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マリインスキー 「オールスター・ガラ」 12月11日の感想
2009/12/28(Mon)
今更ですが、マリインスキーガラの2日目の感想を記憶をたどりながら書きました。 最終日なので、やはりきちんと(ではないけれど)残しておきたかったんですよね。

 
<第1部>
シェエラザード
音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ、振付:ミハイル・フォーキン
シャリヤール王 : ウラジーミル・ポノマリョーフ
王の弟 : カレン・ヨアンニシアン
宦官長 : ロマン・スクリプキン
ゾベイダ : ディアナ・ヴィシニョーワ
黄金の奴隷 : イーゴリ・コールプ
オダリスク : アナスタシア・ペトゥシコーワ、エフゲーニヤ・ドルマトーワ、リュー・チヨン


ゾベイダと金の奴隷はもちろん昨日とは違うキャストだけれど、自分的にはシャリアール王のポノマリョーフが昨夜のクラーエフよりも威厳があって良かったという印象です。
ハンサムな顔立ちのカレンは付け髭をつけてもかっこいいですねぇ。 ちょっぴりシヴァにも似ている気がする。 身長もあるし、スタイルも良いし、上手くなって将来王子グループの一翼を担うダンサーになれるといいですね。
ゾベイダのヴィシニョーワ、ひっさしぶりに濃~~い化粧の彼女を見ましたが、厚化粧栄えするというか、妖艶で美しいですねぇ。 腰のくびれ具合も素晴らしく・・・。 でも彼女の表情と腰のくねらせ方は品のなさを感じさせ、王の愛妾というよりは、退廃的なムードを漂わせ、刹那の快楽を求めている獣系の娼婦という感じ(ヴィシファンの方、すみません)。
で、コルプはゾベイダをたぶらかして再び自由を手に入れようという下心&野心満々の凶悪(でも快楽好き)な金の奴隷というように見えた。 二人の間には主従関係も愛も何もなく、ただ動物的本能のままに戯れ食らいつこうとしているような・・・。 
まぁ、そんなイメージを抱かせるのは良いのだけれど、ヴィシの踊りは時にとても雑に見えたし、一緒に踊っているコルプは彼独特の切れも美しさもないような気がして、調子悪いのかと思いました。
ゾベイダの自決シーン、潔くも見えたけれど、前日のロパートキナとは違い、こんなはずではなかったという捨て鉢な死にも見えました。 


<第2部>
シンデレラ 第2幕のパ・ド・ドゥ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ、振付:アレクセイ・ラトマンスキー
エフゲーニヤ・オブラスツォーワ  ミハイル・ロブーヒン

オブラスツォーワがひたすら可憐。 ロブーヒンも古典の王子だとどうなんだろうとは思うけれど、サポートは問題ないし、等身大の普通の青年というイメージで押していけたので良かったと思います。 
ふわふわ優しい素敵な恋の始まりという雰囲気だったかなぁ。

ロミオとジュリエット バルコニーの場面
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ、振付:レオニード・ラヴロフスキー
ヴィクトリア・テリョーシキナ  エフゲニー・イワンチェンコ

どうせなら、ばっちりオールバックで決めてきてくれた方が良かったんですけどねぇ、イワンチェンコ!  テリョーシキナの実年齢より上に見える顔立ちも手伝って、10代の若者の疾走感溢れるロミジュリというわけにはいかなかったけれど、しっとりと落ち着いた雰囲気で、踊りを見ている分には私的には文句はございませんでした。 全幕で見た事がないのでアレなんですが、もともとラブロフスキー版のこの場面って、マクミランやクランコほどロミオの若さが迸って胸がきゅんとしめつけられるような振付ではないから、そういう意味での物足りなさってのは誰が踊っても感じるような気がするし・・・。 

チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、振付:ジョージ・バランシン
アリーナ・ソーモワ  レオニード・サラファーノフ

サラファーノフがもったいなかったかなぁぁぁ。 
ソーモアのソロは、ここまで音を外せるのかと思うほど音楽を聴いていない踊り。 音に合わせられないならせめてラインくらい綺麗なラインを作ってくれと思うけれど、あのぐにゃぐにゃラインは何とかならないのだろうか。

瀕死の白鳥
音楽:カミーユ・サン=サーンス、振付:ミハイル・フォーキン
ディアナ・ヴィシニョーワ

一言で言えば「悶絶」ですかね? 普通?の瀕死の白鳥は、老いたのか傷ついたのかにせよ、死への過程をたどってきた白鳥の最後の瞬間というドラマを見ていたと思うのですが、ヴィシの場合、観客の目の前に姿を現してから思いもかけず死ぬ運命になった白鳥が、予感もしていなかった死にたいして必死に抗っている様子・・・。
自分としては先ほどのロミジュリなんて問題じゃないだろと思うほどの異色の瀕死でしたが、会場からの拍手はロパートキナの瀕死と変わらないほどの絶賛度。 ヴィシのガラだったらいいのかもしれないけれど、マリインスキーのガラとしてはやはりどうなのかと思ってしまいました。

ザ・グラン・パ・ド・ドゥ
音楽:ジョアッキーノ・ロッシーニ、振付:クリスティアン・シュプック
ウリヤーナ・ロパートキナ  イーゴリ・コールプ

ちょっと気取った抜け感がロパートキナらしいザ・グラン・パ・ド・ドゥでした。 手首をぐるぐる回してみたり、膝を曲げて足はフレックスにしてみたりと、ポーズは崩しているのだけれど、そこに至る動きはクラシックの美しい動きのままなんですよね。 だから崩しきれていないしコメディタッチとしては物足りないと感じてしまっても仕方ないとは思いますが、孤高のゾベイダを見た後に彼女のこういう面を見せてもらえて嬉しかったし十分楽しめました。
コルプもロパートキナに合わせたトーンで良かったと思います。 何より、踊りがいつものコルプの美しいラインに戻っていたので安心したし。


<第3部>
海賊 組曲
華やぎの国~メドーラのヴァリエーション~オダリスク~パ・ダクション~コーダ
音楽:アドルフ・アダン,ほか、振付:ピョートル・グーセフ
メドーラ : ヴィクトリア・テリョーシキナ
コンラッド : ダニーラ・コルスンツェフ
アリ : ウラジーミル・シクリャローフ
ギュリナーラ : エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
オダリスク : マリーヤ・シリンキナ、ヤナ・セーリナ、エリザヴェータ・チェプラソワ 


前日の、コール・ドと区別がつかないようなソーモアの衣装とは違い鮮やかな赤紫のチュチュがとても良く似合うテリョーシキナ。 くっきりなんだけれど優雅なラインが美しい。 難しい事も一つの流れの中にさり気なくこなしてしまい、音楽性溢れる彼女の踊りに引き込まれ幸せな気持ちになります。 
オブラスツォーワも良いのだけれど、出番が少なくてかわいそうですね。
オダリスクの3人はこの日も良く踊っていたと思います。 ヤナちゃんはこのツアーの一番の大黒柱だなぁ! 
ダニーラのコンラッド(イワンチェンコみたいなでかい青鉢巻じゃなくて良かった・・・。 薄いブルーの幅の狭いものでした。)は、あこぎな海賊家業はしばし忘れて愛しいメドーラと幸福な時間を過ごしたいというロマンティックモードなコンラッドで終始優しい笑み。 テリョーシキナのデジレはダニーラで見たかったなぁ。 ヴァリでは空中で足を思い切り開脚させ着地と同時に綺麗なアラベスク。 調子はそれほど良くはないと思いましたが、アントルラッセやパの流れが滑らかで美しかった。 
温厚で優しく大人なコンラッドとメドーラが可愛がってくれるのをいい事に、無邪気に弾けるシクリャローフのアリ。 彼のアリの敗因はその役作りだけじゃなくて、セクシーさをこれっぽっちも感じさせない裸の上半身にあるのかも・・などと失礼な事まで思ってしまった二日目でした。
トロワが終わり、もう一度花園のバレリーナが登場し一通り踊り終わったところで再びコンラッド登場。 メドーラを頭上高々とリフトして幕。 と、思ったら5,6秒後?に照明がついて・・、ダニーラは微動だにせずテリョーシキナをリフトしたままのポーズでした。 瞬間的に前日の金の奴隷の逞しい上腕を思い浮かべて直ちに納得。
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マリインスキー 「オールスター・ガラ」 12月10日の感想
2009/12/13(Sun)
突っ込みたいところもありましたが、ご贔屓さんがすべて素晴らしく、日本にいては見られないだろうと思っていたロパートキナとコルスンツェフのシェヘラザードもついに見る事ができ、満足した舞台でした。
ただ、前日に奇跡のようなダンスとオケの共演を目の当たりにしてしまったばかりに、この日の演奏は悪いところばかりが気になってしまったのが非常に残念。 ニューシティー、最近は株が上がっていたけど、今日で急落だわ・・・。
さらにこの日のキャストと演出に限って言えば、「シェヘラザード」と「海賊組曲」を逆にした方が終演後がもっと盛り上がって気分高揚したまま家路につけたのになとも残念に思いました。

<第1部>
「シェエラザード」
音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ、振付:ミハイル・フォーキン
シャリヤール王 : ソスラン・クラーエフ
王の弟 : カレン・ヨアンニシアン
宦官長 : ロマン・スクリプキン
ゾベイダ : ウリヤーナ・ロパートキナ
黄金の奴隷 : ダニーラ・コルスンツェフ
オダリスク : アナスタシア・ペトゥシコーワ、エフゲーニヤ・ドルマトーワ、リュー・チヨン


