5月26日 日本フィル杉並公会堂シリーズ2018-19 第1回
2018/06/03(Sun)
日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:小林研一郎
会場:杉並公会堂

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調
         (ヴァイオリン:ライナー・キュッヒル)

    ――――― 休憩 ―――――

チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調

<アンコール>
ソリスト:バッハ 無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番第1楽章
オーケストラ:グリーグ ⦅ペールギュント⦆より「オーゼの死」
         チャイコフスキー 交響曲第4番第4楽章フィナーレ


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キュッヒッルさんのソロとプログラムに惹かれて行ってきました。
キュッヒルさんは日本にも馴染みの深い方で雑誌等のインタビューの内容もとても興味深く面白く、多くの演奏を聴いてみたいと思っているヴァイオリニストの一人です。 ウィーンフィルやN響でのコンサートマスターとしては何度か聴いたことはあってもどうも都合が合わなくてソロを聴いた事がなく、今回ようやく協奏曲という形で聴くことが叶いました。
キュッヒルさんのヴァイオリンは骨太で渋く味わいのある音色。 技巧で唸らせる演奏スタイルではないですし、1楽章の前半は高音が綺麗に出きらないようなところもありましたが、ぐいぐいと推進力のある演奏で曲を構築していきます。 そして上手く言葉では言い表せませんが、キュッヒルさんが奏でる音が自然と音楽を語りだすというか、ともかく魅力的で惹き込まれるのです。 特に詩情豊かで味わい深い2楽章の演奏は素晴らしかったです。 音楽ってこういうものなんだという新たな感動がありました。
また、やはりその存在感というか場の支配感は半端なく、オケからもいい感じの緊張感と集中力を引き出しているように思いました。 オケにとって、45年もウィーンフィルのコンサートマスターを務めた偉大な音楽家をソロ奏者として迎えるのはソロ活動しかしていないヴァイオリニストと共演するのとは違う重みがありのでしょうね。
アンコールのバッハはゆったりと荘厳な音が心にすぅぅっと沁み込んでくるような、こちらもまた味わい深い演奏でした。

交響曲第4番は16型、管楽器も大幅に増えてステージ上はぎっしり。
出だしのホルン、ふくよかに朗々と響いて良かったです。 その後のトランペット、トロンボーンなども金管の音は綺麗に鳴り響き、それだけで結構な満足感のある1楽章前半。 しなやかさのある弦楽器も綺麗でまとまりのある音。 低弦の音もしっかりと効いていました。 暗譜のコバケンさんはすでにチャイコの世界に入り込んでいる様子。 甘く切ない2楽章の旋律はこの曲の中で好きなパートの一つですが、美しく哀切な木管群の音色、淀みのないそれぞれの受け渡しと弦との呼応に聴き入りました。 特に出だしの松岡さんのオーボエの節回しの素晴らしさは強く印象に残っています。 3楽章では軽快に弾むピッコロの音が冴えわたり、続く4楽章は冒頭から膨らみと迫力のある演奏で楽器間のバランスもとれていて素晴らしかったなと。 4楽章はどんどん緊張感を増していく中間部の終わりに1楽章のファンファーレが出てくるパートがたまらなく好きなのですが、ここでの金管もよく鳴って、続く力強いトランペットも見事。 フィナーレに向けての容赦ない圧巻の盛り上がりにはこちらもかなり高揚気味に♪ 

アンコールで、少し寂しげな曲をという事でチョイスされた「オーゼの死」は、ほんのちょっと前のあの怒涛の演奏が嘘のような静けさを湛えた弦楽器の美しく透明感溢れる演奏。 で、これだけで十分満足なのに、このままでは・・・という事で、先ほどのチャイコ4楽章のフィナーレを1分15秒ほどという事でもう一度演奏してくれました。 おそらくコバケンさんは、管・打楽器も加えて奏者全員での演奏でコンサートを締めくくりたいと思われたのではないかと。


さて、この日のコンサートはチケット完売のお知らせがホール前にも大々的に出ていたのですが、いざコンサートが始まってみればそこかしこに空席が。 1回前方ブロックや後方の最前列などに2席、4席連なって空いている席が沢山ありました。 一階後方、2階席には空席はわずかだったので、おそらくセット券で買っている方たちが来場しなかったのだと思いますが、私の知人はチケット完売という事で買えなかったとぼやいていましたが・・・。 セット券って購入側にも主催側にももちろんメリットはあり、私もバレエの祭典会員などで恩恵は受けていますが、こういう状況を見てしまうと自分が買ったチケットには責任を持たなくてはと改めて考えさせられます。 
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5月20日 三浦文彰playsモーツァルト&シューマン
2018/05/20(Sun)
東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:三浦文彰
会場:オーチャードホール

モーツァルト:ヴァイオリンと管弦楽のためのロンドハ長調
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調

 ――――― 休憩 ‐―――――

シューマン:ヴァイオリン協奏曲ニ短調

<アンコール>
ヴァイオリン:パガニーニ ネル・コル・ピウ


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エイベックス・クラシックス・インターナショナルが昨年から始めた「スーパーソロイスツ」は、通常のオーケストラコンサートのプログラムとは異なり、一人のソリストがコンサートの主役となって前半も後半もコンチェルトを弾くという、ソリストファンにはとっても美味しいコンサート♪
今年は川久保賜紀、三浦文彰、辻井伸行をソリストに計3回のコンサートが組まれています。 3人とも聞きたかったのですが、日程的に問題なかったのが文彰くんだけという・・・。

という事で、本日オーチャードホールで三浦文彰playsモーツァルト&シューマンを聴いてきました。
昨年に引き続き、彼はヴァイオリンの演奏だけでなく指揮も務めるいわゆる弾き振りに挑戦しています。 昨年のコンサート前のインタビューで「基礎的な指揮の仕組みについても知りたいので、指揮者の方にレッスンをお願いしようかと考えています」と話していましたがどうだったのでしょうね? 文彰君の指揮がどれほどの役目を果たしたのかはよく分かりませんが(笑)、オーケストラとの対話という事により神経を使いながらの演奏へのチャレンジという事のようです。 お父様の章宏さんがコンマスを務める東フィルがバックというのも心強いでしょうし、だからこそ可能な挑戦でもあるのでしょうね。

