした。
でも、やはり凛とした表情で高雅な佇まいのロパートキナが登場すると一瞬にしてその世界に惹き込まれます。 若い娘パキータの結婚式というよりは、在位xx年の女王の式典という風格です。 パキータの振りでは腕を後ろから前に回すあの独特な振りがとても好きなのですが、その腕の振り、ステップ、決めのポーズのどれを取っても本当に美しい。
リュシアンのコルスンツェフは正直ちょっと踊りが重かったような気がします。 体も3年前よりは肉がついてるし・・・、踊りはバヤデルカの日が一番体が動いていて良かったかな。 でも古典演目でロパートキナの芸術性を損なう事無く、エレガントな身のこなしと自然体の確実なサポートで彼女と同じ世界を作り出せるのはダニーラならではなのですよね。 どんな時でも最高に美しいあの腕。 ファンですから勝手に言わせてもらってます(笑)。 そして時々見つめ合って微笑みをかわす二人のなんと絵になる事!!
マリインカのパキータはマールイのまだ終わりじゃないよ!と違ってあっさりと終わってしまうのがなんとも淋しかったのですが、ツアー最終日のガラのおおとりで、格調高い舞台をみせてもらって幸せでした。

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11月20日 「白鳥の湖」 ロパートキナ&イワンチェンコ
2012/11/26(Mon)
ロパートキナが府中で踊るなんて、これほどのキャスト変更の嵐がなければあり得なかった事なのでしょうね。 もともと一度の予定だった白鳥を2度踊ってくれる事になったのも嬉しかったです。
ロパートキナのオデットが登場するだけで会場の空気が明らかに変る。 どんな会場でもどんな客層でも自分の姿を見せた一瞬にして多くの人を引き込んでしまうのだから本当に凄い事ですよね。 
彼女の凛とした美しい姿は変りませんが、以前と比べると孤高という感じは薄らいだように思います。 王子の存在をちゃんと感じさせるオデットでした。 ポーズの一つ一つが美しくエレガントなのも変りませんが、長い腕の使い方が巧みで空気を包み込むようにゆったり動かすと本当にその場から飛び立ってしまいそうにも見えます。
この日はオディールがとても印象的でした。 時々きっとした表情であたりを見渡しながら、ロットバルトにはこの悪巧みを楽しんでいるようなニヤリとした視線を投げかけるみ凄みのある美しい黒鳥。 動きはとてもシャープ。 シングルの32回転は、中盤以降位置はずれたけれど最後は音楽に合わせ、ダブルで真っすぐ前を向いてピタッと止める気持ちの良い終わり方でした。 

イワンチェンコのジークフリートを見るのは2度目なんですが、予期せずやって来た一度目というのは忘れもしない2006年12月8日の上野文化会館。 コルスンツェフが足の怪我の治療のために急遽降板というショック&絶句状態で、舞台上のダンサーを見る視点も定まらないような心理状態で見ていたあの日の王子だったのです。 イワンチェンコには全くいい迷惑ながら、心の中で「なんでダニーラじゃないの?」と何度呟いた事か・・・。
そんなめちゃくちゃ失礼な気持ちで見ていた6年前の懺悔の気持ちも込めてしっかりと見せていただいた今回でございます。
オールバックで落ち着き払ったイワンチェンコは相変わらず成年式を迎える王子には見えないけれど、彼の髪形は今では立派な?トレードマークなので、お、今日もオールバックね!とほっとするというか。
サポートは安定していて上手いのでロパートキナも安心して踊っているように見えます。 踊りは片足での回転や跳躍はやや精彩に欠けていましたが、シェネは美しかったし、立ち振る舞いはとてもノーブルでした。 
ちょっと気になったのは、オディールに騙された2幕のラスト。 たぁ~~っと湖畔目指して走り去っていく王子がほとんどだと思いますが、彼はオディールに愛を誓ってしまった指先をみつめ、その手を額にあててうつむいた後、くるりと向きを変えると、トットットという感じでなんとなく力なく去っていったのですよね・・・。 階段登ったらすぐ歩いちゃうし・・・。 思わず、心の中で「こら!」と叫んでしまった(笑)。 
でも、なんというか憎めないんですよねぇ。 けっこうくったくのない笑みを見せたり、ロパートキナのサポートもガシッて感じで男気もあり、あんまり悲愴な顔しないし・・・。 なぜか途中からこの人って素はとても陽気で人がいいんだろうなと思い始めてしまってですね・・・。 
ともかく最後まで丁寧に踊っていて破綻もなく、今更ですけどとても好印象なイワンチェンコでした。 

ロットバルトのエルマコフは長身で踊りが大きくジャンプは高いしサポートもしっかりしているので良いダンサーだと思います。 魔界を支配している強さや邪悪さなどロットバルトの内面的な表現はこれからですね。 まだ自分が客席からどんなロットバルトに見えるのかなんて考える余裕はないんだろうな。 で、残念なのは顔中描きまくりで原型がこれっぽちもないメイク。 もう少し表情がわかりやすい程度のメイクにすれば、ハンサムフェースも生きたのに。 

パ・ド・トロワはシリンキナの可憐な踊りは良かったですが、バトーエワが途中振りを忘れてしまったように踊りを止めてしまったというのはちょっとなぁ(バヤデルカの壺の踊りはとても良かったので、こちらは踊りなれてないのかな?)。 メンバーの限られた引越し公演で贅沢を言えない事は百も承知ですが、マリインスキーだったらもうちょっと・・・というのはありますね。  マールイの豪華メンバーでの素晴らしいトロワを長年見て来た事もあり、充実感も華やぎ感もいま一つ物足りないなと。

道化のイリヤ・ペトロフは3年前の「イワンと仔馬」で仔馬を演じていたダンサーですね。 ほっそりとした体型はあの時のままかなぁ? 王子の事が大好きでいつもまとわりついている子どもの道化が楽しそうに踊ったりふざけたりという感じでした。

コール・ドは時々フォーメーションが乱れていたりもしましたが、わりと揃っていたように思います。  ただ、大きな4羽も2羽の白鳥も皆綺麗だしきっちりと踊れているのでしょうが、腕や脚の動きが直線的というか、スパスパ動いていてたおやかに詩情を感じさせてくれる踊りではないのですよね。 多分若い子ばかりだからその辺は仕方ないんだろうなぁ。 あとは床とホールの音響のせいか、2階で見ているとドシッ、バタッとけっこうな足音が聞えて来たのがけっこう気になりました。