クールな妖艶さが漂うロパートキナのゾベイダはオデットよりも孤高でありました。 このハーレムでシャリヤール王の愛妾でいる事など何も意味のないような、楽しい事など一つもないような。 他の女たちが王にはべり媚を売っていようが、気にする様子もなく冷めた様子で鏡に映る自分を覗き込み、狩に出掛ける王も儀礼的に見送るだけ。 感情を一切感じさせないロパートキナの腕の動き、顔の傾け方が際立って美しく見える。 
王たちがいなくなったハーレムでは女たちが宦官長を宝石でつり奴隷部屋の鍵を奪い取り男たちを解放する。 薄いヴァイオレットの衣装をつけた長身ダンサーたちの格好いい事! すぐさま奴隷たちと享楽の世界へ落ちていく女たちに刺激されたように一瞬目を異様に光らせたゾベイダが宦官長から一つの鍵を奪い別の奴隷部屋の扉を開ける。扉の脇に立ち体の芯から湧き上がってくる欲望を押さえるようにしているロパートキナの表情がまた冷ややかにエロティック。
コルスンツェフの金の奴隷が飛び出してくる。 心臓バクバクです(笑) で、でかい・・・。 分かっていてもデカイ! 
長身という事だけでなく、彼の上半身、上腕筋の逞しさに驚かされました。 じわじわと汗が光りだしてくる肉体がまた迫力物で・・・。 この肉体あってのあの磐石無比なサポート技術なのだと改めて感心してしまいました。 ま、やはり相手がロパートキナだからか、コルスンツェフの人柄からか、ゾベイダを愛欲に狂わせるようなセクシャルな魅力はあまりなく、純粋でひたすらゾベイダを崇め彼女への愛に溺れている爽やかな金の奴隷でした。 お互いの肉体をむさぼった事がありながらもゾベイダに触れる奴隷の指には遠慮と躊躇が感じられ、そこに禁断の世界を感じてしまいましたわ。
金の奴隷がゾベイダにメロメロなのは何の説明も要りませんが、ゾベイダにとって金の奴隷の存在は何だったのだろう? 奴隷の中でも一際目立つ金の奴隷にゾベイダが最初に目を留めたとき、きっと彼は視線を外しひたすら謙虚な姿勢を貫き通したのだと思うのです。 それがゾベイダの心をくすぐり、王の愛妾といえども男社会のイスラムで自分を崇めてくれる金の奴隷の献身に喜びを感じ欲望の対象となっていったのではないかと・・・。 二人が重なってスキップのようなステップを繰り返すところのコルスンツェフはまるでゾベイダを守るナイトのようだったし。 それでもゾベイダは彼を本当に愛してはいなかっただろうな。 誰も愛してはいないゾベイダが最後に王にすっと体を寄せるシーン、無意識に王の反応を試してみようと命乞いを演じてみたように見えて思わずゾクっと背筋が寒くなるような気がしました。 孤高ですでに生きる事に未練がないようなゾベイダの死があっけなく感じたのはシャリアール王の存在感のなさかも手伝っていたのかもしれない。 多分長身の二人に合わせたクラーエフの起用だったのでしょうが、灰汁もなければ威厳も風格も苦悩も感じさせない王でした。 
踊りの方ですが、ロパートキナもコルスンツェフも白鳥同様にちょっと伸ばした腕、上げた足など踊っている時のラインがとても綺麗でした。 特にコルスンツェフは終盤中央で大きくランベルセしてピルエットを繰り返すところがとても良かったです。 全身でゾベイダへの愛を表現していたダンスはともかく迫力ありました。


<第2部>
「ジゼル」  第2幕のパ・ド・ドゥ
音楽:アドルフ・アダン、振付:ジュール・ペロー,ジャン・コラーリ,マリウス・プティパ
アリーナ・ソーモワ  ミハイル・ロブーヒン

ロブーヒンの衣装にまず「ん!!」。 照明の関係もあるのでしょうが、赤紫色に見える上着と、薄茶色が混ざった金髪のコントラストがえらく悪く、片手で顔を覆い跪いている体のラインが丸くて・・・。 ビジュアル的要因で冒頭からジゼルの世界には入り込めませんでした。 ガラってそこまでのストーリーも何もない場面の切り取りだからそういうところまできちんと計算されていないと非常に辛い。 踊りも当然下手なわけではないけれど、アルベルトの感情は見えなかったなぁ。 彼を見ていて、つくづく人にははまりキャラと無理キャラがあるのだと実感。 ごめんよ、ロブーヒン。 イワンはとっても良かったのよ!!
そしてこのツアー初めて見るソーモア。 華奢な彼女は幻影の精霊向きではあると思うのですが・・・一生懸命ジゼルを演じているのが伝わってきてしまい・・・。雑な部分はかなり少なくなっていると思うけれど、ポール・ド・ブラはじめ、なぜか身体のラインが綺麗に見えなかった。  


「グラン・パ・クラシック」
音楽:ダニエル・オーベール、振付:ヴィクトール・グゾフスキー
エフゲーニヤ・オブラスツォーワ  マクシム・ジュージン

出だしは良いように思えたのだけれど、オケの酷さにだんだん引きずられていって調子を下げたようにも感じました。 こんなにのぺ~~としたメリハリも厚みもないこの曲を聞いたのは初めてでしたわ。
ジュージンはオブラスツォーワが軽い事もあってリフトはいとも簡単にやってのけていて良かったのだけれど、ピルエットのサポートが苦しかったです。 もう少しこの踊りに相応しいシャープさと押し出しがあるといいのだけれども、彼の良さは柔らかさなのでしょうね。 オブラスツォーワはちょっと不調なのかこの手は得意じゃないのか・・・。 未だに3年前のテリョーシキナの美しい脚での王道なダンスが目に焼きついているので、技術的な事だけではなくオブラスツォーワのこの演目には物足りなさを感じました。 彼女の可憐なジュリエットが見たかったよぉぉ!


「シンデレラ」  第2幕のパ・ド・ドゥ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ、振付:アレクセイ・ラトマンスキー
ディアナ・ヴィシニョーワ  イーゴリ・コールプ

ヴィシもコルプも今回のツアー初。 「虚飾に満ちた社交界にあきあきしていた王子と、場ちがいな場所に舞い込んで(と、パンフレットにはありますが迷い込んでの間違い??)孤独を感じていたシンデレラが惹かれ合い、心を通わせていく」場面だそうです。 ヴィシニョーワがとても可愛らしかったです。 特に最初、居心地が悪そうにしながらも踊る事をやめられない戸惑いを感じているところが良かった。 コルプも演技が上手いし(シンデレラの存在にふっと目を留めて彼女に走り寄って行くところなんて完璧!)、柔らかい張りのある踊りが良かったですが、できればタイツ姿のクラシックを見たかった。 


「瀕死の白鳥」
音楽:カミーユ・サン=サーンス、振付:ミハイル・フォーキン
ウリヤーナ・ロパートキナ

ゆったりと波打つような腕の動き、細かいパ・ド・ブレなどすべてが完璧にコントロールされていてどんなフォルムも本当に美しくて気品が溢れている彼女の白鳥。 死を悟った白鳥が群れを離れ、死を受け入れながらも、もう一度空に舞い上がれるだろうかと思いながら静かに力尽きていく、そんな感じに見えました。 


「タランテラ」
音楽:ルイス・モロー・ガチョーク、編曲:ハーシー・ケイ、振付:ジョージ・バランシン
ピアノ・ソロ:リュドミラ・スヴェシニコワ
ヴィクトリア・テリョーシキナ  レオニード・サラファーノフ

10月に見た、息をつく間のないほどのスピードとエンタテインメイト的要素の強かったNYCBの小柄なペアで踊られた「タランテラ」とどれほど感じが違うのだろうかと興味津々だった演目ですが・・・・、優美なロシアバレエの中に誇示しすぎないテクニックと思わず微笑んでしまうソフトなコミカルさを堪能しました。 
サラファーノフはテクニックをエレガントにさり気なく見せられる良いダンサーになりましたね。 ただNYCBよりも運動量が少ない振付のように感じたのは気のせいか? ヴィーカも鉄壁のテクニックと音楽性をお茶目にさらっと小気味良く見せてくれてやはり素晴らしいダンサーだわ! 特にステップの素晴らしさに感動。 眠りもそうだったのですが、私は彼女の客席へのアイコンタクトがとっても好きなんですよね!   


<第3部>
海賊 組曲
華やぎの国~メドーラのヴァリエーション~オダリスク~パ・ダクション~コーダ
音楽:アドルフ・アダン、振付:ピョートル・グーセフ
メドーラ : アリーナ・ソーモワ
コンラッド : エフゲニー・イワンチェンコ
アリ : ウラジーミル・シクリャローフ
ギュリナーラ : エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
オダリスク : マリーヤ・シリンキナ、 ヤナ・セーリナ、エリザヴェータ・チェプラソワ


何がびっくりってイワンチェンコに見えないイワンチェンコ! 彼が出てきた瞬間、それまでのピンクの花園の世界が私の頭の中からぶっ飛びましたから。 この時ほどイワンチェンコ=オールバック=イワンチェンコなのだ・・・と痛感した事はなかったです。 サラサラヘアーに青いバンダナ(というか、どう良く言っても太めの鉢巻・・・まさか、ダニーラまであんなものはつけないよね・・・)に、ちょっとお太りになりましたかと丸みを感じさせるラインに、一瞬マジでコールサコフか?!と思いました。 なんで今日に限ってオールバックじゃなかったのか・・・、渋いコンラッドを期待していただけにちとがっかり。 で、またアリのシクリャローフが唇真っ赤で妙な王子化粧なものだから、可愛らしいんだけど華のないソーモア(淡いピンクのチュチュの彼女、花園の最初は凝った衣装のコール・ドの中に埋没して見えた)とのパ・ド・トロワは一種異様な感じでした。 
踊りはというと、ソーモアは四肢のコントロールが効かなかった以前とジゼルよりは全然良かったけれど、やはり腕の動きが雑に見えることがあり、アラベスクのポーズなど私には彼女のラインが綺麗に思えないことが多いです。 ただ、彼女は回転系が得意なのですね。 フェッテは昔より形も綺麗になって最後までシングル+高速ダブルで客席を沸かせていました。 ガラだからこれもありだし、またこれがなかったらどうなったか・・・とも思いましたが。
イワンチェンコはやはり少し体が重たげ。 ブログのジークフリートの写真はけっこうすっきり体型に見えるのになぁ。 でもサポートは安心だし踊りは綺麗です。
シクリャローフは浮遊感のあるジャンプなど良かったですが、夏の西島さんとは言わないけれど、ずいぶんと明るく楽しそうな坊ちゃん坊ちゃんしたアリでしたね・・・。 いちいちニコッと笑わなくていいから。
花園にはちゃんと噴水もあって、あー、マリインスキーの海賊だ! コール・ド・ダンサーも最後までお疲れ様でした! オブラスツォーワはとてもキュートなギュリナーラでこちらの方が良かったです。 オダリスクではやはりヤナちゃんの大きくて隙のない踊りが目立っていましたが、彼女の首のつけ方と上半身の引き方が時々好みじゃないなぁと思ってしまう事にも気がつきました。 どちらかと言うとシリンキナの上半身とすっと伸びる手足の綺麗な動きの方が好きです。
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マリインスキー 「白鳥の湖」 11月27日の感想(2)
2009/12/08(Tue)
<第2幕>
王妃にこの花嫁候補の中から后を選びなさいと言われ、そんな話は聞いていないと動揺する王子。 いったい何のための舞踏会だと思っていたのでしょうね?  
ロパートキナの黒鳥(白鳥では白い髪飾りが大きいためにそれほど気にならなかったのだけれど、かなり髪を赤めに染めているのが若干気になった)は、オデットとの違いをほとんど強調しない自然な役作り。 奔放さと目力の強さが魅惑的なオディールに王子は目を輝かせ心を弾ませる。 
各国の踊りではやはりスペインの両男性ダンサーが断トツに目を惹きました。 カレンはプログラムのプロフィール写真よりももっとすっきりとした顔立ちの長身ハンサムダンサー。 目力も十分で切れ切れの踊り。 でも、さすがバイムラードフには一日の長があり、どこから見ても隙のないポーズなど、すべてが様になっておりました。 男性二人が良すぎて女性には全く目が行かず・・・。
GPDD。 すでに自分に落ちている王子の様子に満足気に誘惑者の役目を楽しんでいるオディール。 王子が時折不安げな表情をみせると、情熱的で蠱惑的な視線を投げかけ王子の心を完全に支配する。 ロットバルトとの邪悪な視線の交換も巧み。  今、目の前にいるこの女性が湖畔で出会ったオデットなのだと安心したように微笑み返すダニーラの優しい目元がたまりません。
王子のヴァリ、幸福をかみしめるようにゆったり踊る一つ一つのポーズが優雅。 ふわっと跳躍したアントルラッセの後方に高く伸ばされた足も、コーダのマネージュでスピードにのりながら爪先までまっすぐに伸びた開脚のラインはまさにクラシックの美。
ロパートキナは、音楽に綺麗に合わせシングルでまとめたフェッテでは一瞬危なげなところもあったけれど、ヴァリでは音と戯れるような素晴らしい踊りを披露。
横浜のコンダウーロワのオディールは自分に愛を誓ってしまった王子を心底嘲るように体を後ろにくねらせながら高笑いをしていたけれど、ロパートキナはほとんど無表情で冷ややかな目で王子を見つめていた。 ぞくっとするほど怖かったです。 事の成り行きに唖然とし絶望しながらも湖畔に駆け出して行く王子。 なんでオディールに愛を誓ってしまったのか!と天を仰ぐダニーラ王子のアクションもずいぶん大きかったな。  