文彰くんのヴァイオリンは第1曲めの第一音から瑞々しく伸びのある美音が響き渡り、弾き振りという事でヴァイオリンソロとしての集中力が欠けるような事もなくとても良かったと思います。 オケは12型かもう少し小規模だったか? 文彰君との息も良く合っていて軽快な演奏でした。
後半のシューマン、夢想的な美しい旋律にほの暗さが見え隠れする素晴らしい曲ですね。
ヴァイオリンも技巧的にかなり難しそうに思いますが、安定した音程で重音も美しく歯切れの良い見事な演奏でした。 ただ、素晴らしい曲だけにオーケストラの指揮という意識なしにヴァイオリンのみに神経を注いだ演奏を聴きたかったと思った事も事実で・・・。 次はやはり普通にヴァイオリニスト(only)三浦文彰のシューマンのコンチェルトを聴きたいです。

ちょっと余談ではありますが・・・。
当日券の販売もあったようですが、会場はほぼびっしりでした。 バレエ会場さながらに(もしかしてそれ以上?)女性客が多いのにも慣れましたが(笑)、2016年の真田丸での大ブレーク以前から聞き続け応援している自分としては嬉しいようなそうでもないようなちょっと複雑な気持ちも。 もちろん演奏を聴く機会が増えて様々な面を見られるのは嬉しい限りなのですけどね。 どんなに人気が出ても有名になっても、いつまでも真摯に音楽と向き合い、驕る事無くヴァイオリン道を進んで行って欲しいなと。
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5月12日 N響 第1885回定期公演Aプログラム
2018/05/18(Fri)
NHK交響楽団
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
会場:NHKホール

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調
        (ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ)

  ――― 休憩 ―――

シベリウス:交響詩「4つの伝説」
       レンミンケイネンと乙女たち
       トゥオネラの白鳥
       トゥオネラのレンミンケイネン
       レンミンケイネンの帰郷

<アンコール>
ヴァイオリン:バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調ガヴォット


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12日にN響のA定期プログラムを聴きに行きました。 なんといっても「トゥオネラの白鳥」を含むシベリウスの「4つの伝説」を生演奏で聞けるプログラムが魅力的。 カップリングで組まれたベートーヴェンのヴァイオリンコンチェルトがテツラフというのも惹かれます。 オーケストラの違いはあれど、あの素晴らしかった2014年12月のカンマーのブラームス・シンフォニック・クロノロジーの再現も期待してしまいました。
通常の位置にもティンパニが置かれていますが、久保さんはステージ上手寄り金管の下に置かれたやや小さめのティンパニの前にスタンバイ。 おや~~?と不思議に思っている私に聞こえてきた冒頭のこのティンパニーの音は妙に乾いていて硬い。 バロックティンパニというものなのでしょうか? まずそんな事がとっても気になった12型で管11人打1人の小編成のオーケストラの演奏は、余計なものはそぎ落とし引き締まった感のあるスマートなもの。 メリハリも効いていて勢いもあって、ドイツ・カンマー・フィルのベートーヴェンを初めて聴いた時を思い出しました。
相変わらずスレンダーな体型にインフォーマルなステージ衣装で、髭を蓄え長くなった髪を後ろで束ねていたテツラフはヴァイオリンよりもギターを抱えた方が様になるような感じでしたが(笑)、知的で熱い演奏スタイルは変わらずシャープながら繊細な美音も健在。 1楽章のカデンツァ前の長く続いた弱音の美しさは今でも耳に残っています。 そしてそのカデンツァが、途中でティンパニとの掛け合いの入る聴いたことのないもので、ファウストがブラームスのコンチェルトで好んで弾いているブゾーニのものと一瞬混乱・・・。 あのティンパニはテツラフのヴァイオリン奏法と合わせるためのものだったのでしょうか? ホールの掲示によれば、同作品をベートーヴェンがピアノ協奏曲用に編曲した際に作ったピアノとティンパニによるカデンツァを、今回テツラフがヴァイオリンとティンパニ用に編曲したとの事。 少し長いようにも感じましたが1楽章の曲の流れにもそれまでの演奏スタイルにも合った見事なカデンツァでした。 2幕の美しいカデンツァと3幕の晴れやかなカデンツァも、ベートーヴェンがピアノのために作った曲をテツラフがヴァイオリン用に編曲したものだそうです。 
オケも最後までヴァイオリンとの小気味の良いコンビネーションで素晴らしく快活な演奏を聴かせてくれて大満足でした。 
テツラフのアンコールのガヴォットは神聖に清々しく心癒されるような演奏でした。

後半のシベリウスは16型の大編成。 交響詩「4つの伝説」の主人公であるレンミンケイネンはフィンランドの民族叙事詩「カレワラ」に登場する人物ですが、男前で武術にも魔術にも秀でた有能な青年ながらいわゆる正義のヒーローではなく、女たらしでわがままで身勝手のためにあちこちで騒ぎを起こし災難をも呼び込む人物のようです。 第1楽章はレンミンケイネンと島の女たちの艶事を描いたという事ですが、弦楽器の艶やかなトレモロや終盤での様々な楽器が競い合うような盛り上がりがそれを描写しているようで印象的でした。 またヴァイオリンではなくチェロがかなり高音を奏でリードパートのようだったのも強いインパクトがあります。 そういえば、あまりに熱が入ったせいか、パーヴォさんが指揮棒を飛ばしてしまうというアクシデントがありましたっけ。 ビオラの2,3列目あたりの奏者が転がった指揮棒を拾い主席の隣の奏者に渡し、その彼が立ち上がって譜面台に置くというリレーで指揮棒はあっという間にパーヴォのもとへ。 良かったですね♪ 
生演奏で聴きたかった「トゥオネラの白鳥」。 大太鼓の弱音での連打のあの不気味さからしてたまらない(笑)し、心にすぅ~~っと染み込んでくるチェロの暗く重苦しい旋律もいい。 そしてなんといってもイングリッシュホルン! そのうら悲しい音には黄泉の世界に誘い込むような魔力もあって、聴き惚れました。 
続く3曲と4曲も物語の主題を音によってしっかりと感じられるもので、大交響詩と呼ぶにふさわしい大作だと思いました。 N響の演奏も緻密ながら熱く軽快で勇壮で、最後まで気合十分な素晴らしい演奏でした。  