ディベルティスマンは可もなく不可もなく。 
どこのバレエ団でもスペインは特に期待しちゃうのですが、長身で見栄えのよい黒い衣装のヤングラゾフはまだそんなに踊りこんでいないのか、キャラクテール歴浅いのかポーズ踊りともにちょっと温かったのが惜しい。 相変わらずバッチリスペインなバイムラードフとのコンビでは可哀想ですかね?
前回はそのスペインで目を惹いたイオアンニシアンが今回はハンガリーで光ってました。 下半身が細いけれどハンサムでスタイルも良いので彼のような人が次代の王子になれればいいけれど、そういう方向には進めないのでしょうかね? 一幕一場で多くのダンサーがいる中でも一際目立っていて物腰も綺麗だったので期待してみたいんですけどね。

終演後の客席からの拍手は盛大で、スタンディングオベーションの盛り上がり。
主演二人も満足そうな笑顔でした。




オデット/オディール:ウリヤーナ・ロパートキナ
ジークフリート王子:エフゲニー・イワンチェンコ
王妃 (王子の母):エレーナ・バジェーノワ
王子の家庭教師:アンドレイ・ヤコヴレフ
道化:イリヤ・ペトロフ
悪魔ロットバルト:アンドレイ・エルマコフ
王子の友人たち:マリーヤ・シリンキナ、ナデジダ・バトーエワ、ティムール・アスケロフ
小さな白鳥:エレーナ・チミリ、スヴェトラーナ・イワーノワ
      アンナ・ラヴリネンコ、エレーナ・フィルソーワ
大きな白鳥:アレクサンドラ・イオシフィディ、ヴィクトリア・ブリリョーワ
      ダリア・ヴァスネツォーワ、アナスタシア・ペトゥシコーワ
2羽の白鳥: ユリアナ・チェレシケヴィチ、アナスタシア・ニキーチナ
スペインの踊り:アレクサンドラ・イオシフィディ、アナスタシア・ペトゥシコーワ
        イスロム・バイムラードフ、カミル・ヤングラゾフ
ナポリの踊り:アンナ・ラヴリネンコ、ワシーリー・トカチェンコ
ハンガリーの踊り:オリガ・ベリク、カレン・イオアンニシアン
マズルカ:リリア・リシュク,ユーリヤ・ステパノワ
     マリーヤ・シェヴィアコーワ,イリーナ・プロコフィエワ
     ドミトリー・シャラポフ,セルゲイ・コノネンコ
     ソスラン・クラーエフ,イワン・シートニコフ
花嫁たち:ヴィクトリア・ブリリョーワ,ダリア・ヴァスネツォーワ,
     アリサ・ソドレワ,エカテリーナ・ボンダレンコ,
     ヴィクトリア・クラスノクツカヤ,ユリアナ・チェレシケヴィチ
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11月15日マリインスキー「バヤデルカ」ロパートキナ&コルスンツェフ
2012/11/22(Thu)
バヤデルカ(マリインスキーはラ・バヤデールを使っているのですけど、今回はこれで通します)は最も好きなバレエ作品のうちの一つ。 そしてそのバヤデルカで、私にとっての最高のペアという主演キャスト二組のうちの一組の舞台、ずっとずっとずっと待ち焦がれた念願の舞台でした。

<第1幕1場>
マグダヴェアのグレゴリー・ポポフの美しい筋肉と高く滞空時間の長い軽やかな跳躍に目を見張る。 いかにもこういう筋肉系のダンサーのバネの効いた跳躍というのは数多く見ているけれど、ポポフの跳躍は柔らかくて美しい。 マグダヴェアにしては身長もあるので抑制がきいている踊りながら迫力もありました。
演技もしっかりしていて、特に大僧正に言い寄られるニキヤを心配そうに振り返りながらチラチラ見ていたのが印象深い。

ダニーラ@ソロルの登場。 や、もう、この瞬間から緩んでいく自分の顔筋をどうしたら良いのかわからず・・・。 マグダヴェアを呼ぶために手を打つ姿も勇猛果敢な戦士というよりは、やはりひたすら優しく温厚な・・・という感じですが、夜の逢瀬を待ちきれないという顔で神殿を見つめ、投げキスをするダニーラに眩暈がしそうで・・・。 

すでにニキヤへの思いで高揚しているような大僧正に呼ばれたニキヤが姿を現す。 大僧正がヴェールを外すタイミングがいつものあの旋律よりも早かったのがなんとなく悔やまれるのですが、形容しがたいほどに崇高で美しいロパートキナ。 二の腕のあまりの細さが気になりましたが、聖なる火の前での踊りの腕の表情の豊かさと美しさはため息もの。 大僧正を毅然と拒む表情はまるで女神が憤慨しているほどの神々しさで恐くもありましたが、マグダヴェアからソロルの伝言を伝えられた時に見せた少し恥じらい気味に輝いた表情は一人の幸せな女性の顔そのもの。

ソロルを待つニキヤの踊りでの少し切な気な表情から一転、ソロルとのPDDでは、しっとりと匂やかな微笑みを見せながら幸せをかみしめて大人の深い愛を歌い上げている感じでしたねぇ。 この二人だからどうしてもそう見えちゃうんですよね。 ニキヤぞっこんのソロルはもの凄いオーバーアクションで永遠の愛を誓ってましたしね。 踊りでは珍しくちょっと上手くいかなかったリフトがありましたが、ダニーラが力技で押し切りました。


<第1幕2場>
ゴージャスな美貌のコンダウーロワのガムザッティは気位が高く気の強そうな姫。 ドゥグマンタからこの男がお前の婚約者とソロルの肖像画を見せられ、まんざらではないようなリアクション。 ドゥグマンタがもう少し威厳のある風貌だったら完璧な父娘だったんだけどな。 マラさんのドゥグマンタが恋しい。

ソロル登場。
自分の座席の位置具合でガムザッティの事をそなたの婚約者だとラジャから告げられた時のソロルの表情が見えなかったのが残念。 背中は微妙にのけ反っていましたが、ダニーラ、どんな顔をしていたんだろう? 少しはガムザッティの美しさに心揺れたのかしら? マリインカ版では二人は幼い頃からの許婚の間柄なんですね。 

大好きなジャンペの踊り。 やはりこの踊りは難しいのだろうと見るたびに思うのですが、6人のコール・ドの踊りにばらつきがあったけれどクラスノクツカヤとニキーチナは良く踊ってました。
クラスノクツカヤがコール・ドの子のヴェールにひっかかりそうになって一瞬ヒヤッとしましたが、何事もなくて良かった。 やはり舞台が狭いよなぁ。

ニキヤが祝福の踊りのためにドゥグマンタの宮殿にやってくる。 拝みたくなるほどに厳かで神々しいロパートキナ。 ロパートキナ相手に緊張しているのが伝わってくるサポートの奴隷役のアンドレイ・エルマコフは長身ハンサムな、今売り出し中の若手とか。
ニキヤの祝福の踊りの間、目が離せなかったのはダニーラ@ソロル。 ニキヤに自分の姿を認められまいと必死になって彼女の死角へ死角へと場所を移動しなわがら身を隠し・・・それでも気がつくとニキヤに視線が止まってしまっている、舞台下手袖に消えて行くのだけは必死でこらえているようなそんなソロルでした。 とてもドゥグマンタに言い渡された事について考えている余裕などないような。