<第3幕>
白鳥たちのもとに戻り王子の過ちを嘆くオデット。 ロットバルトの高速ジュテの勢いは舞踏会でのたくらみの成功を誇示しているよう。
湖畔に戻ってきた王子はオデットを捜し、彼女に許しを乞う。 しっかりと王子をみつめるオデットの表情には愛する人に裏切られた悲しみと辛さが溢れていた。 それでも何度も何度も誠実に許しを乞う王子の姿に再び心を開くオデット。 お互いに切ない思いを胸に抱きながらのパ・ド・ドゥは心に沁みるものがありました。 
二人を引き裂こうと迫るロットバルトに王子を守ろうとオデットが立ちはだかる。 捨て身のオデットの王子への愛が強く感じられました。 凛々しく美しい闘うオデット。
白鳥たちが2列に並び、舞台奥のオデットに王子が駆け寄りオデットをリフトするシーン、オデットへの新たな愛の誓いに一人熱演モードに入っていたダニーラは、出が遅れたためにオデットめがけて猛ダッシュ・・・。 おいおい。 二人でロットバルトに立ち向かいロットバルトの魔力を弱めたもののオデットが力尽きる。 倒れてしまったオデットが気がかりで、ほんの僅かでも傍を離れがたいと言わんばかりに不安そうな面持ちでオデットに触れる王子。 王子の愛も痛いほど伝わってくる。 不安げな表情が怒りに変わりロットバルトと闘う王子。 ロットバルトの衣装からなかなか羽が取れず無理やりむしり取ったというアクシデントも幸いして?緊迫感がありました。 もぎ取った羽を凝視し、足元でのた打ち回っているロットバルトに叩きつける王子。 かっこいい・・・。 ゆっくり起き上がるオデットに向けられる優しい眼差し・・・。 オデットは倒れているロットバルトの死を確かめ、自由の身となった喜びと王子への愛に笑みを浮かべ、二人寄り添って幕。



ロパートキナの白鳥でこんなに王子のドラマを意識したのは初めてでした。 今まではたとえゼレであっても(2006年は腰の怪我が完治していないために満足に踊れる状態ではなかったですが)王子は添え物的存在に見えてしまったのが、今回は王子の純愛物語にも思えたのです。 成長物語ではなく純愛物語というのがいかにもダニーラらしいでしょ。 もちろんこちらがダニーラ王子に特別な想いを持っているのが大いに影響しているのですが、それはロパートキナのスタンスによるものでもありますよね。 パートナーを置き去りにして孤高なオデットの世界を演じてみせるのではなく、王子との愛を語ってくれたからだと。 本来好きではないハッピーエンドがこの日ばかりは好ましく思えたのでした。


オデット/オディール : ウリヤーナ・ロパートキナ
ジークフリート王子 : ダニーラ・コルスンツェフ
王妃 (王子の母) : エレーナ・バジェーノワ
王子の家庭教師 : ソスラン・クラーエフ
道化 : グリゴーリー・ポポフ
悪魔ロットバルト : コンスタンチン・ズヴェレフ
王子の友人たち : ヤナ・セーリナ/ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク/マクシム・ジュージン
小さな白鳥 : エリザヴェータ・チェプラソワ/ヤナ・セーリナ/ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク/エレーナ・ユシコーフスカヤ
大きな白鳥 : ダリア・ヴァスネツォーワ/ユリアナ・チェレシケーヴィチ/アナスタシア・ペトゥシコーワ/リリヤ・リシューク
2羽の白鳥 : ダリア・ヴァスネツォーワ/オクサーナ・スコーリク
スペインの踊り : アナスタシア・ペトゥシコーワ/ヴァレーリヤ・イワーノワ/イスロム・バイムラードフ/カレン・ヨアンニシアン
ナポリの踊り : ヤナ・セーリナ/マクシム・フレプトフ
ハンガリーの踊り : ポリーナ・ラッサーディナ/ボリス・ジュリーロフ
マズルカ : アリサ・ソコロワ/オリガ・ベリク/ナターリア・ドゥゼヴリスカヤ/スヴェトラーナ・シプラトワ/ドミートリー・プィハチョーフ/カミーリ・ヤングラゾフ/ニコライ・ナウーモフ/セルゲイ・サリコフ
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マリインスキー 「白鳥の湖」 11月27日の感想(1)
2009/12/05(Sat)
マリインスキーの白鳥の湖を生で見るのはこれでまだ6回目。 2003年にロパートキナ&コルスンツェフの舞台を見たのが初めてでした。 この時にもコルスンツェフの誠実そうな雰囲気と優雅なポール・ド・ブラに魅了されたのですが、のめりこみ度はまだまだ序の口でありました(笑)。 6回のうち、オデットはロパートキナが4回、コンダウーロワが2回、王子はダニーラが4回にゼレとイワンチェンコが1回ずつというかなり偏ったキャストではありますが、ロパートキナとダニーラで今回のような白鳥物語に出会うとは思っていなかったのでした。 ある意味、王子の物語だったから・・・。

<第1幕1場>
コルスンツェフのジークフリートは、すでに立派に国を治めているという風格ですが、常に笑みをたたえた人あたりの良い誠実で優しそうな王子。 すでに分別のあるしっかり者だからか?成年式後の自分の定めを特に憂鬱に感じる事もないようで、なんだか明るい王子でした。 
大きく広げた両腕の優雅な軌跡。 いつみても美しい腕の動きと爪先まで綺麗に伸びた脚。 出だしからうっとり。
 
トロワのジュージンは踊りは柔らかくてノーブル。 特にヴァリエーションで後方に移動しながらのジャンプでの高いポジションでの脚を打ちつけが綺麗で、高くて柔らかな跳躍は目を惹くものがありました。 王子を踊るには若干身長が低いかなとも思いますが、小柄なバレリーナであればくるみ割りの王子なんかはいけるのではないでしょうかね? 今回、けっこう気に入ってしまったダンサーの一人です。
女性二人はきっちりとした踊り。 特にヤナ・セーリナのメリハリのあるアピール感たっぷりの踊りは良かったと思いますが、個人的な好みとしてはもう少し滑らかな脚の運びの踊りの方が好きです。

友人たちが踊っている間、ダニーラは下手で椅子に腰掛けながら一厘のピンクの薔薇をもてあそび、時に香りをかぎながら家来たちと談笑しておりました。 そういう姿も嫌味でもキザでもなくさりげなく似合ってしまう清潔感溢れる王子だわ♪ 
家庭教師のクレーエフはダニーラよりも身長がありそうで、黒いマントに老学者風な雰囲気が誰かに似ているとずぅっと横浜公演から思っていたのですが、あ!っと思い浮かんだ人物はムーミンのヘムレンさんで(人じゃねぇぇ)・・・。 なんでそうなるかな? 本を持ちながらのダニーラ王子との熱く真剣な語らい、いったい何を話しているんだろう? 

道化のポポフはとても脚力がありそうなダンサーで、ちょっとした跳躍もかなり高さがありました。 道化の見せ場のピルエットも素晴らしい高速で客席からも割れんばかりの拍手。 ただ、こういうキャラクターのダンサーには回転系の軸は最後まで絶対にまっすぐであって欲しいと思ってしまうので、回転の最後で軸がやや傾くのとジャンプの時の足があまり美しく見えなかったのは残念でした。

祝宴が終わり一人になった王子は、何かにせきたたされ、何かを求めるように踊り始める。 ゆったりしたポーズの繰り返しの後に床をすべるような高速シェネ。 それは、理由はわからないけれどもなぜか高まる彼の心を表したものなのか、これからの運命の出会いを予兆するものなのか・・・。 この辺からダニーラのボルテージの高さをさらにじわじわと感じさせられたのですわ。


<第1幕2場>
ロットバルトの登場。 ズヴェレフはイリヤッチばりの悪魔化粧(横浜のシートニコフは化粧も魔物っけも薄かった)の不敵な面構えでなかなかいい魔物ぶりです。

王子が森にかけこんでくる。 いったんは湖畔の白鳥に弓を向けたものの人の気配に驚き姿を消す王子。
ロパートキナ@オデットの登場。 上手から現れてすぐにその場で腕をはためかせて旋回するロパートキナをすべての観客が息を潜めて見守る。 まさに白鳥の女王の飛来。
オデットの美しさに吸い寄せられるように彼女の前に飛び出してきた王子にオデットは驚き少し後退るけれど、それほど王子と離れない距離でとどまり全身を震わせながらずっと王子を見つめている。 この出会いのシーンがとても印象的でした。 自分が弓を持っている事に気づいた王子はあわててオデットの視線から弓を遠ざけるように床に置く。 ダニーラったら今日は本当に芸が細かい。 本当にあわてふためくように弓矢を隠したものね。 逃げるオデットと追いかける王子。 上手から下手へ、下手から上手へを繰り返したあとついに王子がオデットの腕を掴む。 ガシッと凄い勢いで掴んでいたような(笑) すでに目の前の儚げで美しい人に完全に心奪われた王子でした。
二人のグランアダージョはひたすら美しい。 伏し目がちなオデットの目線がとらえどころなく宙をさまよう様子は、静かな世界の中にかすかな艶かしさを感じさせる。 王子にもたれかかるオデットの背中に、王子を感じようとするオデットの気持ちが見えるような気もした。 そんなオデットを後ろから優しく包む王子。 包容力と優しさの塊のような王子ですから絵になりすぎ! しっとりと静かで遠慮がちな愛の語らいのような気がしました。 二人の腕や足の動きの美しさはあえて言うまでもなく。 
最後にロットバルトに引き裂かれるまで、ロパートキナの高雅な白鳥に孤高をイメージしなかったのも今回が初めてだったような気がします。

そんな素晴らしい主役に対し、問題だったのはコール・ド。 登場して24羽がポジションにつくまではそれほど足音も煩くなかったのですが、踊り始めるとやはりカツカツ煩い。 ロシアだからシューズのせいもあるでしょうが、今回は着地音にかなりの体重を感じさせるドスンという響きも加わりかな~~り興ざめでした。 もう一点悲しかったのは、プロポーションの素晴らしいダンサーたちの動きは驚くほど揃っているのに抒情詩的な趣が皆無な事。 オデットの悲運を自分の悲しみとして一緒に分け合っているとかオデットを気遣っているという心の機微が腕や指先の表情からは全く感じられませんでした。 
4羽の白鳥は細かい足のステップまでよく揃っていてお見事でした。でもそれだけだったかな? 大きな4羽は身長もボリュームも本当にでかい。 ただ、やはり腕の一振り踏み出す足に詩情は感じられない。 まだみんな若いダンサーなのでしょうかね?