ここ4,5年でシベリウスの曲がかなり好きになっているのですが、9月にまたパーヴォ&N響でフィンランディアとクレルヴォが聴けるのは今からとても楽しみです。 ちなみに北欧の音楽への思い入れを語っているパーヴォのインタビューがN響ホームページのここに掲載されています。 彼はエストニア生まれですがヤルヴィという苗字はフィンランドに多く、パーヴォという名前はフィンランドの巨匠、指揮者のパーヴォ・ベルグルンドにちなんでつけられた名前なのだそうです。
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3月20日 都響 第849回定期演奏会Aシリーズ
2018/03/21(Wed)
東京都交響楽団
指揮:エリアフ・インバル
会場:東京文化会館

ショスタコーヴィチ:交響曲第7番ハ長調「レニングラード」


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ショスタコーヴィチがレニングラード(現サンクトペテルブルク)でこの作品に着手したのは独ソ開戦(1941年6月22日)直後の7月で、9月中には第3楽章まで書き終えていたそうですが、激化する爆撃から逃れるため10月1日にレニングラードを離れ、疎開先のクイビシェフ(現サマーラ)で12月に曲を完成させたとの事。 完成後、レニングラード市に献呈されています。

この曲を生演奏で聴くのは初めてで、CDなどでもそれほどの回数を聞いたことはなく、あの凄惨なレニングラード包囲戦の戦火にさらされ飢餓と極寒に苦しんだ市民たちに捧げられたこの曲をどう聴けばいいのかという事もよくわかっていないのですが・・・。
都響の曲目解説には75分と書いてありましたが、70分は軽く切っている非常に速いテンポでの演奏でした。 オーケストラの演奏は統制のとれた素晴らしいもの。 弦楽器は一糸乱れず美しく、オーボエ、ファゴット、フルートなど木管のソロもみな上手いし、金管はよく鳴っていました。 スネアも素晴らしかったです。 ただ何だろう、CDなどではもっと沈鬱で悲痛に響いた旋律、もっと優しく美しかった旋律がそれほどには感じられなかったところもあり・・・。 速すぎたのですかね?? 
そんな自分とは裏腹に、演奏後の客席の反応は物凄くブラヴォーと鳴りやまない大きな拍手の嵐でフルシャのラストコンサートの時のよう。 カーテンコールは何度も繰り返されインバルもとても満足気な表情でした。
ま、自分はまだまだ全然ダメですが、この曲、とても好きになりました。 もっといろいろな演奏を聞いてみたい。 フェドセーエフさん&サモイロフさんのTSOで聴けたら幸せだなぁぁぁ。
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3月15日 トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団コンサート
2018/03/19(Mon)
トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団
指揮:トゥガン・ソヒエフ
会場:サントリーホール

グリンカ:ルスランとリュドミラ序曲
ハチャトゥリアン(ランパル編):フルート協奏曲
  (フルート:エマニュエル・パユ)

   ――――― 休憩 ―――――

チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」から
  第1曲 情景 (第1幕)   
  第2曲 ワルツ (第1幕)
  第10曲 情景 (第2幕)
  第8曲 乾杯の踊り (第1幕) 
  第13曲-4 4羽の白鳥たちの踊り(第2幕)
  第13曲-5 パ・ダクシオン(第2幕) 
  第20曲 ハンガリーの踊り(第3幕)
  第21曲 スペインの踊り(第3幕)
  第22曲 ナポリの踊り(第3幕)
  第23曲 マズルカ (第3幕)
  第28曲 情景(第4幕)
  第29曲 情景-フィナーレ(第4幕)

<アンコール>
エマニュエル・パユ:ドビュッシー シランクス
オーケストラ    :ビゼー オペラ「カルメン」前奏曲
 

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2008年からトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の音楽監督を務めているトゥガン・ソヒエフは北オセチア出身、1977年生まれの40歳。 2014年からはモスクワ・ボリショイ劇場の音楽監督も務めています。劇場で実際にバレエ公演をどの程度振っているのかはわかりませんが、プログラムのインタビュー記事に「バレエ音楽はバレエが入るとそちらの方に全神経がいってしまいますが、今回はスコアに向き合って音楽だけに集中することができる素晴らしい機会」とあったので白鳥を振った事はあるのでしょうし、大いに期待も膨らみました。

グリンカのルスラントリュドミラ序曲はこの曲としてはそれほど速くないテンポで、とてもふくよかな膨らみと厚みのある音での勢いのある演奏。 RBでかなりステージに近かったのですが艶やかで張りのあるヴァイオリンと色彩豊かな管楽器の音色に包み込まれるようでした。

ハチャトゥリアンの協奏曲のソロ楽器はもともとヴァイオリンで、名フルート奏者のジャン=ピエール・ランパルがハチャトゥリアンにフルート用の編曲を依頼したところ、逆にランパル自身で編曲するように勧められために編曲をしたといういきさつのある曲なのだそうです。
優雅なモーツァルトのフルート協奏曲などとは全く違い、オケと競い争うように激しく、かなりのスピードで吹き続けるフレーズの多いすさまじい曲。 指の動きの速さは言わずもがなですが、パユといえども息継ぎは大変そうでした。
超絶技巧の嵐のような曲ですが、その凄さとともに心に残っているのは1楽章の後半でのカデンツァ。 フルートの音色がフレーズごとに自在に形を変え奥行きの深さと立体的な響きを形作っていたように思えました。 素晴らしかったです。
オケは民族音楽的な響きも感じられる力強い演奏でしたが、そんな中で、パユのフルートと絡みの多い木管楽器が聞かせた神経の行き届いた演奏も秀逸だったと思います。
パユのアンコール「シランクス」は繊細な音色が美しかったです。 フランス人作曲家の曲を選ぶというのも粋な選択ですね!