大僧正がドゥグマンタにニキヤとソロルは恋仲だと告げているのを聞いてしまったガムザッティがニキヤを呼び出す。
(その前に、同じくその話を聞いてしまったと思われるソロルが慌てて宮殿から飛び出して行く様が描かれるのですよね。 これにはちょっとびっくりしましたが、まさかダニーラバージョンじゃないだろうな?)
ソロルをめぐる女二人の互いの美と権力と愛の対決はすさまじい。
権力と身分を盾にどんどん高飛車になっていくガムザッティに対し、ソロルと誓い合った愛の強さを盾に奮い立つニキヤも一歩も譲らず、激しい感情に揺さぶられるまま思わずつかんだ短剣でガムザッティを刺そうとしてしまう。 愛を勝ち取っている女性としての自信に満ち溢れたロパートキナの凛とした表情。 吸い込まれそうな感覚を覚えるほどの瞳の強さ。 恋した相手が藩主の娘の許婚であると知って怯むどころか自分に剣をふりかざしたニキヤにプライドを傷つけられたガムザッティは激昂し、ニキヤを殺すと心に決める。コンダウーロワのメラメラとする怒りの炎が見えそうな迫力でした。


<第2幕>
ここはマールイやマカロワ版のような婚約式ではなく、ソロルとガムザッティの結婚式になるのですね。
ドゥグマンタとガムザッティはそれぞれ輿に乗って登場。 ドゥグマンタの輿が重そうだ・・・。 大きな象に乗って現れたソロルは、仕留めたトラをガムザッティに贈る。 思いっきりトラを踏みつけ、どうだ!といわんばかりのソロルですが、自棄になっているように見えなくもなく・・・。

扇を持った女の子たちもおうむの踊りの女の子たちも可憐でスタイルの良い子が揃っていて眼福。 座席がかなり前の方で舞台に近かったのでコール・ドの踊りは動きが少し雑なように見えてしまいましたが、少し遠ければそれほど気にならない程度だったのかな? 
壷の踊りのバトーエワ、オケの不調にもめげず愛らしく。
金の仏像のティモフェーエフも安定した踊り。
力強くエネルギッシュな太鼓の踊りとインドの踊り。  全身にブラウンメイクを施したワイルドなイオアンニシアンの踊りがかっこいい。 ソロ3人はハードな踊りを見事に踊り、レヴェランスも余裕の表情だったけれど、コール・ドの男の子たちはずいぶん息があがっていたなぁ。
パ・ダクシヨンの大・小4人ずつの女の子たちの踊りは、ポーズなどは綺麗だけれど腕や足の動きが些か乱暴な気も。 ただ、音楽がわりと早めだったので仕方がないのかもしれません。 ソロルが再び登場してからは全く見ていないのでその後はわからず。

ソロルとガムザッティの踊り。 ちょっと息が合わなかったところもありましたが、パートナーシップはまずまず。 コンダウーロワの踊りはイタリアンフェッテなどダイナミックで華やかでしたが、勢いにまかせているような感じも。 でもこれもまた音楽のテンポのせいかもしれません。   
端正だけれどダイナミックなダニーラのヴァリ。 ジャンプは余裕を持って飛び、アントルラッセの綺麗な後ろ足、伸びやかなマネージュでの美しい爪先も健在。 ファンの欲目であるかもしれないけれど、衰えは感じられずとても嬉しかった・・・というか幸せ♪
淡々とした表情にニキヤへの愛は封印したのかと思っていたソロルですが、不意に舞姫のポーズをとり、ニキヤへの思いを顕にする。 それを険しい顔で見咎めるガムザッティ。 最初から二人の間には結婚式らしい晴れやかな幸福感はなかったけれど早々に危うい雰囲気・・・。 

ドゥグマンタに呼ばれたニキヤが舞姫としての踊りを奉納する。 
この衣装だとその細さが痛々しいくらいなロパートキナ。 思わず立ち上がったソロルと視線を合わせたときの耐え難い辛さに顔がこわばる姿が痛ましい。
絶望感を隠し切れないニキヤの舞をじっと見つめるソロル。 もしドゥグマンタの屋敷で彼と大僧正の会話を聞いてしまったのだったら、この時何を思ってニキヤを見ていたのだろう? いや、やっぱり聞いてはいないよな・・・などと余計な事考えてしまい、ロパートキナの舞をじっくり見ていたいのに、上手のダニーラが気になってニキヤをあまり見られなかった。  
ソロルの脇で高慢な笑顔を見せながら時にドゥグマンタと話し平然とニキヤを見やるガムザッティ。 ソロルの心が自分にあるのかないのかを不安に感じている様子などみじんもなく、彼女自身がソロルを愛しているようにも見えない。 それでもニキヤが近づくと勝ち誇ったようにソロルに手をとらせ口付けさせようとする。 ソロルは運命には逆らえぬという感じでそれに応える。 手をとって口付けするまでにも時間がかかったけど、そのまま顔を上げられず固まってました。 迷いと後悔?? 
花かごを渡され柔らかい笑みを浮かべながら、ソロルへの変わらぬ愛を切々と訴えるように踊るニキヤが蛇にかまれる。 ロパートキナは息を吸い込むような声を漏らしていましたが、それほどまでに役になりきっていたのですね。 あなたが仕組んだのねとニキヤに糾弾されても顔色一つ変える事なく冷たい表情のままのガムザッティ。 怖いです。 ソロルがどう思おうが、たかが舞姫一人が命を落とすくらい別になんでもないというように冷ややかな表情でした。 
大僧正が解毒剤を差し出すも、生気のない目で力なく見るだけで受け取ろうとはしないニキヤ。 振り返ってソロルを見るなりその場に崩れ落ちてしまう。 ソロルと共に生きていけないのであれば生きる意味もないと静かに運命を受け入れ事切れてしまったニキヤ。 たまらず駆け寄りニキヤを抱きしめて嘆くソロル。 

― 幕 ―

ニキヤが蛇にかまれてからの展開がマールイと比べると少し性急な気もしました。 死を目前にしたニキヤとソロルの最後の時間が本当にあっけなかった。


しばらくして幕が上がる。 てっきりマールイ同様、ラストシーンのままソロルがニキヤを抱きしめているのだろうと思ったら、ニキヤ以外が全員揃ってカーテンコール。 もの凄い違和感を覚えたけれど、マリインスキーのバヤデルカは寺院の崩壊がなく、ニキヤとソロル以外の主要キャストの出演は2幕までとなるのでここしかないですね・・・。 そして最後にはニキヤ@ロパートキナも一緒にご挨拶。 う~~~ん、慣れないとなんだか変だ。