<第2幕>
王妃にこの花嫁候補の中から后を選びなさいと言われ、そんな話は聞いていないと動揺する王子。 いったい何のための舞踏会だと思っていたのでしょうね?  
ロパートキナの黒鳥(白鳥では白い髪飾りが大きいためにそれほど気にならなかったのだけれど、かなり髪を赤めに染めているのが若干気になった)は、オデットとの違いをほとんど強調しない自然な役作り。 奔放さと目力の強さが魅惑的なオディールに王子は目を輝かせ心を弾ませる。 
各国の踊りではやはりスペインの両男性ダンサーが断トツに目を惹きました。 カレンはプログラムのプロフィール写真よりももっとすっきりとした顔立ちの長身ハンサムダンサー。 目力も十分で切れ切れの踊り。 でも、さすがバイムラードフには一日の長があり、どこから見ても隙のないポーズなど、すべてが様になっておりました。 男性二人が良すぎて女性には全く目が行かず・・・。
GPDD。 すでに自分に落ちている王子の様子に満足気に誘惑者の役目を楽しんでいるオディール。 王子が時折不安げな表情をみせると、情熱的で蠱惑的な視線を投げかけ王子の心を完全に支配する。 ロットバルトとの邪悪な視線の交換も巧み。  今、目の前にいるこの女性が湖畔で出会ったオデットなのだと安心したように微笑み返すダニーラの優しい目元がたまりません。
王子のヴァリ、幸福をかみしめるようにゆったり踊る一つ一つのポーズが優雅。 ふわっと跳躍したアントルラッセの後方に高く伸ばされた足も、コーダのマネージュでスピードにのりながら爪先までまっすぐに伸びた開脚のラインはまさにクラシックの美。
ロパートキナは、音楽に綺麗に合わせシングルでまとめたフェッテでは一瞬危なげなところもあったけれど、ヴァリでは音と戯れるような素晴らしい踊りを披露。
横浜のコンダウーロワのオディールは自分に愛を誓ってしまった王子を心底嘲るように体を後ろにくねらせながら高笑いをしていたけれど、ロパートキナはほとんど無表情で冷ややかな目で王子を見つめていた。 ぞくっとするほど怖かったです。 事の成り行きに唖然とし絶望しながらも湖畔に駆け出して行く王子。 なんでオディールに愛を誓ってしまったのか!と天を仰ぐダニーラ王子のアクションもずいぶん大きかったな。  

<第3幕>
白鳥たちのもとに戻り王子の過ちを嘆くオデット。 ロットバルトの高速ジュテの勢いは舞踏会でのたくらみの成功を誇示しているよう。
湖畔に戻ってきた王子はオデットを捜し、彼女に許しを乞う。 しっかりと王子をみつめるオデットの表情には愛する人に裏切られた悲しみと辛さが溢れていた。 それでも何度も何度も誠実に許しを乞う王子の姿に再び心を開くオデット。 お互いに切ない思いを胸に抱きながらのパ・ド・ドゥは心に沁みるものがありました。 
二人を引き裂こうと迫るロットバルトに王子を守ろうとオデットが立ちはだかる。 捨て身のオデットの王子への愛が強く感じられました。 凛々しく美しい闘うオデット。
白鳥たちが2列に並び、舞台奥のオデットに王子が駆け寄りオデットをリフトするシーン、オデットへの新たな愛の誓いに一人熱演モードに入っていたダニーラは、出が遅れたためにオデットめがけて猛ダッシュ・・・。 おいおい。 二人でロットバルトに立ち向かいロットバルトの魔力を弱めたもののオデットが力尽きる。 倒れてしまったオデットが気がかりで、ほんの僅かでも傍を離れがたいと言わんばかりに不安そうな面持ちでオデットに触れる王子。 王子の愛も痛いほど伝わってくる。 不安げな表情が怒りに変わりロットバルトと闘う王子。 ロットバルトの衣装からなかなか羽が取れず無理やりむしり取ったというアクシデントも幸いして?緊迫感がありました。 もぎ取った羽を凝視し、足元でのた打ち回っているロットバルトに叩きつける王子。 かっこいい・・・。 ゆっくり起き上がるオデットに向けられる優しい眼差し・・・。 オデットは倒れているロットバルトの死を確かめ、自由の身となった喜びと王子への愛に笑みを浮かべ、二人寄り添って幕。



ロパートキナの白鳥でこんなに王子のドラマを意識したのは初めてでした。 今まではたとえゼレであっても(2006年は腰の怪我が完治していないために満足に踊れる状態ではなかったですが)王子は添え物的存在に見えてしまったのが、今回は王子の純愛物語にも思えたのです。 成長物語ではなく純愛物語というのがいかにもダニーラらしいでしょ。 もちろんこちらがダニーラ王子に特別な想いを持っているのが大いに影響しているのですが、それはロパートキナのスタンスによるものでもありますよね。 パートナーを置き去りにして孤高なオデットの世界を演じてみせるのではなく、王子との愛を語ってくれたからだと。 本来好きではないハッピーエンドがこの日ばかりは好ましく思えたのでした。


オデット/オディール : ウリヤーナ・ロパートキナ
ジークフリート王子 : ダニーラ・コルスンツェフ
王妃 (王子の母) : エレーナ・バジェーノワ
王子の家庭教師 : ソスラン・クラーエフ
道化 : グリゴーリー・ポポフ
悪魔ロットバルト : コンスタンチン・ズヴェレフ
王子の友人たち : ヤナ・セーリナ/ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク/マクシム・ジュージン
小さな白鳥 : エリザヴェータ・チェプラソワ/ヤナ・セーリナ/ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク/エレーナ・ユシコーフスカヤ
大きな白鳥 : ダリア・ヴァスネツォーワ/ユリアナ・チェレシケーヴィチ/アナスタシア・ペトゥシコーワ/リリヤ・リシューク
2羽の白鳥 : ダリア・ヴァスネツォーワ/オクサーナ・スコーリク
スペインの踊り : アナスタシア・ペトゥシコーワ/ヴァレーリヤ・イワーノワ/イスロム・バイムラードフ/カレン・ヨアンニシアン
ナポリの踊り : ヤナ・セーリナ/マクシム・フレプトフ
ハンガリーの踊り : ポリーナ・ラッサーディナ/ボリス・ジュリーロフ
マズルカ : アリサ・ソコロワ/オリガ・ベリク/ナターリア・ドゥゼヴリスカヤ/スヴェトラーナ・シプラトワ/ドミートリー・プィハチョーフ/カミーリ・ヤングラゾフ/ニコライ・ナウーモフ/セルゲイ・サリコフ
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キエフ・バレエ「くるみ割り人形」 11月21日の感想
2009/11/22(Sun)
キエフの眠りを見たのは2004年の公演以来で5年ぶりでした。 その公演の主演はドムラチェワだったように思いますが、公演内容についてはセットがしょぼいという事を覚えているくらいでほとんど記憶がありません。 なので衣装・セットが豪華に改められた今回の舞台を見ながら、あ、そういうえば、ここもくるみ割り人形はダンサーが踊ったんだっけ、でもこっちは(マールイと比べてる)女性だよな~、東洋は男女の踊りだったなーなどと懐かしく思い出しながらの鑑賞でした。

<第1幕>
クリスマスの夜、小雪が舞う邸宅街が描かれた幕の前をシュタールバウム家のパーティーに向かう家族連れがそれぞれ楽しそうに横切っていくのはマールイのくるみと同じです。 どこも似たり寄ったりでしょうか?
フィリピエワのクララは可憐で賢そうで心優しそうな少女。 大きな目を輝かせながらくるみ割り人形を見つめる表情や、いたずらなフランツを眉間にしわを寄せてにらむ様子などがとてもキュートでした。 軽やかに刻むステップには少女が嬉しさに心弾むようすが感じられ、わざとらしさのない細やかな演技もフィリピエワならでは。
ドロッセルマイヤーが見せる人形たちの踊り、それぞれに良かったですが、特にアレルキンのセルギイ・チーキーのピルエットが印象に残っています。
くるみというと主役以外に楽しみなのはねずみの王様だったりするのだけれど、こちらの王様はおかっぱ連獅子みたいな髪に軍服風ロングコート?でえっらそうなんだけど、ちょこちょこした脚の動きと胸の前にちょんとだしたねずみ腕のアンバランスさにうけてしまいました。 
くるみ割り人形率いるおもちゃの兵隊たちとねずみ軍団の戦い。 群がるねずみたちにくるみ割り人形が窮地に陥ったところで、怖いのを我慢しながら投げつけたクララの靴が見事ねずみの王様に命中! ほんとにストライクだったんじゃ? ねずみたちが退散したあとにシドルスキーのくるみ割り王子が横たわっている。 とってもスマートな入れ替えに思わず感心してしまいました。 だって、ほらさー・・・(マールイファンにしかわからないよね)。 すってきな王子様にドキドキしつつ心配そうに王子を起こすクララ。 夢の世界で少し大人に変わったクララを無邪気な少女クララの延長線上として自然に演じているフィリピエワの演技がとても上手い。 我に返り起き上がってクララに手をさしのべるシドルスキー王子がまた優雅で気品に溢れていました。 この王子様だったらクララだけでなく、一発ノックアウトを食らう観客がいても無理はない美しさ。 
クララと王子のPDDはいかにもファンタジーの始まりという甘やかな世界。 シドルスキーは指先から爪先までのフォルムがとても美しく、踊りはゆったりと大きいのにどんなポーズも音楽に合わせてぴったりときれいに止まって素晴らしかったです。
フィリピエワもシドルスキーもですが、ここでの雪の精たち、ポアントの音がほとんどしないのはすごいですね。 踊り方も優れているのでしょうが、どこのシューズだろう? 絶対グリシコ以外だろうな。