前半の素晴らしい演奏にさらに期待が高まった「白鳥の湖」。 弦楽器は16型、ホルンは5人いましたし、金管はボリューム十分。 不思議だったのは木管とビオラ・コントラバスの間にオデットとジークフリート二人なら踊れないこともないくらいの(笑)ちょっとしたスペースができていた事。  あれは何だったのだろう? いや、ほんと、バレエダンサーの登場を期待しちゃいました♪
第1曲の情景はバレエに馴染んだ耳にとっては少し遅く、思わず違う違うと違和感を覚えてしまうのだけれど、オーボエが、ファゴットがというようにバレエではオケピットの中で見えない奏者たちを見ながらこの曲を聴けるのはとても楽しく感動的。 抜粋された曲はほぼ順番どおりに並べられているのになぜ第8曲の「乾杯の踊り」の前に第10曲の」情景を先に持って来たのだろう? 王子の憂鬱とロットバルトの影、近づくオデットとの出会いまで脳内は完成されていたので、その後で「乾杯の踊り」に戻されたのは少しつらかったです・・・。 その「乾杯の踊り」は若干テンポは遅めながら美しい演奏。
パ・ダクシオンの始まりのハープは静かにドラマティック。 コンマスのヴァイオリンは艶やかな音に憂いがありとても美しいのですが、オデットの心の揺れや繊細さを表すには少し強すぎるかなとも感じました。 バレエ演奏でのヴァイオリニストは繰り返し演奏するうちにそういう微妙な感覚を感じ取っていくのでしょうね。 
ハンガリー、スペイン、ナポリ、マズルカはオケそれぞれのパートの色彩がバレエの衣装さながらに豊かで煌びやかで素晴らしい。 スペインのカスタネットとタンバリンはTSOの熱く妙技な二人とは全く異なり(笑)、上品で洗練された演奏の中での盛り上がり♪ ナポリのトランペットの濁りのない朗々とした音も素晴らしかったです。 続く情景と終曲はスケール大きくドラマティックに演奏され、大交響詩「白鳥の湖」と言いたいほど。 ハープの優しく平和的な音、力強く重厚さを増してゆくオケに終止符を打ったティンパニーの最後の渾身の一打、圧巻でした。

オケのアンコールはパユと同じく自国の作曲家。 軽快に爽快に明るいフィナーレとなりました。
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3月9日 三浦文彰ヴァイオリン・リサイタル
2018/03/11(Sun)
ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ    :イタマール・ゴラン
会場:紀尾井ホール

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第6番イ長調
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調「雨の歌」

  ――――― 休憩 ―――――

R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ変ホ長調

<アンコール>
チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ
グルック     :メロディ


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2月24日の松江市総合文化センターを皮切りに3月11日の秦野市文化会館まで16日間で12回の公演を行うツアー終盤の紀尾井ホールでのAプログラムを聴いてきました。
イタマール・ゴランの演奏を聴くのは何年ぶりだろう?? その昔、大進君がコンサート活動を始めてまだそれほど経っていない頃はよくコンビを組んでいたので何度か聴いた事がありますが、それ以来かな? 相変わらず世界中の名だたるソリストたちからの信頼が熱く引っ張りだこのようです。 文彰君とは20歳以上年が離れていますが、音楽については遠慮ない会話ができる間柄のようです。 以前見た文彰君のドキュメンタリーではゴランが彼をパリの自宅に泊めて世話をしながら一緒に練習をするなどとても親しい様子が映っていました。
 
冒頭から文彰君のヴァイオリンの音色は瑞々しさが際立ち滑らかで美しい。 ベートーヴェンのソナタ6番は落ち着いた趣のある曲ですが、主題と6つの変奏曲の形をとっている3楽章が一番聞いていて面白いです。 文彰君は端正な演奏スタイルながらそれぞれの変奏曲でゴランのピアノと絶妙なコンビネーションで自在に表情付けをしていきます。 特に第4変奏での少しおどけたような表情で楽しそうに弾いていた姿が印象的。

ブラームスの「雨の歌」は悲しさとその悲しみを鎮めるようにそっと寄り添うような優しさを感じる曲ですが、ヴァイオリンの美しく繊細な音が心に沁みてきます。 ピアノとヴァイオリンが強弱を繰り返しながら切々と嘆くような2楽章。 バランス的に若干ピアノの音が強いような気もしましたが、情感たっぷりに歌った3楽章も良かったです。

R.シュトラウスは23歳の時にこのヴァイオリンソナタを作曲しているのですが、この若さでこれほど素晴らしい曲を作っているのに彼の生涯でヴァイオリンソナタはこの1曲だけなのですね。 なんだかもったいない・・・。 
冒頭から華麗なメロディーで始まり、あっという間に曲に魅了されますが、ヴァイオリンとピアノ二つの楽器で演奏しているとは思えないほどのスケールの大きさとゴージャス感。 流麗な美音が魅力を増して一段と冴え渡る文彰君のヴァイオリンの音色にゴランの歌心溢れるピアノが重なり、音楽がさらに輝きを放ちます。 ヴァイオリンとピアノが対等な関係でお互いを刺激しあいながらシュトラウスの絢爛豪華な世界を構築していく感じです。 二人が同じ音楽観と卓越した技術と表現力を持ち合わせていないと表現しきれない作品ですね。 しかしなんて名曲なんでしょうね。 本当に曲と演奏の素晴らしさに圧倒されました。 これからは貪欲に聞いていきたいぞ!! 