<第3幕>
悲痛な表情で部屋に走り込んで来たソロルの嘆きのジュテ。
ニキヤを失った苦しみに耐えられず打ちひしがれるソロルを慰めようとマグダヴェアが水タバコを差し出す。 眠りに落ちるソロルにニキヤの呼ぶ声が聞こえる。 ダニーラがベッドから起き上がり腕を差し伸べる姿は、まるで幽体離脱のようにソロルの魂が肉体から離れてニキヤを求めて彷徨い出したように見えました。

幻影たち。 シビックホールの狭いステージのせいなのか、坂が短く緩やかなのが残念だったけれど、スラッとした美しい32人の影たちが並び立つ様はさすがロシアで本当に美しく幻想的でした。 席がステージに近すぎてコール・ドの踊りが綺麗に見える位置ではないけれど、1,2幕を見て想像していたよりは揃っていて綺麗でした。 もう少し霊的で神秘的な雰囲気もあればなお素晴らしかったような気もしますが、それはロパートキナ一人の存在で十分だったのかもしれません。
影のトリオは、シリンキナもニキーチナもしっかり踊れていたとは思うけれど、まだそれだけかなぁ。 

ソロルのヴァリ。 出だしのジュテの連続もマネージュも伸びやかで美しく、ジュテが次第に速く高くなるのはニキヤとの再会への心の高まりのように感じました。 白いチュチュのロパートキナはまさに精霊という透明感に溢れている。  長い手足で描くクリアなラインは言いようもなく美しく、上手奥からの跳躍の高い連続ジュテも浮遊感が感じられて見事でした。 
二人の踊りはお互いを想う強い気持ちに引き寄せられた二つの魂の踊りなのですね。 二人の長い腕の優雅な動きが心の会話のようにも見えます。 この二人は音楽性の相性も良くて脚の運びや指先の動きまで同じようにきれいに音楽にシンクロするのですよね。 その眼差しに独特の表情と力を持っているロパートキナがダニーラを見つめ、優しい眼差しで応えるダニーラがそっと影のように寄り添う。 なんと麗しい。  
下手奥に後ろ向きにパ・ド・ブレで消えて行くニキヤをゆっくりと追って行くソロル。 ニキヤの魂に導かれ、この時ソロルも昇天して向こうの世界に渡ってしまったのだろうと感じました。 寺院の崩壊まで描かれるバージョンの方が好きな事には変わりないですが、マリインカバージョンの場合はこういう解釈もできるのだなと。 その後のニキヤが、愛する人がようやく自分のもとへ戻り心安らいでいるような笑みを浮かべていたのも印象的でした。 
ロパートキナはヴェールの踊りでは少しもたついたところもありましたが、その後はもちなおし天上の踊り。 ジュテ・アントルラッセの連続もコーダでの高速のピケピルエットとアテールのアラベスクでの後退も非常に美しかったです。 ダニーラのヴァリも引き続き素晴らしく、コーダでの高さがあり空気を切り裂くようなダイナミックな開脚ジャンプの連続はニキヤへの変わらぬ愛を表す渾身の踊りでした。


マールイのボヤルチコフ版「バヤデルカ」を心から愛する自分にとっては、物語の構成に馴染めなかったり、3幕の完結の仕方に若干物足りなさを感じたりもしたのですが、ロパートキナとコルスンツェフでの舞台は特別な宝物。 二人のバヤデルカを見られて本当に幸せでした。



ニキヤ(寺院の舞姫):ウリヤーナ・ロパートキナ
ドゥグマンタ(藩主):アンドレイ・ヤコヴレフ
ガムザッティ(藩主の娘):エカテリーナ・コンダウーロワ
ソロル(戦士):ダニーラ・コルスンツェフ
大僧正:ウラジーミル・ポノマリョフ
トロラグワ(戦士):イスロム・バイムラードフ
奴隷:アンドレイ・エルマコフ
マグダヴェヤ(托鉢僧):グリゴリー・ポポフ
アイヤ(ガムザッティの召使):エレーナ・バジェーノワ
ジャンペの踊り:ヴィクトリア・クラスノクツカヤ、アナスタシア・ニキーチナ
マヌー(壺の踊り):ナデジダ・バトーエワ
舞姫たち(バヤデルカ):アンナ・ラヴリネンコ、エレーナ・チミリ、
           エレーナ・フィルソーワ、スヴェトラーナ・イワノワ
グラン・パ・クラシック:ヴィクトリア・クラスノクツカヤ、ダリア・ヴァスネツォーワ
             ヴィクトリア・ブリリョーワ、ユリアナ・チェレシケヴィチ
             アンドレイ・エルマコフ、アンドレイ・ソロヴィヨフ
インドの踊り:アナスタシア・ペトゥシコーワ、カレン・イオアンニシアン
太鼓の踊り:オレグ・デムチェンコ
金の仏像:アレクセイ・ティモフェーエフ
精霊たち:マリーヤ・シリンキナ、アナスタシア・ニキーチナ、ダリア・ヴァスネツォーワ
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11月15日 ロパートキナとコルスンツェフの「バヤデルカ」第2&3幕
2012/11/22(Thu)
<第2幕>
ここはマールイやマカロワ版のような婚約式ではなく、ソロルとガムザッティの結婚式になるのですね。
ドゥグマンタとガムザッティはそれぞれ輿に乗って登場。 ドゥグマンタの輿が重そうだ・・・。 大きな象に乗って現れたソロルは、仕留めたトラをガムザッティに贈る。 思いっきりトラを踏みつけ、どうだ!といわんばかりのソロルですが、自棄になっているように見えなくもなく・・・。

扇を持った女の子たちもおうむの踊りの女の子たちも可憐でスタイルの良い子が揃っていて眼福。 座席がかなり前の方で舞台に近かったのでコール・ドの踊りは動きが少し雑なように見えてしまいましたが、少し遠ければそれほど気にならない程度だったのかな? 
壷の踊りのバトーエワ、オケの不調にもめげず愛らしく。
金の仏像のティモフェーエフも安定した踊り。
力強くエネルギッシュな太鼓の踊りとインドの踊り。  全身にブラウンメイクを施したワイルドなイオアンニシアンの踊りがかっこいい。 ソロ3人はハードな踊りを見事に踊り、レヴェランスも余裕の表情だったけれど、コール・ドの男の子たちはずいぶん息があがっていたなぁ。
パ・ダクシヨンの大・小4人ずつの女の子たちの踊りは、ポーズなどは綺麗だけれど腕や足の動きが些か乱暴な気も。 ただ、音楽がわりと早めだったので仕方がないのかもしれません。 ソロルが再び登場してからは全く見ていないのでその後はわからず。