<第2幕>
クララと王子は魔法の舟で人形の王国へ向かう。
王国へ着いたとたんにねずみ軍団に襲われるのだけれど、剣を抜きりりしく立ちふさがった王子にねずみの王様はあっけなく破れてしまいましたね・・・。
各国の人形たちの踊り。 
スペインの男性衣装は前日の白鳥のスペインの衣装と同じような・・・。 長身で足の長~いオレクシイ・コワレンコ、2年前に見たときにジョシュ・ハートネットに似ていると思ったダンサーだったのを思い出しました。
東洋のワーニャ・ヤン! 衣装は思いっきりシェヘラザードの金の奴隷ですが、この方、本当にスリムなんですねぇ。 踊りもばっちりかっこよく、今回のキエフ公演、私はワーニャ萌えでした。
中国の寺田さん、高速回転を披露してくれましたが、日本という事ですこしばかり力が入りすぎたのか若干乱れたのが惜しい。
ロシアの踊りでは、ルスラン・ベンツィアノフが回転系の超絶技巧で会場から一番大きな拍手をもらっていました。 あれ、540ってやつかしら? 
フランスの踊り、女性はチュチュで男性は白ブラウスに白タイツで王子風なクラシックの踊り。 ドロッセルマイヤーを踊っていたコスチャンチン・ポジャルニツキーは王子役もこなすダンサーだけあって、とてもノーブルで柔らかな身のこなしでした。
花のワルツは12カップルに同性デュオで踊る2組だったかな? フォーラムでステージが大きいせいなのかフォーメーションのせいなのか、わりとすっきりと見えました。 楽しく美しく華やかな夢物語がまさに最高潮に達したその時、舞台奥両袖から登場したクララと王子。 フィリピエワとシドルスキーの存在感が舞台を一層輝かせ、主役というのはこういう存在なんだなと改めて感じさせられた瞬間でした。 
二人のGPDDは幸福感に満ちたもので、チャイコフスキーの美しい旋律を纏うようなフィリピエワの踊りからは、ゆるぎないテクニックと円熟の趣が感じられました。 シドルスキーのヴァリも1幕の後半同様に優美で、上下白の衣装に身を包んだ彼はとても麗しく、まさにクララが夢見る王子様。 難しいリフトも鮮やかに決まり、ユニゾンの振りは気持ちよいほど合っていて、もっともっと二人の踊りを見ていたいと思わせるほどの素晴らしい踊りでした。
夢から覚め、くるみ割り人形を愛しそうにだきしめるクララを見て自分もまた幸せな気持ちになれる。 そんなエンディングを迎えられた素敵な舞台でした。 

オレクシィ・バクランさん指揮のオケもとても良かったです。


キャスト
クララ: エレーナ・フィリピエワ
王子: セルゲイ・シドルスキー
ドロッセルマイヤー: コスチャンチン・ポジャルニツキー
フリッツ: スヴェトラーナ・ミクリャエワ
ねずみの王様: イーゴリ・ブリチョフ
くるみ割り人形: ナタリヤ・コストグリズ
コロンビーナ: カテリーナ・アライエワ
アレルキン: セルギイ・チーヒー
サラセン人: ジーナ・サゾネンコ、ルスラン・ベンツィアノフ
シュタールバウム: オレグ・トカリ
シュタールバウム夫人: リュドミーラ・メーリニク
スペイン: ユリア・トランダシル、オレクシイ・コワレンコ
東洋: カテリーナ・カザチェンコ、ワーニャ・ヤン
中国: ジーナ・サゾネンコ、寺田宣弘
ロシア: ヴィクトリア・メジャク、ルスラン・ベンツィアノフ
フランス: カテリーナ・アライエワ、コスチャンチン・ポジャルニツキー
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新国立劇場「ドン・キホーテ」 10月17日の感想
2009/10/25(Sun)
吉本さんのサンチョにも驚いたけれど、市川さんのドン・キホーテも驚きでした。 2年前の公演ではエスパーダ(文句つけまくりましたが)を踊っていたダンサーですからね・・・。 一生懸命老人を演じようとしているのは痛いほど伝わってきましたが、ちょっとした動きに老人らしからぬ俊敏さが出てしまうところもあり、大変だよなぁ・・・と。 

<1幕>
おっとり姫系キャラの川村さんのキトリは想像がつかなかったし初役だし、実のところ大丈夫なんだろうかと思っていた。 ところが存在感たっぷりに登場した川村さんは初役という事を全く感じさせないくらい生き生きと堂々としている。 メイクもちょっときつめにしているのか、涼しげではあるのだけれど明るく華のあるキトリで、くるくると変わる豊かな表情はちょっと強気でおきゃんな雰囲気も醸し出していた。 ちょっとした仕草にも勢いとノリがあったので、彼女なりにキトリとしての表現をよく考えているのだという事がよくわかったし、それを自然にこなしてしまう事で主役を重ねてきた彼女がプリマとして今充実した時期にいるという事が感じられる。 踊りも腕や足の動きをシャープにして今までの役との違いが感じられたし、アレグロになっても雑な感じはなく、常に指先まで神経が行き届いていて綺麗でした。 ただ終盤のフェアテにはもう少しキレとスピードが欲しかった。
バジル役の芳賀さん。 マイレンの後で見劣りするのではないかと心配していたのだけれど、まったく問題ありませんでした。 踊りは軽快だし、ちょっとオレ様入ったやんちゃなバジルで表情も良く出ていたし演技も上手かったです。 彼はサポートもとても安定していて上手いのですね。 片手リフトも万全で、リフトされた川村さんがかなり長いことタンバリンをしっかり鳴らしていたのが強く印象に残っています。
 
西山さんと遠藤さんは仲の良い友達を演じているというのではなく、にっこり微笑んで目を合わせればそれでもう何もする事はないというくらいに息がぴったり。 二人の踊りと演技の揃いっぷりが見ていて本当に気持ちが良かったです。
マイレンのエスパーダ、2日前のバジルで抑え目だったフェロモンをさいしょっから惜しみなく放出。 若干本来の切れがなかったかもしれないけれど、エスパーダはこうじゃなくちゃというけれんに溢れた情熱的な踊りにいきなり痺れます。 踊り子に送られる視線の熱いこと! 彼はムレタの使い方がとても上手かったのでムレタを翻しまくるマールイエスパーダの振付だったらさぞ素晴らしかろうと思うと、新国立のこの振付がとっても残念。
踊り子の西川さんは適役とは思わないけれどベテランらしい上手さがありました。 残念だったのは2度とも倒れたナイフかなぁ? 同一犯の方は次回はちゃんと練習してきてね。

<2幕>
居酒屋シーンはドラマが二つもあってと~っても楽しかったです。
キトリとバジルが対角線に離れているところ、芳賀さんのピルエットがとても美しかった。 軸はまっすぐで8回転くらいしてたのかな? 回転を綺麗に停止させていくのがまた素晴らしかったです。 川村さんはもう少し弾けてダイブももっと飛んでくれるとさらに盛り上がったとは思いますが、バジルが狂言自殺をした後の演技がとても良かったので、キホーテに説得されロレンツォが結婚を許すまでの流れに観客を引き込む力がありました。 15日はこの辺がちょっと弱かったんだよな。
そうそう、居酒屋の客で一人あちこち歩き回る飲んだくれの客がいたのですが、あれは古川さんだったのかな? 
で、マイレンエスパーダ、もの凄い気合でここの主役はエスパーダか??と思わせたほど。 彼はどんなに踊りにアクセントが強くても常に音と一体になっている素晴らしい音楽性の持ち主だと思うのだけれど、強烈なインパクトがあったここのフィニッシュは本当に素晴らしかったです。 指揮者のバクランさんと一心同体という感じでマイレンの爛々と輝く目がその満足感を表していたようにも思えました。 ギターの踊りの楠本さんの愁いのある踊り、湯川さんの情熱的なメルセデスはともに見ごたえたっぷりで、その二人にキラー視線を投げかけているマイレンとの鳥肌が立つような緊迫感がたまりませんでした。 ここにこんなドラマを感じたのは初めてでした。

ジプシーの野営地。 この日は眠くならずに楽しめました。 二人のジプシーが誰だったのか分からないのだけれど、二人とも挑みかかるような踊りが良かったです。

夢の場。 川村さんのドルシネアは清楚な気品と温かさがあって立ち姿も非常に美しい。 長い手足を生かした伸びやかな踊りのラインは眼福。 グラン・ジュテの連続もふわっと軽くて高さもありました。 森の女王の厚木さんもスタイルが良くて、川村さんと二人並ぶとため息ものです。 厚木さんの雰囲気は以前よりも柔らかさが出てきて良かったのですが、あまりコンディションは良くなかったのかな? なんとなく踊りが緩めな感じがしました。 キューピッドの高橋さんはキュートというより凛とした感じで踊りは手堅くて上手いです。

<3幕>
湯川さんとマイレンのボレロは結婚式のオープニングに相応しい華やかさ。 ただここのどぎつい紫基調の衣装だけは好きじゃない。 と、文句をいいながらもマイレンを堪能させていただいたキャスティングに心から感謝です(笑)。
GPDDへと続く曲が流れバレリーナたちが次々と入場してくるシーン、おぉっと思う跳躍に目が吸い込まれるとまゆみさんでした。 
GPDD。 落ち着いて堂々とした二人のアダージョはとても素晴らしかった。 片手リフトもフィッシュダイブもばっちり決まっていましたが、芳賀さんのサポートの上手さにここでもまた感心。 キトリが脚を水平にしたまま回転して(ピルエット・アン・ドゥダンっていうんですか?)パンシェする際、すっとキトリの背後にまわるタイミングが見事でした。 ここは流石のマイレンもぎこちなかったのですよ。
川村さんはヴァリが素晴らしかった。 寺田さん同様扇なしだったのだけれど、扇がない事が何か物足りないなどと感じさせることのない見事な踊り。 彼女の持っている技術と表現力で十分魅了してくれました。 扇なしのグランフェッテは後半に少しスピードが落ちてやや乱れたのが惜しかったですが、前半は腰に手をあてたダブルをはさみ綺麗に回っていました。
芳賀さんは全く軸がぶれる事のない綺麗なピルエットを最後まで見せてくれて、フィニッシュのグラン・ピルエットはスピードもあって素晴らしかったです。 彼はジャンプも高いのですが、若干雑な面も見られるのでもう少し気を配ってポーズが美しくなるといいですね。
ヴァリエーション。 今までさいとう美帆さんに特別目を留めたことはなかったのですが、先日のキューピッドもこの日のヴァリエーションも柔らかい身のこなしの踊りがとても良かったと思います。 まゆみさんももちろん安定していましたが、疲れがたまっていたのか彼女本来の出来ではないような気もしました。 

という事で、主役二人のバランスが良く、マイレン劇場、他の充実した脇キャストのダンサーたちと、とっても楽しく満足した舞台でした。 川村さん、本当に素敵なバレリーナだと思うので、もっともっといろいろな役で見てみたいです。 来年1月の白鳥の湖にはキャストされていませんが、次に白鳥を上演する時には絶対に彼女をキャストしてもらいたいものです。

 
 
キトリ: 川村真樹
バジル: 芳賀望
ドン・キホーテ: 市川透
サンチョ・パンサ: 吉本泰久
ガマーシュ: 澤田展生
街の踊り子: 西川貴子
エスパーダ: マイレン・トレウバエフ
キトリの友達(ジュアニッタ): 遠藤睦子
キトリの友達(ピッキリア): 西山裕子
メルセデス: 湯川麻美子
ギターの踊り: 楠元郁子
ジプシーの頭目:小口邦明
二人のジプシー: グリゴリー・バリノフ 八幡顕光 古川和則 福田圭吾(交替出演)
森の女王: 厚木三杏
キューピッド: 高橋有里
ボレロ: 湯川麻美子、マイレン・トレウバエフ
第1ヴァリエーション: 寺島まゆみ
第2ヴァリエーション: さいとう美帆
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新国立劇場「ドン・キホーテ」 10月15日の感想
2009/10/20(Tue)
詳細キャストが発表になった時にかなりびっくりした吉本さんのサンチョ・パンサ。 ドン・キホーテだと闘牛士やジプシーくらいしか彼が思いっきり踊れる役はないかもしれませんが、全く踊らないコミカルなサンチョ役というのもなんだかもったいないような・・・、新境地開拓なんですかね?