アンコールのチャイコフスキーのワルツ・スケルツォは本プログラムとは違う自由闊達さのようなものも感じられる演奏で二人とも楽しそう。 グルックのメロディーも美しい演奏でした。 2週間以上の長いツアーの最終日前日という事で疲れがないわけはないと思いますが、そんな事は全く感じさせずに最後まで素晴らしい演奏を聞かせてくれた後のアンコールは嬉しいやら申し訳ないやら・・・。 最後に文彰君がヴァイオリンを置いて出て来てくれた時にはおかしな言い方ですが、ほっとして思いっきり拍手する事が出来ました♪ またすぐ二人のコンサートを聴く機会があればいいなぁ!
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2月28日 都民芸術フェスティバル シベリウス・アーベント
2018/03/04(Sun)
新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:井上道義
会場:東京芸術劇場

~シベリウスプログラム~
交響詩「フィンランディア」
ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
  (ヴァイオリン:辻彩奈)

    ―――  休憩 ―――

組曲「レンミンカイネン」~<トゥオネラの白鳥>
交響曲第7番 ハ長調

<アンコール>
シベリウス:組曲「カレリア」より第3曲「行進曲風に」



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2018都民芸術フェスティバル参加公演である新日本フィルの~シベリウス・アーベント~に行って来ました。 プログラム自体、非常に魅力的だったのですが、トゥオネラの白鳥を生で聴けるのと、コンチェルトのソリストが一度聞いてみたいと思っていた辻さんだったので更なる楽しみとなりました。
新日本フィルも指揮者の井上さんもかな~り久しぶりです。 井上さんは指揮台を使わず移動域も広めでオケとより近い距離感。  

「フィンランドたるもの」という意味の「フィンランディア」は、ロシアの支配下のフィンランドで愛国運動が盛んになってきた1899年に上演された舞台劇「歴史的情景」の音楽をもとに書かれた作品で、祖国を讃えた音楽としてフィンランドの人たちにとって特別な曲なのだそうです。 にもかかわらず、未だにジョン・マクレーンが走り回る姿が浮かんで来てしまう私・・・ですが、とても好きな曲。  この日の演奏は出だしのテンポがやけに遅く、そのせいか金管の音が少し揃わないように聞こえ、なんとなく全体的に間延びした感じ。 次第にテンポが上がってくると今度はその金管の音がもの凄いパワーとなって飛んできて圧倒されました。 席はRB。 弦楽器が美しく揃っていた中盤は良かったのですが、終盤の盛り上がりでの金管の細かい音のキレがいまいちでなんとなく大味な印象で終わってしまいました。

1997年生まれの辻さんは、2016年モントリオール国際音楽コンクールで優勝した際に併せてバッハ賞、パガニーニ賞、カナダ人作品賞、ソナタ賞、セミファイナルベストリサイタル賞も獲得した逸材。 ファイナルで弾いた曲がシベリウスのコンチェルトだったそうで、この日のブルーのホルターネックのドレスはその時の衣装です。 演奏家、特に女性はコンサート衣装をどうやって選んでいるのかとても興味があります。 シベリウスなら縁起のいいこのドレスで!なんて決めていたのかしら?
辻さんのヴァイオリンはとても芯がしっかりとしていて音量豊かです。 ネックを高めに上げてのパワフルなボウイングが印象的で、まだ若いのにとても情感豊かに、そして実に堂々と演奏する方ですね。 3楽章などは彼女がオケをぐいぐい引っ張っていたように見えました。 パワフルすぎて北欧の空気こそあまり感じられませんでしたが、今後の活躍が大いに期待されるヴァイオリニストなのは間違いないですね! オケは少し辻さんとの温度差があったかなぁ? 

「レンミンカイネン」の第2曲の「トゥオネラの白鳥」は、英雄レンミンカイネンが美女を妻として得るために課せられた3つ目の条件で、矢で射殺さなければならない白鳥。 黄泉の国の川面に浮かぶ白鳥という幻想的で静寂なシーンが新日本フィルの森さんの憂いのあるイングリッシュホルンと透き通るような弦の音で見事に描き出されていました。  白鳥の悲しみをより深いものにするようにしみじみと響くチェロの旋律も美しく、不吉に響く大太鼓の弱音は効果抜群です。

交響曲7番を生演奏で聴くのは初めてでした。 交響曲といってもこの曲は単一楽章で書かれ演奏時間も20分程度という短く纏められた曲ですが、シベリウスらしい美しく雄大な雰囲気の旋律が多く、森林や川の流れなどの自然や動物たちの生命力のようなものも感じられる素晴らしい作品。 この日の演奏の中でも一番の演奏だったと思います。 弦の美しさも堪能できましたが、朗々と響き渡ったトロンボーンがなんと言っても素晴らしかった! フィンランディアでは物足りなく思った金管郡もみな良かったです。 

これでコンサートが終わっても十分満足だったのですが、「最後の曲の7番(1924年、59歳?)は少し中年の悩みのようなものがあるからもっと若い時の音楽で終わりにします」みたいな井上さんの短いコメントの後に1893年28歳で作曲した「カレリア」からの「行進曲風に」をアンコールで演奏してくれました。 明るく軽やかな行進曲でオケのメンバーも楽しそうに演奏。 とても良かったです。
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2月16日 N響 第1880回定期公演Cプログラム
2018/02/19(Mon)
NHK交響楽団
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
会場:NHKホール

デュリュフレ:3つの舞曲
        第1曲 ディヴェルティスマン
        第2曲 ゆったりとした踊り
        第3曲 タンブーラン
サン・サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番ロ短調
       (ヴァイオリン:樫本大進)