ソロルとガムザッティの踊り。 ちょっと息が合わなかったところもありましたが、パートナーシップはまずまず。 コンダウーロワの踊りはイタリアンフェッテなどダイナミックで華やかでしたが、勢いにまかせているような感じも。 でもこれもまた音楽のテンポのせいかもしれません。   
端正だけれどダイナミックなダニーラのヴァリ。 ジャンプは余裕を持って飛び、アントルラッセの綺麗な後ろ足、伸びやかなマネージュでの美しい爪先も健在。 ファンの欲目であるかもしれないけれど、衰えは感じられずとても嬉しかった・・・というか幸せ♪
淡々とした表情にニキヤへの愛は封印したのかと思っていたソロルですが、不意に舞姫のポーズをとり、ニキヤへの思いを顕にする。 それを険しい顔で見咎めるガムザッティ。 最初から二人の間には結婚式らしい晴れやかな幸福感はなかったけれど早々に危うい雰囲気・・・。 

ドゥグマンタに呼ばれたニキヤが舞姫としての踊りを奉納する。 
この衣装だとその細さが痛々しいくらいなロパートキナ。 思わず立ち上がったソロルと視線を合わせたときの耐え難い辛さに顔がこわばる姿が痛ましい。
絶望感を隠し切れないニキヤの舞をじっと見つめるソロル。 もしドゥグマンタの屋敷で彼と大僧正の会話を聞いてしまったのだったら、この時何を思ってニキヤを見ていたのだろう? いや、やっぱり聞いてはいないよな・・・などと余計な事考えてしまい、ロパートキナの舞をじっくり見ていたいのに、上手のダニーラが気になってニキヤをあまり見られなかった。  
ソロルの脇で高慢な笑顔を見せながら時にドゥグマンタと話し平然とニキヤを見やるガムザッティ。 ソロルの心が自分にあるのかないのかを不安に感じている様子などみじんもなく、彼女自身がソロルを愛しているようにも見えない。 それでもニキヤが近づくと勝ち誇ったようにソロルに手をとらせ口付けさせようとする。 ソロルは運命には逆らえぬという感じでそれに応える。 手をとって口付けするまでにも時間がかかったけど、そのまま顔を上げられず固まってました。 迷いと後悔?? 
花かごを渡され柔らかい笑みを浮かべながら、ソロルへの変わらぬ愛を切々と訴えるように踊るニキヤが蛇にかまれる。 ロパートキナは息を吸い込むような声を漏らしていましたが、それほどまでに役になりきっていたのですね。 あなたが仕組んだのねとニキヤに糾弾されても顔色一つ変える事なく冷たい表情のままのガムザッティ。 怖いです。 ソロルがどう思おうが、たかが舞姫一人が命を落とすくらい別になんでもないというように冷ややかな表情でした。 
大僧正が解毒剤を差し出すも、生気のない目で力なく見るだけで受け取ろうとはしないニキヤ。 振り返ってソロルを見るなりその場に崩れ落ちてしまう。 ソロルと共に生きていけないのであれば生きる意味もないと静かに運命を受け入れ事切れてしまったニキヤ。 たまらず駆け寄りニキヤを抱きしめて嘆くソロル。 

― 幕 ―

ニキヤが蛇にかまれてからの展開がマールイと比べると少し性急な気もしました。 死を目前にしたニキヤとソロルの最後の時間が本当にあっけなかった。


しばらくして幕が上がる。 てっきりマールイ同様、ラストシーンのままソロルがニキヤを抱きしめているのだろうと思ったら、ニキヤ以外が全員揃ってカーテンコール。 もの凄い違和感を覚えたけれど、マリインスキーのバヤデルカは寺院の崩壊がなく、ニキヤとソロル以外の主要キャストの出演は2幕までとなるのでここしかないですね・・・。 そして最後にはニキヤ@ロパートキナも一緒にご挨拶。 う~~~ん、慣れないとなんだか変だ。


<第3幕>
悲痛な表情で部屋に走り込んで来たソロルの嘆きのジュテ。
ニキヤを失った苦しみに耐えられず打ちひしがれるソロルを慰めようとマグダヴェアが水タバコを差し出す。 眠りに落ちるソロルにニキヤの呼ぶ声が聞こえる。 ダニーラがベッドから起き上がり腕を差し伸べる姿は、まるで幽体離脱のようにソロルの魂が肉体から離れてニキヤを求めて彷徨い出したように見えました。

幻影たち。 シビックホールの狭いステージのせいなのか、坂が短く緩やかなのが残念だったけれど、スラッとした美しい32人の影たちが並び立つ様はさすがロシアで本当に美しく幻想的でした。 席がステージに近すぎてコール・ドの踊りが綺麗に見える位置ではないけれど、1,2幕を見て想像していたよりは揃っていて綺麗でした。 もう少し霊的で神秘的な雰囲気もあればなお素晴らしかったような気もしますが、それはロパートキナ一人の存在で十分だったのかもしれません。
影のトリオは、シリンキナもニキーチナもしっかり踊れていたとは思うけれど、まだそれだけかなぁ。 

ソロルのヴァリ。 出だしのジュテの連続もマネージュも伸びやかで美しく、ジュテが次第に速く高くなるのはニキヤとの再会への心の高まりのように感じました。 白いチュチュのロパートキナはまさに精霊という透明感に溢れている。  長い手足で描くクリアなラインは言いようもなく美しく、上手奥からの跳躍の高い連続ジュテも浮遊感が感じられて見事でした。 
二人の踊りはお互いを想う強い気持ちに引き寄せられた二つの魂の踊りなのですね。 二人の長い腕の優雅な動きが心の会話のようにも見えます。 この二人は音楽性の相性も良くて脚の運びや指先の動きまで同じようにきれいに音楽にシンクロするのですよね。 その眼差しに独特の表情と力を持っているロパートキナがダニーラを見つめ、優しい眼差しで応えるダニーラがそっと影のように寄り添う。 なんと麗しい。  
下手奥に後ろ向きにパ・ド・ブレで消えて行くニキヤをゆっくりと追って行くソロル。 ニキヤの魂に導かれ、この時ソロルも昇天して向こうの世界に渡ってしまったのだろうと感じました。 寺院の崩壊まで描かれるバージョンの方が好きな事には変わりないですが、マリインカバージョンの場合はこういう解釈もできるのだなと。 その後のニキヤが、愛する人がようやく自分のもとへ戻り心安らいでいるような笑みを浮かべていたのも印象的でした。 
ロパートキナはヴェールの踊りでは少しもたついたところもありましたが、その後はもちなおし天上の踊り。 ジュテ・アントルラッセの連続もコーダでの高速のピケピルエットとアテールのアラベスクでの後退も非常に美しかったです。 ダニーラのヴァリも引き続き素晴らしく、コーダでの高さがあり空気を切り裂くようなダイナミックな開脚ジャンプの連続はニキヤへの変わらぬ愛を表す渾身の踊りでした。