<1幕>
キトリ&主役デビューの寺田さん。 遠目には落ち着いて見えたけれど、オペグラで見てみるとやはりかなり緊張した面持ち。 表情を作るのもきっと大変だったのでしょうね。 それでも技術的には大きな破綻なくしっかり踊っていたと思います。 終盤のフェアテはきちんと回って、その他の回転系も軸がまっすぐで体が傾くこともなく上手でしたし、タンバリンを持った片手リフトも足を180度に開いて安定してました。 ただ、キトリと聞いて普通思い浮かべるような肩での表現や表情はまだまだで、今後に期待という感じです。 
バジルのマイレン。 彼も新国立劇場でのバジルデビューなのですが、全く気負う事もなく、もう何度も踊っていて自分のバジルがはっきり出来上がっているように見える彼にキャリアの重みを感じます。 おっとりとややおとなしげな寺田キトリに合わせるようにマイレン比では抑え目ながらも細かい演技はぬかりなく、周りのダンサーや客席へのアイコンタクトをしっかり取って物語をぐいぐい引っ張っていく。 主役の力ってこういうものなんだよなと改めて感じさせてくれました。 踊りも絶好調のようで、軽快で美しい。 上体や腕、指先の動きがとびきり美しいマイレンは、いつもながらバレリーナ泣かせだなとも思いますが、流れるようなザンレールが美しかったマイレンに負けない上手さのキトリの友人との踊りはなかなか見ごたえがありました。 
そのキトリの友人のまゆみさんと小野さん、主役の寺田さんより格上というのがありありとわかってしまう安定していて見事な踊り。 ただユニゾンの時に二人の踊りの上体の使い方などの違いを感じる事が多かったような気もします。 
エスパーダの貝川さん・・・、長身でスタイル抜群で見栄えは良いのだけれど、エスパーダらしい魅力が感じられませんでした。 多少踊りが荒削りでもいいから踊りにはもっと切れが欲しいし、俺を見ろというアピールと情熱が欲しかったなぁ。 きっと素がおっとりでソフトな人なんでしょうね・・・。 今更ですが、新国立のエスパーダは舞台上手奥からムレタを翻しながら斜めに進んでくる大好きなあの振りがないんですね。 残念。 踊り子の厚木さんは彼女らしくシャープな踊り。 剣の周りをジグザグに後ろ向きに下がっていく時のポワントワークが滑らかでとても綺麗でした。
あ、ガマーシュもおとなしすぎて・・・。他で目が離せないくらい芸の細かい渾身のガマーシュを見ているだけに印象が薄かったです。
 

<2幕>
いつも幕開きの音楽で、あ、ここは酒場が先だった・・・・と思い出すんですよね。
ここのキトリももうちょっと弾けてくれるといいんだけど。 そつなく踊って演技もしていたのですが、もう少し生き生きと楽しい感じがあれば良かった。 
あまり言いたくはないですが、エスパーダはここでも踊りと目力が弱かったなぁ・・・。 ギターの湯川さんとメルセデスの西川さん、二人とも上手いですが、役が逆の方がしっくりくるような。
マイレン@バジルはさすがに小芝居も上手く、狂言自殺の時も遊びがあって良かったのだけれど、この場面、舞台に乗っている人が比較的少なくて周りのダンサーたちの盛り上がりが欠けたのとキトリの演技がイマイチだったのとで残念ながらマイレンが浮いてしまっていたようにも感じました。

ジプシーの野営地。 珍しく睡魔に襲われ格闘していたためきちんと見ていませんでした。 すみません。

夢の場でステージが明るくなり、チュチュ姿の美しいダンサーたちを見たとたんに目が覚める(野営地で眠くなったのは単にステージ上が暗くなったから??)。 この夢の場は新国立劇場のコール・ド・ダンサーのスタイルの良さとよく揃った踊りの美しさが際立つシーンですね。 黄色いチュチュのドリアードの西山さんと小野さんはやはり目を惹きます。
寺田さんのおっとりした雰囲気がキホーテの夢の中の姫という存在に合っていて良かったと思います。 ただ森の女王を踊った堀口さんが華があって女王然としていたので、視線はどうしてもそちらに行きがち。 手足が良く伸びたアラベスクのポーズがとても綺麗でした。
さいとうさんのキューピッドは女性らしい優しさを感じさせるちょっとしっとりしたキューピッドで踊りも磐石。

 
<3幕>
寺田さんの表情が1,2幕と比べてとても柔らかくなって主役らしいプレゼンスも感じられました。 もちろん、寺田さんを気遣って舞台を引っ張ってきたマイレンのサポートあっての事ですが、やはり本番の舞台の力というものは大きく、一つの公演の中でも変化していくのですね。 二人の片手リフトもフィッシュダイブも危なげなくバッチリ決まっていました。
キトリのヴァリに扇がないのはやはり雰囲気的に物足りないものがあります。 寺田さんであれば扇があった方がニュアンスを出しやすいようにも思えるし。 かと思えばグランフェッテに扇を持って出てきたのでちょっとびっくり。 扇を開閉させながら前半にはダブルも交えて回り、一度ポアントが落ちかけたけれど最後まで回りきったのは立派です。
ヴァリエーションは長い手足を活かして丁寧で心のこもった踊りを見せてくれた長田さんがとても良かったです。 兄妹のような温かさも漂うマイレン寺田さんペアの踊りに長田さんの成熟した踊りが良いエッセンスになっていたような。
マイレンのヴァリは、もう美技としか言いようもなく、空中での空気を切り裂くようなシャープな開脚は会場のどよめきを誘うほどに素晴らしく、一つ一つのポーズも爪先から指先まで本当に美しい。 眼福。 がんがん飛ばすんじゃないかと思った最後のグランピルエットにはやや疲れが見えたかなとも思いましたが、入魂の踊りに大大満足なGPDDでした。


キトリ: 寺田亜沙子
バジル: マイレン・トレウバエフ
ドン・キホーテ: 長瀬信夫
サンチョ・パンサ: 吉本泰久
ガマーシュ: 澤田展生
街の踊り子: 厚木三杏
エスパーダ: 貝川鐵夫
キトリの友達(ジュアニッタ): 寺島まゆみ
キトリの友達(ピッキリア): 小野絢子
メルセデス: 西川貴子
ギターの踊り: 湯川麻美子
ジプシーの頭目:小口邦明
二人のジプシー: グリゴリー・バリノフ 八幡顕光 古川和則 福田圭吾(交替出演)
森の女王: 堀口純
キューピッド: さいとう美帆
ボレロ: 楠元郁子、貝川鐵夫
第1ヴァリエーション: 丸尾孝子
第2ヴァリエーション: 長田佳世
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ニューヨーク・シティ・バレエ Bプロ 10月9日の感想
2009/10/12(Mon)
金曜日に見てきたNYCBのBプロの感想・・・というか呟きです。 プログラムは買わなかったので振付家の意図する作品の内容は全く分からないうえに、すでに記憶がかなり薄れてますんで・・・。 

<第1部>
コンチェルトDSCH
音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ、振付:アレクセイ・ラトマンスキー
ピアノ:エレイン・シェルトン
ウェンディ・ウィーラン、エイドリアン・ダンチグ=ワーリング、アナ・ソフィア・シラー、ホアキン・デ・ルース、ゴンザロ・ガルシア

主役の薄い若草色の衣装のペア(今回の公演チラシのスカートの裾と袖のフリンジ部分がピンクのあの衣装です。)がウェンディ・ウィーランとエイドリアン・ダンチグ=ワーリング。 ブルーの衣装のアナ・ソフィア・シラー、ホアキン・デ・ルース、ゴンザロ・ガルシアの小柄トリオがしっとり系(だったと思うんだけど)の主役とコントラストを見せるような躍動的な踊り。 特にホアキン・デ・ルースのテクニックが秀でていました。 
コール・ドが入った時のヴァリエーションに富んだフォーメーションもとても素敵だったと。 
面白いなと思ったのが、ここ。 トリオで踊っているところにエイドリアン・ダンチグ=ワーリングが現れるとアナ・ソフィア・シラーが彼に吸い寄せられるように近づいてしばらく二人で踊る。 するとウェンディ・ウィーランが「何よ!」ってな表情で現れあっという間にエイドリアンを奪い返すシーン。 第1楽章ではひたすら叙情的に踊っていた彼女の一瞬の表情がとても鮮明な印象を残したというか・・・。 ラトマンスキーはこの作品をどんなイメージで作ったのだろう?

<第2部>
バーバー・ヴァイオリン・コンチェルト
音楽:サニュエル・バーバー、振付:ピーター・マーティンス
ヴァイオリン:カート・ニッカネン
ミーガン・フェアチャイルド、サラ・マーンズ、ジャード・アングル、アスク・ラ・クール

白い衣装のクラシックカップルがミーガン・フェアチャイルドとジャード・アングルで、上半身裸のタイツの男性と衣装の色すら覚えていない女性のモダンカップルがサラ・マーンズとアスク・ラ・クール。 こちらも二人とも白だったっけ?? 
第1楽章はクラシックカップルとモダンカップルが普通に組んで交互に踊ったり4人で踊ったり。
第2楽章はクラシックの女性とモダンの男性による、ここが作品の一番の見せ所ではないかと思わせるPDD。 音楽も美しく切ない感じなのだけれど、う~~んと、やや小柄なアスク・ラ・クールとぽっちゃりとちと重く見えるミーガン・フェアチャイルドの組み合わせは正直に言うと辛い。 ミーガンの体のこなしはとても柔らかくて良かったのだけれど、リフトも完璧に持ち上がっていなかったし、こういう作品でそれは駄目なんじゃないかと。 
途中で束ねていた髪を解くのだけれど、床に寝そべった状態の時に必死になってゴムをはずしているのが見えてしまって、自分で髪を振りほどくジゼルを目撃しちゃったみたいな感じ。
第3楽章はクラシックの男性とモダンの女性。 出だしは女性が男性に背後から脇からと纏わり付くようなコミカルな踊り。 サラ・マーンズの細かい足裁きがとても見事でした。 どこかでアポロみたいに4人が一体になってポーズを作るところもあったけど1楽章だったか3楽章だったか忘れたなぁ・・・。 