    ――― 休憩 ―――

フォーレ:レクイエム
    (ソプラノ:市原愛、バリトン:甲斐栄次郎、東京混声合唱団)
 I 入祭唱とキリエ(合唱)
 II 奉献唱(バリトン・合唱)
 III 聖なるかな(合唱)
 Ⅳ慈悲深きイエスよ(ソプラノ)
 Ⅴ神の子羊(合唱)
 Ⅵわれを解き放ちたまえ(バリトン・合唱)
 Ⅶ天国に(合唱) 


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大進君がサン・サーンスのヴァイオリン協奏曲を弾くというのでチケットを取ったN響定期公演は、あまり聞くことのないフランス音楽プログラムという事でちょっと自分的には冒険のコンサート(相変わらずこんなレベルです♪)。 初物尽くしでもありますし・・・。 大進ファンが押し寄せたためなのか?、金・土と同プログラムの2公演とも完売という盛況ぶり。

作曲家&オルガン奏者であるモーリス・デュリュフレ(1902~1986)の曲は辛うじてレクイエムを知っているくらいです。 この「3つの舞曲」は舞台の付随音楽として依頼されて作曲した「タンブーラン」に、作曲の師デュカスの助言により「ディヴェルティスマン」と「ゆったりとした踊り」を書き加えて一つの作品としたものだそうです。
オケは、後半のレクイエムで合唱団が立つスペースをすでに設置した上での配置なので、かなり縦間隔が窮屈そうな上にほぼ皆平面に座っているので管楽器奏者があまり良く見えませんでした。
現代曲ながら第一曲と第二曲は洗練されて繊細な感じがする映画音楽にも使われそうな雰囲気の聴きやすい曲。 木管の美しいメロディーが印象的でした。 そしてあまり良く見えないながらも、オーボエに昨年10月のブラームス2&3番での活躍ぶりが素晴らしかったマーラー・チェンバー・オーケストラの吉井瑞穂さんが入っている事を発見! 第3曲はタンブーラン(太鼓)という名の通り、フランスの古い民族楽器タンブーランの刻むはっきりとしたリズムが独特な躍動感ある楽しい曲。 
ハープ2台、チェレスタ、シロフォン、サックスなど使用楽器も多彩なためか、3曲ともに色彩豊かで飽きない曲でもありました。 特にサックスは存在感がありましたね。


サン・サーンスの3曲のヴァイオリン協奏曲の中で最も演奏される機会が多いという3番はヴィルトゥオーゾのサラサーテに献呈された非常にドラマティックで美しい曲。 それを大進君が弾くのであれば絶対に聴きたい!!という事でとても楽しみにしていたこの日の演奏。 大進君のヴァイオリンは強弱高低にかかわらず芯がしっかりしている美音。 第1楽章は情熱的でドラマティックな旋律をオケとのバランスよく表情豊かに奏でていました。 どことなくほの暗い雰囲気が漂うメロディーにシベリウスのヴァイオリン協奏曲が連想されるのですよね。 抒情的で美しい2楽章は天使の囁きのような穏やかさもあって、この日の3曲ではすべてそのような心安らぐ美しいメロディーを堪能できるようになっているのね(って張り付けながら気がつきましたが、ちゃんとチラシのキャッチコピーになってます・・・)などと思いながら聴いていました。 途中の木管との絡みも素敵です。 吉井さんのオーボエは、やっぱり人を惹きつける魅力がありますね! そして消えゆくエンディングはため息がでるくらいの美しさ。 3楽章は力強く華やかなカデンツァが素晴らしく、オケと壮大に盛り上がりながらのラストも圧巻でした。 
パーヴォもそうですが、マロさんがとてもにこやかな顔で演奏後の大進君を称えていたのが印象的です。 ソリスト・指揮者・オケがお互いに敬意を払いながらの素晴らしい演奏だったと思います。


後半の演奏が始まる前に、事務局から出演予定だったバリトンのアンドレ・シュエンさんが急な体調不良で出演できず、甲斐栄次郎さんが急遽代役を務める事になったとのアナウンス。 
フォーレのレクイエムを生演奏で聴くのも初めてでしたが、この曲は弦楽器の編成が変則的なのですね。 8-8-12-10-8に見えました。 ただ自分の席がかなり上手寄りだったので下手側の第1ヴァイオリンとチェロは重なっていてはっきりとは見えず・・・。
ヴァイオリンの演奏がない第1,2曲は穏やかながら中低音が効いている故の厳かさのようなものが感じられました。 第3曲でヴァイオリンが入ってくると音の世界が変わるというか、より一層優しく清らかに感じられます。  オーケストラの演奏は終始柔らかく慈しみが感じられるような美しい音色で、終曲の「天国に」は透き通った合唱の声とオルガンとハープとのアンサンブルには安らぎが満ちていました。 この終曲は棺が運び出される時に歌われる歌なのですね。 ただ、オルガンの音が右側から全体の音に被さるように聞こえてくるので上手の席では非常にバランスが悪く、それだけが残念でした。
バリトンの甲斐さんはさすがに譜面を見ながらの歌唱でしたが、よく通る声でソフトに歌い上げていて急遽出演というようには全く見えませんでした。 一方ソプラノは・・・、声量と音程が安定していないような歌声にちょっとがっかり。 背中がぱっくり開いたドレスにもちょっとびっくり。 


それでも心が洗われるような素晴らしい曲に触れて幸せな気分でホールを後にすることができたコンサートでした♪ 海外オケの来日公演では難しいこのようなプログラムを組んで上質な演奏を聴かせてくれるのも国内オケならではですね。 ヴァイオリンコンチェルトもレクイエムも今度はサントリーホールで聴いてみたいなと・・・。
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1月19日 読売日本交響楽団 第608回名曲シリーズ
2018/01/23(Tue)
読売日本交響楽団
指揮:シルヴァン・カンブルラン

ブラームス: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
      (ヴァイオリン:イザベル・ファウスト)