マールイのボヤルチコフ版「バヤデルカ」を心から愛する自分にとっては、物語の構成に馴染めなかったり、3幕の完結の仕方に若干物足りなさを感じたりもしたのですが、ロパートキナとコルスンツェフでの舞台は特別な宝物。 二人のバヤデルカを見られて本当に幸せでした。



ニキヤ(寺院の舞姫):ウリヤーナ・ロパートキナ
ドゥグマンタ(藩主):アンドレイ・ヤコヴレフ
ガムザッティ(藩主の娘):エカテリーナ・コンダウーロワ
ソロル(戦士):ダニーラ・コルスンツェフ
大僧正:ウラジーミル・ポノマリョフ
トロラグワ(戦士):イスロム・バイムラードフ
奴隷:アンドレイ・エルマコフ
マグダヴェヤ(托鉢僧):グリゴリー・ポポフ
アイヤ(ガムザッティの召使):エレーナ・バジェーノワ
ジャンペの踊り:ヴィクトリア・クラスノクツカヤ、アナスタシア・ニキーチナ
マヌー(壺の踊り):ナデジダ・バトーエワ
舞姫たち(バヤデルカ):アンナ・ラヴリネンコ、エレーナ・チミリ、
           エレーナ・フィルソーワ、スヴェトラーナ・イワノワ
グラン・パ・クラシック:ヴィクトリア・クラスノクツカヤ、ダリア・ヴァスネツォーワ
             ヴィクトリア・ブリリョーワ、ユリアナ・チェレシケヴィチ
             アンドレイ・エルマコフ、アンドレイ・ソロヴィヨフ
インドの踊り:アナスタシア・ペトゥシコーワ、カレン・イオアンニシアン
太鼓の踊り:オレグ・デムチェンコ
金の仏像:アレクセイ・ティモフェーエフ
精霊たち:マリーヤ・シリンキナ、アナスタシア・ニキーチナ、ダリア・ヴァスネツォーワ
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11月15日 ロパートキナとコルスンツェフの「バヤデルカ」第1幕
2012/11/19(Mon)
最高に幸せだった15日の舞台。 余韻を大切にしながらも時間を見つけて書きなぐってますが、まだ終わりません。 でも明日は府中でロパートキナの白鳥なので、とりあえず1幕だけ先に上げてしまいます。




バヤデルカ(マリインスキーはラ・バヤデールを使っているのですけど、今回はこれで通します)は最も好きなバレエ作品のうちの一つ。 そしてそのバヤデルカで、私にとっての最高のペアという主演キャスト二組のうちの一組の舞台、ずっとずっとずっと待ち焦がれた念願の舞台でした。

<第1幕1場>
マグダヴェアのグレゴリー・ポポフの美しい筋肉と高く滞空時間の長い軽やかな跳躍に目を見張る。 いかにもこういう筋肉系のダンサーのバネの効いた跳躍というのは数多く見ているけれど、ポポフの跳躍は柔らかくて美しい。 マグダヴェアにしては身長もあるので抑制がきいている踊りながら迫力もありました。
演技もしっかりしていて、特に大僧正に言い寄られるニキヤを心配そうに振り返りながらチラチラ見ていたのが印象深い。

ダニーラ@ソロルの登場。 や、もう、この瞬間から緩んでいく自分の顔筋をどうしたら良いのかわからず・・・。 マグダヴェアを呼ぶために手を打つ姿も勇猛果敢な戦士というよりは、やはりひたすら優しく温厚な・・・という感じですが、夜の逢瀬を待ちきれないという顔で神殿を見つめ、投げキスをするダニーラに眩暈がしそうで・・・。 

すでにニキヤへの思いで高揚しているような大僧正に呼ばれたニキヤが姿を現す。 大僧正がヴェールを外すタイミングがいつものあの旋律よりも早かったのがなんとなく悔やまれるのですが、形容しがたいほどに崇高で美しいロパートキナ。 二の腕のあまりの細さが気になりましたが、聖なる火の前での踊りの腕の表情の豊かさと美しさはため息もの。 大僧正を毅然と拒む表情はまるで女神が憤慨しているほどの神々しさで恐くもありましたが、マグダヴェアからソロルの伝言を伝えられた時に見せた少し恥じらい気味に輝いた表情は一人の幸せな女性の顔そのもの。

ソロルを待つニキヤの踊りでの少し切な気な表情から一転、ソロルとのPDDでは、しっとりと匂やかな微笑みを見せながら幸せをかみしめて大人の深い愛を歌い上げている感じでしたねぇ。 この二人だからどうしてもそう見えちゃうんですよね。 ニキヤぞっこんのソロルはもの凄いオーバーアクションで永遠の愛を誓ってましたしね。 踊りでは珍しくちょっと上手くいかなかったリフトがありましたが、ダニーラが力技で押し切りました。


<第1幕2場>
ゴージャスな美貌のコンダウーロワのガムザッティは気位が高く気の強そうな姫。 ドゥグマンタからこの男がお前の婚約者とソロルの肖像画を見せられ、まんざらではないようなリアクション。 ドゥグマンタがもう少し威厳のある風貌だったら完璧な父娘だったんだけどな。 マラさんのドゥグマンタが恋しい。

ソロル登場。
自分の座席の位置具合でガムザッティの事をそなたの婚約者だとラジャから告げられた時のソロルの表情が見えなかったのが残念。 背中は微妙にのけ反っていましたが、ダニーラ、どんな顔をしていたんだろう? 少しはガムザッティの美しさに心揺れたのかしら? マリインカ版では二人は幼い頃からの許婚の間柄なんですね。 

大好きなジャンペの踊り。 やはりこの踊りは難しいのだろうと見るたびに思うのですが、6人のコール・ドの踊りにばらつきがあったけれどクラスノクツカヤとニキーチナは良く踊ってました。
クラスノクツカヤがコール・ドの子のヴェールにひっかかりそうになって一瞬ヒヤッとしましたが、何事もなくて良かった。 やはり舞台が狭いよなぁ。

ニキヤが祝福の踊りのためにドゥグマンタの宮殿にやってくる。 拝みたくなるほどに厳かで神々しいロパートキナ。 ロパートキナ相手に緊張しているのが伝わってくるサポートの奴隷役のアンドレイ・エルマコフは長身ハンサムな、今売り出し中の若手とか。
ニキヤの祝福の踊りの間、目が離せなかったのはダニーラ@ソロル。 ニキヤに自分の姿を認められまいと必死になって彼女の死角へ死角へと場所を移動しなわがら身を隠し・・・それでも気がつくとニキヤに視線が止まってしまっている、舞台下手袖に消えて行くのだけは必死でこらえているようなそんなソロルでした。 とてもドゥグマンタに言い渡された事について考えている余裕などないような。