タランテラ
音楽:ルイス・モロー・ゴトシャルク、振付:ジョージ・バランシン
ピアノ:ナンシー・マクディル
タイラー・ペック、ダニエル・ウルブリクト

多分初めて見た作品ですが、と~~っても素晴らしかったです。 二人とも音楽にぴったりでテクニックが強くてアレグロでもすべてのステップに雑な感じは全くないのが凄い。 二人が手を繋いだ状態で体の向きを変えたりする事も多く、あの速さだとちょっとでも二人の息が合わないと腕を痛めそうだと感じたほどでした。 そんな、きちんと踊るきるだけでも大変そうな作品なのに、随所にエンターティナーぶりも発揮する余裕ぶり。 ダニエル・ウルブリクトはプリンシパルダンサーだそうですが、弾むような跳躍と超高速マネージュには客席からほぉぉ~~っと感嘆の声が漏れていました。 個人的に気に入ったのは音符から全くずれないタイミングでのタンバリンの叩きっぷり。 青あざできてないかなぁと心配になるくらいの勢いでしたが本当に気持ちよかった! 
12月のマリインスキー・ガラでテリョーシキナとサラファーノフがタランテラを踊るのですよね。 あの二人だとどんな感じになるのか、今から楽しみです。 

<第3部>
チャイコフスキー・ピアノ・コンチェルト第2番
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、振付:ジョージ・バランシン
ピアノ:キャメロン・グラント
アシュレイ・ボーダー、テレス・レイクレン、ジョナサン・スタフォード

この作品は1度だけ2年前に東バの公演で見ています。 なので、白いチュチュなのか・・・と思っていたのですが、女性はややクリーム色がかった膝丈くらいまでのスリップドレスのような衣装。 男性は宮廷風な白のブラウスとタイツ。 NYCBの女性ダンサーの体型を考えればこういう衣装の方が良いのですが、バレリーナがチュチュをつけていた方が厳粛な感じになるかなぁ。
アシュレイ・ボーダーは7月のコー・スターで見た時に感じたとおり、全身で音を表現する事のできる音楽性に富んだ柔らかな踊りがとても素晴らしかったです。 準主役のテレス・レイクレンもきっちり音はとっていたのですが、音に合わせるという事と音楽を表現するというのは全く違うことなのだと思いました。 それでもレイクレンはロシア人のようなスリムな長身ダンサーなのでスタイルの良さは際立っていました。 一方、悪くはないのですがジョナサン・スタフォードは踊りがちょっといっぱいいっぱいだったかな? アシュレイと互角には見えなかったのが残念。 コー・スターの時のパートナーのサイモン・ジョシュア・ボールとは息もぴったりだったしドラマも感じられたのだけれど、今回はそういうのはなかったです。
コール・ドはかな~りバラバラな気がしましたが、それぞれ好きなように音を感じて踊っているといったらよいのか・・・。 合わせる必要なんてないわよねという雰囲気でした。
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東京バレエ団「ラ・バヤデール」 9月26日の感想
2009/09/29(Tue)
なぐりがきですが、感想です。

<1幕>
幕が開く。 ロイヤル版はDVDで見た事があるけれど、今回衣装とセットを借りているミラノスカラ座版は初見。 舞台の上手奥に寺院の入り口となる階段があってほっとした。 マラーホフ版など全く趣の違うセットもあるけど、この階段は絶対必要!(笑)。

大僧正の後藤さん、長身なので衣装負けしていないし、若さが持ちうる色気もあるし、何より美僧だ! ニキヤに対する想いも、僧とはいえ生身であるがゆえの抑えられない感情というのが納得できる。 そんな後藤さんの雰囲気とは反するかもしれないけれど、大僧正登場の音楽にもう少し荘厳な感じが欲しかった気もします。

マグダヴェーヤの高橋さん、けっこう意志のはっきりしたマグダヴェーヤでしたが、跳躍など、踊りは躍動的で良かったです。 苦行僧の中で一人空中のポーズが綺麗に決まっていたダンサーがいたんだけど誰なんだろうな?

ニキヤの美佳さんは清らかな舞姫。 あまりに華奢で透明感漂うその姿は神に仕える神聖さを感じさせるとともに薄幸な運命も感じさせる。 言い寄る大僧正を拒むシーンは、彼女の中にも想い人がいるという現実は微塵もなく、「聖職者でありながら信じがたい・・」というような心情を感じました。

ニキヤとソロルのPDD。 人目を忍んでの束の間の逢瀬に喜びと幸せは隠せないのだけれど、それでもどことなく控えめな感じのするPDDだった。 

2人の姿を見てしまう大僧正。 あれだけ長いことニキヤとソロルを目に焼き付けるように凝視した大僧正は初めて見たような気がします。 嫉妬が渦巻く胸の内が思いっきり表情に出てました。

ラジャの屋敷。
うぅわ!これが例の衣装か・・。 高岸さんだから立派に着こなしていますけど、暑っ苦しそうですね~(笑)。 ガムザッティの田中さん、私には彼女は地味という印象があったのでこのガムザッティ役が合うのか疑問だったのですが、なかなか堂々としていて聡明な感じのガムザッティでした。

ラジャからガムザッティの婿にと告げられたソロル。 木村ソロルはここだけ、ちょっと意外に感じました。 ガムザッティの美しさに心奪われたのは分かるけど(でも、美しさに驚いて思わず数歩後ずさりしてしまうというあまりにも分かりやす過ぎる演技って・・・)、下手で2人でチェスに興じるところはなんだかほんとに楽しそうで(笑)、悪びれなくて。 大僧正の人払いに退出していく時も、ガムザッティをエスコートする仕草がすごく自然でスマートで、案外世渡り上手なソロル??と思ってしまったよ。
先のニキヤとの逢瀬のシーンですら生真面目さから来る陰のようなものがあったのにここだけそれがするっと抜け落ちちゃってるような・・・。
この版ではニキヤが屋敷を訪れラジャ親子を祝福する奴隷とのPDDがないので、ニキヤに愛を誓った現実に再び引き戻され動揺し苦悩するソロルが居ないのよね・・・。 しかもプログラムには「ラジャの期待にも応えたいという願望」ともあります。

ジャンペの踊りの西村さんと乾さん。 乾さんが手堅いクラシックの踊り手だというのはわかっているのだけれど、この踊りは、体の柔軟性を十分に活かし音楽をたっぷり使った西村さんが素晴らしかった。 ただステージが狭くて、コール・ドも交えるとゴチャゴチャして見えたのが残念。

ソロルはニキヤと恋仲だと告げ、ソロルを破滅に追いこもうと画策した挙句、ラジャにニキヤを始末すると言われた大僧正の動揺ぶり・・・。 一番純粋に恋をして、恋のために愚か者になってしまったのは大僧正なのね・・・。

ニキヤとガムザッティの対決。 家柄と身分を誇り、毅然としていたガムザッティは、ソロル様の心は聖なる火の前で愛を誓った私にあると凛とした表情で言い切るニキヤに動揺するものの、ラジャの娘の懇願を受け入れず、身を引こうとしないどころか自分にナイフを向けたニキヤに憎しみを覚え、ニキヤを亡きものにしようと心に決める。 田中さん、表情はさほど変わらないのだけれど、それが逆に怖かったです。 

休憩を挟まず続けてニキヤとソロルの婚約式。
インド&太鼓の踊り、オウムの踊り、壷の踊りは一切なく、いきなりワルツが始まる。 ここは男性二人の方が女性たちより良かったように思います。 

田中さんはテクニックがしっかりしているのですね。 イタリアンフェッテもグラン・フェッテも軸がしっかりしていて綺麗でした。 上体とアームスは好みじゃないのですが(これは彼女に限った事ではなかったので・・・)、踊り全体から幸せを掴みつつある喜びのようなものも感じられて良かったです。
木村ソロルの表情はさすがに晴れやかではなく(ここは難しいところですよね)、踊りもそれほど好調のようではなかったけれど、ジャンプして空中で足を打ちつけるところなどはとても綺麗でした。

ニキヤの登場。
ここからは本当に目が忙しい。 で、絶対何かを見落としちゃうんだよなぁ! ちょっとソロルが見え難い角度だったので、ソロルソロルと思っているうちに大僧正とマグダヴェーヤを見るのを忘れてしまった・・・。 普通ラジャってアイヤに耳打ちする以外は威厳を保って静かに座っていると思うのですが、高岸ラジャはやたら歩き回っていて、しかもなんだか良い人入っちゃってるから、3人の緊迫したドラマの空気が一瞬緩んじゃうんだよな。
花かごの踊りが他の版と大幅に違うのも残念。
マカロワ版は残酷ですね。 毒蛇にかまれたニキヤが事切れる時、かけよったソロルが間に合っても間に合わなくても、ソロルの腕の中で死んでいけてもいけなくても、死ぬ瞬間にソロルの心と視線の中に自分が居るのはせめてもの救いなのかもしれないのに、マカロワ版では、ソロルは振り向きもしないまま、ニキヤの生死などどうでもよいというかのようにガムザッティに寄り添いその場を後にする。
心と体が裂けるほどに苦しい断末魔の瞬間にさらにニキヤに絶望を与える。 このシーン、ぞっとしてしまいました。 (あ、でも蛇がトカゲサイズだったのはちょっと・・・・)

<2幕>
ソロルのテント。 
ソロルのヴァリがあるのですね。 懺悔のヴァリ? 悔恨のヴァリ? 見かねたマグダヴェーヤが少しでもソロルの心を静めようとアヘンを勧める。
背もたれに孔雀の羽が並んだカウチがゴージャス(笑)

影の王国のスロープがわりと低めな位置から出ている1段スロープだったのが少し残念。
コール・ドは24人なんですね。 ロイヤルもそうだし多けりゃいいってものでもないけど、やはりここは32人欲しいです。 すべてのダンサーがスロープを下り終わって6列にそろいアラベスクで終了するまで、グラグラする人もあまりいなく、綺麗に揃っていました。
ヴァリエーションは第2と第3がマリインカやマールイ、ロイヤルとも順序が逆だったのでちょっと驚いた。 3人とも悪くはないですが、それぞれまだ踊りのニュアンスをつかみきれていないようだった。 
ついでに気になったのが紗幕。 通常ヴァリの前に紗幕は上がると思うのですが、ずっと張られたままでした。
美佳さんは、やはりここが一番良かったように思います。 消えてしまいそうな儚さと空気のような軽さがまさに幻影そのもの。 ラインも美しくヴェールの踊りもなんなくこなしていたけれど、終盤少し力つきたかな? ソロルを許しているのか語りかけているのかは分かりませんでした。 一方木村ソロルは、ただひたすらニキヤの魂に寄り添いたい、ニキヤを感じていたいというように見えました。

夢から覚めたソロルに結婚式の準備を促す人々。 一歩一歩にじり寄るようにソロルを追い詰めるガムザッティの姿に、この結婚にソロルの意志など無力なのだと改めて感じさせられた。

<3幕>
結婚式の幕開けの暗いステージにただ一人大きな仏像の下で踊られるこの踊りは婚約式のディベルティスマンの一つとして踊られるのとは全く意味合いが違うのですね。 すでにここは神の意の支配下にあるという暗示を与えているような気がします。 松下さんは出の跳躍も中盤の回転もとても良かったと思うけれど、素顔がなんつーかきょとん顔で可愛いので、もう少し雰囲気に重みがあるとよかったなぁ。