   ―― 休憩 ――

バッハ(マーラー編):管弦楽組曲から
ベートーヴェン: 交響曲第5番 ハ短調 

<アンコール>
ファウスト:クルターグ 「サイン、ゲームとメッセージ」からドロローソ


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バレエ一辺倒からクラシックコンサートの回数も増えたのはここ4~5年で、在京オケに至っては聴き始めたのがここ数年くらいなので、常任指揮者ながらシルヴァン・カンブルランの振る公演は今回が初めてでした。 彼は2010年に読響の常任指揮者に就任し、現在は2019年3月までの3期目の任期中というオケと長い関係を築いている指揮者なのですね。 1948年生まれとの事で今年70歳を迎えるわけですが、そうとはとても思えないほどに若々しい方です! 私はコンサート後にパンフレットを読んで知ってびっくりでした。
このコンサートはファウストが聴きたくてチケットを取ったのですが、チケットは完売。 ファウストの人気もあるでしょうし、さり気なく3大Bですものね~。 彼女のブラームスのヴァイオリン協奏曲は2014年に新日本フィルハーモニーとの共演で聴いて以来です。
ファウストのヴァイオリンの音色は瑞々しく張りがあって美しい。 音程は高音まで見事にコントロールされているし、重音も濁りがなくクリア。 そしていつも通りクールに情感が込められた彼女の演奏はとても繊細な表情の変化を持っています。 カンブルランともよくコンタクトを取り、時折見せる笑顔にこちらも一層満ち足りた気分になります。 
カデンツァは新日本フィルとの演奏、リリースされているハーディング&マーラー・チェンバー・オーケストラとの録音と同じフェルッチョ・ブゾーニのもの。 ティンパニーの強打で始まった後、終始ティンパニーの弱音での演奏を伴うこのカデンツァはどこか緊張感があってドラマティックで、1楽章の旋律が使われているのもいいし、その後、低弦から弦楽器も加わって回帰していくスタイルがとても気に入っています。 ティンパニー奏者も見事でした。
14型のオケの弦楽セクションは思ったよりも柔らかでふくよかな音で、ファウストの音質が綺麗に浮き上がるように思えました。 アンサンブルの精度も素晴らしい。 演奏者で特に印象に残ったのは2楽章のもの淋しく美しい響きのオーボエ。 癒しの音色でした。 またそのオーボエを受け継いだファウストのヴァイオリンも天上の歌のように美しかったです。

アンコールのクルターグ 「サイン、ゲームとメッセージ」からドロローソ は曲も知らなければ作曲家も知りませんでした。 調べたところクルターグは1926年生まれで現在91歳のハンガリー人作曲家との事。 この曲の詳しい解説は見つけられませんでしたが、現代音楽でシンプルな音を聞かせるとても短い曲でした。 会場は静まり返っていましたが、何が演奏されているのかと耳をこらしているようにも感じられ・・・。

小ぶりな8?-8?-6-4-3の編成でのバッハ、管弦楽組曲はマーラーが全4曲の中からポピュラーな2番3番から楽曲を選んで再編成したダイジェスト編曲版との事で、作成は1909年。 実際に演奏されたのは第2番の第2曲と第7曲、第3番の第2曲(G線上のアリア)と第3曲(ガヴォット)です。 第2番は1月1日付で主席として入団したというフリスト・ドブリノヴのフルートが美しく響き渡り、続くG線上のアリアでは澄み切った弦の音が美しかったです。 かすかに聞こえてくるチェンバロの音色もまた良かった。 ただ、軽音楽というかBGM的な演奏のようにも聞こえました。

運命は出だしの運命動機すら誇張される事もなく、全楽章を通して過度なものはすべてそぎ落とした軽快でスマートな演奏でした。 クラシック音楽の現代的演奏というのでしょうか?  好みとしてはもう少し重厚なものなのですが、それでもコンマスの長原さんやヴィオラの首席?の方などは椅子から飛び上がりながらの熱の入った演奏でしたし、ベートーヴェンの曲自体の力で十分魅力的な音楽です。 指揮者とオケの息もぴったりでアンサンブルもブラームス同様素晴らしかったですしね! 2楽章の低弦と木管ののびやかで穏やかな音、緊張感をもって繋げ、新たな世界がぱあっと広がるというイメージを鮮やかに描き出した3楽章から4楽章への移行が特に印象に残っています。
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12月16日 東京都交響楽団 第845回定期演奏会Bシリーズ
2017/12/29(Fri)
東京都交響楽団
指揮:ヤクブ・フルシャ
会場:サントリーホール

マルティヌー:交響曲第1番
         
 --- 休憩 ---

ブラームス:交響曲第1番ハ短調


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ヤクブ・フルシャが初めて都響に登場したのは彼がまだ26歳だった2008年5月。 その初めての公演で指揮者とオケは恋に落ち、オケからの熱望叶って2010年より主席客演指揮者に就任します。 7年の任期中に25回の公演を行い、この16日が彼の主席客演指揮者としての最後の公演でした。 
私が初めて彼を聴いたのは2012年3月11日のプラハ・フィルハーモニア管弦楽団のコンサート、16歳でハノーファ国際コンクールで優勝した三浦文彰くんのチャイコンを聴きたくて行った公演でした。 その日は東日本大震災から丸1年と言う事で、フルシャは追悼の意を込めドヴォルザーク9番から「ラルゴ」を特別に演奏してくれたのでした。 開演前まで都響にポストを持っている指揮者と知らなかった私は、なんて思いやり深い人なんだろうとただ感心していたのですが、日本との繋がりが自然にそうさせたのですね。 真摯で温かい人柄は演奏にも現われ、私はいっぺんでファンになってしまったのですが、都響での演奏はプログラムをえり好みしたり都合が悪かったり7回しか聴いていない。 今だったらもっと貪欲に聴きにいったのになと後悔先に立たずです。 