大僧正がドゥグマンタにニキヤとソロルは恋仲だと告げているのを聞いてしまったガムザッティがニキヤを呼び出す。
(その前に、同じくその話を聞いてしまったと思われるソロルが慌てて宮殿から飛び出して行く様が描かれるのですよね。 これにはちょっとびっくりしましたが、まさかダニーラバージョンじゃないだろうな?)
ソロルをめぐる女二人の互いの美と権力と愛の対決はすさまじい。
権力と身分を盾にどんどん高飛車になっていくガムザッティに対し、ソロルと誓い合った愛の強さを盾に奮い立つニキヤも一歩も譲らず、激しい感情に揺さぶられるまま思わずつかんだ短剣でガムザッティを刺そうとしてしまう。 愛を勝ち取っている女性としての自信に満ち溢れたロパートキナの凛とした表情。 吸い込まれそうな感覚を覚えるほどの瞳の強さ。 恋した相手が藩主の娘の許婚であると知って怯むどころか自分に剣をふりかざしたニキヤにプライドを傷つけられたガムザッティは激昂し、ニキヤを殺すと心に決める。コンダウーロワのメラメラとする怒りの炎が見えそうな迫力でした。
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東京バレエ団「くるみ割り人形」 11月9日の感想
2012/11/14(Wed)
東京バレエ団のワイノーネン版「くるみ割り人形」は初めて見ました。
くるみ自体、おととし12月のマールイ以来で、始めのうち、ちょっとマールイが恋しくなって困ったな・・・と思っていたのですが、フリッツとクララの家に招かれた悪がきたちを東バは女性が演じていて、クララの兄のフリッツもいつも美しいムーブメントと端正な踊りが印象的な乾さんがはつらつと演じていました。 このおかげでちょっと立ち直ったかな(苦笑)。 

マジシャンっぽい口ひげが似合うんだか似合わないんだか? やけに楽しそうで怪しいおじさんな雰囲気たっぷりの木村さんドロッセルマイヤーですが、踊り始めるといつもの端正な木村さんでした。 脚捌きがやはり綺麗ですね。
4体の人形たち。 
長瀬さんのしなやかな動きのピエロ、腕や上半身の動きがわりと大きな人形振りの岸本さんのかわいいコロンビーヌ。
いつもその髪型はどうよと思ってしまう小笠原君、髪型が気にならなかったので踊りに集中して見られました。 身体能力が高いのですよね。
氷室さんのくるみ割り人形、踊りはもちろん、フリッツに壊されてクタッとしてしまう人形ぶりも上手かった。 

クララの小出さん。 ふわっとした女の子ドレスより白いネグリジェの方が似合っている少し落ち着いた感じのクララで、音感良く伸びやかな踊り。 もう少し無邪気な感じがあっても良かったかもしれませんが。

ねずみさんたちはとてもオーソドックスなスタイル(ねずみ衣装?)。 前後に入れ替わりながら隊列を組み真剣に闘っているのがなんか可愛かったです。 さてねずみキングはどのくらい派手で偉そうなのかと期待していたら、ゴールドの小さい冠をつけているだけ・・・。 もうちょっと立派にしてあげてもいいのに(笑) 

兵隊姿のシムキンが覆っていた手を顔から離し立ち上がると会場からは凄い拍手が。 同じくるみ割り王子の登場でも違うもんだ・・・と独り言。 体の線が細い事もあるけれど、どこか異世界な雰囲気としなやかでふわっと柔らかく着地音のしない踊りがまさにクララの夢の世界の王子様という感じでした。 

そして雪の精たちのシーン。  音楽は素晴らしいし、どこのバレエ団でも幻想的で美しい世界が繰り広げられるので、くるみの中でもとても好きなシーンなのですが、コール・ドの動きがややバラバラで、ジャンプの度にドシンという音を響かせていたのが気になりました。 カヴァリエ的な男の子たちの被り物にもびっくりしましたが、さらに全体的に乱れちゃったかな? 初日というのもあったと思いますが、主役が見事に踊っていただけにちょっと残念な群舞でした。 


ここのねずみさんたち、面白いですねぇ。 2幕の冒頭、ふしぎの国へ向かうクララたちを追って必死で船を漕いで行くのがけっこう笑えます。 おまけにねずみキングはクララにスリッパでひっぱたかれて腕を負傷したらしく三角巾で吊ってました・・・。 芸が細かいっちゃ細かいけどちょっと情けない??(笑)

スペインは田中さんの切れ味良く男前な颯爽たる踊りにブラボー。 その横で踊っているごとやん、今日は調子良さそう(ってプリンシパルに失礼ですが・・・)と思って見ていましたが、田中さんとのフェッテ合戦では最後はスタミナ切れ? でも大柄な華やかなペアで良かったです。
ほのかに妖艶さを匂わせながらしなやかに踊っていた西村さんと彼女に上手くシンクロしていた柄本さんのナイスペア。
中国の佐伯さんの可愛さに、翌日の彼女のクララも見てみたかったなと。 氷室さんの回転も安定していました。
やたら走り回っているマールイのロシアとは違い(笑)、コサック風ダンスもあるロシアっぽい踊りのロシアで宮本さんも乾さんもいい。 
フランスはしっとりとクラシックの美しい踊りを堪能しました。 いや、とってもいいですね、ここに入るフランスは。 高村さんは磐石だし、留衣ちゃんは清楚で、長瀬さんの柔らかくエレガントなラインも美しかった。 
花のワルツではソリストの渡辺さんのたおやかな上半身とポール・ド・ブラに魅せられました。 指先にまで神経が行き届いていて本当に綺麗だった~~。 彼女のオーロラやジゼルなどを是非見てみたいものです! 二階堂さんの笑顔も人を惹きつけますね。 

クララと王子のGPDD。 小出さんは小柄だけれどバランスのとれた体つきなのでチュチュが似合うし、金平糖の精らしい堂々とした踊りで大きく見えます。 くるみのGPDDにつきもののリフトもエビぞりポーズのキープが長く見事でした。 ん~~、しゃちほこ、見たいなぁ。 そろそろ・・・。
シムキンはすべてのパが流れるように滑らかで、ぶれない回転は音楽に重なって綺麗に止まり、マネージュはふわりと軽やか。 
ただ、それぞれの踊りは良かったし、笑顔を交し合いながらの微笑ましいカップルではあったのですが、見ているこちらの胸の内までぽっと暖まるような幸福感には少し届かなかった気がします。 