重苦しい空気の中の結婚式。
ソロルは夢からは覚めたもののニキヤの幻影から離れる事ができず、ニキヤを失った絶望の中にいる。 それを感じとってしまったガムザッティのソロは、悲しみと焦りと苛立ちとラジャの娘という気位の高さが入り混じった複雑な心情を表現するとても難しい踊りのように感じたけれど、田中さんの踊りは見事だったと思う。 侍女が恭しく差し出すようにもって来た花籠にガムザッティが慄くところも好きです。 分かりやすいし!(笑)
ソロルがニキヤの魂をはっきりと感じ始めたあたりからの木村さんは、何かが憑依したんじゃないかと思うくらいの体の動きと熱演だったように思います。 ある意味、狂ったみたいだった。 最後に壇上からガムザッティが私を殺したと訴える美佳さんニキヤの血の気のない冷ややかさがまた怖く、主役3人の渾身の演技による素晴らしくドラマティックな終幕だったと思います。

終演後、この物語はソロルとソロルを取り巻く人たちの絶望の物語と感じました。 それだけに、ニキヤとソロルの魂があの世で結ばれるラストシーンは要らないなと。
3幕はずっと紗幕越しだったのですが、これは勘弁してほしい。 演出効果は感じないし、オペグラで覗くと網目がはっきり見えるんですよ。


ニキヤ:吉岡美佳
ソロル:木村和夫
ガムザッティ: 田中結子
ハイ・ブラーミン(大僧正): 後藤晴雄
ラジャ:高岸直樹
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):高橋竜太
アヤ(ガムザッティの召使):松浦真理絵
ソロルの友人:柄本弾
ブロンズ像: 松下裕次
侍女たちの踊り(ジャンベの踊り):西村真由美、乾友子
パ・ダクシオン:
佐伯知香、森志織、福田ゆかり、村上美香
吉川留衣、矢島まい、川島麻実子、小川ふみ
平野玲、横内国広
影の王国(ヴァリエーション1):岸本夏未
影の王国(ヴァリエーション2):奈良春夏
影の王国(ヴァリエーション3):乾友子
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小林紀子バレエ・シアター トリプルビル 8月20日の感想
2009/08/25(Tue)
「レ・ランデヴー」
振付:フレデリック・アシュトン
ステイジド・バイ:ジュリー・リンコン
作曲:ダニエル・オーベール
編曲:コンスタント・ランバート
美術:ウィリアム・チャペル

プリンシパルガール 小野絢子
プリンシパルボーイ 中村誠
パ・ド・トロワ 真野琴絵、佐々木淳史、八幡顕光
パ・ド・カトル 難波美保、宮澤芽実、志村美江子、泰伸世、瀬戸桃子より4人
パ・ド・シス 中尾充宏、佐藤禎徳、澤田展生、冨川直樹、土方一生、アンダーシュ・ハンマル

舞台奥に設置された白く高いゲートが開くと白い衣装に身を包んだ男女6組のカップルが次々に登場してくる。
女性は白でスカートの裾にピンクの縁取りが付いたロマンティックチュチュに白のロング手袋着用、そして頭にはピンクのリボン。 男性は白のブラウス&タイツに刺繍か何かのアクセントがあったようなベスト。 場所は公園という設定で、そこに新しく社交界にデビューする7組目のカップル(プリンシパルガール&ボーイ)が華やかに登場し、みなと挨拶を交わす。 一応社交界なので、それぞれのカップルたちが互いをさり気なく意識しあう雰囲気も感じられて良かったです。
小野さんは可愛らしい衣装も良く似合って可憐な感じが引き立つ。 アシュトンらしい独特な振付もさらりと音楽性豊かにこなしてしまう。 中村さんは柔らかな身のこなしが美しく優雅なのだけれど、小野さんとのユニゾンで音に遅れがちだったのが少し残念。 ヴァリエーションは良かった。
パ・ド・トロワの振付もアスリートのアップ(腿上げみたいな)のようなステップがあってやはり一種独特。 3人とも良く踊っていたと思うけれど跳躍などは八幡さんが目を惹く。 
カトルはほどよく纏まっていたと思うけれど、シスの男性はばらつきもチラホラ・・・。 このシスでなんとなくコルプ&船木(スキージャンプ)似の中尾さんが気になり始めた(笑)


「The Invitation」
振付:ケネス・マクミラン
ステイジド・バイ:ジュリー・リンコン
作曲:マティアス・セイバー
美術:ニコラス・ジョージアディス
照明:ジョン・B・リード

少女 島添亮子
少年 後藤和雄
母 大森結城
姉妹 小野絢子、萱嶋みゆき
住み込みの家庭教師 楠元郁子
妻 大和雅美
夫 ロバート・テューズリー
雌鳥 高畑きずな
雄鳥 冨川祐樹、富川直樹、アンダーシュ・ハンマルより2人

幕が開くと、そこには裸体に近い女性と男性の彫像が4体置かれている。 子供たちや先生らしき女性がいるので学校かと思ったが、どうやらある邸宅の中庭らしい。 その後に現れる大人のカップルなどと合わせて、この邸宅の女主人の招待でパーティーに集まってきた客人たちのようだ。 作品のタイトルの「The Invitation」というのがようやくここで理解できた。

子供たちは性に興味を持ち始め、異性を意識し始める年頃のようで、世の常か?親や教師は必要以上に神経質になり、裸体像を白く大きな布で覆ってしまう。 そんな不自然な事をされれば子供たちは余計に興味が沸いてしまうもので、布をめくり挙げる始末。 子供たちの中で互いに淡い恋心をいだいているのが島添さん演じる少女と後藤さん演じる少年。 お互いに相手の自分に対する気持ちを分かりながらもそれを確かめようと唇を重ねようとする様子などは、まだ犬がじゃれているほどのたわいもなさと初々しさがある。

大和さんとテューズリーの中年夫婦。 黒のタキシードに髭を蓄えているテューズリーは絵に描いたような紳士なのだけれど、妻に視線を向ける事も会話する事もなく物憂げにも見える。 そんな夫が少女に目を留める。 夫の中の男が目覚めつつあるような視線が少女に注がれるのに嫉妬を覚える妻。

夫の気持ちを自分に引き寄せようとすればするほど彼に疎まれてしまうのはわかっていながら、不安と自尊心が入り乱れた思いで必死に夫にすがりつこうとする妻と、妻を乱暴に扱う夫のPDDは緊迫感の中に複雑なリフトがたっぷり盛り込まれて見事だった。 テューズリーの磐石のサポートを受けた大和さんの、妻の激しい心情そのままに全身をしならせながら見せた踊りが素晴らしかった。
それでも答えてくれない夫に女として深く傷つき、行き場のない満たされない思いに打ちひしがれている彼女の前に現れた少年。 後藤さんはその女性に驚きながらも、年上の女性の醸し出す退廃的な色香に惑わされる少年を好演。 ここでの妻の行動は悔しまぎれに少年を誘惑したというよりは動物的な欲望とまだ女としての魅力があるという事を確信するための悲しい性のような気がした。

島添さんの少女からは、少年と向き合っている時は無邪気でまっすぐでおどおどした感も漂うのに、夫の視線に気づいてからは、大人の男性が自分に心惹かれているようなのが嬉しいという気持ちだけの無防備な接近というよりは、少女の持つ健全な色香を通り越した大人の女の艶を持った、何かを期待した挑発というような感じを受けてしまった。 まぁ、それがこのくらいの年の少女たる所以かもしれないし、この辺は非情に微妙なところなので、私にはそう見えてしまっただけなのだけれど。 
レイプシーンは立ったままの夫の後姿と表情は見えない少女の腕と脚の動きですべてが語られている。
テューズリーは夫役としてはどうなのだろう? 根っから暴力的で不埒な男である必要はないにしても、あまりにも紳士然としていて、ギラギラした感じがなく、最後までブレーキがかからないというにはちと説得力に欠けるかも・・・。
ただ、犯された後の少女の放心と恐怖心、正気に返った夫の心からの後悔と懺悔から、起こってしまった事の取り返しのつかない重大さと残酷さは伝わってきた。

崩れ落ち、自責の念にうなだれていた夫は、すべてを見抜いたような妻に抱え起され少女のもとを去って行く。 丸まっていた背中をピンと正し前を向いて歩き出した夫と、変わらぬ笑顔をみせる少年の前から思わず後ずさりしてしまう少女の対比。 客席には、重苦しいというよりこの作品をどう解釈しどう受け止めたらよいのかと困惑ぎみな空気が流れていたような気がする。


「エリート・シンコペーションズ」
振付:ケネス・マクミラン
ステイジド・バイ:ジュリー・リンコン
作曲:スコット・ジョップリン他
衣装:イアン・スパーリング

The Cascade 高畑きずな、萱嶋みゆき、大森結城
Hot-House rag 中尾充宏、中村誠、富川直樹、八幡顕光
Caliope Rag 高畑きずな
The Golden Hours 萱嶋みゆき、中尾充宏
Stop-Time rag 高橋怜子、冨川祐樹、中尾充宏、中村誠、冨川直樹、八幡顕光
The Alaskan rag 大森結城、八幡顕光
Bethena-a Concert Waltz 高橋怜子、冨川祐樹
Friday Night 冨川直樹

シンコペーションのリズムを特徴とするラグタイムの音楽に乗せて繰り広げられる、同じマクミランの作品とは思えないほど明るく楽しい作品。 ステージ手前に弧を描くように並べられた椅子で好き勝手に寛ぎながら、真ん中で踊るダンサーたちと一緒に盛り上がる出演者たち。
ラグタイムというのはクラシック音楽より遅いリズムと思われてつけられた「ragged-time」が略されて「 ragtime」となったものだそうです。
ともかくダンサーの衣装が奇抜で賑やかで・・・。 バンドのメンバーも似たようなガラのシャツでステージ奥に陣取っての演奏で、こちらを見ているのも楽しい。

メインカップルは高橋さんのしなやかな動きと冨川さんのおれ様でしっかりとしたサポートが良かった。

でもなんといっても私的一番はThe Alaskan Rag! 大森さんと八幡さんののみのカップルが可笑しくて可笑しくて。 小さい八幡さんが君と踊る!といって選んだパートナーが椅子から立ち上がると自分よりも大きくて・・・という感じでのダンスは大森さんの大胆な脚や全身の動きに八幡さんが振り回されながらも健気にサポートするというユーモア溢れるダンス。 八幡さんの渾身のリフトも二回くらいあったけど、2人とも大変だろうなぁ・・・。 踊り終わった二人・・・、大森さんの膝の上に八幡さんがちょこんと腰掛けながら仲間のダンスを見ている様子がまたまたほのぼの。

カスケードの3人、踊りは皆良かったけれど、表情や雰囲気はやっぱり萱嶋さんが好きだなぁ! 中尾さんとのPDDも素敵でした。 中尾さんの外野でのコルプちっくな強面芸風の盛り上がりもナイス。
男性たちの踊りはもっと弾けてくれても良かったと思うけれど、こういうダンスはキレとノリが大事だよな。 全体的な印象としても、もっと自分を解放してひたすら音楽と遊んで踊れるようになれば、もっとエネルギッシュで魅力的なパフォーマンスになると思うけれど、ダンサーたちそれぞれが楽しそうで、いつでも全員参加なまとまりのある雰囲気がバレエ団の結束力の強さを見せたような気もする良い舞台でした。

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