1890年生まれのボフスラフ・マルティヌーは1923年に作曲を勉強するためにパリに渡り次々と作品を発表していたものの、1940年6月にナチス・ドイツの侵攻を逃れパリを離れ1941年3月からはアメリカで亡命生活を送り、米国の市民権を得た後1953年にヨーロッパに戻り1959年にスイスで亡くなった作曲家です。 多作家として名高い彼が交響曲第1番を書いたのは本格的に作曲を始めてからはほぼ20年という年月が過ぎた51歳。 ブラームスと似ていますね。 都響の冊子によれば、「交響曲第1番という問題に直面すると、非常に敏感に、そして真剣に構えてしまい、考え方がベートーヴェンではなくブラームスの第1番に結びついてしまう」と彼自身のプログラムノートに記述があるそうです。 交響曲というのは、作曲家にとってそれほどに特別で重いものなのですね。

さて、聴いた事のない曲は、せめてどんな感じの曲なのかを知っておきたくて、なるべく公演前に一度くらいは聴いてからコンサートに出かけたいと思っているのですが、11日の公演でのマルティヌー交響曲第2番は予習なしで聴いてしまいました。 なので1番はなんとか!とYoutubeでみつけて細切れながら1度だけ聴く事ができ、その1度の試聴で「これは好みの曲!音!!」だったので生演奏を聴けるのを楽しみにしていました。 
曲を通してアクセント的であったり、その短いフレーズで曲調を変えたりとピアノの存在感が強い曲です。 またどの楽章も多くの楽器がそれぞれの多彩なメロディーを持ち、非常に密度が濃く立体的に絡み合う響きでもあるのに重ねられた音は美しく聴きやすい。 都響のアンサンブルは初めての演奏でよくここまで精緻に揃うなと感心するほどに見事でした。 
1楽章はボヘミアを感じさせるメロディーと半音階の流れるような旋律が印象的。 この半音階の旋律には不安定さと幻想性も感じ、妙にに引き込まれるような魅力があります。 2楽章の始まりの弾むように力強いリズムも独特ですね。 この楽章は途中弦楽器の演奏のない部分があるのが特徴的でその間のオーボエ、クラリネット、フルートがここぞとばかりの素晴らしい演奏。 冒頭でピアノの低い音が沈痛に響く3楽章は続くヴァイオリンのメロディーも厳かで葬送の歌のようで心に染みます。 一転4楽章は切れよく快活。 フィナーレは明るい希望を感じさせるような雰囲気の中、音と音が煌めくように響き合って鮮やかに終わりました。 
本当に素晴らしい演奏で、自分の引き出しにまた一つ好きな曲を増やしてくれたフルシャと都響には心から感謝です。 いつかまたこのコンビで聴きたい!


主席客演指揮者としてのファイナルを飾るのはブラームスの1番。 好きな指揮者が自分の大好きな曲を選んでくれたのは本当に嬉しくこれ以上の事はないのですが、先日の2番が自分が期待していた演奏とは微妙に違ったので、わずか5日後に1番を聞くのはちょっぴり不安でもあったのです。 同じサントリーホールで演奏され、これまでで一番感動して素晴らしいと思った10月のN響の1番も記憶に新しいところだし、過度な期待はしないでおこうと・・・。
そんなわけで、少し気持ちを落ち着けて曲の始まりを待った1番でしたが、自分の思いは全くの杞憂で、キュッヒルさんが引っ張ったN響に対し、冒頭から指揮者とオケの絶対的な信頼関係とお互いへの敬愛から生まれた、今の最高の音楽をという思いがひしひしと伝わってくる素晴らしい演奏となりました。 

1楽章の冒頭のティンパニーの響きはそれほど重々しくはなかったですが、ゆったりと聞かせ弦は力強くどんどん厚みを増し、音の立体的な広がりがとてもいい。 オケは最初から熱く、弦の音は重厚なのだけれど繊細な響きを持っていてともかくアンサンブルが見事。 2楽章は美しい管楽器の演奏を堪能。 張りはあるけれど澄んだ音のホルンと情緒豊かなオーボエがとりわけ素晴らしい。 そしてコンマス矢部さんの詩情のある美音にはもううっとりです。 最後の音が綺麗にオケの音に包まれて一緒に消えていくのは神業的にも思えました。 3楽章はクラリネットが美しく。 しばし平常心(笑)に戻れた楽章なのですが、なぜか涙が出てきました。 そして4楽章。 弦のピチカートは弱音でも歯切れが良く次第に盛り上がってくる時の表情づけもいい。 ホルンとフルートの掛け合いも美しく、主題の前のホルンの音に自分の高揚感もかなり高まった感じです。 ここまでフルシャは熱いながらも細部まで丁寧に曲を構築していたように感じましたが、、主題が始まると次第に何かから解き放たれたようにテンションもテンポも上がります。 指揮者が求めればオケはそれ以上に応え、誰もかれもどのフレーズもさらに熱く圧巻のサウンドが生み出され、自分はその音の塊にじわじわと包み込まれる感じでした。 コーダの堂々たる響、フルシャとオケのメンバーの凄まじいまでの集中力と渾身の演奏姿に大感動でした。 


終演後、オケは拍手でフルシャを讃え、フルシャも5弦のトップ二人と握手を交わし(その前に矢部さんとはハグしてましたね)、管と打楽器奏者は全員を立たせていました。お互いに満面の笑顔です。 オケから贈られた花束にフルシャも感慨深げで、両者の強い結び付きが伝わって来た良き光景でした。 オケのメンバーが引き上げてもかなりの人が残っている客席からの拍手は鳴りやまず、フルシャが再びステージに。 また必ず都響に戻って来て欲しいという私たちの強い思いはきっと伝わったと!
フルシャは来年6月にバンベルク交響楽団と来日します。 25日東京文化会館、26日&29日サントリーホール、28日みなとみらいと東京&近郊の6月最後の週はフルシャウィークですね!
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