それでも、夢から覚めたクララがくるみ割り人形を心から愛しそうに抱きしめ、少女がほんの少し大人になったような姿に、やっぱり「くるみ割り人形」のファンタスティックな世界っていいなと思ったのでした。




クララ:小出領子
くるみ割り王子:ダニール・シムキン

<第1幕>
クララの父:森川茉央
クララの母:高木綾
兄フリッツ:乾友子
くるみ割り人形:氷室友
ドロッセルマイヤー:木村和夫
ピエロ:長瀬直義
コロンビーヌ:岸本夏未
ムーア人:小笠原亮
ねずみの王様:梅澤紘貴

<第2幕>
スペイン:田中結子-後藤晴雄
アラビア:西村真由美-柄本弾
中国:佐伯知香-氷室友
ロシア:乾友子-宮本祐宜
フランス:高村順子-吉川留衣-長瀬直義
花のワルツ(ソリスト):
渡辺理恵、矢島まい、川島麻実子、二階堂由依
梅澤紘貴、森川茉央、安田峻介、松野乃知

指揮:井田勝大
演奏:シアターオーケストラトーキョー  
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新国立劇場「シルヴィア」 11月2日の感想
2012/11/08(Thu)
庭師/エロス: 福田圭吾
伯爵夫人/ダイアナ: 本島美和
グイッチオーリ伯爵/オライオン: 厚地康雄
家庭教師/シルヴィア: 佐久間奈緒
召使い/アミンタ: ツァオ・チー
ゴグ: 野崎哲也 
マゴグ: 江本拓
ネプチューン: 加藤朋子
マーズ: 竹田仁美
アポロ: 井倉真未
ジュピター: 大和雅美


主役をはじめ、27日とはすべてのキャストが違う2日の舞台。 
本家の主役ペアがしっとりとお互いの芯の強さを感じさせるようなドラマを見せてくれた気がします。
この日の座席はかなり前方のセンターだったので、1階の真ん中列あたりのかな~り左よりだった27日にあまりオペラグラスを使わないで見ていた時には遠かったり暗かったりで見えなかった部分がよく見えました。 特に1幕2場は月明かりの深い森ということで照明もぐっと落ちていますが、もう少し明るくてもいいかなぁ? 

名前も知らなかった(自分は海外で踊っている日本人ダンサーに疎い)佐久間さんを初めて見たのは2004年にスタダンに客演した「コッペリア」で、しっかりした踊りと2幕で様々な人形たちに扮した踊りでの豊かな表現に驚いた記憶があります。 今回もシルヴィアをどう表現するのかとても楽しみにしていたのですが、最後まで揺ぎ無い踊りでしっとりとした情感も見せながら演じていたように思います。 踊りは本当にどの場面でも磐石でしたが、意外にも?3幕より2幕が記憶に色濃く残っています。 オライオンとの複雑なリフトの多いPDDも見事でしたが、オライオンに対し絶体絶命的な状況から立場が逆転していくシルヴィアの心境をしっかり見せながら、きりっとした妖艶さが好ましかった誘惑の踊りや演技が良かったです。 またオライオンの洞窟の入り口で逃げ出す事の出来ない悲しさと空しさを全身で表していた美しいアラベスクもとても印象的。 どこまでも伸びていきそうな真っ直ぐな足がどこか遠くへ立ち去りたいと嘆いているようでした。
3幕のツァオ・チーとのPDDは二人のステップやリフトなどへの移行が流れるようにスムースで流石のパートナーシップという感じ。 ヴァリだったかコーダだったか忘れたけれど、まるで歌うように伸びやかな膝下の柔らかい動きがとっても美しかったです。

ツァオ・チーは端正な踊りをするダンサーで一つ一つの動きがとても丁寧でサポートも上手い。 演技力もあり、腕や背中での動きにも表情があってシルヴィアへの想いが常に感じられたので、2幕の最後にすり抜けるように去られてしまった後の切なさや3幕でようやく気持ちが通じ合った時の穏やかな幸福感など心情がよく伝わってきたように思います。

本島さん、美しかったですね。 1幕1場の黒のベアトップドレス姿も狩りの女神ダイアナの凛とした姿も華があって目を惹きました。 湯川さんは夫のタチの悪さにある意味ちょっと冷めてしまったプライドの高い妻という感じだったのだけれど、本島さんは離れている夫の心を取り戻したいのにそれがままならず心晴れない妻という感じ。 そんな気の晴れなさとは無縁のような強く凛々しく光り輝くダイアナへの変貌ぶりが鮮やかでした。 踊りも悪くはなかったのだけれど、もう少しラインがくっきりしてシャープだったら尚良かったと。

自分の好みではないけれど(笑)厚地さんはスタイルが良くて格好いいですね。 ネクタイを外してしまったタキシード姿の伯爵は若干軽い男過ぎたような気がしましたが、家庭教師に頬をひっぱたかれた後の、絶対にこのままではすませないぞと家庭教師に向ける獲物を狙うような鋭く妖しい眼光はそのままオライオンでしたね。 
踊りはなかなかダイナミックで大柄なだけに迫力がありました。 華奢なように見えてもただ細いだけじゃなく股のあたりはきちんと筋肉がついているんだなーと感心したりして。 
で、オライオンって3幕でシルヴィアとアミンタのGPDDが見終わって幸せ気分になってすっかり存在を忘れていたところに出てくるんですよね。  27日に一度見ているのに、この日も、あ、そーか、まだ出番があったんだ・・と思ってしまった。 

エロスの福田さんは、芝居も上手く、海賊船長の義足での踊りもお見事でしたが、このキャラにはなんとなく強すぎるというか、人間臭すぎるかなぁとも思いました。 でも多分彼しか見ていなかったらそうは感じなかったかも。

総入れ替えのネプチューン、マーズ、アポロ、ジュピター。 27日のメンバーと比べるとやや小粒かなとは思いますが、マーズの竹田さんのスピード感のあるきびきびした踊りは良かったです。 ドンキのキューピッドなども似合いそうです。
コール・ドはこの日もよく踊っていましたが、27日の方が揃っていて全体的にキレがあったかな。 メンバーは交代制だとしてもこの作品は体力的、技術的にとてもきついですよね。 


という事で27日に続き良い舞台でした。
主役からコール・ドまで、ともかくダンサーの踊りが素晴らしかったのが27日ならば、この日は主演二人のパートナーシップの妙により紡がれた物語を味わえた舞台だったようにも思います。
ビントレー版「シルヴィア」はコール・ドのレベルが高くスタイリッシュな雰囲気を持つ新国立劇場バレエ団にとても合っている作品だと思うので、ビントレーがこの先退任してもレパートリーに残して欲しいですし、できれば来シーズンのプログラムにも入れてもらいたいと思います。
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